プロローグ
平屋程の巨大なサソリの様なものが、月の光を強固な外殻で反射しながら荒野を歩いていた。
そのサソリ向かって迷彩服の少年が駆けて行き、クリスタルのように透明な片刃の剣を振り下ろす。
けれど剣は弾かれ、少年は距離をとる。
「斬撃は無理か」
そう言って少年は再びサソリへと走り出す。
今度はサソリも臨戦態勢をとっており、姿勢を低くし間合いに入れば突き刺さんとばかりに尻尾を構えている。
少年が間合いに入った刹那、尾が音速にも迫る速度で突き刺そうとする。
けれど尾は少年を捕らえることはなかった。
尾が当たる寸前になにか透明な壁によって防がれたのだ。
サソリを自らの間合いに入れ今度は少年が、先程まで片刃だったはずのレイピアで突きをする。
だが、またしても弾かれてしまう。
「刺突も無理か。なら、これはどうだ」
レイピアの刃が霧散し、再び集まると戦鎚となった。
その戦鎚をサソリの腹部に叩きつける。
すると先程まで一切刃の通らなかった外殻が砕け散る。
サソリが悲鳴をあげるかのように暴れ出す。
少年はすぐさま戦鎚をレイピアに戻し、中身が露となった腹部を何度も、サソリが動かなくなるまで刺し続けた。