82 約束
「さて、三日目だぴょん。再び白熱した試合を期待してるぴょん」
相変わらずのテンションで会場を盛り上げていく。
「私はメル、手加減はしない」
「もちろんお願いします」
メルはローブを羽織りながらそう言い放ってくる。
ローブ越しから少し見える服装は鎧などではなく動きやすいように軽装備だった。
この時点で予想されるのは、弓や魔法での遠距離攻撃となる。
「それでは、試合開始だぴょん!!」
試合の合図とともに女性の姿が忽然と消える。
(なるほど、そう来たなら使う武器は絞られるか...)
レオンは、目を閉じ感覚を研ぎすませる。
(音を聞け、微かな動き、心臓の鼓動を...近いな)
レオンは、そのまま神具・コノハナサクヤヒメを取りだし目を瞑りながら刀を振るった。
(見えている!?)
メルはギリギリのところで躱し少し距離を置く。
「見えないのならば見なければいいだけだ」
「なるほど、相当な実力者と判断すべきですね」
メルはフードを脱ぐとそのまま姿を現した。
メルの方も意味がないと判断をしたのだろう。
恐らくローブには、姿を隠すことができる機能があるマジックアイテムだ。
そしてメルが握っている小刀も恐らく何かしらの効果が付いた武器だとレオンは、感覚で気づいた。
(分身を作って様子を見てみるか)
「これが千本桜...」
メルは事前に調べていたのかレオンの技のことを知っていた。
(分析をするために分身を作ってくるか...)
メルは冷静な判断でいまそこにいる存在は、分身だと考えていく。
(だが、いくら分身だとしてもそれが魔法の存在であればこれをくらえば私の勝ちだ!!)
メルは、迷わず小刀レオンの腹に突き刺した。
「やっぱり、こういう道具か...」
レオンは、最初からその攻撃を受ける気でいた。
メルが抜いた小刀を抜いた瞬間に気づいてしまったのだ。
その小刀には呪いが宿っていることが...
突き刺されたところから体中に呪詛が巡っていく。
「まさか、分身も出さず攻撃を受けるとは...」
メルは、レオンに突き刺した小刀を抜こうとするがレオンがしっかりと小刀を掴み、体中から巡る呪詛に恐れそのまま距離を取ってしまった。
「暗殺者の家庭か...」
レオンは、メルだけが聞こえるであろう声で問いかけた。
メルは、その問いかけに思わず沈黙してしまった。
「沈黙は肯定と取るぞ」
「・・・その小刀の呪いがある限り、私たちの家庭は暗殺者になるしかない」
重く苦しい表情でメルは、そう言い放つ。
「そうか、だったらこの呪い全て俺が貰おう」
目まで呪詛が巡り瞳の色がどんどん赤色に変わっていく。
「俺に呪詛は、効かない」
普通ならばもがき苦しみ、立つことすらできないがレオンは、何事もなかったように小刀を抜き取る。
そうするとレオンに巡っていた呪詛が徐々に収まっていく。
呪いは解けたかのように見えるが突然メルが苦し始めた。
「うぅ...」
あまりに突然なことにレオンは、驚く。
先ほどまで平然としていたメルの体に呪詛が書かれていく。
「これは、呪詛返しか!!」
レオンは、メルの体を抱きしめ全ての呪いを自身が背負うよう小刀に言い聞かすが、呪いはメルを蝕んでいく。
呪いとは、本来その者を対象として成り立つものだがそれが無効かされた今、行き場を無くした呪いが使用者本人に返ってきたのだ。
「メル、意識を保て!!」
レオンは、あの時の方法を試してみることにした。
試そうとした途端、メルの腕があの夜倒したであろう塊に変化していく。
一度出したことがある神具だがそれ以降その神具は使えないままでいたのだ。
災厄ともいえる銃の呪いに対し使った神具・堕天使を...
「その力は、その呪いは、俺のものだ!!」
レオンがそう叫んだ瞬間、神具は本に戻り次々とページがめくられていく。
「神装・堕天ルシファー!!」
大きな6枚の翼、その中の一つは、黒く染まっており、レオンの服装は天使が着ていたであろうキトンを身につけていた。
「その呪い貰い受けるぞ」
「あがぁ!!!!!!!」
メルは、呪いに呑まれそうなのか抵抗する様にレオンに巨大になった塊で攻撃してくるがレオンの翼に触れた瞬間その塊は弾け飛び消えていく。
「恐れることなんて何も無い安心して身を任せろ」
レオンは、そのままメルに近寄りその翼で包み込み抱きしめる。
「強欲の宝珠」
レオンは、黒い球を取り出すと呪いがどんどん吸い込まれていく。
「うっ...」
レオンの中に呪いが流れ込んでくる。
(色々な感情が入り込み、気が狂いそうだ)
憎悪、嫌悪、負の感情と言われるものが全て頭の中によぎってきた。
『全てを壊せ、殺せ、消せ』
『待ってるよ』
(そうだな)
「はぁ、はぁ」
「しょ、勝者・レオン」
そこに立っているのは、レオンの姿、勝敗はというとレオンの勝ちで幕は閉じた。
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リアムside
「我を楽しませてくれよ」
「全く何様だよ」
「カイザー様だ、よく覚えておけ愚民」
神具であろう玉座に座り傲慢な態度で答えていく。
「あぁ、そうかよ。俺は愚民じゃなくてリアムだ」
「ふっ、どれも同じようなものだろ。我の前では、何も変わらぬ」
始めの合図とともにリアムは、一気に斬りかかりに行く。
(何か変なことをされる前に一気に仕留める)
「全く芸がないな」
リアムが、玉座に座っていたカイザーの首元ギリギリで土魔法で作られたゴーレムに止められた。
「レオンと同じで無詠唱かよ。しかも相当硬いゴーレムだ」
「当たり前だ、我を守る女王だぞ。さぁ、遊戯を始めようじゃないか」
カイザーは、そういうと突然後ろからゴーレムが現れ斬りかかってきた。
リアムは、攻撃を紙一重で躱すが追撃で弓が飛んでくる。
「ゴーレムで弓兵まで作れるのかよ」
そしていつの間にかゴーレムで作られた部隊が完成していた。
「あの者を殺せ」
カイザーは、ゴーレムに命令すると各々に動き出す。
(無理やりにでもまずは歩兵を全て壊すか...違うなあいつごと全てを叩っ斬る!!)
「ほう、何をする気だ?」
「さぁな」
リアムは、戦闘中だというのに笑っていた。
歩兵の攻撃を躱した瞬間、リアムは剣を巨大化させ、玉座にまで届く大きさにし、強化魔法をかけ横一文字に斬った。
「ふははは、我を玉座から退かせるとは、実に面白い神具よ」
カイザーは、自身のゴーレムを踏み台としリアムの攻撃を回避していた。
「さて、面白いものが見えたが終わりにしよう」
カイザーは、再び玉座に座る。
「その剣で自信を刺すがいい」
その命令を聞いた途端にリアムは、体が動かなくなった。
(体が動かない...これがあいつの神具の力)
リアムは、自身に剣を突き刺した。
血が流れ、体が段々寒さを感じていく。
『決勝戦で待っている』
「そうだよな」
リアムは、小さい声で呟いた。
「やはりこの程度か...」
「まだだ...まだ、終わっちゃいねぇ」
リアムは、自身が突き刺した剣を無理やり引き抜く。
『魔力量が少ないやつでも強力な魔法を使う方法?』
『そうだ、教えてくれ』
『まぁ、いいけど、これは緊急時にしか使うなよ』
「血は、魔力だ」
滴り落ちていた血が突然燃えていく。
そしてリアムは、自身の剣を地面に突き刺すと会場が揺れ始める。
「何をする気だ!?」
カイザーも流石に焦り始める。
だが、気づくのがあまりにも遅すぎたのだ。
その余裕、己の傲慢さがこの勝敗を分けた。
『魔法に重要なのはイメージだ。自身が思うようにやってみろ』
「やってやるよ、俺のオリジナル魔法・大噴火!!」
会場内に熱気に包まれ、会場の数ヶ所にマグマが噴き出していく。
「ああぁぁぁぁ!!!!」
カイザーは、マグマに当たってしまい足が燃え落ちていく。
「悪りぃがこの勝負は、俺の勝ちだ!!」
「ま、待て!!」
カイザーの命令を聞くこともなく。
紅く輝くリアムの剣がカイザーに対し振りかざし、勝者が決められた。
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ルナリアside
「はぁ、はぁ」
「もう終わりか?少しは成長したと思ったんだがな」
「まだです。まだ...」
「諦めろ」
三回戦目にしてルナリアは、敗北してしまった。
Twitter ID @Loewe0126
投稿日など報告しています。
DMで好きなキャラなど言ってくれたらそれを閑話で書こうかと思っています。
質問箱も用意しますので気軽に絡んでくれて結構です。
よかったら、ブクマ、感想をお願いします。
自分は、主に編集担当ですがよかったら見て行ってください!!
https://www.youtube.com/channel/UCtbQRu6U-Xzja3gq3BECegg




