73 テストの日
「暑い...」
いつも涼しいと感じていた夏だったが今日は超がつくほど暑かったのだ。
「確かに、今日は珍しく暑いのぅ」
「夜は涼しくなることを期待したい。王手」
「ぐっ、そうじゃな」
新しく作ったゲームで二人は、仲良く遊んでいた。
「これで詰みだな」
「また負けたのじゃ...」
二人は、将棋で遊んでいる中、扉が開く音が聞こえアイラが入ってくる。
「レオン様、今日は暑いですね...」
「近くに海とかないからね。近くの川ですら魔物が出てくるし...」
アイラは、いつものメイド服とは少し違い薄い生地でできた半袖のメイド服を着ていた。
「もうすぐ夏休み終わりますからね、レオンくんは、課題は終わらしましたか?」
「休みの前に既に全部終わってるよ。簡単だから」
ルナリアがレオンにそう聞いてくるが、精神年齢20を超えているので簡単な計算問題はすぐに終わらせてしまい他の課題に関しても10分あればすぐに終わってしまったのだった。
「ルナリアの方は終わったの?」
「はい、私もここに来てから5日ぐらいに全て終わらせてしまいました」
「まぁ、僕が魔法の勉強を増やしたんだけどね」
「そちらの方が難しかったです」
レオンは、ミュウとルナリアに対し魔法の訓練がてらとある課題を出していた。
「防御魔法の硬度を上げることと全魔法で球状を作るって見ること。まぁちゃんとできているかチェックするか」
「はい、お願いします」
「ん、お願い」
いつの間にかやって来たミュウが庭にある窓から顔を覗かせる。
そこから次々と顔を覗かせてくる。
「はぁ、近くの平原でも行くか...」
もはやピクニックと化したのだった。
ユリア&ノアを同伴のもと平原でのピクニックの許可が下りたのだった。
平原と言えど少し高地の場所にあり、領で過ごしている時よりも風が涼しく感じていた。
休める木の木陰に敷物をしきくつろげるスペースを作った。
「はぁ、威厳というものが全然感じられないな。その寝顔は...」
作った早々、シルヴィは、よっぽど風が心地良いのかそこで眠ってしまった。
そんなことはさておき、レオンは、テストに切り替えた。
「さてと、なら課題のせいか見せてもらおうかな?」
「ん、ミュウから行く」
ミュウは、神具を取り出し魔力をコントロールするため集中し始める。
そのまま、小さい魔法の弾ができていく。
火、水、風、光、闇と5つの魔法が小さいながらもちゃんと球状に作られていた。
魔法をこうして球状や槍状に変化することは、難しい。
何しろ魔力をコントロールをしながらそのイメージを元に作っていくので、コントロールを乱してしまうと簡単に形が崩れ魔法自体が消えてしまうのだ。
「ん~」
ミュウは、必死になりながらも魔法段々と大きくしていく。
「あらあら、これは凄いわね」
「魔法の大きさは、なかなか。魔力自体も上がっているようだね。ちゃんと無詠唱だし」
「レオン、これは十分に凄いことよ。5つも作るなんて凄いじゃない」
ユリアとレオンは、それぞれに感想を述べる。
「はぁ、はぁ、できてた?」
「うん、ちゃんとできてたよ」
レオンは、そのままミュウの頭を優しく撫でる。
「つ、次は私が」
ルナリアは、焦るように準備していく。
ルナリアの神具は、レイピアの為、わざわざ自分で杖を作って練習していた。
「ふっ!」
ルナリアは、いきなり5つの球状を作り上げる。
「はぁ、はぁ」
ルナリアは、先ほどのミュウよりも早く、同じようなサイズで作り少し息切れをしていた。
「うん、ミュウよりも早く正確だね。息切れが激しいけど」
「5つの魔法を同時に使っているんですものそれは当然よ」
「あうあう」
ノアは、魔法に興味あるのか必死に手を伸ばして暴れていた。
「こら、ノア危ないから暴れないで」
「う、うえぇぇん」
ユリアに怒られノアは、思わず泣いてしまう。
「はぁ、ルナリア。ありがと防御魔法は、また後でね」
レオンは、先ほどのミュウのようにルナリアの頭を撫でる。
「さてと、ノアは、魔法に興味あるのか。それじゃあ少し見せてあげようかな」
レオンは、そういうとノアの近くに水色の蝶が現れていく。
ノアは、それを見るとピタッと泣き止んだ。
「あう、あう」
「そうか、そうか。なら、もっと見せてやるか」
ノアが喜んでいるのが嬉しいのかレオンは、調子に乗って次々と生物を作り上げていく。
「こんな水魔法見たことがないわ」
「綺麗...」
周りに犬や小鳥、猫など色々な動物に囲まれていく。
「これ全部魔法なのか?」
「水魔法と少しの光魔法での複合だね。別に水じゃなくてもできるけど、安全性と見やすさ的に水魔法にしてみた」
レオンは、簡単に言っているが動物を形作るのがどれだけ難しいのかレオンは、知らなかった。
「キャッ、キャッ」
ノアのテンションがドンドンと上がっていく。
「喜んでもらえて何よりかな」
レオンは、水でできた動物たちを様々な色に変えていく。
「光魔法で色を変えているのね。綺麗だわ」
ユリアは、レオンの魔法に感心していた。
何しろいくら宮廷魔導士といえどここまで再現するのに何十年とかかっても可笑しくないからだ。
「まぁ、攻撃には使わないけど、こういう使い方が僕は好きかな」
最後にレオンは、指をパチッとならすと魔法は一気にはじけ霧状になると綺麗な虹ができた。
「まぁ、こんなものかな。どうだ?満足してくれたかな?」
「あう!」
ノアは、言葉を理解しているのか元気な返事が返ってきた。
「さて、防御魔法は、リアムとマリーに頼もうかな?」
「なにするの?」
「魔法を使って全力で攻撃してもらう、もちろん急所はちゃんと外してね」
マリーとリアムは、レオンの言っていることが全くわからなかった。
「さて、まずはリアムからでいいかな。僕に全力で剣を振って見てくれないかな?」
「強化魔法もありか?」
「うん、まぁ使ってもいいけど怪我するのはそっちかもしれないよ」
「使っていいなら全力で使ってやるよ」
リアムとリアムは、お互い距離を取っていく。
「それじゃいくぜ」
「全力で来いよ」
リアムは、勢いをつけ走り、そのまま強化魔法を使いながらレオンに振りかざした。
「なっ!」
リアムの全力の一撃は、レオンには一切届いてなかった。
「うわっ」
リアムは、そのまま反動で防御魔法に弾き返されてしまった。
「えっとリアム大丈夫か?」
「あ、あぁ。ちょいと腕は痺れた...」
「まぁ、回復魔法をかけるから腕を見せてみろ」
リアムが腕を出すと、そのままレオンは、回復魔法をかけていく。
「うん、まぁ、問題ないかな」
リアムは、そのまま腕を振ったりして腕の感覚を確かめる。
「さて、次はマリーかな。よろしく頼むよ」
「うん、任せてでいいのかな?」
マリーは、神具を取り出し矢もないのに弓を引く。
「この一撃は大地を抉る、暴風の一撃をこの矢に」
マリーは、詠唱をすると弓に風が集まり、風魔法の魔法陣が現れていく。
「暴風の矢!!」
マリーの最大限の一撃がそのまま放たれる。
地面を抉り、真っ直ぐと魔法の矢がレオンに向けて放たれる。
レオンは、防御魔法を小さく凝縮し、真正面から受け止めていく。
激しい衝突音が大地までも地響きが伝わってくる。
「はぁ、まぁ、こんなものか...」
「結構自身あった一撃だと思ったんだけどな...少しショック」
「これを二人に撃ったら防御魔法貫くから今回はマリーはパスかな」
「そんな威力高いの?」
「正直、少し危なかった。防御魔法を小さくしないと防げなかったかな」
それほどにマリーの一撃が強かったことは確かだ。
咄嗟にレオンは、防御魔法の範囲を狭め防御魔法を凝縮することで何とか防いだのだった。
魔力に余裕があったらどんな大きさでも構わなかったが、未だに魔力が全開とまではいかなかったので節約も兼ねて小さくしたのだった。
「まぁ、テストは、リアムの振りかぶりに堪えることかな」
「そうね、魔法使いは接近されてしまったらきついし何より強化された振りかざしを防げたら上出来だと思うわ」
ユリアの許可も得たことで、気楽にテストを始めることができた。
「レオン、これ終わったら一戦しろよ」
「はいはい、いいから集中してね。あと、テストは木剣ね」
最初は、ルナリアから準備が完了したのでルナリアから先にテストとなった。
「それじゃ行くぞ!」
「はい!」
先ほどと同じようにリアムは、ルナリアの防御魔法に対し振りかぶる。
「ひっ!」
「怯むな!、集中と解いては駄目だ!」
「は、はい!」
レオンの掛け声のおかげか叩いた瞬間歪みだした結界魔法が元の状態に戻る。
「わぁ!」
レオンのようにとは、行かなかったがリアムは、そのまま押し返されてしまった。
「どんな感じだった?」
「はぁ、さっきより反動なかったけど、あれを強化魔法だけで突破するのは流石に難しいかな」
痺れたという感じはなく、弾き返されたがレオンの防御魔法に比べたらまだ柔らかい方らしい。
「さて、次はミュウだな」
「ん、リアムよろしく」
ミュウは、そういうと自分の体ギリギリの所の大きさの防御魔法を張る。
「はぁ!!」
リアムは、力一杯ミュウに対し剣を振り下ろし、そのまま弾かれる。
「いってぇ〜、レオンの防御魔法と同じくらい硬い」
「はいはい、腕出して」
「俺の扱い雑じゃないか?」
「いや、いつも通りだと思うぞ」
そのままレオンは、リアムの腕に回復魔法を掛ける。
「さて、2人ともおめでとう合格だよ」
「私も合格なんですか?」
ルナリアが心配そうに尋ねてくる。
「大丈夫だよ、そもそも剣の攻撃を防げたらよかったからね」
レオンがそう言うとルナリアは、分かりやすく表所が明るくなる。
「だが実戦では、どれだけ怖くても目を背けては駄目だよ」
「はい...」
「そうね。今のはあくまでテスト、本番もしかすると命を狙われた時に目なんて瞑ったら駄目よ。あなたにはちゃんと守ってもらえる人がいるかもしれないけど、守る人を守るのは、一体誰の役割か改めて考えて見ることね」
何故かユリアは、レオンの方に目を向けレオンには聞こえないくらいの声で二人にそう言った。
「あの子を守れるぐらい強くならないとね」
そういい、ユリアは、ミュウとルナリアの頭を撫でる。
「あの子、無茶ばかりするけどよろしくね」
ユリアは、そういうとミュウとルナリアは、顔が赤くなっていく。
「何話してるの?」
「あなたには内緒よ。さっさとリアムくんの相手をしてらっしゃい」
「わかったよ」
レオンは、渋々ながらもリアムの相手をするのだった。
「さて、こっちも少しは鍛えたんだ。本気でいくぞ」
木剣で素振りをしながらいって来るがレオンには、何が変わってるのかはさっぱりだった。
「まぁ、木刀は無しでいいや。遠慮せずにかかって来い」
「その余裕今日こそ変えてやるぜ!」
確かに少し前の時に戦ってるときよりは、スピードが増しておりそのまま剣を横払いしてくる直前でレオンは、あるものを取り出す。
「な、なんだそれ」
「えっと、杖かな?」
リアムの振りかざし木剣に対しレオンは、ライフルを取り出し受け止めた。
「ま、魔力が...」
リアムの剣の重さがドンドンと軽くなっていくのでレオンは、そのままリアムの腹に一撃パンチを入れる。
リアムは、そのままぐたっと倒れてしまった。
「よし、これで休める」
「主、流石に酷いと思うぞ」
ピクニックに来て早々昼寝を始めたシルヴィが起きていた。
「あ、やっと起きたか。まぁ、事故だよ。うん」
流石に、レオンも反省したい気持ちでいっぱいだった。
何しろ、強化魔法が消えた相手に思いきり拳を決めたのだから普通に気絶せても可笑しくはなかった。
「はぁ、帰ったらもう一戦してあげるか...」
今は、ただ涼しい風にあたり夏の終わりを気持ちよく過ごすのだった。
Twitter ID @Loewe0126
投稿日など報告しています。
DMで好きなキャラなど言ってくれたらそれを閑話で書こうかと思っています。
質問箱も用意しますので気軽に絡んでくれて結構です。
よかったら、ブクマ、感想をお願いします。
誤字報告ありがとうございます。




