70 呪いを背負う者
とある夢を思い出す、いやこれは夢ではなかったのだろうか...
「ほう、人間如きがこの場所に入って来るとわな」
「あなたが堕天使」
暗く灼熱の如く暑い空間、黒い大きな翼を広げ玉座へ堂々と座っていた。
「人間何しにここへ来た」
「あなたの力を貰いに来た」
「ふははは、人間如きが我の力貰いにきただと、で、お前は我の力を貰って何をする?」
「神を殺す」
何の迷いもなく答える。
「人間如きが神を殺すだと。はぁ、笑わせるのも体外にしろ」
「本気に決まっている。わざわざ死ぬほどの痛さの中ここまで来たんだからな」
「ふはは、いいだろう力を与えよう。我にすら成し遂げられなかった神殺し貴様如きにできるかは分からぬがいい退屈しのぎにはなりそうだ」
その言葉を聞いたあと目を覚ました。
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「はぁ、気を失ってたか」
「おはよう、主」
シルヴィが、レオンの声を聞くと顔を覗き込んで来た。
「どのくらい気絶してた?」
「数時間ぐらいかの、当たり所が悪かったようじゃな」
「少しやり過ぎたな。魔法の調整が難しい」
「そりゃ、あの魔法は実戦ではほぼ使える者はおらんじゃろ」
二人の話しているのは、魔術破壊のことだ。
魔術破壊の原理は、簡単だがそれを実践できるかどうかはと聞かれれば不可能に近い。
何しろ全ての魔法に対し反作用で打ち消すように術式を組まないと成り立たず、それを実際にやろうとすれば術式が混合し発動しない可能性もあるのだ。
レオンの場合、両手に魔法を分け、二つを重ねた時に発動するようにしてみたが発動自体上手くいったが、ジギルの魔法を全て壊したせいで力加減が一気に崩れてしまった。
「相手の減りようも考えないといけないから確かに使えないかもな」
「まぁ、反省はそこまでにして昼餉と行こう」
シルヴィは、レオンを無理やり引っ張り食堂へと連れて行き、そこで昼ご飯を食べる。
「あれ父さんは?」
「えっと、ただいまトイレ掃除に...」
なんでと問いたいレオンだったがユリアの顔をみると思わず納得してしまった。
ユリアは、ニコニコしているが怒っているような感じがしてたまらなかった。
「どうしたのレオン?」
「い、いや何でもないよ」
「レオン、あなたも今日一日は外出禁止ね」
「はい...」
何も言い返すことができずレオンは、思わず返事をしてしまった。
そのまま、夜までレオンは、書庫に籠ることとなった。
「なぁ、シルヴィ」
「なんじゃ?」
「何か近づいて来てるよね。殺意の高い何かの物体が」
「気づいておったか、まぁ、見張りが何とかすると思うじゃがな」
シルヴィは、楽観的に捉えていたがそんな簡単に片付くのだろうかとレオンは、思わず疑問に思ってしまった。
そんな時、カンカンカンと警報のような合図が鳴り響いてくる。
「まぁ、だよね」
「・・・今、主は外出禁止じゃろ」
「うぐっ」
シルヴィの言葉により外に出ようと思った瞬間に思わず心が揺らぐ。
「い、いや緊急事だしいいんじゃないかな?」
「そもそも行ってどうする気じゃ?」
「分からないけど、行かないといけない気がしてならないんだよね」
呼ばれているような感覚といってもいいだろう、殺意を感じる中で助けて欲しいと呼んでいる感覚がするのだ。
「はぁ、大人しく寝ることもできないなんて」
「「レオン様!!」」
アイラがノアを抱っこし、ルナリアもレオンの部屋へとやって来た。
ノアもずっと泣き止まない状態、どうやら大人たちは、駆り出されて戦闘に行ったみたいだった。
レオンは、そっと二人の頭に手を乗せる。
「大丈夫、二人は強いし、そんな簡単にやられたりしないよ」
ノアにも通じたのか頭を撫でていたら泣くのを止め、スヤスヤと眠そうに目を閉じていく。
「さてと、シルヴィちょっと飛んできて被害見てきてくれる?」
「仕方ないのう」
シルヴィは、翼を広げ窓から飛び立っていく。
「さて、アイラも寝て待ってて、朝起きてからの朝食の準備の為にさ」
「でも...」
「大丈夫、朝起きていつも通り起きて美味しい朝食の準備してくれたそれでいい」
レオンは、アイラの頭を優しく撫でる。
「レオンくんは、どうするの?」
「場合によるけど、行かないといけない気がするんだよね」
「なら、私も」
「駄目だよ。魔の森に行って帰って来てからまだ魔力が回復してないでしょ」
「それは...」
「まぁ、そんなに気を張らなくても大丈夫、知ってるでしょ僕が強いことは」
「それはそうだけど」
そういいながら、ルナリアは、レオンの袖を掴んでくる。
「ルナリアは、三人を守ってくれないか?」
「そんなこと私じゃ」
「できるよ、僕の弟子なんだから」
レオンは、ルナリアの頭を撫でているとシルヴィが窓から慌てて入ってくる。
「主!!」
「静かにノアが今寝たところなんだから」
「す、すまぬ」
「音が大きくなってきてるってことは、倒せていないってところかな」
「まだ平原のところで止まっておるが、相当詰め寄られとる。魔法を撃ってなんとか凌いでるが効いてる気配がなかったのう。新種の魔物?かもしれないが」
「シルヴィは、残って「嫌じゃ」」
「妾も、一緒に行くぞ」
レオン的には、残って守って欲しかったのだけど連れて行けというプレッシャーにより諦めた。
「それじゃシルヴィよろしく頼むよ」
「了解じゃ」
シルヴィは、レオンの手を繋ぎそのまま飛び経ってしまった。
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「クソ、どうなっている」
「矢に魔法を付与してるけど全然効果ないよ」
「剣で直接叩くしか」
「それは、駄目だめよ。触れてしまえば、お前呪われてしまうから」
連携を取りながらもジギル率いる前衛部隊が黒い塊を抑え、アイラとルミ、そしてリーシャが後衛として魔法と矢を放っていた。
「そもそもあれは言った何なんですか?」
「あれは呪具、呪われている武器だ。あそこまで酷いのもそうそうないんだがな」
「魔法が効かないのも」
「それは呪具の特性である可能性が高いな」
黒い塊の攻撃を躱しつつ、相手の行動を考えていると黒い塊が一気に魔力が集まり出す。
「急いで防御魔法を!」
ジギルは、黒い塊の行動に気づき後方の魔法部隊に防御魔法を発動させる。
防御魔法を発動した瞬間、黒い塊から魔力が放たれ、威力が大きかったのか防御魔法は、容易く壊れてしまった。
「しまっ!!」
魔力が目の前に来たギリギリの所、新たな防御魔法により防がれた。
「一体誰が?」
そんな疑問に思っていると上空からバサバサと何かが羽ばたいているような音が聞こえてくる。
暗闇の中大きなその物体に全員目を奪われる。
大きな翼を広げ飛んでいる姿、もちろん鳥の筈もなく一目それを見たらその生物が何かすぐに分かるだろう。
「ど、ドラゴンだ!」
「その背中に誰か乗っているぞ!」
「あれは、子供か?」
「よそ見をするな!、あれは俺たちを助けてくれた少なくとも味方だ!構わず黒い塊を攻撃しろ!!」
ジギルの呼びかけと共に皆、黒い塊の方に目を向ける。
(全く認識疎外の魔法を使っているがあれはレオンに違いないな。隊が崩れなかったからよかったが、あの攻撃の威力相当なものだな。次来たら防げるかどうか、先ほどの防御魔法でレオンの方の魔力が残っているかどうか...)
ジギルは、すぐにあのドラゴンがシルヴィだと気づき上に乗っているのもレオンだと気づいた。
「危ないところじゃったのぅ」
「あぁ、ごっそり魔力使った...」
「まぁ、あんなものくらってしまっては、ひとたまりもなかっただろう。それにしても何故途中で龍体になれといったのじゃ?」
龍体になったシルヴィの背中の上で、レオンは、寝転がってしまう。
「魔力が集まっていくのがわかったから、安定して魔法を使いたかったのと、上空から見渡さないと最前線で戦ってる人の姿が見えなかったからだな」
「なるほどの、主の魔力は大丈夫か?」
「正直ギリギリかもしれないな。次、あれがきたら防げるの怪しい。ぶっ倒れても可笑しくないかな」
「そうなったら、妾が拾ってやろう。そんなことより主よ、まだ終わってないぞ」
「分かってる」
レオンは、立ち上がり、そのまま黒い塊の様子を伺っていた。
「なぁ、シルヴィ何で直接攻撃しないんだ?」
「もしかするとあれは呪いの武器だと思うのぅ」
「呪いの武器?」
「人の思い、憎しみや恨みなどで作られたものじゃな。あそこまでなるとは、妾にも知らんかった」
「あれ触れたらどうなるの?」
先ほどとは違う口調になりながらもレオンは、シルヴィに尋ねた。
「呪われる、そしてそのまま死ぬ可能があるのぅ」
「そっか」
レオンは、そう言い残した瞬間に、黒い塊目掛けてシルヴィの背中からダイブする。
「主!?」
シルヴィは、突然なことで驚き拾おうとするがレオンは、そのまま黒い塊に入り込んでしまった。
シルヴィは、黒い塊にブレスを吐くが全く効いてる様子はなかった。
そして黒い塊は再び魔力を集めクロードウィル領に向けて放とうするが突然動きが遅くなり、そのまま止まってしまった。
「どうなっておる!?」
シルヴィの焦る思いが強くなっていく中、黒い塊が少しずつだが変化していき段々と小さくなっていく。
黒い空間の中、あらゆる憎悪の感情が入ってくる。
亡くなった人を思いやりそして復讐の為だけにその力を求め、そして殺し殺され合いの連鎖が生まれる。
レオンは、気が狂いそうになるが彼女のことを思い出す。
(この痛みを彼女は、耐えているんだ。たった一人、暗闇の中、誰にも頼ることもできずに、だから簡単に逃げ出せるかよ!!)
名前が思い出せない彼女、だがその子の笑顔は、その子の泣き顔は今も記憶の片隅に残っていた。
「その呪い、俺が全部貰う!!強欲の罪堕天使!!」
レオンの体に黒い塊が入っていく。
「はぁぁぁぁ!!」
意識が朦朧としそうになるレオンの前に、細長い武器を構えている黒い人型の姿が見えてきた。
「?‘*#+☆*>△‘+>!」
何を言っているのか一切聞き取れなかったが、黒い人型は、レオンの方に近づきその武器を握れ言っているようだった。
レオンは、人型が渡してきた武器を握る。
「あと...は、たの..」
人型の声は、聞き取れるよになったと思ったら人型は姿を消してしまった。
「全く、無責任すぎるだろうが」
星が広がる空、レオンは、寝転びながら言った。
呪われていたであろうその道具を右手持ちながら。
「これは、マークスマンライフルか?昔、本で読んだあの銃に似ているかな」
モシン・ナガン、ボルトアクション式のフィンランドで作られた銃に似たようなものだった。
木製部分が多く、アイアンサイトやノズルは鉄でできている。
これが作られたものかは分からないが元の世界で使われていた銃の形であることは間違いなかった。
「はぁ、そんなことより背中が痛い」
レオンの周りは、動物や人であろう、骨が転がっていた。
「はぁ、流石に疲れた...」
レオンは、起き上がり、骨がない場所まで移動しそこで思わず寝転がる。
「少しは、救えたかな?」
レオンは、疲れたのか満足げな顔をしながら深い眠りについたのだった。
Twitter ID @Loewe0126
投稿日など報告しています。
DMで好きなキャラなど言ってくれたらそれを閑話で書こうかと思っています。
質問箱も用意しますので気軽に絡んでくれて結構です。
よかったら、ブクマ、感想をお願いします。
誤字報告ありがとうございます。




