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男の子なのになぜか聖女と呼ばれてます...  作者: レーヴェ
5.学園生活
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56 眠る少女

「彼女は?」

「はい、先程話した今朝重症を負った者、私の妹です」

 受付嬢は、苦しそうにことの顛末を話してくれた。



 いつものようにパーティーを組み早朝に挑んだが、10階層にあった転移トラップに引っかかってしまい23階層に転移させられたらしい。


 階層が変わったので、魔物の種類、強さが変わってしまい、パーティーは全滅近くに追い込まれてしまった。

 そして、彼女は、逃げる際に転んでしまい、魔物に生きたまま足を喰われてしまった。

 襲われていたところを他のパーティーが発見し、彼女はギリギリのところ助けられた。


 5人パーティーで挑んだ彼女のパーティーは、死亡2、重症1、軽傷2といった状態、急いで地上に戻された治療を行い現在の状況に至る。


「喰われた足は既に噛み砕かれており、治すことは不可能といわれてしまいました」

「そして、噂で騒がれた者なら治せるかもしれないと」

「はい…」


「とりあいず状態をよく見てみるね」

「お願いします」

 レオンは、彼女にかけられた布団をどかし彼女の状態を見る。


 喰い千切られた足、包帯で処置がされている状態だが、その包帯は血で滲んでいるおり痛々しく思ってしまう。


 レオンは、脈を測ったり、呼吸が正常化どうかをチェックする。

 元の世界とは違い測る機械なんてないので自力で測るしかなかった。



「・・・」

 レオンは、黙り込み彼女を救う考えを必死に考える。


「治せるのか?」

「多分だけどね。急いでやればまだ、ただ」

「ただ?」

「治ったとしても彼女には相当なトラウマがあると思う。()()()()()()()()()()というね。そのため、彼女は、歩けなくなってしまう可能性がある」

 その言葉の重さは受付嬢は充分に理解した。


 いくら優れた医者であっても心の(やまい)を治すことは不可能に近い。


「本当に治すのは彼女自身、支えるのはあなたになる。辛い経験をするかもしれないけどそれでもやる?」

「もちろんです!!」

 勇気を振り絞った声で受付嬢は、答えた。



「清潔なタオル3つほど、あとマナポーションを持ってきて下さい。ルナリアとミュウ、シルヴィはここで待機して、リアム、マリ、受付嬢さんを手伝って」

「「「「はい(ん)(うむ)」」」」

 急いでドアを開け、皆それぞれの行動をする。



「シルヴィ、他の者はこの扉に入れるな。お願いできるか?」

「任せるのじゃ」

 シルヴィは、扉の前で待機した。


「さてと、やりますか」

 レオンは、始めに手を水魔法で洗い、彼女の包帯を解き、より詳しく彼女の状態を見る。


 歯型がくっきりと分かり包帯を取った後の傷跡は酷いものだった。




「取ってきたぜ」

 急いで走って来たのがわかるぐらい、リアムは息切れしながら入ってきた。


「さて、物語を始めよう、プロローグ(始まりを告げる言葉)

 レオンは、神具を取り出し、前回と同じように唱える。


「命の恵みは母なる大地から生まれるものなり、汝我の声を聞いたならばそのページを開き給え、母なる大地の神の書物ガイア」

 レオンは、そのまま「生命の雫」を、彼女に与える。



 だが、それだけでは元に戻ることは不可能だった。

 生命の雫は、その者が持ってる生命力を極限に引き伸ばす効果だ。

 

 前回の冒険者が治ったのは、損失した足にまだ生命力が残っていたから復元できたまで、今回は彼女自身の生命力に賭けるしかなかった。


 生命の雫を与えた瞬間、彼女の足から血が流れてくる。


 そんな状況でレオンは、急いで神具を別の物に変える。


 足を再生させるなんてことは不可能だ。

 なら作ってしまった方が早いとレオンは考えた。


 結果的にレオンがやるのは行為は人体錬成、つまり錬金術だ。

 レオンの神具は輝きだし、そこから赤黒い球体となった。


「これが賢者の石か、想像よりも黒いな。さてと」

 レオンは、賢者の石を彼女に向けると足から流れでた血が突然浮き上がる。


「一体なにを?」

 その異様な光景に思わず受付嬢は呟いてしまった。


 浮かんだ血が集まり足を形成していく。


「ミュウ、ルナリア、魔力を送って!!」

「「はい(ん)」」


 人体錬成、その素材は彼女の血を使ったものだった。


 この世界の血は生きている。

 それは魔力を使う代わりの媒介にできるため結論付けたレオンの仮説である。


 生命力を極限にまで上げた彼女の体は自然と元に戻るように体の中に眠る本能が勝手に動いていたのだ。

 

 足を模った血が骨、神経が形成され肉が付き始め、皮が作成されていく。


 魔力がごっそりともっていかれ、レオンは思わず意識が遠のいてしまいそうになる。

 絶対に救う、そんな思いだけでレオンはギリギリ意識を保っていた。


「ミュウ、ルナリア、魔力が足りなくなったらマナポーションを呑め!」

 ポーションは、ミュウとルナリアが交互に交代して飲み干し、回復した魔力を全てレオンに流していった。


「うぅ、もう魔力が…」

「私も…」

 いくらマナポーションで魔力を回復させようとしてもそれを超える量の魔力を取られ二人は既に限界だった。


「もう少し、もう少しで…」

 賢者の石に魔力を与え続け、8割ぐらい彼女の足が形成されていく。


「まだ…」

 レオンは、賢者の石に手を伸ばす。


 あの時の記憶がレオンの中で蝕む、助けられなかった彼女のことを…

 手を伸し、届かなかった彼女の手を…


 彼女を治す前にレオンの体が悲鳴をあげる。

 魔力の限界かレオンは血を吐き出す。


「レ…オン……し…かり」

 リアムの声が聞こえてくるが、レオンの意識は遠のいてしまった。


 暗い意識の中、喜ぶ声と心配する声が聞こえてくる。

 きっと、成功したんだろうとレオンは思い笑顔のまま眠ってしまった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 また、あの夢…


 真っ暗の空間の中、白い髪の少女が一人泣いている。

 手を伸ばしても届かず、慰めることも触れることもできない。

 そんな彼女を見ていると何故だが涙が溢れてくる。

 悲しみ、恨み、憎しみそんな感情が襲ってくるような感覚だった。

 

 彼女は誰なんだろう?

 名前はなんだったんだろう?

 思い出そうと思っても何故か靄がかかっているみたいで上手く思い出せない。


 徐々に周りが明るくなってくる。

 きっともうすぐ目が覚めてしまうのだろう。

 

 瞼をそっと閉じ涙が零れ落ちた。

 

 

最近、この小説用のTwitterアカウントを作りました。

ID載せますのでフォローお願いします。

そちらで投稿日などを告知しようかなと思います。

Twitter ID @Loewe0126

質問箱など用意しますので気軽に絡んでくれて結構です。

なんと、なんとですねそろそろこの小説が10万pvに届きそうなのです。

そしてその記念として短編ですがホラー小説を投稿したいと思っています。

ジャンルが初めてなのであまり期待しないでください。

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