5 修行1日目
「よし、レオン訓練だ」
馬車での休憩中、外で休んでいる時にジギルが嬉しそうに言った。
「はぁ分かりました」
「俺に一発でも当てれたら本が多い場所に連れってやる」
お、それなら俄然やる気がでる。
「本当ですね。約束ですよ。」
軽い準備体操を済まして、用意された木剣を握る。
「お父様、魔法は使っていいんですか?」
「あぁ、それは構わない。ちなみに俺は魔法を使わないからな」
馬車の従者がスタート合図をした瞬間に魔法をかけ一気に畳み掛ける。
「はじめ!」
ドカンッという地響きとともにジギルの面に向けて剣を叩きつける。
西洋の剣は刀と違い叩きつける方が向いてるのだ。
「うっ、やるじゃないか。」
ギリギリの所でレオンの剣を受け止め横になぎ払った
子供と大人の体格では、子供に力がない為負けるのは当たり前だが大人は子供の素早さにはそう簡単に追いつけないはずだ。
子供が勝つ唯一の方法はヒット&アウェイだけだ。
「無詠唱をして飛び込んできたのはいいが、それだと魔法の効力は薄くなるぞ。」
余裕を持ったか剣を受け止めながら話してきた。
魔 法の弱点ではないが無詠唱の場合、魔法の効果が薄まるのは事実だ。
付与魔法に分類されるものなら効果時間が短くなったり、火魔法なら火力が下がるみたいなことが起こる。
それに魔力量が少ないと効果が大きくないこともある。
そう、魔力量を調整することができたら、特に問題はない。
魔力を使う量を増やしたら無詠唱で火力を下げることなく打つことができたり、付与魔法では、効果時間が短いことは変わらないが付与の効果を大きくすることもできた。
だが、付与魔法では効果時間が切れてしまったらやられてしまうのが当たり前だが、レオンは必要な時に必要な時間だけを計算して魔力量を調整しているのだ。
開始時のスタートダッシュした瞬間だけ付与をかけ、
振りかざす時に付与をかけている。
木でできた剣だが激しい音が響いている。
大人である俺にここまでやるとは...
魔法の才能のおかげだけではないな。
「魔法を許可してくれてありがとう。これで終わらせるね。」
レオンはそういうと、ピンク色の光が辺りを照らした。
「我が望むは幻想の世界、咲き誇れ千本桜」
桜の花びらは散っている幻想的な世界がそこにはあった。
「これは結界魔法か...」
幻想的な世界に魅せられたのかジギルは桜の木に気を取られていた。
今がチャンスだな。
ジギルめがけて大きく振りかぶるが
「あまい」
あっさりと受け止められてしまう。
この結界は桜を作り出すだけではない。
「な、これは?」
さっきまで剣を交わしていたレオンが桜の花のように散り別の方向から次々と現れた。
そう、この結界は分身を作り出すことができる。
それと同時に相手の意識が所々途切れるように桜の花が舞うようになっている。
その世 界は、まさに幻想そのものである。
レオンはそんな一瞬の隙を突き
「とった」「うっ」
脇腹を抑え、勝負はレオンが勝った。
「いや〜、凄いものを見さして貰いました。ジギル殿はハンデがあったとしても、まさかそれでも一本取ってしまうとは」
馬車の従者であるトルアが言った。
トルアの見た目はまさに行商人のような少し肥えた人だ。
他にも周りからパチパチと拍手の音が聞こえる。
どうやらミュウ、マリー、リアムも見ていたようだ。
「す、凄い綺麗だった」
マリーが興奮しながら言っていた
ミュウは何度も頷いていた
どうやらミュウも興奮していたらしい。
リアムも呆けて憧れを見るような目をしていた。
「疲れた〜」
「ま、まぁ約束通り本が多い所には連れて行ってやるよ。はぁ〜、まさか5歳に負けてしまうとは...」
レオンに負けたのがよっぽど効いたのかジギルはかなり凹んでいた。