48 決闘 後半
二人がかりでフェヒターの相手をするがフェヒターは先読みするかのようにステップで躱していく。
「どうなってんだ?」
「多分だけど、調律で僕たちのテンポを掴み取って調整したんだと思うよ」
「テンポ?」
「戦いのテンポ、剣を振りかざすタイミングとかな!」
力が増したフェヒターの攻撃を受け止めることは流石にできないので、レオンは刀を使い受け流していく。
なんせ、二人分の体重をも吹き飛ばすくらいだ。
そんな、ものまともに受けたら骨折ぐらいはするだろう。
戦いでのテンポ、これを知られてしまえば容易に躱され、反撃をされる。
「先に、メロディをやるべきか?」
「それだと、フェヒターが守るだけだな」
そんなことを言っているとメロディの演奏がより激しくなる。
「まだまだ行くよ!不協和音」
いびつな曲が戦場に響く。
「うっ」
「リアム、耳を塞げ!」
レオンに言われリアムは、耳を手で覆う。
「魔力の干渉による魔力酔いか…」
メロディは、ヴァイオリンに魔力を乗せたのだ。
それを音楽によって使うことで聴いた相手に魔力による激しい酔いを与えてきた。
「はぁーー!」
そんな隙を逃さずフェヒターは剣を振るう。
「リアム、地面を割れ!」
「おうよ!はぁーー、地割れ」
リアムは、力一杯に剣を地面に叩きつけ、地面を割った。
「なんだと!」
フェヒターも咄嗟のことに思わず後退する。
「さて、仕方ない。あまり使いたくなかったんだけどな」
戦場が硬直状態になるとみこしたレオンは刀を本に戻した。
「海の神よ、無知を知る愚かな者に力を与えよ。ポセイドン」
本から三又槍に形を変える。
変えると同時にレオンは、結界魔法の千本桜を解いた。
「リアム急いで僕の近くに来いよ、じゃないと溺れるぞ」
レオンがそういって瞬間、どこからともなく水があふれてきた。
「え?なんだって?」
耳を塞いでいたのであまりよく聞こえていなかったのだろう。
だが、それは少し遅かった。
「暗い暗い海の中へ、深海」
レオンの周り以外水が溢れ試合場全体が水で覆われる。
「おふぁえ、やひすふぃだろぉ」
リアムは、ギリギリ間に合わなかったみたいで絶賛溺れ中だった。
「仕方ないな」
レオンは、水の中に手を入れリアムを引っ張る。
「死ぬかと思った…」
リアムは、全身ずぶ濡れ、髪から水が滴っていた。
「息は出来ていただろ」
そこは魔法、水の中では息ができるようにしていた。
流石に、仲間がいて息ができない状態にしたら話しにならない。
「確かに息は出来るが相当苦しいぜ」
リアムの反応をみるに、水圧は残っていたらしい。
「まぁ、流石に終わらせるけどね。渦」
レオン達のいた位置を中心に水が大きく渦巻く。
「いっふぁい何が!」
メロディとフェヒターは一体何が起きているか分からなかった。
それはそうだろう、いきなり水に覆われ、どこを見ても真っ暗な中にいたのだから。
分かるの水に覆われること、そして今負けそうになっているということだけだ。
(どうすれば…)
メロディが考えたときはもう遅かったのだ。
フェヒターとメロディ、気が付いたらベットに寝ていた。
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医療室にて
「負けた…」
メロディは起き上がって、思わず呟いた。
「お疲れ様、いい連携だったよ」
気が付いたメロディを見てレオンがそう言った。
「皮肉にしか聞こえない」
「本心だよ。元々本気で相手する気はなかったんだから」
ただの嫌味にしか聞こえなかったが、メロディにはそれは悪気がないことがわかっていた。
「ねぇ、どうしたら強くなれる?」
「誰かの為に強くなったらいいんじゃないかな?誰かを守るため、誰かを救うため、誰かを笑顔をするためにそんな単純なことでいいんじゃない」
「君は何のために強く?やっぱり王女様のため?」
「・・・ある人に会うため。ただ、それだけだよ」
少し間があったがレオンは答えた。
メロディに、寂しそうな表情を見せて。
「さぁ、痛いところは別にないだろ。ほら、さっさと起きた、起きた。フェヒターは、お前より早く起きて帰っていったからな」
フェヒターは、「次は負けない」と言ってから帰っていった。
「あ、ちなみにそのドアからは帰れないぞ」
「そんな訳…」
医療室のドアは一つしかなくそこからしか出入口はない。
メロディは、起き上がりドアに手を当て開けようとした。
「入れろよ!」
「あいつを勧誘するのは俺たちだ!」
「いや、私よ!」
扉の向こうからそんな声が聞こえる。
「な、なるほど」
メロディは、レオンの言ったことを察した。
人がドアの前に集まり出られないということだった。
「なんでこんなことに…」
「騎士クラスは、上級生が下級生に対して剣を教えるということになっている」
メロディは、このことを聞いて顔をひきつる。
「はぁ、要は勧誘(有名になるため)というわけね」
「今は医療中ということで入ることを止められているがどうせ、その内誰かがそんなことを構わず入って来ると思うよ。だから、ほら手を握って」
「手?」
「ほら、早く!」
「う、うん」
メロディは、レオンの手を握った瞬間、上空にいた。
「え…」
メロディは、その光景をみて絶句した。
眩しい光が起きた後、目を開けた瞬間に上空にいて落ちているのだから。
「お、落ちるーーーー」
「あ、座標間違えた」
慌てふためくメロディとは裏腹に、レオンは落ちて行く中冷静に自分のミスを反省していた。
「そんなことより、一体どうするのよ!」
「どうにかするから、あまり首絞めないで!」
空中に放りだされている中、レオンは揉みくちゃにされていた。
(風魔法じゃだめだな。下に被害が出るし。とりあえず、飛ぶか、一応透明化もしておくか)
「よっと」
「えぇ、え、浮かんでいる…」
「このまま、ゆっくり降りて行くからな」
「う、うん。それよりその翼…」
「あぁ、うん。秘密にはしてね…」
一応、ジギルから天使の力の使用を禁止されてはいる。
ケーニヒ王からも使用をするさいも、せめて見えないようにした方がいいと言われていたので一応秘密事項となっている。
「気持ちいい」
「まぁ、そうだな」
「眩しい」
「ゆっくり目を開けてみな」
レオンに言われメロディは、ゆっくりを目を開ける。
オレンジの空、西へと沈む大きな太陽がレオン達の目に映る。
「綺麗…」
「そうだな。また機会があればまた夕方に飛んでみるか」
「その時は、また乗せてよね」
「わかったよ」
レオンは、メロディを抱っこしながらゆっくりと地面に降りていくのだった。
その景色を長く見るためにゆっくりと…
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