閑話 裕治の洋館
ジェフと合流した一同は、ナビゲートどおりに案内され洋館までたどり着いた。
「な、なんか雰囲気あるね」
「そ、そうね」
女性陣は、黒い洋館の漂う怪しさに少し恐怖を感じていた。
事前にインターネットやSNSなどを使い情報を探していたら、心霊スポットになっていた為、ジェフ以外少しビビっていた。
紹介によると夜に異様な声が聞こえたり、人魂が屋敷の窓から目撃されていたりしている。
謎に心霊スポットとして上位にランクインしていた。
「おぅ、なんて素晴らしい場所なんだ。me もこんな場所に住みたいよ」
ジェフだけは、心霊スポット関係なく洋館そのものに興奮していた。
「と、とりあえず入ってみようぜ」
「そうね」
そして、一同は重要なことを忘れていた。
「そういえば、この洋館の鍵って見つけてなくない?」
「「「あ」」」
そう、洋館に入るための鍵を見つけてはいなかったのだ。
「うーん、多分UZのことだから、この近くにあると思うけど」
「そうだといいけど、まだ家にある可能性もあるんだから。まぁ、少し探しましょ」
それから、5分後一同は、辺りの叢や洋館の周りを探したが鍵は一向に見つからなかった。
「はぁ、ないな」
「まぁ、少なくともその辺に落ちてるっていうのも可笑しな考えだしね」
龍ヶ崎と由香は、ヘトヘトになっていた。
「うーん」
三由栞は、少し考え込んだ。
(見つからない、これは家にある可能性が高いのかな。それにしてもほんと自然が多いわね。この木も...)
三由栞は、少し可笑しな点に気づいた。
「枯れてる」
洋館近くの一本の木、その一本が枯れている事に…
洋館、ホラーといったところで枯れてる木があっても不思議ではないと陥る錯覚に近かった。
しかし、周りの木々は枯れてはいなかったのだ。
三由栞は、その木を触り、木の感触とは別の感触を感じとった。
「みんな、あったわよ」
木の一部だけ、小さな鉄製の扉を、見つけた。
色も木の表面に似ているためパッと気づきにくかった。
「えぇ!」
「はぁ、こんなところにあったのか…」
「よく見つけたな」
「ホームズの話を思い出したのよ」
三由栞は、少し懐かしむように微笑む。
「youもシャーロキアンなのかい?」
「違うけど、昔、散々裕治に読まされたのよ」
「シャーロキアンって何?」
「シャーロックホームズの熱狂的なファンのことをそう言うのよ。まぁ、裕治は、相当なファンだったね」
「それなんか関係あるの?」
「木の葉を隠すなら森の中、ブラウン神父が言ってたものだよ。推理小説繋がりで読んでいたんだけどね。まぁ、鍵を見つけたし早く入ろ」
「そうだな」
洋館の鍵を開け、洋館の扉をゆっくりと開ける。
電気をつけると広いロビーに2階に上がるための階段が左右にあったり、床は赤い絨毯が敷かれ、上にはシャンデリアがぶら下がっていたりと洋館の内装は相当豪華だった。
「すげぇ」
「これは凄いな」
龍ヶ崎と稔がそれぞれ見た感想を言った。
「とりあえず、書斎に行ってみないか?UZが何か残すとしたらそこしかないだろう」
ジェフの言葉で我に返り、書斎を探した。
「ほんと、どれだけ広いのよ、この洋館」
これまた、5分ぐらい手分けし、散策して書斎を見つけたが書斎には本がぎっしりと2階分の本棚に詰められていた。
「これ、一つ一つ調べるの?」
「まぁ、やるしかないな」
皆、各々本を取り出し内容を読もうとするがその本は全て裕治の日記だった。
「これ、全部日記?」
「少なくともそういう事になるのだろう」
「まぁ、読んでいくしかないね」
「meは、あまり漢字は読めないんだけど…」
協力して裕治の残した日記を読んでいく。
ジェフは、日付だけは流石にわかるので日付だけを言って渡していく。
『〇月〇日
今日は、静岡県富士市にあるコノハナサクヤ姫が祭られている神社に行って来た。
桜が関係すると思われる為、桜が満開の季節を待ってから向かって見たが無事会うことができた。』
「これ、懐かしいわね」
「2年の春休みの時にそういえば行ったね」
「それより、誰とあったんだ?」
「そこは詳しく書いてないわね」
『△月×日
今日は、京都まで友達と行って来た。
天気が心配だったが無事に晴れてくれたことが幸いだ。
夜ホテルを抜け出し松尾大社に来た。
満月が綺麗で、木々の隙間から月の光が差し込んでいた。
少し騙されたがこちらも会うことができた。』
「これも懐かしいな」
「あいつこっそりと行ってたのか」
「まぁ、あの時は皆成人して酒を飲んで酔いつぶれていたからね」
「まぁ、三人は、すごい呑んでいたものね」
「三由栞は一緒に行ったの?」
「うーん、ついて行ったのは覚えているけど途中の記憶があまりないんだよね。その後、寝てしまった私を裕治が背負ってホテルまで戻って来たらしいけど」
「あぁ、そういえばそんなこともあったな」
4人とも少し懐かしむように裕治が書いた日記を読んでいく。
「ん?これは僕の名前だね!」
ジェフは、アルファベットで記載されていた自分の名前を見て少し表情が明るくなった。
散々自分の知らないことばかり聞かされていたので、自分の名前があった事によほど嬉しかったのだろう。
『□月×日
現在、アメリカに留学中、どうせなら外国の神殿や教会とかも見に行ってみようかなと思った。
そんなことを考えていると、アメリカで初めてできた友達、ジェフが案内すると言い出しジェフに色々と案内してもらった。
と、言ってもアメリカは、殆どがキリスト教なので教会ぐらいしか見るものがなかった。
アメリカ自体まだ新しい国という事に分類されるので仕方ない。
どうせならギリシャにでも旅行に行ってみようかな?』
「なんでギリシャ?」
「さぁ?」
『Ut adhuc loquar ad te…』
「ねぇ、ジェフ、これ何語かわかる?」
「ちょっと待って」
ジェフは、パソコンを取り出し何語か検索をした。
「うーん、これはラテン語だね。書いてる言葉はまた君に出会うためにかな?少しニュアンスが違うかもしれないがそれに近い言葉だと思うよ」
「ねぇ、三由栞それがどうしたの?」
「いや、見てきた日記に全部そう書いてあるから気になって」
三由栞からそのことを聞いて由香達も日記の最後に書いてあることを確認した。
「最初の日記を探したら意味がわかるかもしれないけど」
「最初の日記、上の方のやつか、俺が取ってくるよ」
龍ヶ崎が梯子を使い一番上の端っこにある日記を取りに行った。
順番通りに並んでいたため、ある場所はすぐに分かった。
『○月☆日
長期の休みということもあり、僕は田舎のおじいちゃんの家まで暫く過ごしていた。
僕は、そこでとある少女に出会った。
どこか人間とは思えず、小さな祠の前で只々泣いていた。何故少女が泣いていたかは分からないが僕は 彼女を救いたいと思い、思わず声をかけてしまった。
彼女は、声をかけられた事に少し驚いていたが、無事泣き止んでくれて、日が暮れるまで彼女と遊んだ。
また、明日遊ぼうと約束をして僕は家に帰った。』
『○月♪日
昨日、約束した通り小さな祠な前で少女がいた。
そういえば昨日少女の名前を聞いていなかったので聞いてみると名前はないと言われた。
名前がないならつけようと思い僕は咄嗟に〇〇と名付けてしまった。
彼女は、気にいったのかとても喜んでくれた。
そのまま、また〇〇と日暮れまで遊んだ。』
「〇〇ってなんだ?」
「わからない、何故かその箇所が不自然に消えているのよ」
三由栞は、龍ヶ崎にその部分を見せるが確か文字が不自然に消えて読めなくなっていた。
「この部分だけ消したのか?」
「消したにしては少しおかしい気がするけど」
少しの違和感を抱えながらもみんな日記を読んでいく。
『〇月?日
小さな祠に向かうとそこには昨日と同じように〇〇がいた。
しかし、どこか具合が悪そうだった。
凄く苦しそうな表情だったのですぐに病院に行くようにいったが〇〇は、頑なに拒絶する。
そんな時、後ろから明るい光が現れ、そこから人が現れて〇〇を連れて行こうとした。
今にでも泣きそうな〇〇を見て僕は咄嗟に〇〇の手を取り、逃げ出した。
逃げ出したが、何故か体が動かなくなった。
一歩すら動かすことが出来ず、何も出来ないまま彼女から引き離されてしまう。
動け動けと思うも、その足は動かず、手を伸ばしたとしても届かない。
彼女は最後に腕を振りほどき僕にキスをした。
それから、眩しいくらいの光が再び現れ気づいたら僕は、病院のベットにいた。
日暮れ、帰って来なかった僕を、おじいちゃんが探しに来て倒れている僕を発見し急いで病院に運んだらしい。
最後に、彼女を連れて行った人が「記憶を消す」と言っていた事を思い出し、やる気のなかった日記を開き、自分の出来る限り思い出し書き始めた。
泣きながら必死に日記を書いた。
忘れたくない思い出を、手を繋いだ彼女の温もりを、遊んだ時に見せた笑顔を、最後に流した涙を決して忘れない。また、君に出会うために…』
「何これ本当にあったできごと?」
「小説というわけでもなさそうなんだけど」
「泣いた跡が残っているからね」
そのページの用紙は、所々何かに濡れたみたいにしわしわになっていた。
「こんな跡がある時点で本当と思ってしまう」
「続きを読んでみようよ」
「そうだね」
まだ、続いていた日記を読み始めた。
『〇月#日
病院から退院し、おじいちゃんと一緒に家に戻る。
その時に、おじいちゃんからあの祠について教えてもらった。
あれは、『邪神』が祭られているらしい。
邪神といっても悪いことをする神ではなく、人間の悪の感情を代わりに請け負う神らしい。
僕にはよくわからないが、おじいちゃんも一度その少女を見たことがあるらしい。
おじいちゃんに剣術をならうことにした。
神様に勝てるぐらい強くなりたいとおじいちゃんに言うとおじいちゃんは真剣な顔つきになって本気か?と聞き返された。
彼女のことをことを思い僕は咄嗟に本気と言い、明日から剣術を習うことになった。』
「そういえば、あいつ授業の剣道では負けなしだったな。剣道部いたのに…」
「おじいさんに教えて貰っていたのね。それにしても神に勝てるぐらいって…」
「まぁ、あいつらしいと言えばあいつらしいけど」
「ん、三由栞なんか日記から落ちたよ」
日記の中からひらりと一枚の紙が落ちてきて由香がそれを拾いあげる。
「また謎解き?」
「えっと、『不満の頭を取れ』」
「さっぱりわからん」
「不満の頭を取ったら満だけど」
各々が、文字の意味を考えた。
「なるほど、僕はわかったよ」
ジェフは、自信満々で書斎からでて最初の玄関に向かっていく。
三由栞たちも釣られてついて行く。
「多分これかな?」
ジェフがいじりだしたのは石でできた男の彫刻、上半身だけのよく美術の時間とかで使いそうなものだ。
「oh BINGO、あったよ」
ジェフは、男の頭部分を取り、そこにあった怪しげなスイッチを押した。
ボタンを押した瞬間、ドンという音だけが聞こえたが見る限りではどこも変化はなかった。
「なんで分かったの?」
「不満=human=人間を表しているじゃないか、そこから漢字の時に不を取って満、つまり男を表す=manになるからね。後は説明通り頭を取ったらスイッチがあったんだよ」
ジェフは、解けたことを自慢げにドヤ顔をしてくる。
「はぁ、とりあえずどこが変わったか探すか…」
「「はぁ」」
由香と龍ヶ崎は、溜め息を吐きながら怠そうに捜索するのだった。
「どこも変わってないじゃない」
一同は、5分ほど探しまわったがどこにも変化はなかった。
「紙に他に何か書いてなかったの?」
「えっと」
再び日記を開き挿んでいた紙を取り出した。
「うーん、書いてないようだけど、何か他に挟まってないかな」
ペラペラとページをめくると一番の最後のページにまた紙が挿んであった。
「はぁ、もう謎解きは勘弁してくれよ」
「えっと、とりあえず書いていることを読むね。『ブラウン神父、木の葉を隠すなら森の中、この洋館に一番多いものが扉となる。』だって」
由香が読み上げ、三由栞はすぐに分かった。
「一番多いものって多分日記よね」
「はぁ、灯台元暗し。そういえばスイッチを押してから書斎を調べてないものね」
一同は、再び書斎に戻って来た。
「また、この中から探すのか?」
「扉となる、て書いてあるしどこかの本棚を押すと開くと思うよ。スイッチで鍵は解けたみたいだし」
三由栞の予想通り、本棚を押すとガタッという音と共にゆっくりと開いた。
「階段」
「地下もあるのかよこの洋館」
「行ってみましょう」
一同は、そのまま地下の階段を下りて行った。
遅くなってしまい申し訳ございません。
次回、新章となります。
良かった読んでいって下さい。




