42 試合開始 前編
レオン達は、控え室で30分ほど待っていた。
「次、レオンチーム。一応確認しとくが神具は全員出せるのか?出せない場合はこちらで武器を用意するが…」
「大丈夫です。全員出せますよ」
レオン達は、そのまま教員について行った。
「えらく早いな」
「どうせ、冒険者がリーダーを速攻で叩いてるんだろうよ。と、いうことで頼むぞリアム」
「おう、任せろ!」
リアムは、自信満々に答えた。
レオン達が出た瞬間、会場が一気に騒ぎ始める。
レオンは、会場に入り、冒険者を見ると思わず固まってしまった。
それは、先日魔物により大きな傷を負って治療した男の冒険者の一人だった。
レオンの存在に気づいたのかその冒険者はレオンの方に歩いてきて急にかがみ、レオンの手を握ってきた。
「どうか、どうか、俺と付き合って下さい!!」
その言葉とともに会場が静まる。
「何してんのよこの馬鹿!」
男性の冒険者の後ろからやってきた女性の冒険者が頭を叩いた。
レオンも、その声で元に戻りこう答えた。
「お断りします!僕はおとこなので」
そういうと、騒いでいた冒険者が固まった。
「またまた冗談を…」
「男だろうと構わないどうか、どうか」
突然、起き上がり再び手を握ってくる。
(へ、変態だ~ホモだ、ホモがおる)
レオンは、その男冒険者の発言にドン引きし、後ろへ下がった。
「あんた…」
女冒険者も思わずドン引きしていた。
「ごほんごほん、お互い大丈夫でしょうか?」
このままだと始まらないことを見越した審判が咳き込み無理やり進めようとした。
「すみません、すぐ準備するんで…」
「俺は戦えない…」
「はぁ?今更何いってんの?」
「俺はかの、ごほん彼に命を救って貰った。そんな人に剣を向けられない…」
必死に女冒険者に訴えるが、レオンとしては強さを見せたい為、戦って欲しい所であった。
(今、こいつ僕のことを彼女と言おうとしたな。それはともかくどうしたものか…)
「はぁ、戦う覚悟がないなら今すぐ消えて下さい。正直言って迷惑です。すみません、他の冒険者でもいいので試験を続けてくれませんか?」
「は、はい、そうですね。至急別の冒険者を...」
「ちょっと待った!あなたにそこまで言われて男として引き下がってられません」
レオンに、言われたのがショックなのか男冒険者は何故かやる気に満ち溢れていた。
「そ、そうですか。ではお願いします」
男冒険者のやる気に少し引き気味で答えた。
「リーダーの方々、握手を交わして下さい」
「レオンと申します。よろしくお願いします」
「えぇ、さっきは悪かったわね。私はエクレよ。こちらもよろしく頼むわ」
魔女らしきローブを着ているエクレが、レオンと握手を交わした。
試合の終了はパーティーの全員の戦闘不可と判断した時点で終了らしい。
勿論、ギブアップも選択として用意されている。
「全く、ライにイナ集中してね」
「「おう(はい)」」
男冒険者は、ライで女冒険者はイナらしい。
「では、準備はよろしいようですね」
お互いの皆、神具を取りだし武器を構えた。
「では、試合開始!!」
その合図と共に会場が揺れるほどの地響きが伝わった。
「ぐぅぅ、重い」
リアムは、ライが振りかざした剣を必死に受け止めたのだ。
「へぇ~、良く俺の攻撃を受け止めたな」
「最初は消えてびっくりしたよ」
リアムが、ライの剣を振り払うとその後ろからルナリアが飛び出しレイピアをライの肩と腹を突いた。
「うぐっ」
「ライ!この」
イナは、受け止められるとは思わず攻撃されたライを援護する為に矢を放つ。
「風よ、彼の者達を守り給え、風の盾」
ミュウが、その矢を防ぐために風の盾を使い、矢を吹き飛ばす。
「へぇ、さっきまでの子供たちとは全く違うってわけね」
エクレは、ライの攻撃を防いでる時点で他の子供と違うことが確信した。
「まず!風よ、我を守り給え、風の盾」
エクレは、咄嗟に魔法を放ち死角から飛んで来た矢を防いだ。
「そういえば、一人いない。魔法で姿を消しているのか?」
エクレは、レオン達のパーティーが5人だということを確認したことを思い出し周りを見渡すが、一人の少女の姿は見えないでいた。
(う~ん、見えてないはずなのに防がれちゃった)
そう魔法で姿を消したマリーであった。
始まりと共にレオンに魔法を付与してもらい姿を消したのだ。
「来てくれ、何もかもを食べる暴食の獣よ、グラトニー」
レオンが詠唱を終えると、レオンの神具の本から黒色の大きな狼が飛び出して来た。
「さぁ、食事の時間だよ」
狼は、レオンの指差す方向に向き、ライを見るといきなり突進をしたのち、エクレの元に凄い勢いで走っていく。
「炎よ、槍の形を模し魔物を貫け、炎の槍」
エクレは、狼に魔法を放つが狼はその魔法を何事もなく食べた。
「嘘!」
魔法で作られた生物の形をしているものは魔法での耐性というのがあまりない。
それを見越してエクレは、魔法を放ったがあっさりと食べられ動揺していた。
「なら、これならどう?雷よ、矢となりて敵を撃て雷の矢」
エクレは、雷魔法を放ち狼に当てるが狼は平然としていた。
「ウオーン!!」
いきなり吠え出す狼にエクレは、驚き思わず尻もちをついたがその瞬間、エクレの目に映ったのは狼の大きな口だった。
「「エクレ(さん)!!」」
ライとイナがエクレのことを心配するが、レオン達は構わず攻撃をする。
「このまま負けてたまるか!!」
「まずい、ルナリア、リアム急いで後ろに下がれ」
レオンは、何が起こるか分かって咄嗟に指示を出すがルナリアは少しだけ遅れた。
ルナリアの持っていたレイピアが一瞬の内に折られたのだ。
「レイピアが!」
そのまま、ルナリアは切られそうになるがレオンが前に出て咄嗟に神具ツクヨミを出し防いだ。
「全く神装を使うなんて予想外だよ」
レオンは、ライの姿を見て言った。
さっきまで、着ていた服とは違い、鎧を着ている。
神装とは、神具の秘めた力によって現れる。
レオンが、あの日の夜に見せたツクヨミに神懸りされた時に着ていた紫色の衣が神装になる。




