29 月夜の天使
土蜘蛛との戦闘が終わると気絶していたジギルが先に目を覚ました。
「ううっ」
「そう無理をするでない。一時的とはいえ魔力を根こそぎ取られたのじゃぞ」
唸りながら、起き上がろうとしていたジギルに言った。
「お前、レオンじゃないな。一体誰だ?」
ジギルは口調ですぐさま中身がレオンでないことを指摘した。
「あぁ、あやつは無事だよ。今は少し儂が借りているだけじゃ」
ジギルはレオン(ツクヨミ)の言葉に戸惑いを見せたが敵意がないと感じたのか安心して一言「そうか」と言って周りを見渡した。
激しい戦闘があったと思われる会場、所々刃物により切られた床や打撃によるひび割れがあった。
「あいつは倒したのか?」
「あの蜘蛛は自害しおった。儂は倒しておらん」
少し不満そうにレオンは言った。
「そうだ!陛下とルナリア第三王女は無事なのか?うっ」
「これ無理をするな!そやつらが誰かは分からんがその辺で伸びておると思うぞ」
ジギルは未だ気絶している人達を見た。
幸いケーニヒはジギルと共に戦っており直ぐに見つけることができたが王女が見当たらなかった。
「ルナリア様がいない‼」
「何じゃと?」
そして、ジギルははもう一人いない人物を思い浮かべた。
この騒ぎを起こした者の一人ディクの姿がどこにもなかったのだ。
「ディクがルナリアを攫ったのか?」
「ディクとは今の儂の体をいたぶっていた者か?」
「あぁそうだ。直ぐに捜索しなければ…」
レオンはその言葉を聞き、バルコニーに出て月に向かって手を翳す。
「月見」
国全体に魔法を掛けた。
「見つけた」
レオンの月見の魔法によってルナリアを背負い走るディクの姿を捉えた。
(ツクヨミ、ディクは僕に任せてくれないか?)
レオンはツクヨミに訴えかけた。
「ふむ、よかろう。後はお主に任せよう。儂の力はいつでも貸してやるわい」
ツクヨミはレオンと交代するとレオンの着ていた着物は元に戻り刀だけを握っていた。
「レオン…なのか?よかった、戻った無事なんだな。先ほどの魔法でルナリアを見つけたのか?」
ジギルはレオンに抱き着き無事だったことを喜んだ後、すぐに切り替えてルナリアについて聞いてきた。
「うん、見つけたよ。だから、今から迎えに行ってくるよ。天使の力」
刀が消え、月の光がその白い翼を照らした。
「う、うぅ」
ジギルと話しているといつの間にかケーニヒも起きていた。
「大体のことは聞こえてきて理解はしたが、その姿のことは後に聞かして貰うとしてディクの神具には気を付けろ。あいつの神具は透明の剣と言って不可視の剣を持っている。この剣はいくら魔力が高くても見ることができないはずだ。あいつの動作に警戒をしておけ」
「わかりました。では、行ってきます」
レオンはケーニヒの話を聞いた後、すぐさま飛びたっていった。
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「はぁ、はぁ。このまま王女を連れて帝国にでも行こう。今の国の状況を帝国に報告したら戦争も起こりえる」
ディクはルナリアを背中からおろし、休憩を挿みながらそんなことを口走る。
そんなことを言い、移動しようとルナリアを背負ようとするがいつの間にかルナリアの姿が消えていた。
「な!ルナリアはどこに?」
「ルナリア様は一旦安全な所に運んだよ」
ディクはそんな聞き覚えがある声に驚いた。
(あのガキの声!一体どこに?ここから王城までだいぶ離れているはずだが…)
「魔法が使えなきゃただの子供、では魔法が使えてる今の僕はあなたにはどのように映っているのですか?」
ディクは声が聞こえる方向に顔を向ける。
白い翼を広げ上空にいるレオンにディクは驚きを隠せなかった。
ディクはレオンの問いに一言で「天使...」と答えるのだった。




