28 禍々しき魔力
「くっ、この!」
土蜘蛛の攻撃は一切当たらず一方的に攻撃を受けていた。
いや、実際には当たっているが水を叩いているかのように手ごたえというものを一切感じていなかった。
「ほれ、ほれどうしたそんなものか?」
レオンの攻撃は止まらず続く。
「仕方ないですね。如何やら使うしかないようですね」
土蜘蛛は再び人の姿に戻り、ある物を取り出した。
「ほう、先ほどの紅い月の魔力を取り込んでいたか…」
「ええ、あなたのせいで本来の半分もありませんがね」
禍々しくも黒く光るその水晶を手に土蜘蛛はそれを飲み込んだ。
土蜘蛛の体は光を放ち、人の上半身と蜘蛛の下半身に変わった。
その姿はギリシャ神話に出てきた魔物アラクネだ。
「ほう、凄まじい魔力じゃな。先ほどのでかぶつより厄介そうじゃな」
「はぁ、はぁ、素晴らしい力です。耐えるので精一杯ですね」
土蜘蛛は少し息切れしながら馴染ませるように手を動かした。
「まぁ、やることは変わらんがな」
レオンは土蜘蛛に近づくが突然動けなくなった。
「これは糸か、いつの間に」
幻月の効果が解け、レオンの姿が一人になった。
「さすがのあなたも張り巡らした糸には当たるようですね」
土蜘蛛の強烈なパンチをまともにくらってしまった。
「ぐふっ」
レオンはその一撃をくらい、血を吐き出す。
月の光でいくら傷を癒そうとも体力は無限ではない。
「流石に身動きが取れないと何もできないようですね。丁度いい、あなたを喰らい更に力を貰いましょうか」
攻撃が当たるようになり土蜘蛛は喜びながら近づいてきた。
「かか、なめるな。氷月」
月の光から次々とつららができ、糸を切られていく。
「なら、そこらにいる人間でも食べるとしますかね」
土蜘蛛はそう言うと魔力を吸われ倒れている者に手をのばした。
「これは一体どうなっている!」
横たわって居た者に手をかけるが土蜘蛛は掴むことすらできなかった。
「鏡花水月」
目には見えるが触れることができない、それが結界魔法・鏡花水月の能力
今までの攻撃は全てこの結界魔法により一切のダメージを受けていなかったが、結界を広げるためにわざと一撃を喰らった。
対象を自分から会場の人間全体に変えたのだった。
「儂を倒すまでこの会場の人間に一切手を出させないぞ」
レオンは刀を月に照らすと刀が見えなくなった。
「新月」
確かにその手には握られているはずだが目には見えない。
そんな、いつ切られるか分からないその恐怖感が土蜘蛛を襲う。
「何に怯えておる?」
土蜘蛛はレオンの言葉に反射的に体が動き距離をあけた。
(何を怯えてるの私また糸を張ればいい話)
そんな考えをするがレオンに一気に距離を詰められ右腕を切られていた。
「あぁぁぁぁぁ」
右腕から血が吹き出、土蜘蛛の叫びが会場に響く。
「はぁ、はぁ、こうなったらあの方に…」
土蜘蛛は自分の体の中心を心臓を左手で突き刺した。
「貴様、何をする気だ!」
突然の土蜘蛛の行為にレオンは驚いたが土蜘蛛から禍々しい魔力が溢れてきた。
その魔力の塊はそのまま窓を壊しどこかへ飛んで行ってしまった。
「こやつ、自分の命を犠牲に一体何をしたんだ?」
最後に土蜘蛛のやった行為は分からないまま、土蜘蛛は動かなくなった。
レオン(ツクヨミ)は不満を残し、土蜘蛛との戦いが終わるのであった。
遅れてしまい申し訳ございません。
最近リアルが忙しくなり投稿が遅れてしまいました。
次回は早めに投稿できるように頑張ります!




