25 内通者
「あぁあぁ私の大切な大切な」
巨大な蜘蛛は燃え続けやがて動かなくなった。
「許さない許さない、あなただけは絶対に殺す!」
メイドはそう言うと人型の姿から先程の蜘蛛より大きい蜘蛛に変化していった。
否、元の姿に戻ったと言う方が正しい。
彼女が神具を出さなかった理由、それは彼女が魔物であったからだ。
神具とは神が人間のみに与えた恩恵だからだ。
「さぁ、第二ラウンドと行きましょうか?」
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結界魔法・千本桜の中にて
「いやはや、凄いものですなぁ」
「えぇ、ここまで美しい魔法を見るの初めてだ」
「あの二人の踊りも素晴らしいものだ」
そんな賞賛の声が聞こえる。
「楽しいですか?ルナリア様」
「ええ、とっても」
ルナリアは笑顔で答えた。
楽しい?そんな感情、今の状況で...
感情を押し殺す、この目を宿したときから私は…
祝福の儀、その時に神具と別にこの目を与えられた。
ステータス上のその魔眼の名はグシオンの眼と呼ばれるものだった。
ルナリアは思わずレオンの心を覗き込んだ。
(さて、周りの人の安全は確保できたはずだ。とりあいず、王女様を安心させて、内通者がいるかもしれないから警戒もしないと)
ルナリアはレオンの心を見たことに後悔した。
今の状況で、ここまで冷静に他人のことを優先している。
私のことを思い、声をかける彼を…
レオンはそんな思いに気づかず内通者を探していた。
あれが敵だとしたら、服などの準備を手伝った仲間がいるはずだ。
ルナリアはレオンに申し訳なく思い、ルナリア自身も内通者がいるかどうかその目で探していた。
(ふはは、もうすぐルナリアを我が手に、この国も私のものに…ぐふふふ)
ルナリアは思わず腕を強く握ってしまった。
「どうかされましたか?」
「な、内通者と思う方を見つけました」
二人は小声で話を続ける。
「どなたかわかりますか?」
「あそこでニヤついている人です」
ルナリアは目線で訴えるようにその者に目を向けた。
見つけたのはいいがどうやって捕まえようか?
大勢の人の前で突然騒ぎを起こしたらパニック状態になってしまう。
「私に考えがあります」
考え込んでいたレオンにルナリアは提案を話した。
「それで行こうか」
音 楽が最終曲に入り会場を踊る人が多くなっていた。
大人も二人の踊りに影響されたのか周りの子供も一緒に踊り始める。
(いよいよだ。このパーティーが終わった時にこの国は終わりを迎える)
その者は不気味な笑顔を浮かべ、ただその時を待っていた。




