24 父親の強さ
「くっ、さすがはこの国の王と炎帝と呼ばれていた方ですね」
メイドは二人の卓越した連携に圧倒されていた。
否、確かに押され気味ではあるが二対一という状況で未だ持ちこたえているメイドもおかしなことだ。
「はあぁ!」
ジギルは剣を背後振りかざすがメイドはまるで来ることが分かっているように躱す。
「一体どういうことだ?」
剣が当たらないまるで動きが全て予想されているかのように…
「ふふ、如何やら私の糸が見えたことは単なる偶然のようですね」
メイドは余裕の表情をしながらいった。
「ん!」
突如、体が何かに拘束されるかのようにケーニヒは動けなくなっていた。
「どうした?ケーニヒ!」
「ちょっと、動けなくしただけですよ。まぁ王様あとで殺すとして先にあなたから殺してあげますよ」
メイドは笑顔でそういうと先ほどの動きとはまるで違い一気に攻撃的になった。
「さぁ、さぁ、どうしたのですか?先ほどとは動きが違いすぎて驚きましたか?」
メイドが煽るように言ってくる。
何故いきなり動けなくなってしまったんだ?
それより何故彼女は神具を出さない?
ジギルは見えない糸のことを思い出す。
「なるほど、ケーニヒが動けなくなったのはそういうことか」
そういうと、ジギルは右手にしていた指輪を外す。
指輪を外した瞬間、ジギルの周りに炎が広がる。
「この魔力量は!?」
メイドはジギルの魔力量が一気に跳ね上がり肌にピリピリとする痛みを感じていた。
「さて、これがその糸か…」
ジギルの周りの炎により糸が焼き切れていく。
「ふぅ~これで動けるようになったか」
ケーニヒは余裕の表情を見せていた。
「自由になったぐらいで勝ったつもりですか?さぁ、降りて来なさい」
メイドは笑顔でそういうと上から黒い影が降って来た。
その黒い影の正体は巨大な蜘蛛だった。
召喚魔法、その人の魔力量によって召喚されるが個体種はバラバラで何がでるかはわからない。
契約を施してしまえば契約したものを再度召喚することができる。
「召喚魔法か、これは厄介だな」
ジギルは巨大な蜘蛛を前にして少し怖気づいてしまう。
「なら私が代わりにやろうか?」
「いえ、折角、魔力を開放したので私がやります」
ケーニヒの一声でジギルの緊張がほぐれた。
「たった一人で私と戦うなんて全く、侮辱しているのですか?」
「侮辱なんてしていないさ、少なくとも指輪を外したのがその証拠だ」
ジギルは先ほどまでは違う真剣な顔つきになった。
「さぁ、私が炎帝と言われる由縁の魔法を見せてやろう。燃え広がれ炎よ、炎庭」
炎帝、ジギルオリジナルの結界魔法の炎庭からもじった名前である。
その結界魔法の中は凄まじい炎に包まれている。
炎でできた庭園、花も木々も全て炎でできている。
そして、何より不思議なのがそんな炎で包まれているのに暑さを感じない。
「これは見事なものですね」
「関心している暇があるのか?」
突如として背後からジギルが現れ巨大な蜘蛛に大きく剣を振りかざす。
蜘蛛の背中を切りつけた部分から炎が舞い上がる。
「いつの間に!彼の者の炎を消し傷を癒せ水の癒し」
メイドは蜘蛛に回復魔法と水魔法の合成魔法をかけるが蜘蛛の背中から燃える炎は一向に消える素振りを見せない。
切りつけたあと消えることない炎、そうこれがこの結界魔法の最大の特徴、その炎は敵が灰になるまで燃え続ける。
あらゆる魔法を使ってもその炎を消すことができない。
ジギルの燃え続ける炎帝の剣との効力はすさまじいものだ。
炎に包みこまれて戦う姿を見て、皆、口をそろえて出た言葉が炎帝だった。




