22 夜桜の舞
「まずは報告が先だがルナリアを連れて王様の所に行くか」
レオンは落ち着きを取り戻し状況を報告する為に王様のところに行くことにした。
いきなり王女様を連れて歩くのは流石にまずい気がするな。
そんなことを考えているとパーティー会場からは音楽が流れ始めた。
そうだ、あの方法なら違和感がないな。
目立ってしまうが仕方ない。
「ルナリア様、どうか私と踊ってくれませんか?」
レオンは手を差し出し笑顔でそう言った。
その言葉にルナリアの周りにいたものはざわめき出した。
5歳児の子供が舞踏会の踊りを覚えているわけがないからだ。
大人たちはこぞって悔しがっていたがレオンはそれを無視していた。
「えっと、その私は...」
「ふっ、ルナリア踊ってきなさい。きっと彼がエスコートをしてくれるさ」
「わかりました。お父様」
ケーニヒが後押しするように言った。
「ケーニヒ陛下1つお許し願いたいことがあります」
「ん?なんだ?」
「この会場で踊るにはいささか華が足りないと思われますので1つ私が魔法を使いたいと思っています」
レオンはケーニヒに訴えかけてるように言った。
「ふむ、いいだろう、お前が望む舞台を作れ」
ケーニヒも何かを察するようレオンの言葉を受け止めレオンとの思考伝達を繋いだ。
『ケーニヒ陛下、会場の天井に大量の蜘蛛の巣が張り巡らされています。』
『何⁉︎私には何も見ないぞ』
『恐らくですが魔力が高いものにしか見えないようになっているのだと思います』
ケーニヒは相変わらずのポーカーフェイスで顔に驚きの表情はないが内心かなり焦っていた。
『私が魔法で蜘蛛の巣を除去するのでそれに気づいたものが襲ってくる可能性があるのでそれの警戒に専念してください』
『了解した、ジギルも頼むぞ』
『承知しました』
どうやら思考伝達はケーニヒが行うため本人がいないと成り立たないようだ。
さてと、舞台を整えないとな...
「月の光に妖しく照らされ、その姿を魅せよ、夜桜」
その詠唱ともに桜の花が舞い散り会場に月の光に照らされピンク色に光る桜の木が現れた。
会場の天窓に映る月の光を集め、桜に当てただけのものだが、夜に見る桜は朝や昼の桜とはまた違いその儚げに色づくピンク色の色合いが思わず見入ってしまうほどの美しさがある。
人々はその桜に魅了され立派に咲き開く桜の方に目が移る。
「さぁ、踊りましょうか」
ルナリアはその声に呼び戻され思わず手を握ってしまった。
桜の木の下、2人が踊る姿はとても美しく、ターンをすると同時に舞う桜の花びらが美しさが更に増す。
「見たかったんでしょ、この景色を、まぁ昼ではないですけど」
レオンは踊りながらルナリアに聞こえるように言った。
「どうして‼︎」
その言葉を聞いて驚いたルナリアが言った。
「ルミお姉ちゃんと戦っている時に体を乗り出して観ているのが見えましたから」
「見えていたんですね...」
照れたようにルナリアはいい、レオンは笑顔を浮かべなら桜と共に踊る。
その桜が上の蜘蛛の巣まで届くと蜘蛛の巣が次々と切れていき消えていった。
桜花の刃、人にはほとんど害はないものになっているが糸程度なら切ることができるものとなっている。
(一体どうなっている?何故魔法が消えていく?)
そんな会場の中1人、踊っている2人を見ずに、上の蜘蛛の巣は見ている者が焦っていた。




