閑話 裕治が遺したもの真の意味
裕治が死んでから10日が経ったあと、その葬儀には沢山の人が集まっていた。
学生時代にクラブのマネージャーみたいなことをしていた彼だからこそ、ここまで人が集まったのだろうか、彼の人の良さだろうか、分からないが大勢の人が彼に支えられ、助けられ、今ここにいるのは確かだった。
皆、涙を流し、彼を見送っていった。
この私、白鷺 三由栞も例外ではなく、葬儀が終わり運ばれていった瞬間に年甲斐もなく大泣きをしてしまった。
クラス1の美人とか、勝手に決められ、男子に言い寄られ、女子からは嫌われていた者は彼によって支えられ助けられた1人であった。
彼との出会いによっていじめが減り、男子にも言い寄られなくなり、友達も増えた。
彼が遺したものが今の私がある...
そんな私は彼の両親からある遺書を受け取っていた。
彼の遺品整理の時に出てきたものらしい。
元々、家が隣同士ということで結構頻繁に彼の両親とも会っていた。
その影響か、彼の両親は私にこの遺書を渡してきたのだ。
なんで、こんな物を書いていたのだろうか?
死ぬことがわかっていたのだろうか?
もしかして、この死は自殺なのだろうか?
そんなことが頭の中によぎった。
私はその遺書を読むことが怖かったが彼が何故これを遺したのか気になりその遺書を読んだ。
『拝啓、皆さま先立つ不幸を許して下さい。
これを見ているということはきっと私は死んでいるであろう。
誰が見ているのかはわからないが、これを読んでも決して泣かないで下さい。
まず一つ、これはアメリカのとある友人によってのアドバイスで書いたものであり、元々死ぬつもりで書いているものではないことを言っておこう。
たとえ死んだとしても私は誰かを救って死にたいと思っているからだ。私ごときの命でどれだけの人が救えるかはわからないが私はその為にこの人生を使う。』
いつもの僕という一人称からずれ堅苦しい感じの文章と私たち元クラスメイト全員に向けての言葉が沢山書いてあった。
私はこの遺書を写真に撮り、元クラスメイト全員に送った。
だが、この違和感はなんだろうか?
彼がこれだけの目的でこんな物を書くとは思わない。
私はそんな疑問を抱きながら昔のよく私と裕治を含む5人で遊んでいたメンバーと共に相談することにした。
葬儀をしてから3日後、ようやく心が落ち着き、3人と集まることにした。
「おう、久しぶりと言ってもあの葬儀ぶりだけどな」
待ち合わせ場所の時計台の下にいたのは堅いがいい男性だった。
彼は山岡 龍ヶ崎今現在は柔道のオリンピック選手に抜擢されるほどの逸材である。
「ふっ、相変わらず元気そうだな」
もう1人眼鏡をかけインテリ感が溢れるスーツ姿の男性は神城 稔。
現在会社を設立し、一流の企業家となっている。たった一年ばかりでここまで成り上がった者として経営会の注目の的となっている。
「お、お待たせ〜、はぁ、はぁ、疲れた〜」
少し遅れてやってきたのは私の大親友であり、今はスーパーモデルとまで言われている小鳥遊 由香だ。
「全員揃ったし喫茶店でも、行こうか。そっちの方が話しやすいね。」
「賛成〜」
「そうだな」
「わかった」
各々が返事をし、4人は近くの喫茶店に入っていった。
私は早速、彼の遺書をみんなに見せた。
「これがそうか...」
「やっぱり、これ見るとまた涙が...」
由香がまた泣き出しそうになった。
「でだ、これがどこか変なんだ?あいつは変わったやつだが、別におかしなことなんてないと思うが?」
龍ヶ崎が不思議そうに尋ねる。
「彼がこの言葉だけの理由で残したりすると思うの?きっとまだ意味があるはずよ、このアメリカの友人に話せたら手取り早いんだけどね。」
「ん?携帯の連絡先とかになかったの?」
そう由香が尋ねた。
「ふ今時なら携帯の方にもパスワードを掛けるだろうが。まぁ、確かにアメリカの友人とやらが鍵になりそうだな。」
インテリ系の稔はやはり考えるのが早い。
冷静な判断をしている。
「そう、このパスワードが分かればいいんだけどね。」
「なぁ、その遺書、俺にも、もっと良く見してくれよ」
「えぇ、わかったわ。」
三由栞は遺書を龍ヶ崎に渡した。
「ん?」
「どうしたんだ?」
「いや、渡された時にこの手紙なんか酸っぱいというか柑橘系の匂いがするなと思ったんだよ」
龍ヶ崎が言った途端、残りの3人も匂いを嗅いだ。
「確かに、柑橘系の匂いがする」
「なんかみかんぽいかな?」
「これは、写真では流石に分からなかったな」
柑橘系の香りがする紙か…あ、もしかして
「なるほど、わかったわ。一度外に出ましょうか」
「え?わかったの?」
由香が三由栞の発言に驚いた。
「まぁ、多分だけど、とりあえず水がある場所に行こうか」
一同は三由栞の言われるがまま外に出て、河川敷まで歩いて来た。
「さてと、龍ヶ崎君ライター持ってたよね。少し貸して頂戴」
「あぁ」
龍ヶ崎はポケットに入っていたライターを三由栞に渡した。
「まさか燃やすの?」
「火?なるほど、炙り出しか」
稔もどうやら気がついた。
炙り出し、ミステリー映画とかに出てくる、火を紙の近くに寄せ、酸化などの科学反応で文字が浮かび上がってくるものだ。
昔ではみかんの搾り汁などで遊びとしてやっていた人もいたらしい。
浮かび上がった文字にはパスワードらしきものが書かれていた。
「おぉ〜すごい」
大興奮の由香であった。
やっと何か手がかりが掴めそうだ。
彼がこれを遺した真の意味に…
まずは一言、すみません。
前の後書きに閑話を挟むとゆう事を書けばよかったと反省しています。
次から本編に戻ります。
ちなみに、次から次章になります。
よかったら読んで言ってください。




