10 聖女伝説の始まり?
急いで冒険者ギルドから走って来た男はエイルさんに事の経緯を話し急いで冒険者ギルドに向かって行った。
私たちも冒険者ギルド用があるのでエイルさんを追いかけるかたちで向かって行った。
「3人はここで待っててくれる?」
「うん」「わかった」「ん」
マリー、リアム、ミュウの3人を冒険者ギルドの前に待たせた。
流石に、子供にグロを見せるわけにいかない。
自分もそうだけどね。
「おぉ、レオン戻ったか」
汗だくになりながら、ジギルは治療の手伝いをしていた。
どうやら魔物のスタンピードが起こりそれに対処していた冒険者が怪我をしたようだ。
元々、見習いの神官が対処していたらしいが怪我人が多く魔力が枯渇したようだ。
それで、ジギルはヒールを使えないが魔力を見習い神官に分け与えていたらしい。
それでもまだ怪我人が多すぎる、ざっと数えたが20人は超えている。
「これは一体何があったんですか?」
エイルがどうやらギルド長に話を聞いているようだ。
「オーガジェネラルが現れたんだよ、俺たちでなんとかオーガジェネラルは倒したが、ほとんど冒険者は死んでしまった。」
ギルド長は握り拳を作り、悔し涙を流していた。
「切り傷に打撲に骨折、内臓自体潰れているな。破損箇所がないだけましか...」
レオンは怪我をして寝ている人達を見て回っていた。
エルフが襲われていた狼の多さも納得だな。
臭い袋にスタンピードが重なって多かったのか...
「これは私でも手に負えないわ。一人一人治療してる間に死んでしまう可能性がある。残念だけど、全員は救えない。」
「そんな、嘘だろ。神官様なんだろ俺たちの仲間を救ってくれよ」
エイルの話しを聞いて怒った冒険者がエイルの肩を掴んだ。
「無理なものは無理よ。諦めなさい」
「そんな...」「嘘だろ」「嫌よ」
エイルの無慈悲な発言に冒険者達は泣き崩れる。
「うるさい!!喚くぐらいならこの場から今すぐ消えろ!!」
レオンがうだうだと嘆いている冒険者達に向かって言った。
子供が言ったとは思えないその言葉に辺りは静まりかえった。
「お父様、今すぐあのエルフを連れて来て」
「わかった、すぐ連れてこよう」
ジギルはレオンの言葉の意味を汲み取り、事情聴取の為の部屋に向かって行った。
ジギルはわかったのだ。
レオンは冒険者を助けようとしていると...
「見習い神官さん、一番重傷の人を一箇所に集めて、
エイルさんは止血を優先してください。死んだら救うことはできませんので。」
「はい」
「わかったわ」
レオンは次々と指示を出していく。
「何ボサってしてるのこの場から消えないなら手伝って」
その指示に呆気にとられながら冒険者達は黙って見習い神官を手伝い始めた。
「レオン連れて来たぞ」
「なんなんですか?て、これは?」
エルフ耳が垂れながらバインドで縛られたエルフが来た。
エルフどうやらこの状況知らなかったらしい。
「条件を呑んだらその拘束を解き、罪を無かったことにする」
「ほ、本当ですか?で条件は?私回復使えませんよ」
「僕に魔力を足りなくなったら分けてくれ」
「エルフの魔力は確かに多いですけど一般の人間に与えてしまったら多すぎて魔力暴走が起きますよ」
「それなら、問題ない。構わず僕に魔力を与えろ。例え死んだとしてもあなたに責任はない」
「わかりました、死んでも知りませんからね」
エルフはそう言った後に、レオンはバインドの拘束を解いた。
「後、倒れたら僕の体をよろしくねエルフさん」
「わ、わかりました」
この人数では救えないとエイルさんが言った。
これは今の回復魔法では無理だということだ。
だったら新しく作ればいいだけの話、魔法はイメージで無限の可能性を秘めていると創造神はいった。
創造神の言葉を思い出せ、本に必ずあるもの、無名の魔道書...
神具は持ち主と共に成長する...
まるで物語みたいだな。物語...始まり...
そういうことか創造神
移動させ終わったか、よし
「さぁ、物語を始めよう、プロローグ」
その言葉と共にレオンの前に一冊の本が現れ本が開かれていく。
「一番重傷なのはこいつらか?」
「はい」
重傷なのは3人、1人は腕が取れかけ、1は人頭から血が流れ続け、1人は足が完全に取れている。
足や腕が残っているだけマシか、流石に無かったら治さない。
頭の血はエイルさんが止めたが脳のダメージが残っているのか...
治癒の力、自然神を思い出せ。
「エルフさんお願いします」
「は、はい」
エルフは森に住む者たちだ。
木々の匂い自然の匂いがレオンの脳裏に浮かんでくる。
ヒールから派生...魔法を再構築...
「命の恵みは母なる大地から生まれるものなり、汝我の声を聞いたならばそのページを開き給え、母なる大地の神の書物ガイア」
レオンが唱えるとレオンの後ろに蜃気楼の木が現れた。
詠唱をしている時間はない極限まで魔力を絞り出せ
「生命の雫」
蜃気楼の木から葉をつたり、一滴ずつ3人の身体に落ち、そしてまるで何事もなかったように体が元に戻っていった。
「す、すごい」
見習い神官はその回復魔法に驚いている。
取れた腕がなどを戻すのには相当な魔力を必要と知っているからだ。
普通のヒールでは腕は元には戻らないのだ。
少しふらつくが休んでる暇はない。
「エルフさん」
「は、はい」
すかさずエルフの女性から魔力を流し込まれる。
「生命の息吹」
蜃気楼の木の周りから風吹き、怪我人の傷が塞がっていった。
「これほどの人数を一気に...」
その光景にエイルまでもが驚いていた。
怪我人の冒険者は意識を取り戻し
仲間の冒険者たちは皆泣き喜び、仲間の生存を祝っていた。
「よかった、たす...け..れた」
魔力を使い果たし、レオンはゆっくり目を閉じた。
「よく頑張ったなレオン」
頭を優しく撫でながらジギルはレオンの寝顔を見るのだった。




