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リリィ、僕を殺してくれ  作者: 芳野よだか
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春の異分子 act.小指

中学生の頃先生に「小指さんはあまり勉強は得意ではないかもしれません」とそういわれた時に、隣にいたいつもより少しおしゃれをしたママが少し落ち込んだ後、漫画だったら大きな吹き出しが出るくらいに、大きなため息をついたのを覚えている。

そして、ちょっと私の顔を見た後にさっと目線をそらしたのもはっきりと覚えている。あの時、少しししか私に向けられなかったはずの目線は、すごくチクチクと痛くて針に刺されたみたいだったから。



 窓の外では蝉が鳴いていてエアコンの効いていない教室で、昨日衣替えしたばかりの夏服にポトリと汗が落ちて、水玉模様をつくる。




「私もこの子は勉強の方では期待できないかな、なんて思ってたんです。それよりも他のこと…たとえば、就職とかしたりとか…そういうのも、難しいようなら家政科とかでもいいかなって」


「ええ、この高校の特別科なら内申的にも問題なく…推薦でも行けるんじゃないかなと思うんですけどね、小花。お前のことなんだから、少しは意見を出しなさい」


「そうよ、ゆびちゃん。ボーっとしてないで、自分のことなんだから、少しはどうしたいか言いなさい」


 教室は暑い。

でも外はもっと熱くて、つらいに決まってる。なのに、私はどうしてもここから逃げ出して、外でもどこでもいいから、走っていきたい気分だった。

ママと先生は、名前も知らない高校のパンフレットの小さく載った特別科の紹介のところを、一生懸命に見つめていた。

 まだ夏だし、私勉強頑張るよとか、私やりたいことがあってとか言えたらいいのに、言いたいことがのどに、ぺったりと張り付いて出てこない。


「わたしもそのこうこうでいいとおもってます。すいせんがんばります」


絞り出した自分の声は聞いたことのない声ですごく、気持ち悪かった。






「指ちゃん」


 始業式だから薄っぺらくて、でも私には肩紐が長すぎてずり落ちてくるスクールバッグの位置を直して顔を上げると、相変わらずきっちりと制服を着こなして、いつもより緩めに髪の毛を編み込んで、カチューシャみたいにしているたまきちゃんがいた。

環ちゃんの色素の薄い瞳が、太陽の光をうけて、またキラキラしていて、少し長めのスカートから覗く足が白く光っていた。


「おはようたまきちゃん。今日は早いんだね」


「ヒント、今日は入学式」


「え?」


「ヒント、新入部員」


 たまきちゃんの細い指が数えるように一本、二本とたっていく。たまきちゃんの瞳がどこか攻撃するように私を見つめていて、びっくりした私は肩にかかるスクールバッグの紐をぎゅっと握った。


「えーと、クイズ?」


「ヒント、春休み前の部活の黒板の真ん中にかいてあったこと」


 そのたまきちゃんのことばをきいて私は大きく息を吸って、それから吐いた。

思い出したのはまだ桜なんて咲きかけだった頃の最期の部活で黒板に書かれていた日付と、時間。それから、その前に置かれていたチラシ。

 新入生歓迎!部員募集の文字と、たまきちゃんのかいたりぼんとかうさぎのイラストと、いちごちゃんのかいた可愛い女の子の笑顔。


「あ!チラシ配り!」


「ようやく思い出したか…指ちゃんのノルマ一応ちょっとは配っといたけど、今からでも、参戦する?」


「うう…します。させていただきます」


 たまきちゃんは呆れたようにちょっと笑ってそのあともう一度ニンマリと笑って、残り5枚くらいのチラシを渡してくれた。

この時にもし私が断ってたら、たまきちゃんはどんな顔をしたんだろう。怒ったんだろうか。呆れたのかな。と考えて、もう呆れられてるよなあって、結論をだして私は荷物を急いで教室に置きにいくために、チラシを持って、教室に走りだした。


 教室には相変わらず女の子の匂いとかそういうのが散らばっていて、息を止めないとなにかに飲まれてしまう気がした。




 来るのが遅かったからか新入生はまばらで、二枚なんとか配ることができただけだった。

他の部活もだいたい引き上げていて、どこかの部活の男子がじゃれるように騒いでいて、ちょっと居心地の悪い私は、人のくる気配もない門の方に近づくしかなかった。

春の重たい空気を含んだ長いスカートが足にまとわりついて、歩き辛い。


 門の付近には門を閉めようかと悩んでいる先生と、私しかいなくて、新入生が入ってくる気配はなかった。

 私の胸の前に抱かれたチラシはシワが入ってしまって、自分が誰にももらわれることはないことを、察したように風に寂しくなびく。


 そんな時に風を裂くように門をくぐる足音がして、うつむいていた視線をあげる。

 あ、と声がでてそれはその人に届いたのか、目線がこちらをむく。

 ゆるいカールのかかったクリーム色に近い色素の薄い髪を片方耳にかけて、五月みたいに爽やかな色の新緑を思わせる目で、こちらを見つめるその男の子は、テレビの向こうにいる人みたいに顔が整っていた。

 男の人に対して綺麗だなって、言葉を使いそうになって慌てて口を閉じる。


「おはようございます」


 目があって数秒、ほのかに色づいた唇をゆっくりと動かして、その人が言葉を紡ぐ。

 すごく事務的なのにそんな風に挨拶されたのは久しぶりで、わたしはうまく返せずに、音にならない声を出すしかなかった。

 その言葉の後またきゅっと硬結びみたいに唇を閉じられて、目線がわたしから逸らされて、前をまっすぐに捉えている。

 もうわたしになんて興味がないと、全身で言われてるみたいだった。


「お、おはようございます!!これ!良かったらどうぞ」


「うぐ」


 思いきり胸にチラシを当てると、男の人が低い声をだす。思ったより力が強く入ってしまったみたいで、わたしは頭の先から血がさーっと下がっていく感じがした。


「ご、ごめんなさい!!!!!痛かったですよね!」


「そこそこ痛かった。これ、何?」


「え、えっと!美術部です!良かったら見学に来てください!」


 しわくちゃになったチラシを指で伸ばしながら、じっくりと見つめている。

イラスト描いたのがわたしじゃなくて、よかったなあと思った。こんなに目の前でじっくりと見つめられるなんて、恥ずかしさで死んでしまう。


「かわいいね」


「え!?う、うん。これ描いたのは、たまきちゃんっていう子なんだけど…」


「またあんたの描いたやつもみせてよ」


 そういって丁寧に四つに折った紙をポケットにしまって、男の子はまたまっすぐに前を向いて歩き出す。

春の重たく絡まる風なんて、関係ないと言わんばかりに、早い速度で校門から去っていく。

 校門で、それをぼんやりと見つめるわたしの足には、また重たくて暖かい春の風がまとわりついて、それから、桜の花びらをどこかに運んでいった。


その時、急に後ろから肩を掴まれる。


えっと声をあげようとして、その声は音にならないまま、どこかに飛んでいってしまう。振り向くと、ここ数ヶ月で見慣れた男の人が立っていた。

ポロシャツとジーパンをきっちりと着こなしたその人は、清潔感というものを全身で表現していた。そして、怖いくらいに貼り付けたような笑顔でこちらをみている。


「こんにちはあ、今日は始業式?昨日入学式だったから、今日は君たちの初めての登校になるのかな」


「明智さん…」


明智さんは、去年からこうやって女の子の生徒をみると絡んでくる人で、クラスでも有名だ。

私以外の生徒は基本的に明智さんのことは無視することができるけど、鈍臭い私はいつも逃げることができずに、明智さんに捕まって彼の思うままの筋書き通りに話を進められてしまう。

明智さんははじめて会ったときに、丁寧に自分の身分を示す名刺を渡してきた。

私は制服が身分証がわりのようなものだから、明智さんは私のことなんて私が自分を見せつける前から知っていた。

彼はどこかの大人が暇つぶしで読むような雑誌の記者で、私は彼の取材対象だった。


「何さんだったかな?えーと…小花さんだったよね。最近の学校はどう?いじめとかはない?ああ、元から君たちにはそんなものないんだっけ」


「あ、の…わ、私もう行かないと」


「君がまだ隠してることがあること、俺たち大人はみんな知っているよ」


そう言って、明智さんの腕がゆっくりと私の腕を掴む。

ぬるいお湯に手をつけた時のようなまとわりつく感じがする。そこからは逃げられないような、気持ちの悪い温度が布越しに伝わってくる。


「わ、たしは」


「灰村さんのいない春はどう?みんな笑顔だった?それとも、悲しむフリでもしていた?」


桜の匂いに混じって、明智さんのタバコの匂いと教室で嗅いだ女の子の匂いが混ざりあう。混ざり合って、やがてあの冬に嗅いだ線香の匂いになっていくような、そんな気がした。


「やめといたら?不法侵入でしょ」


明智さんのまとわりつくような腕が強引に離される。明智さんが驚いたように私の横に立つ人を見つめる。それは、さっきの少年だった。


「あれ、君は確か」


明智さんはなにかを思い出したいように眉をひそめる。男の子はそんな明智さんのことはちっとも気にしてないように、明智さんの腕を捨てるように離す。


「scoopの記者の人だろ?流石にここまで入ってくるのはまずいんじゃない。ここは、校内。関係者以外立ち入り禁止。あんたが関係者だとは俺は思えないけど」


「なかなか痛いところを突くね。聞きたいことを聞けたら、すぐにでていくよ。」


その視線はもう男の子から離れていて、私にうつっていた。

舐め回すような視線は気持ちが悪い。それでいて、その目の奥からはどんな感情も読み取ることができない。


「聞きたいこと?去年の冬からこの学校の周りうろついて、聞きたいことなんてだいたい聞き回ったんじゃないですか。」


まるで去年の冬からこの学校にいたように男の子はそう告げる。

見覚えのない人だったから、新入生だと思い込んでいたけど、もしかしたらずっといたのだろうか。

あの冬、明智さんみたいな大人が先生に止められるのも気にせずに、ハイエナみたいに貼り付けた笑顔で、校門の外にたくさん立っていたあの冬を彼は知っているのだろうか。


「俺はただ、灰村さんのいない春をみんながどんな風に過ごしているかなって。心配できたんだ」


「灰村さん?」


男の子は不思議そうに明智さんをみつめて、ゆっくりと息を吐く。

心臓が脈打つのがわかる。その名前を聞くたびに私の心臓は逆向きになってしまうような気がする。真逆に血液を送り出しているような気がする。


「灰村百合子…あんたたちの記事では、飛び降りたって書いてあった。それならただの自殺だ。それにあの事件はもう、解決した」


「君はあの事件に詳しくはないようだね。それだけじゃないんだよ。俺はね、この事件にはもっとなにか」


「何かあったとしても。あんたは部外者だ」


それだけ告げて男の子はスマホを取り出して、番号を打ち込む。そして、受話器のマークを押す前の画面を明智さんに見せつけるように掲げる。それは、警察に繋がる番号だった。

明智さんは、困ったように笑って私に向けて手をふると、去っていった。

男の子はその後ろ姿を見つめて、それから私には見向きもしないで、校舎の方へ歩いていく。

私はどうしていいかわからずに、胸に抱いたチラシに力を込める。

ザワザワと風がなって、桜の花びらを散らしていた。





「星ヶ丘高校は、普通科と特別科の二つに分かれていて、普通科は一クラス男子生徒30人の六クラス、特別科は一クラス女子生徒30人の一クラス。

 普通科は男子生徒だけの募集だけど、特別科は男子もオーケーなのにいつも女子だけになっちゃうんですよね。ハーレムなのにね。」


 と、校長先生が毎年言ってるらしい学校紹介を言ってる間にも遠くの席にいる一年生はソワソワとしていて、女の子たちのなかには肩身が狭そうにしている子もいた。

 わたしも、去年はそうだったなあ。とぼんやりと思う。

空調があまりきいてない体育館は少し蒸し暑くて、横に座るたまきちゃんの白い首にたらりと一筋の汗が垂れて、制服の中に消えていく。

 わたしは、さっきのチラシの男の子を探したけど、一年生の普通科の列はすごく遠くて、何も見えなかった。もしかしたら在校生なのかもしれないけど、無数にいる人間の中で彼だけを見つけるのは難しかった。

 

遠くを見つめるわたしを環ちゃんが不思議そうに見つめた後、また視線を前に戻す。

 挙動不審かもしれないし、やめようと決めてわたしもいつもの挨拶をする校長先生を、見つめることにした。


 ガラリと、体育館の後ろ側の扉が開く。

 春の空気をまとった扉は少し重たそうに音を上げている。何人かが一度扉の方を見て、すぐに前に目線を戻す。

 わたしも遅れてきた新入生かと思って、扉の方をむく。

だけどそこにはあの時の男の子がいて一度だけ辺りを見渡して、またあの時と同じ速度で迷いなく、生徒の列の方に向かっていく。

 わたしはその光景からどうしても目を離せなくて、ずっと見つめていた。

 男の子は新入生の一年生の列の方には行かずに、私たちの列の一番後ろにあったパイプイスに静かに座る。

何人かの話し声が聞こえて、ざわつき出すのがわかる。

どうしてここに座るのかとか、誰なのかとか。

気にもとめていなかった一つ余分のパイプ椅子に、いきなり座った男の子にみんな驚いて、注目して、好き勝手な考えを矢みたいに、たくさん飛ばし始める。

 パイプ椅子が急に王様の座る玉座みたいに見えてきて、一番王様のはずの校長先生には誰も注目していなかった。

 先生の困ったような咳払いと、注意する声でみんな名残惜しそうに、その玉座から目を離していく。

離れていくのに、わたしはどうしても離れられなくて、ずっと男の子の方を見つめていて、たまきちゃんがわたしの肩を叩くまでずっとみつめてしまっていた。


「みすぎだよ」


 そうたまきちゃんが呆れたようにいったのと、校長先生がお辞儀するのは同じタイミングだった。一瞬、マイクのキーンとした音が響いてすぐに収まって、また次へと話が繋がっていった。





 女の子らしい空気とかそういうもので、満たされた教室の一番隅の一番前の席にその人は、異物みたいにちょこんと座っていた。

オセロの番の黒ばっかりのところに、端っこだけ残った白みたいだった。

 ひっくり返る前の白色。


たまきちゃんが肩まである髪の毛の一房を掴んでいじりながらその人を、目を細めてみつめている。



「男?男がなんで?男が特別科?なんで?」


「入ってもいいってさっき校長先生がいってたよ」


「そうだけど!そうだけど〜っ…入らないでしょ普通は」


「うん、わたしもそう思うけど、あそこに座ってるってことはそうなのかなあ」


「うー…でもそんな簡単に…受け入れられないでしょ」



 たまきちゃんの瞳には嫌だなって、感情が透けているようで、わたしは辺りを見渡す。

 周りの子達はみんな動物園の檻の向こうにいる動物を見るみたいに、ワクワクしたような瞳でみつめている。

 誰も檻の中には入らなくて、でも観察してる。

それを男の子はどう思っているのだろうか。わたしから見える背中は、何の動揺もしていないようにすらみえた。さっきも彼はなにも、動揺はしていなかった。ただ、彼はあの冬に部外者であったことは確かなことだった。



「おーい、お前ら席につけよ〜」


出席簿をだるそうに持って重力が重たいと言いたそうに教壇に上がっていく担任の麻生先生は、いつ買ったのかわからないヨレヨレのセーターを、だるそうに着こなしてきた。

 その後に続く副担任のゆかり先生は、そんな麻生先生の様子を心配そうにみつめていて、相変わらずスーツをしっかりときこなしていた。


「お前らが、盛るのもわかるぞ〜雌猿の檻に、イケメンが投入されたからな。わかるぞ。わかるけど、城鐘ビビってるだろ〜ビビるよな。お前、肉食苦手そうだもんな」


「ちょっ!麻生先生!盛るとか、女子高生に言わないでください!みんな、怒らないでね」


 城鐘と言われたさっきの男の子は相変わらず動くこともなく前をまっすぐに、見据えているようだった。麻生先生を焦ったようにみつめたゆかり先生の表情をみて、何人かが声を出して笑う。

 ひどーい!とか間延びした声が響く。響くけど、どこかいつもより空気が重たいような気がした。


「城鐘ー。自己紹介しろ。嫌なら下の名前は言わんくていいから」


「はい」


 椅子を丁寧にしまってなんの動揺もないように、スタスタと教壇に向かっていく。数秒のはずなのに、とても長くて、息が詰まる。


「あの」


「あ?」


 教壇を降りる麻生先生とすれ違う時、少しだけためらったように城鐘君が言葉を吐き出す。

 言いにくそうに眉をひそめて、覚悟を決めたように話し出す。


「別にビビってないので大丈夫ですよ」


「え?そこ?」


 クラスの誰かがそういって、何人かがクスクスと笑う。

笑うけど、今まで背を向けていた城鐘君が、くるりとこちらをみた瞬間に、みんな急に言葉を失う。

 今日から2年生になって一年間培ってきた女の子だけの空気とかそういうものが壊れて、涼しげな風が壊れた壁の穴から、入っていくみたいな感じがした。

 締め切られていた空間の空気が漏れて、何か新しいことが始まるようなそんな気がした。

 城鐘君の顔はやっぱり見慣れた普通科の男子よりも、透明感があるような気がして、瞳は何も臆することなんてないようにまっすぐに教室を見つめていた。


 誰かを見るというよりも、全員をみているようだった。


「城鐘です。去年までは家で引きこもりでした。特別科に入ってしたいことが二つあります。一つはドレスを作ることです」


 髪の隙間から覗く目は門であった時とは、違う睨みつけるようなこちらを値踏みするような目線に背中を一筋の汗がつうーっと流れる。


 色素の薄い髪が窓から入る風に揺れて、男の子の顔にかかる。

 それを邪魔だとも感じないのかずっと、こちらを睨みつけている。

 ずっと、ただ教室を睨みつけている。

何人かが、城鐘くんの目から逃げるように、視線をそらす。

 ただ、前をただ見据えて、城鐘くんを見つめている子も何人かいたけど、その多くがただ呆然としたように、城鐘くんを瞳にうつすことしかできていなかった。



「もう一つはそのうちいいます。よろしくお願いします」


 去年の春は不安と緊張で胸がいっぱいだったのに、今は違う。何か怖いものに、胸がいっぱいになっていく。

 春の空気が肺に入り込んでなのに、うまく息を吐くことができない。どこかいつもより重たい春の空気が、体に入りこんでいく。

 いつもの春とは違って、何かが絡まっているように感じる。

 ザワザワとしてそれは異分子みたいで怖くて、わたしは目を閉じてゆっくりと息をはいた。


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