09、『女神懇談』 お先真っ暗の異世界生活
やっとあらすじにたどり着きました。
「一つ、伺ってよろしいですか? 」
俺はつい、そう聞いてしまう。
「良いですよ」
何処から発声しているのかわからないが、穏やかないつまでも聞いていたいような声色でそう答えてくれた。
「女神様って光の玉? 何ですか? 」
「この姿は私達の神々しさを普通の人が直視すると精神が崩壊するからね、女神の姿にはフィルターがかかって、光の玉に見えるんだよ」
いや、廃人になるって、ナチュラルに怖い事言ったなこの人
「そうだったんですか。質問に答えてくれてありがとうございます」
「なんか他人行儀ね、もっとナチュラルに話してくれていいわよ。ところで、私の本当の姿を見てみる気はない? 」
他人行儀も何も人と神の間に親しいも他人も無いだろ。
「すいません、この口調は癖みたいなもので、どうしてもと言うなら直しますが」
この女神様なんか話しやすいぞ書いてあった文と違うじゃん。
「あっそうなの、じゃあそのままでいいや。で、どうするの? 私の姿見てみる? 」
なんかどうしても見て欲しそうだな。餓鬼の俺が言っていいのかわからないが子供っぽいな。
「でも廃人になっちゃうんですよね? 大丈夫なんですか? 」
「いや、最近女神の間でこれ聴くことが流行っていてね。 稀に大丈夫な人も居るから試して見ない? 異世界に召喚された君なら大丈夫だよ」
凄い美しい人なのはなんとなくわかるが廃人になる危険まで犯して姿見ようとする奴いるのか?
それに多分俺巻き込まれ召喚だからなぁ
「いや、多分俺にそんなん適正無いと思いますので遠陵しますが、強制なら試してみますか? 」
どうせ神様の言う事には逆らえないし、廃人になるならそれまでと軽く自暴自棄になりながらそう言った。
「じゃあ強制だ。やってみよう」
女神様がそう言った瞬間女神様が輝いた。
「うおっ」
俺は驚いて目をつぶった。
真っ白な光りが晴れ、俺は廃人になる覚悟をしてゆっくり目を開けた。
光りが晴れた時腰まで届くほど長い金髪の目鼻立ちがはっきりした色白の美人がいた。
ただ美しい訳ではなく、美しさの中に人では到達できない神々しさが確かに存在していた。
その姿は誰がどう見ても女神様だった。
俺は数分間女神様を凝視してしまっていた。いや、俺の視界から真っ白い壁や、机、椅子が消え女神様以外の物が視界に入らなくなってしまっていた。
彼女と過ごせるなら下僕でも奴隷でもいいとそう思えてしまった。
「ずっと見てしまってすいません! ってあれ? 俺、廃人になって無いんですけど? 」
「ずっと見てたのは別にいいけど、君が初めてだよ私の姿を見ることが出来たのは」
この後説明を受けたのだが、この光を放っても普通の人は女神様はやっぱりただの光の玉にしか見えず、この真っ白い空間であった事は忘れてしますようだ。だが、適性を持った人は女神様の姿を見ることができ、この空間であった事も覚えていられるそうだ。
さて、この適正なのだが両親のどちらかが神とか、神の生まれ変わりとかではなくて本当にただ姿を見られるかだけらしい。
適性を持つ確率を教えて貰ったが、地球で十人くらいらしい。
ただ、イタズラな女神様は人の意思関係なく姿を見せるらしい。
うん、すげー悪質だよなぁ、でもなんで面談する人全員に光浴びせるんだよ。
そして俺の予想通りこの世界に来た時この世界の常識が入っていたようで、人や動物を殺すことに対しての忌避感や血や刃の先端を見たときの恐怖などは無くなるようだ。
因みに女神様も誰の常識なのかはわからないらしい。
何故かわからないが女神様の口調が少し変わった。
「では、最後にあなたにステータスを与えるんだけど、あなたの名前はこの世界で馴染みにくいのよ。だからあなたの名前は今日から『ミスト』になるわ」
君があなたに変わったのは置いといて新しい名前か、変なのじゃなくて良かった。
「じゃあスキルはあっちの世界で確認してね」
もうお別れか短い間だったけどもう二度と会えないとなると少し寂しな......
「はい、ありがとうございました。女神様」
俺は立ち上がり笑顔で女神様にお礼を言った。
うん、不遇な立場だけど如何にか頑張ってみるかな。
「と、本当はここで終わるんだけどミスト、いや『深海 崇史』は本当はただトラック事故に巻き込まれて死んでこの世界でゲインとして転生し、慎ましくも幸せな生活を送るはずだった。でも、『森原 竜吾』の勇者としての素質が強すぎたため魔法陣が広がりすぎてあなたは巻き込まれてしまった。
私もそこを見ていればどうにかしたんだけど丁度その時別の世界で問題があってね」
まじか......はぁ
「本当は慎ましくも幸せに生きたんですよね、じゃあこっちではどうなんですか? 」
「分かってると思うけど、残念な事にあなたはスキルを一つしか持っていない、神から見ればとてもつまらない人生を送るわ」
「え!!? 」薄々感づいてはいたが、言葉にされるとやっぱりショックが大きいな。
でも、つまらない人生ってことはやっぱり......
「そう、あなたは巻き込まれただけの一般人って事」
はあぁ......そういえば今心を読まれたのか?
「凄い顔に出てるからわかったのよ。今も『心読まれたの? 』って顔に出てるわよ」
女神様は苦笑いしながらそう言った。美人は何やっても美しいなぁ。
つまんない人生ってなんだろうか? すぐ死ぬとか?
「まぁ、こちらのミスでもあるからね、特別配慮としてあなたにチャンスをあげるわ」
チャンスとは一体なんだろう?
「えっと、どういう事ですか? 」
「つまり、これからスキルガチャを引き、『辛いが幸せを目指せる人生』を送るか、それともスキルガチャは引かずに『スキルを一つしか持たないつまらない人生』を送るか好きな方を選びなさい」
偉ぶったり、上から目線のようなセリフだが、声色は優しく問いかけるようで、表情はとても神々しかった。
「じゃあ、引かせてくださいスキルガチャを! 」
俺の幸せを目指す人生はここから始まった。
「そっちのが面白そうだし」
女神様がこっそりそう言ったのを俺は聞き取れていなかった。
あと一話でこの章が終わります。
誤字脱字教えてくださると幸いです。