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『自己進化 』 ~自分の道は自分で決める~  作者: 零度霊水
『輪廻転生』 〜光を示すもの〜
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62、「情報整理』 結界術

「なんで、エイトが……」


 エイトとは数日前に少し会話をして、酔っ払っていた俺は彼に恋愛のアドバイスをした。恋愛経験なんてほとんどない俺だが、あの時はよっていた勢いで言ってしまった。友達にはなったが、あれから交流もなく関係でいえばその程度。ただ、一度でも友好的に知り合ってしまった相手とは争いたくないと思ってしまう。


 ただでさえ、たとえ襲ってくる相手だとしても人殺しをしたくないという、この世界では大きなハンデを背負っている俺は、彼と戦えるだろうか。

 シフォンの絵を持っているということは少なくとも今回の騒動に関係しているということ。彼が味方だったら嬉しいが、この状況で、一体どんな勢力なら俺たちの味方となってくれるのだろうか。


 俺が思案している間に、両者間のムードは険悪になっていく。一触即発といった雰囲気だ。このまま戦闘が始まったとして俺はどちらの味方をすれば良いのだろう。

 俺の感情など差し置いて、世界は進んでいく。当然だ。

 時間は全てにおいて平等に過ぎ去っていき、その流れに抗えるのは()()()と呼ばれるものだけなのだから。


「ああっ!うざってぇ!」

「良い加減にはけよ!そいつの情報持ってるんだろ!」

「お前らも()()()に雇われてんだろ? 何も情報だけ奪うってんじゃねぇ、分け前もはずむぜ」


 3人組のうち、左右の男達が大声で怒鳴り、真ん中にいる奴が交渉を持ちかける。ドラマやマンガで見る恫喝のシーンみたいだ。もっとも、相手(エイト)はビビるどころか真っ向から叩き潰してやるって感じだけど。


「だから、何度も言ってるでしょ!私達は商ーー「待てカーラ。屋根の上に誰かいる。その情報は大声で言ったらダメだ」


 ッ気づかれた!


「ああ? 何言ってんだ。誰もいねぇじゃねぇか」


 どうやらガラの悪い男達には気づかれていないようだ。ステータスが確認出来ないので、確証は持てないが隠密系のスキルを獲得、もしくは忍び足(ステルスステップ)が進化している可能性が高い。ただ、エイトはそれすらも看破するようだが。


「ともかく、オレ達は詳しい情報を持ってない。だからこうやって情報を集めてるんだよ。時間をとって悪かったな。じゃあな」


 エイトは屋根の上に誰かいる事に気付いた事によって、この場から離れようとしている。さっき遮った言葉も引っかかる。

 ……本当に、あいつと戦わなければならないかもな。


「ちょっと待てよ」


 男はエイトを呼び止めた。


「なんだ?もう良いだろ」


「いいや、よくねぇな。情報を持ってないのはわかった。腑抜けのお前は行っていいぜ。ただ、時間をとった詫びとしてそっちの女を置いていけ。その強気な女をーー


 俺の位置からは男の顔後ろ姿しか見えなかったが、おそらく下品な顔でクズみたいなこと言っていた男はそれ以上言葉を発せなかった。エイトの拳がものすごい速度で男の顔面の真横に打ち出された。おそらくパンチの速度によって生じた風によって男の頬は切り裂かれているのではないだろうか。


 一撃で実力差を明確にされた男達は走って逃げて行った。その時見えた顔は、下品な顔ではなく、恐怖に引きつった顔をしていた。


「さてと、コソコソ嗅ぎ回っているのは誰かな?」


 エイトに視線がさっきまで俺のいた場所向いているがすでに俺はそこにいない。元々、彼らが言い争っていたのは狭い路地だった。その上、高低差もあるため下からは死角となっている場所も多く、そこを移動する事によって既に反対側の屋根にいる。この世界に来て鍛えた成果もあってか思ったより軽く、家と家の間を飛び移ることが出来た。


 とりあえず下に降りようとしゃがんでいた状態から立ち上がろうとした瞬間気付いた。()()()()()()によって俺は身動きを封じられている。いや、正確には少しなら動けるのだが、直ぐそこに壁があるようだ。まるで、身体のサイズほぼギリギリに合わせて作られた箱に閉じ込められたようだ。


 くそっ俺の元いた場所を見たのはブラフ。ついさっきまでこんな壁なかった。

 一瞬で形成された見えない壁。おそらくなんらかのスキルだろうが、地球のそれもアニメの知識で言うのならばこれは


「結界……」


「ご名答っ……って、ミスト?」


 なんらかの手段でゆっくり屋根へ上がってきたエイトは俺を見て驚いている。さっきまでの俺を客観的に見たらこんなこんな感じなんだろうな。なんて、緊張感もない事を思ってしまった。


 鮮やかな青色の髪。目元より少し上で、爽やかな印象を受ける。顔はよく言えば非の打ち所がない。悪く言うのなら、何処にでもいそうって感じ。まぁ、美形が割と多いこの世界なので彼も美形よりだが、それでもパッとしない。どちらかと言えば平凡(俺より)な顔をしている。

 そんな彼は口を開けてわかりやすく驚いていた。


「久しぶり、エイト。告白は成功した?」


 俺は笑顔を作ってエイトにフレンドリーに質問する。


「あ、ああ……っじゃなくて、なんでお前はそんなところでコソコソしているんだ?」


 流石にまだ結界は解除してくれない。くっそ、どうすべきだ。素直にシフォンの護衛をしている事を説明して、情報収集していたと言うか? だが、エイトは間違いなく近接職。それも、かなりレベルが高い。

 あの拳を片手で捌き切れる自信はない。

 杖を持っている上に、俺はカーラの魔法の魔法を一度受けている。回復系統の職の可能性もあるが、男たちに対し強気だった事からも、彼女も攻撃手段を有していると考えて良い。


「俺はーー」


 結局、俺は素直に話す事にした。あの時エイトが遮った言葉に賭けたのだ。


『私たちは商ーーという所でエイトは遮った。俺は難聴でも無ければ遮られた言葉を『まあ良いか』で流したりもしない。

 前後の会話から想像して、おそらく彼女は『私たちは商会に雇われていない』という意味合いの言葉を言おうとしていたと考えられる。エイトが遮った理由は『商会』がゴロツキを雇っているという情報を誰かわからない屋根の上の人物()に聞かせるのが不味いと判断したと予測できる。


 俺の希望的観測がすぎると思う。

 でも、俺にも主人公の素質ーー『御都合主義』ってのが少しでもあるなら、これは部の悪い賭けってわけじゃない!


「そうか……証拠となる物を持っているか? ……わかった。結界は解除しよう」


 俺は冒険者ギルドで貰っていた依頼書の写しをエイトに見せた。

 結界が溶け、自由に動ける様になった俺は屋根から飛び降りたエイトに続き飛び降りた。二階建て程度の高さがあるが、受け身ならここ数日間で死ぬ程とった。今の俺なら多少の高さから落ちても即死したり骨折する事はないだろう。

 エイトと俺は危なげなく着地した。俺がエイトとカーラの対面に立つと、エイトは口を開いた。


「俺は……エイト・アースなんて名前じゃない」


「はぁっ!?」


 驚きのあまり素っ頓狂な声がでた。この世界では、家名を持たない者がそれを名乗る事は重罪なのだ。だから当然、それ相応の理由が無ければ偽りの家名を名乗ったりなどしない。

 考えられるのはーー


「元貴族? ……いや、国の人間か?」


 思考がつい声に出てしまった。


「結界といい、ミストは察しが良すぎるな。気をつけろよ。察しが良すぎるのは裏の世界ではあまり良い事じゃないぞ」


 彼は、真剣な顔をして俺に忠告した。やっぱり、どうも俺には彼が悪人だとは思えない。


「ああそうだ。俺は国の人間。主に貴族の不正や、悪政を調査している。カーラも当然偽名だ。

 もっとも、俺がカーラを好きで、そのアドバイスをお前に貰ったのは事実だけどな」


 少し笑いながら彼は俺にそう言った。


「なんで、貴族を調査するエイ……お前がシフォンの絵を持っているんだ?」


 国の事情らしいし教えて貰えないだろうが一応聞いてみる。


「エイトで頼む。今回の任務の間俺はエイトだから。それで、なぜシフォンって子の絵を持っていたかだが、ーー」


 エイトは俺にファイル(領主)の現状を話した。

 ファイルーーシフォンの父親は長年、黒い噂が絶えなかったという。しかし、治安は悪いものの領民の暮らしがきつい、税が高いと言った苦情もなく、あくまでも噂だけだったという。

 しかし、およそ一ヶ月前にある情報が城へ届けられた。ファイルが国に危険視されている教団の一つ『邪獣教』と接触したというものだ。シフォンの種族的な情報が漏れたのもここ一ヶ月のようだしなんらかの関連があるとみて良いだろう。

 彼女がもつ先祖返りの、『若返りの血』は17歳になった時に効力を持つらしい。彼女の誕生日は3日後。

 おそらく紹介のトップが彼女を娶りに来るのは早くて3日後だろう。


 ファイルは今金を欲しているようで、商会とシフォンに関して金のやりとりがあるらしい。取引はシフォンが行く時に行われる。それまでに攫う事が出来れば商会は、低コストでシフォンを手に入れられるし、仮に攫うのに失敗したとしても大したデメリットもなくシフォンを手に入れられる。


 ファイルはなぜシフォンの護衛に力をさかないのだろう? 理由の一つには人類至上主義を掲げているファイルの妻であるアレハが邪魔をしているというのがあると思う。夫婦仲は険悪だとツバキも言っていた。


 二つ目は単純に金かな。昇格任務となる依頼は報酬として用意する金が少なくて済むらしいし、即金が欲しいなら護衛をつけないのも納得がいく……のか? まだ少し引っかかるな。


 エイトとカーラはそんなファイルを調査しにこの街に来たという。シフォンの絵を持っていたのは領主と商会との繋がりを探すために絵に反応する人を探すていたという。


 正直、100パーセント信用できるかといえば出来ない。一応国に支えているという身分証的なカードを掲示されたが、俺にはそれが本物だと判断できる力はない。

 でも、俺は彼を、彼らを信じてみようと思った。


 ただ、ひとつだけ疑問がある。なぜ彼らは俺にここまで情報を教えたんだ? 結構重要な情報もあったよな?

 まさか……このままバッサリ?


「そういえば、そんな簡単に俺に情報を渡して良いのか?」


 俺は恐る恐るエイトにそう聞いた。その返答はーー


微妙なところですみません。明日には次話を投稿できると思います。


読んでいただき本当にありがとうございました。

誤字脱字、矛盾点等ございましたらご指摘していただけると幸いです。

よろしければ次回もご覧ください。

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