61、『氷龍契約』 リバイバー
世界情勢の関係で、海外へ行く話が無くなってしまい、時間が取れた為、執筆をすることができました。
数分後、シフォンの合図によってレフィーヤとツバキは到着した。状況を説明した後、まだキーツが生きているので移動する事を提案し、そこから少し離れたところに移動した。
そこで、俺はある提案をした。
「つまり、ミストはシフォンの護衛を離れるって事?」
「うん、そう。今の状況だと、どうしても俺が足手まとい……護衛の穴になる。それに、どうもきな臭い」
俺はレフィーヤの発言に肯定し、レフィーヤの耳元で伝える。
「シフォンの情報が不自然に広まりすぎている。現状シフォンが嫁ぐ先が一番怪しいけど、はっきりした証拠が無い。ノウハウはツバキから少し学んでいる。俺は裏の方を探ってみようと思う」
俺の考えをレフィーヤに伝える。だが、レフィーヤは俺の考えに納得していないようだ。
「でも、大丈夫? 裏を探るって事は、最悪人との戦闘になる。殺す事になるかもしれないんだよ?」
どうやらレフィーヤは俺の精神的な面について心配してくれているらしい。
「問題ないよ。もう踏ん切りはついた。出来る限りは誰も殺さない。もし殺してしまったなら俺はその罪を背負って進むよ」
もっとも、俺の実力は低い。おそらく殺さなくて済む相手というのはチンピラのようなやつだけだろうけど。
「そう、ならそっちは任せるね。シフォンの事は必ず守るから」
レフィーヤは微笑みながら俺にそう言ってきた。やっぱり、俺には勿体無いくらい良い彼女だ。ただ、最近のレフィーヤの依存度から行くとそのうちヤンデレになってしまうかもしれない。
今もさりげなく俺の手を取り、指と指を絡ませる恋人つなぎをしている。これを恐怖ではなく嬉しいと感じてしまう俺も、やはりどこかおかしいのだろう。
「ごめんレフィーヤ、手を離すな。ツバキ、君に一つ謝らないといけないことがある」
俺はレフィーヤの手を離し、シフォンの怪我の確認を終えたツバキを呼ぶ。
「ツバキ、俺暗殺者じゃなくなった。今まで暗殺者として俺を鍛えてくれたのに、ごめん」
「職業が変わるのは仕方ないです。それで、一体どんな職業になったのですか? ミストの適正的には暗殺者系統の職業になったと予想できるのですが……」
「悪い。今スキルの代償でステータスを表示できないんだ。でもとある事情があって俺は今の職業を理解できるんだ。それで、俺の今の職業は……『蘇りし者』というものだ」
そう。今の俺の職業は『リバイバー』となっている。
「聞いたことある?」
「ないですね」 「私もないわ」
ツバキとレフィーヤが答えた。シフォンも首を横に振っているので知らないということだろう。
「じゃあ、説明するよ」
俺はリバイバーについてに説明をした。
特性は、瀕死の状態になるとステータスの全能力値に補正がかかり、一度受けた状態異常を無効化することができる。そこから一定の状態まで回復すると、さらにステータスに補正がかかる。その上、スキルを獲得しやすくなったり、レベルアップの補正もかかる。
強力な職業だが、デメリットも存在する。
一つ目は、この職業は瀕死から復活する事が前提条件のため、瀕死にならなければ何の補正もかからないので無職と変わらない。
二つ目は、俺はステータスの細かな値をこの職業でいる限り確認できなくなった。今まで見えて、自分割り振っていたステータスは勝手に割り振られ、俺が確認できるのはスキルやレベル、HP、MPくらいだ。
つまり俺はステータスの値を確認することも操作することも出来なくなった為、自分の強さを客観的な指標で見ることが出来なくなってしまった。
正直このデメリットはでかい。この職業で補正がかかるとは言ってもどれくらい補正がかかるのか確認する事が出来ないからだ。
俺はこれらの事を三人に説明した。
実は一つ隠していることがある。三つ目の代償はーー
◇◇
(本当に、良いのだな?)
美しさと恐ろしさを併せ持つ龍は俺に再度確認をしてくる。ここまで聞かれると俺の決意も揺らいでしまいそうだ。
全く、お人好しな龍だ。
「ああ、俺は絶対に諦めない。自分の道を進み続けてやる!」
◆◆
あの世界で、俺は氷柱龍剣に眠る龍とある契約をした。それは、俺が死に掛けた際に一度でも諦めてしまえば俺の魂は龍に喰われ、輪廻転生する事も、如何なるスキルを使おうと復活することも出来なくなる。
当然、死んでしまっても同じだ。寿命や病死についても進化してみせろとしか言わなかった。
俺が不利になるが、諦めなければこの力はきっと俺の切り札となる。ただ、この事をレフィーヤに伝えるのは、何故だか嫌だった。何でだろうな……
閑話休題
「なるほど、取り敢えずミストの状態はわかりました。ですが、暗殺者としての技術は無駄にはなりません。これがほぼ必ず音を立ててしまうような『重戦士』といった職なら無駄になったかもしれませんが、その職業なら暗殺者としての能力はきっとミストの助けになります」
師匠からのお墨付きがもらえれば大丈夫だ。不思議と、簡単に納得できた。俺はツバキの事を深く信頼しているようだ。この環境は心地がいい。願う事ならば、この環境が永遠に続けば良いと思う。
だが、この環境は永遠ではない。動かなければシフォンは望まぬ商会に嫁ぎ、ツバキはあの奴隷を本当の意味で『物』と見ている領主の元へ戻る。
いまだに思うことがある。俺の行いは正しいのかと。こんな世界だ。貴族の娘が望まぬ人の元へ嫁ぐというのは良くあることらしい。ツバキの境遇も奴隷という立場はこの世界の絶対であるステータスが縛っているといっても過言ではない。俺は、世界のシステムに抗おうとしているのかもしれない。
それでも、どうにかしたいと思ってしまう。シフォンの気持ちを聞いた。ツバキの弱さを知った。
それを知ってしまった俺はもう元には戻れない。止まることは出来ない。
進み続けるだけだ。
「それを聞いて安心した。ありがとう、ツバキ」
俺はツバキにお礼を述べた後、さっきレフィーヤにした説明をツバキとシフォンにもした。
「わかりました。ミストが抜けることによる戦力低下は不安ですが、もとよりこの仕事はレフィーヤさんのみが来るはずのもでしたので大丈夫です。どうか、気をつけてください」
「ミストさん。私は貴方に何度も助けてもらいました。貴方を信頼しています。無事を祈っています」
ツバキもシフォンも快く俺の提案を受け入れてくれた。
「二人ともありがとう。レフィーヤ、それじゃまた後で……愛してる」
俺はレフィーヤを抱きしめ、彼女らと反対方向に走る。今までの俺は今の場面で恥ずかしげもなくキスをしていたと思う。レフィーヤもそのそのつもりだったらしく少し驚いているようだった。
俺とレフィーヤは共依存の状態だ。ここから脱却するにはスキンシップを少しづつ減らしていくほうがいいかもしれない。今のはその第一歩だ。
取り敢えずは今日宿でレフィーヤに相談をしてみよう。
悩みを一旦片付けた俺は、数日前(なんとなく数ヶ月前)にチンピラと思われる者に襲われた場所へ向かった。到着した場所で『アサシンセンス』を発動すると、少し言ったところに悪感情を持ったものが集まっていることがわかった。
今何気に『アサシンセンス』を使ったが別の職業でも使えるようだ。これがツバキの言っていたことなのか?
俺は思考を巡らしながら屋根伝いに人の集まる場所へ向かう。流石に正面からそのまま向かうのは危険だからだ。
「おーてーーー」
「だーらーーーろ!」
なにかを言い争っている声が聞こえる。俺はさらに速度を上げる。異世界で手に入れた体幹、肉体を駆使したほぼ全速力だ。
ようやく話が聞き取れる場所へ到着した。
そこで言い争っていたのは精度は高くないものの、知っている人が見ればシフォンだとわかる絵を持った少年少女のペアと柄の悪そうな3人組の男達が言い争っていた。
「な……」
俺は気づかぬうちに声が出てしまったようだ。
男言い争っている、シフォンの書いてある絵を持っている少年はエイトだったからだ。
半年間も更新できず申し訳ありませんでした。これからはどうにか更新していくので、これからもこの物語にお付き合いいただけると幸いです。
読んでいただき本当にありがとうございました。
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よろしければ次回もご覧ください。




