58、『連載再開』 Reハビリ
ようやく色々と済んだので投稿します。今まで待たせてしまい本当に申し訳ございません。
『自己進化』から一ヶ月と半月ほど離れていたのですぐに続きを書くとまたグダグダと話が長引いてしまうのでリハビリがてらに閑話を投稿します。
時系列的にはミストとツバキの修行中です。護衛依頼中に護衛対象をほったらかすのはおかしいので、Ifルートという設定にしています。
ツバキと修行の一環でルビの町付近にある迷宮にやって来た。この迷宮は【初心者殺し】と呼ばれている。
本当の名前は【金の巣窟】といい、この迷宮には金属や鉱石で構成されたゴーレムしか出てこない。ゴーレムの特徴は稀にゴーレムを形成している物質を落とす事だ。金で構成されていれば金、鉄で構成されているならば鉄と言った感じだ。
ちなみに“きん”でも“かね”でも、どちらの読み方でも良いらしい。
ーー迷宮図鑑より引用
この迷宮が初心者殺したる所以はこの迷宮内では一切の経験値が手に入らないからである。
初心者にとって一匹一匹が強いにもかかわらず、経験値は手に入らない迷宮とは、それすなわち成長できない迷宮である。
確かに技術は向上するが、一定以上の品質の武器でなければ敵を倒せず、ドロップは高額だが稀にしか落ちない。この迷宮で修行できる初心者はもう初心者とは呼べないという事からこの迷宮は初心者殺しである。
ーー
丁度、予備知識の再確認が終わったところで黒髪の美女が歩いて来た。
今は明け方。この迷宮はどの階層でも出てくる魔物の種類は変わらないので、下層は人気がない。今回は全6階層の中の三階層で修行することになった。
「では、行きますよ。そして、今回は修行が目的なので、ダガーのみを使ってください」
入場手続きをして来たツバキが戻ってきたので、一緒に迷宮に入る。
「わかった」
◇◇◇
ツバキに意識を取られ、こちらに背を向けているアイアンゴーレム目掛けて駆け出す。
『氷柱龍剣』を逆手に持ち、高く飛ぶ。
ダルマのような形をしたアイアンゴーレムの体の中心ーー人でいう心臓のある位置を狙いダガーを突き刺す!
「でぇぇぇぇああ!!」
ーーダガーと金属がぶつかり合い、酷い不協和音を奏でる。
その音を鎮魂歌にゴーレムは崩れ落ちる。まるで最初から何もなかったかのようにゴーレムの残骸は消え去る。
ドロップはなし。どうやらハズレみたいだ。
ツバキの方を確認するとたった今二体のアイアンゴーレムが崩れ落ちた。
ツバキが使っている武器はククリではなく小太刀だ。
「本当にすごいな。その小太刀」
「これは私の家系に代々伝わる小太刀です。私もいつか子供に渡したいですね。
ミストの使っているダガーも凄い切れ味ですね」
「ああ、これは昔の勇者が作った武器らしい。ある龍の素材から出来ているから鉄の塊には負けないさ」
余談だが、ゴーレムとした金属や鉱石は硬度が二割程落ちているらしい。だから同じ金属で作った武器でも、一応攻撃は通じるらしい。
「休憩は必要?」
水分補給はできた。これは修行だ。こまめに休憩なんかしていられない。
「いや、いらない。行こう」
「では移動しながら反省点を言いますね。直すべき箇所は一箇所。処理速度です。
確かに跳んで体重を乗せた攻撃ならば確実に倒せます。格上との戦いなら正解です。命あっての賜物、誠実に戦いましょう。
しかし、今回は格上ではない相手です。もっと早く、軽い一撃で倒せるはずです。
もう少し、上を目指しましょう。
……行き止まりですか」
処理速度か。確かに俺は確実性を求めて上からの一撃にした。だが、確かに完全に背後をとっていたあの状況なら無駄な動作だったかもしれない。反省だ。
地図を見ていた筈だが行き止まりに当たってしまった。やっぱりあまりあてにならないな。
「わかった。そこは直そーーッ!!」
迷宮の天井が割れて、嫌な空気が濃密になる。この嫌な空気は迷宮内に充満している魔力で、強力な魔物が生成される時に起こる現象だ。
「ミスト! 警戒を!」
「ああ!」
亀裂は一つ、だが巨大。 深淵を想像させる暗闇から巨大な右足が出てくる。材質はーー
「ダイヤモンド!?」
ーー金剛石。
「これは……危険だと感じたら躊躇せずにダガー以外も使ってください」
「わかった!」
だんだんと体が出て来るが明らかにこの通路には入りきらない。さっき戦闘指定場所は広かったが、ここは横幅は約4メートル。縦は3メートルといったところだ。
俺は気を抜いていた。入りきらないとわかり、どこか安心していたんだろう。
だから……動揺してしまった。
ダイヤモンドゴーレムが地面に足をついた瞬間ーー
ーー迷宮の床に亀裂が入り、砕けた。
「なっ! クッソ! 届けぇぇ!!」
俺はどうにか石の雨でツバキの手を掴み引き寄せ、抱きしめる。
水晶の吹雪を使い全身を水晶で多い、水晶龍の加護で防御力を上げる。
何度か強い痛みを受けたがどうにか軽傷で済んだようだ。
「ミスト! 大丈夫? お願い、返事をしてーーキャッ」
上から一際大きい石が落ちて来るのが見え、強くツバキを抱きしめる。空中でダガーを落としてしまったのでそう多くのことは出来ない。
だからーー
(頼む!)
俺はブレイカーを空間から取り出し、突き刺した。
石は粉々に……とはならなかったが幸い小さくなり、感覚がなくなっている左手に当たっただけだった。
周りを見渡すととても広いドーム状の空間だった。嫌な予感がする。まさか、あいつが戦いやすいようにここに俺たちを落とした?
嫌な考えを振り払い、ツバキを解放した瞬間。そいつが落ちて来た。
形は人型。全長は5メートル。横幅は4〜6メートル。
全身がダイヤモンドのため、視認しずらい。だが、赤く輝くコアは丸わかりだ。
紛れも無いーー
「こいつは強敵だ」
ツバキは小太刀を、俺はブレイカーを構え、臨戦態勢に入る。
「ツバキ、悪い。片手じゃ槍は扱いずらい、あそこに落ちているダガーを回収したい」
「時間は稼ぎます。でも、なるべく早く」
俺は槍をしまい、肩掛けバックから煙玉を取り出し地面に叩きつける。
煙に紛れて潜伏。気配を消してダガーへ走る。
ツバキは俺とは反対に大きく動き、ダガーとは反対にゴーレムを誘導している。
俺は地面に突き刺さっているダガーを回収しゴーレムへ駆け出した。
こいつはまぎれもない格上……なら!
全力で跳び上がり、全体重を乗せて心臓へダガーを突き刺す。
が、
「刃が、届かない」
俺の筋力では通せる刃は数センチだけだった。当然コアは無傷。
一体どうすれば!
読んでいただき本当にありがとうございました。
誤字脱字、矛盾点等ございましたらご指摘していただけると幸いです。
よろしければ次回もご覧ください。




