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『自己進化 』 ~自分の道は自分で決める~  作者: 零度霊水
『輪廻転生』 〜光を示すもの〜
56/64

56、『一心不乱』 フォールスビクトリー

久しぶりの更新で申し訳ないですがとりあえず更新です!

 甦るのは数日前の夜の記憶。


自己進化(メイキング)』の回数確認のためにステータスプレートを開くとメイキングと書かれている部分が金色に光っていた。

 そこをタップすると自己進化という文字は変わらずに、今まで感覚でメイキングと読んでいた文字がクリエイトと読めるようになった。


「なんだ、これ……」




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

自己進化(クリエイト)


 誰かを守るために自分を犠牲にしてでも強欲に強さを求め綴る思いと、自分の道は自分で決め、決意を元に進化して行く思いがぶつかり合うことによってーー


 ーー気概や成果を元に理想のスキルを構成する『自己進化(メイキング)』と自分の()()()をスキルに変換して自分の求めるスキルを生み出す『自己進化(クリエイト)

 の二つに別れた。




『自己進化』 使用回数残り2回。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





 ◇◇◇




 自分の中に不確定な希望が見える。



 成る程。使ってみてなんとなくだがメイキングとクリエイトの違いがわかった。


 メイキングは提示された能力の中から自分の想い描く未来を選択し、作り出すスキル。

 クリエイトは自分で指定したものを材料にして新しいものを創造するスキル。


 まぁ、どちらを使うにしても敵前で使うべきではないな。とにかく今は、ツバキを助けて、こいつを倒せる未来を創造する。


 つまり、俺がすべきことは単純明快! 俺はこの不確定な希望を確定した希望に作り変える事だ!


 ソロじゃなくなり使いにくくなった固有スキル『無我夢中』と「生活魔法」を除いて始めて手に入れた経験スキル忍び足(ステルスステップ)を分解し、新たなスキルを想像する。


『無我夢中』からは限界を超える要素と使用後の体へのダメージの要素を。

 忍び足からは攻撃力アップの要素と存在の感知に関わる要素を。


 この二つのスキルから取れた要素を結合し創造する。


 俺の右手に無数の可能性が想像され消滅して行く。ここから俺の望みを、希望を作り出す。


「何を! している!」


 敵前でこんな事をやっているんだ狙われて当然だよな。

 あと一歩なのに……


「ここまで、なのか……」


 眼前に迫る三本の剣先に諦めの声が漏れてしまう。


 ふと、柔らかいものに包まれる。


「っぐ……あなたの重みになるくらいなら身代わりになりたくなかった。でも、あなたが死んでしまうよりずっと良い!」


 俺を抱きしめてその背中に三本の剣を受けたのはツバキだった。


 くそ! とっとと作れや! 俺!


 光が右手に蓄積するがまだ完成しない。


「くぅっ! ぐっ!」


 ツバキは必死に耐えている。出血の量からして致命傷にはなっていないが、太ももを斬られたのが見えた。



 まだか? まだなのか!?


 湧き上がるダスクへの憎悪が何かに取り込まれようやく完成したようだ。


 ツバキの決死の時間稼ぎによって作られた時間で完成させた固有スキル。

 ツバキを、レフィーヤを守りたい強い気持ちによって「守護者」と強欲がスキルのエネルギーを後押ししてより強い物が完成した。



 ーーーーーーーーーーー


『一心不乱』


 自分の自己満足の勝利の為だけにその身を捧げろ。スキルの解除条件は対象者を殺す事のみ。

 このスキルは体に重い負荷をかけるため使用し続けると死に近ずく。

 生きたければ早急に相手を排除しろ。


 このスキル使用時のみ迫り来る攻撃に無意識に、反射的に反撃する「自動反撃(オートカウンター)」を獲得する。


 スキル使用時は戦闘能力が向上する。また、残虐性も上がる。


 このスキルの対象となるのは、護りたいもの、愛する者を傷つけ、悪意を向けた者のみである。


『俺は戦う! 自分の為に、自分が進みたい道を進むために!』


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 再度迫る三本の剣先。


「ツバキ……ありがとう……」


 ツバキを俺の後ろに座らせてダスクをーー迫り来る殺意に視線を向ける。


 意識がスキルに上書きされていく。感覚は『無我夢中』と似ているが、護りたい者、排除すべき敵がはっきりしている。

 どう立ち回るべきか、どの武器を使うべきか考える。現在の状態は一人称視点のアニメを見ているようだ。

 戦っているという実感もないし世界からズレている感覚もする。


『自動反射』が発動しているので今現在も剣先を打ち返したり、回避したりしている。

 当然、体力が回復したわけではない。無理矢理動かしている形だ、すぐに片付けないとこっちが殺られてしまう。


 思考を止め、感覚で動くことにする。意識と体を一体化させ、ズレていた感覚を元に戻す。

 足元に落ちている『氷柱龍剣』を拾い鞘に戻す。


「ッ!!」


 悪寒が走る。()()が来る!


「良い加減うざってぇんだよ! そろそろ死ねぇぇ!」


 剣先が細くなり、刀身の数が五本に増える。五本の剣先は扇状に広がり俺を突き刺そうと迫って来る。


 俺はアサシンベルクをしまい、適当な空間から黒い槍ーーブレイカーを取り出し、応戦する。


「あああああ!」


 槍を大きくなぎ払い、刀身を打ち砕き一気に全身、ダスクに急接近する。


 金属の形状を変化させるにしてもその元には限りがある。刀身を五本にした事により、武器自体が短くなり、ダスク自体が俺とそう遠くない位置にいた。


 ブレイカーの能力は再生できない傷を負わせるものだ。賭けだったが、無機物にも有効のようで砕け散った金属は変色し、死んでいる。


 近さは目測で2、3メートル。この近さは高速戦闘において槍を満足に振れる距離ではない。


 だがッ!


武器の王()をなめんじゃねぇ!」


 槍を右手だけで短く持ち、ダスクの左腕に突き刺す!


「これでお互い様だ」


 まぁ、お前のは治らないけどな。と軽口を付け足し、相手に皮肉を込めた挑発を送る。

 こっちも左手は使えない。これで五分五分……いや、全体に見たら俺が二分くらいかな。


「クソガァ!」


 残った金属をショートソードの形にして斬撃を繰り出して来る。

 力任せの振り下ろしを打ち上げ、胴体を攻撃するも、弾かれてしまう。


 高周波を全然使ってないと思ったらこっちに使ってたのか、暗殺対策してやがる。


 一刻置いたのちの追撃をバックステップで回避し、そのまま距離を取り、槍をしまう。

 右手にアサシンベルクを持ち、居合抜きの様に左腰のところで剣を構え、応戦の構えを取る。


「なぁ、お前は死ぬのが怖いか?」


 唐突にダスクが話しかけて来る。


「怖いさ。だからこうして、必死に抗ってんだろ!」


 ダスクは心底バカにしたように俺を嗤いこう言葉を言い放った。


「そうか? 俺は全然怖くないなぁ。まぁ、ガキならそんなもんか。死ぬのが怖いお前じゃ俺を殺すことは出来ねぇよ!」


 宣言とともに加速、剣を振りかぶりこちへ向かってくる!


「死に逃げしたくねぇから俺は戦ってんだよ! 彼女(レフィーヤ)が生きてる限り俺は死ねぇし、死ねぇんだよ!」


 俺も加速し距離を詰める。


 互いの影がぶつかりーー





 ーーーーーーーーーーーーーーーーー










 ーー俺は死んだ……










 ◇◇◇ツバキ視点◇◇◇


 思えば不思議な少年だった。

 出会いは私の勘違いで殺しかけるという酷いものだったが、それでも私を罵ることも無く、それどころかお嬢様を助けたいと言ってくれた。


 不思議と好感がもてる少年だった。私を先生として、師匠として見てくれていたし、教え甲斐のある少年だった。


 彼と共にいたエルフの女性と恋人だというのも頷ける。本人は自覚していないようだが、容姿は彼が自分で言っていた程悪くわないし、地味だがむしろ良い方だ。


 ただ、別に好きというわけじゃない。


 いや、好きではあるのだが愛しているのとは少し違う。

 家族に抱くような親愛。まるで弟のような少年だと感じていた。あの時までは……


 私が自分の種族を明かし、抱きしめられた時の腕は、体は、少年では無く男性のものだった。

 他の人からしたら私はチョロいと思われるのかもしれない。それでも彼は私の光で勇者だった。


 でもーー彼は死んでしまった。私のせいで! 私の目の前で! 私を守ろうとして!


「さて、ガキも始末した事だし。二人っきりだなぁ、()()()


 ブルートキラーが私に笑いかける。いやらしい笑みだ。

 だれか助けてほしい。でも、これは私への罰なんだろう。関係ない人を巻き込み、お嬢様を守れずに愛する人をみすみす殺してしまった私への……


 私に助けてなんていう資格はない。ただ、心残りがあるとすれば、この片思い……伝えたかったな……


「お? 大人しいな。観念したのか? まぁ安心しろ、お前も楽しませてやるかーーぐぁ!」


 ブルートキラーはなぜか崩れ落ちた。でも、そんな事はどうでもいい。それよりも大切な人が立っていたからーー


「なんで……なんで私を助けてくれるの?」


「……護りたかったから。それだけ。ただの自己満足だよ」


「ありがとう。助けてくれて」


「どういたしまして」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ◇◇ミスト視点◇◇


 俺はダスクに斬られる瞬間とっておきの技を使った。


 偽りの勝利(フォールスビクトリー)という現在の俺の一番の技。死にたくないという思いから生まれた技だと思う。


 肉を切らせて骨を断つという言葉がある。この技は一言で言うなら肉骨切らせて命を絶つだ。


 技ーー攻撃を受けた瞬間体力を0にして自分自身を仮死状態にする。

 仮死状態は三分間維持することができ、体力を二割まで戻し復活する。

 仮死状態では魂のまま行動でき、敵の魂を切りつける。


 鎖帷子が切れないなら魂を切りつければ良いだけ。俺はパンが無いからお菓子を食べただけ。


 相手に偽りの勝利を与える技。それがこのフォールスビクトリーだ。


 俺は魂を斬られ瀕死のダスクを見下ろす。


「クソォ……なんで、俺が……こんな奴に……」


 こうなっていたのは俺だった可能性が高い。それでも今立っているのは俺だ。


「お前ごときが、ツバキの道を殺してんじゃねぇ!」


「……」


 首にアサシンベルクを突き刺し命を絶つ。



「ツバキごめん。後は頼んだ……」


 俺の意識は暗転した。







読んでいただき本当にありがとうございました。

誤字脱字、矛盾点、質問等ございましたらご指摘していただけると幸いです。

よろしければ次回もご覧ください。

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