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『自己進化 』 ~自分の道は自分で決める~  作者: 零度霊水
『輪廻転生』 〜光を示すもの〜
52/64

52、『終一周年』 【EX4】 深海崇史の『異世界帰還』

大変遅れて申し訳ございません! もっと執筆したいのですが、まだまとまった時間が取れなそうです。申し訳ない!

「チッなんでここが……まぁいいです」


 以来()は一瞬で反対側のドアから教室を出て行った。


 今は以来よりも美奈だな。

 もう一度美奈に目を移す。ひどい顔をしている。だが、醜い訳ではない。むしろ美しいと言える。

 歪んだ性癖のものからしたら随分と()()()()とやらをしているのだろう。

 そして俺も、()()()をしているのだろう。感情が動かない。

 俺は机の上にいる美奈に近づき口に貼ってあるガムテープを美奈を傷つけないようにそっと剥がす。


「ありがとう」


 泣きながら俺に礼を言ってくる。

 俺はなるべく眼を合わせないようにする。きっと怖がらせてしまうから。


 この紐、無駄に丁寧に結んであるな。ハサミじゃないと無理か……ハサミってこの教室にあるのか?

 俺はハサミを探すために教室にある棚に移動する。ふと黒板を見ると竜吾の名前の横には『女誑し』や『二股野郎』などが書かれている。俺の名前の横には『変態』だの『強姦魔』だの狂気さえ感じさせる程の罵詈雑言が書かれている。


「あった」


 俺は棚の中にあった錆びたペンたての中からハサミを抜き、美奈を縛っている紐を切る。

 手足が自由になった美奈は力が抜けたように俺の方に倒れる。

 咄嗟に抱きとめる。すぐに美奈から離れようとするも、美奈の腕の力が強くなり、押しのける訳にもいかず取り敢えず背中に添えていた手を離す。


「うっ……ひっく……」


 美奈は俺に縋り付き、俺の胸の中で泣いている。静かに抱きしめたほうがいいのかもしれない。そんな事する資格、俺にはないけど。

 この状況はこの学校の全男子高校生が望んでいるものだろう……俺も含めて。

 だが、それでも俺の(感情)は動かない。


 いや、動けない、強い憎悪心から。

 俺は壊れてしまったかもしれないな……今の俺にあるのは以来への強い憎悪だけだ。


 それ程までに、以来はやっちゃいけない事をした。


 それ程までに、以来は女の子にさせちゃいけない顔をさせた。


 それ程までに、以来は許されない事をした。


 それ程までに、俺を怒らせた。


 それ程までに、()()許されない事をした。




 それ程までに……俺の心は壊れてしまった……





  ◇◇◇





 数分か数十分か、はたまた数秒か、俺が焦点の合ってないであろう眼で虚空を見つめていると、泣き止んだ美奈が俺から数歩離れ、口を開く。


「助けてくれて、ありが「助けてない! 俺は……俺は君を助けられなかった」


 感情が動いた。自分への怒りや、美奈への罪悪感に。


「以来が君を襲ったのは俺がステータスの出し方を教えたからだ。俺が伝えなければこんな事にはならなかった。俺も同罪だ。だから、君に礼を言われる資格なんてない。

 ごめんな……それ(男性恐怖症)、悪化させちゃって。もう二度と君には近づかないから」


「私は! 私は確かに貴方に助けてもらった。

 それに、以来くん……ううん。あの人は自慢げにこう言ってた。『元々準備はしていました。しかし貴方を連れ去る事とアレを持ち込むのには不安だったんですけどね。実行日の前日にあんな力を手に入れられるなんて……やはり私たちは運命で結ばれているようですね』って。

 だから崇史くんのせいじゃないの」


 美奈の言葉によって熱が冷めて行く。


 以来の言っていた()()ってなんだ?

 いや、今はそれよりも……


「でも! 俺には君に近づく資格なんてない」


「そんな……そんな無責任な事言わないで! それに、本当に悪いと思うなら、尚更! 責任とってよ!」


 責任? でも、どうやって?


「どうやって?」


「そんなの! 私とーー」


「そろそろ黙ってくれます? 教室の外にまで響いてうるさいんですよ!」


 美奈の言葉を遮って現れたのは以来だった。


「お前を絶対ゆるさねぇ!」


 視界が赤く染まり、胸の中で黒い物が湧き出てくる。感情が爆発し、冷静さも消え去る。

 口調が乱れ、自分らしさというものがわからなくなる。


「許さない? 一体何を? 全く、これだから低脳は」


「うるせぇ!」


 手に持っていた竹刀を上段に構え、以来へ翔ける。


「当たるわけないでしょう」


 以来はどこから取り出したマッチに火をつけ、()()()()()()()()机に何かをする。


「はぁああああああ!」


 謎の動作を無視して、竹刀を振りかぶった瞬間ーー


「うおっ」


 ーー何かが爆発し、煙が溢れ出る。

 室内を煙が埋め尽くし、視界を奪われる。


「くそっどこだ!」


「美奈の『存在察知』さえも騙す僕のスキル。貴方ごときには見破れませんよ!」


 何処にいるかわからない。美奈を守らないと。

 美奈がいた方へ後退して行くと不意に後ろから抱きしめられた。

 反射的に後ろを向くとーー


「私だから。私なら煙の中でも崇史くんを見つけられるから。あの人の気配は感じられないけどね」


 ーー抱きしめてきたのは美奈だった。

 そうか、美奈ならこの煙でも俺の気配がわかるのか。

 まてよ? この竹刀って美奈のだよな……って事は。


「美奈。竹刀使える?」


「一応全国大会クラス」


 男としては武器を女の子に託して戦ってくださいなんて言えない。でも、ここは美奈に……


 一瞬の葛藤。俺は決断した。


「美奈、これありがとう。返すな」


 竹刀を美奈に渡す。

 それにしても以来が静かだ。静かすぎる。何を狙ってるんだ?


「あの人ってずいぶん他人行儀ですね。美奈」


 以来のくぐもった声が聞こえる。

 遅い。煙っていうのはここまで晴れないものなのか?密閉空間だから?


 ん? くぐもった声? まずい! えっと、最初の立ち位置的に、窓は……あっちか!


「ストーンバレット! ウィンドブレス!」


 魔法を窓に向けて2連撃で放つ。

 ストーンバレットで窓を破り、ウィンドブレスで空気を循環させる。


「そういえば魔法が使えるんでしたっけ? めんどくさいですね」


 徐々に薄れて行く煙の中にいた以来はガスマスクをつけていた。


「やっぱり毒ガスか」


「睡眠薬ですよ」


 強力なねと付け足しガスマスクを外した以来はニヤっと笑う。

 でも、姿さえ見えれば!


 俺は『十秒加速(スタートアップ)』を発動しようと足に力を込める。


「あの時みたいに加速する気ですね。加速したらこの爆弾のスイッチを入れますよ?」


 またしても以来はどこから取り出したスイッチを押す姿勢に入って脅しをかけて来る。

 爆弾? 高校生に爆弾は用意できだろう。これは物語の世界じゃない。ハッタリの可能性が高いな。

 何より、以来は固有能力が無くてもこの事件を起こす気だったんだ。それなら派手な事はやらないはず、それなら!


「スタートアップ!」


 世界が遅れる。


 音を置き去りにする事は出来ないが、音と並走する。

 一瞬の加速で以来にに近づき、一応スイッチを奪い。体を床に倒し、上に乗る。


 5


 やばい! 美奈を逃さなきゃ!


 4


 以来の上から美奈に移動し抱き上げる。


 3


 ーーッ! ドアが開かない!


 2


 なら、窓から!


 1


 早すぎて窓から飛び降りるには減速が必要になる。でも、残りの時間じゃ!


 0



『タイムアウト』



「せっかくの加速でやった事は()()()()()()()を奪ってカッコつけて美奈を抱き上げただけですか。

 加速、使いましたね」


 以来はポケットからスマホを取り出し、なにやら操作をする。

 俺はすぐに美奈を下ろし、覆い被さる。


 ボゴンッ!!


 大きな音を立てて壁が爆発する。教室と教室の間の壁を爆破したようだ、


 耳がキーンとして、目も痛い。視覚、聴覚、そして火薬の匂いで嗅覚もやられた。


「本物!?」


「あまり僕をなめないで頂きたい。僕は天才なんですよ? この程度の爆弾を軽く作れるくらいにはね」


 以来がなんか言っている。耳が痛くて聞き取れないが。

 ふざけてる。あまりにもバカにしている。なんだよ……それ。誰かの妄想かよ。


「爆弾はまだまだ仕掛けてありますよ? 怪しい行動はしないでください。死にたくないのなら」


 美少女を襲う爆弾魔から美少女を救うって。誰でも一度はしたことがある妄想じゃねぇか。

 でも、現実はこれだ。俺はこんな状況をどうにかする力を持っちゃいない。俺じゃあ彼女を、美奈を守れない!


「こんな事して大丈夫なのか? とんでもない音だったぞ?」


「ええ。 僕のスキルは最強なんです。だから大丈夫です」


 まだなんの能力か話さないか。ガードが固いな。


「崇史くん。ありがとう」


「お礼は終わった後にな」


「本当、モブが主人公みたいな事しますねぇ! 二人とも、屋上へ来てください。もちろんその竹刀は置いて。少しでも怪し行動をしたら……わかっていますね」


 爆弾を爆発させるという事なのだろう。俺たちは奴に従うしかない。普通こんな近くにいて爆弾は脅しには使えない。なぜならスイッチを握った者も死ぬのだから。でも、あいつなら自爆する可能性さえある。だからこそ、俺たちは従わざるをえなかった。


 美奈、俺、以来の順で階段を登り屋上へ出る。


「さて、仕上げといきましょう」


 俺は美奈を庇って少し前に出る。


「僕は絶対に貴方を許しません。昨日の魔法陣。あれは絶対に異世界へ召還される為のものです。せっかくこの馬鹿げた世界から抜け出して異世界に行けるはずが! 貴方のせいで!」


 異世界に行ける? たしかに俺は運命を変えた。でも、それは死ぬ運命じゃないのか? いや、確かに特別な力があるわけだが……


「何を言ってるんだ?」


「本当に低能ですね。説明するのもめんどくさい。あれは異世界召喚の魔法陣なんですよ!」


 異世界? ふと、金髪で、エルフで、ポニーテールの女性が浮かび上がる。彼女は、一体……

 不思議と昨日のような強い痛みはない。


「貴方たちには死んでもらいます。僕と一緒に。いえ、君はいらないですね。転生するのは僕と美奈だけで十分です。そうだ! 転生する前に一回楽しみましょうか? 美奈さん。こっちに来てください」


 馬鹿げた事を言いながら以来が手招きする。


「い、いや!」


 震えながら美奈は俺の腕を強く抱きしめる。柔らかいとかんな事言ってられねぇな。


「このモブが! 僕の美奈の触れないでください。貴方はあそこの手すりまで移送してください。もちろん一人で」


 激昂した以来は何をしでかすかわからない。移動するしかないだろう。


「美奈、必ず助けるから」


 そう伝え俺は手すりまで後退する。この旧館は3階建て、それでも落ちたらヤバイという事は一眼にわかる。


「しっかり端っこに行ってください。そうです。その端っこです……死んでください!」


「は!? え!」


 端っこの一角が爆発して崩れる。当然、巻き込まれて俺も落下する。


「崇史くん!」


「生きてるよ……ギリギリね」


 そう、ギリギリ。本当にギリギリで助かった。どうにかひしゃげて飛び出た手すりに捕まる事が出来た。

 でも、この状況、誰がどう見ても絶体絶命。俺の命はもって数分だろう。


 こんな事ならもっと鍛えておくんだったな。


「どうせすぐに死ぬでしょう。あれはほって置いて、僕たちは楽しみましょう」


「いや! いやぁぁぁぁ!」


「異世界に行っても、僕のハーレムメンバーの1番にしてあげますからね」


 異世界か……俺も異世界に行けば恋人が出来たのかな? 昨日からずっと、俺は調子になっていたな……俺なんてこんなもんなんだよ。すぐに思い上がって何一つ成し遂げない。


 もう疲れたな。ここで手を離せば楽になれる気がする。それに、俺が死んだとしても、悲しんでくれる人も両親を除いたらいないだろうし。


 母さん、父さん、ごめんなさい……


 視界がぼやけ、真っ黒に染まって行く。世界が歪み、崩壊する。

 いや、崩壊しているのは俺の方か……


「さようなら※※※※※」


 視界が完全に真っ黒に染まる。今のは誰の名前だったんだろう?


「スト……スト……お願い! 帰ってきて!」


 光が見えた。真っ黒な視界を照らしてくれる金色の光。


「思い出した……死ねない! 彼女が!レフィーヤが俺を待っていてくれる限り!」


 視界が晴れ、全身から光が漏れ出す。


 片手でぶら下がりながらステータスを起動し、たった今使用回数が増えたであろう『自己進化(メイキング)』を発動しとあるスキルを取る。


一周記念(誕生日プレゼント)


 スキルの名前はわからないし、俺の誕生日はもっと先なのだがそんな事はどうだって良い。


 このスキルの効果、それはーー


 バキンッ!


 ついにボロボロの手すりが外れ俺も落ちる。


 ーー全てを思い出す!


 ステータスから溢れ出た光が俺を包み、姿が変わっていく。

 学生服は皮の鎧に、ただの学生は冒険者に、(深海 崇史)はミストに!


「ッ!」


 腰から紐のついた投げナイフを投げ、手すりに引っ掛ける。

 同時に、水晶龍の短剣の能力、『ダイヤモンドダスト』で空中に道を作り、駆け上がって行く!


 屋上では美奈が必死に抵抗していたようで、服装が乱れてはいるものの、何かがあったようには見えない。


 でも、美奈は泣いている。


 感情が爆発し、激昂する。しかし、さっきのような愚策な行動はしない。


 声を荒げて殴りかかるとか酸素のムダだ。もっと静かに、酸素を大事に。

 俺は見習い暗殺者なんだろ? じゃあ、仕事をしなきゃな。



 気配を殺して以来に近づき殴る。


「なんでおまっーー」


 殴る。


「まっまてーー」


 殴る。


「あやま、あやまるかーー」


 殴り続ける。


 気絶した以来を放置して俺は美奈に向き合う。


「大丈夫?」


「うん。助けてくれてありがとう」


 美奈の泣き顔は一瞬にして花の咲いたような笑顔へと変わる。


「それで、崇史くん! 私と、付き合ってください!」


 告白される。屋上で、美少女に。


 誰もが望んだシュチュエーション。

 危ない同級生から美少女を助け出し、屋上で告白される。俗に言うハッピーエンドなんだろう。

 でも、俺はここには()()()()


「ごめん。俺には、まっててくれる人がいるから。君とはいられない。帰らなきゃ」


「そう。わかった」


 美奈は少し……いや、すごく残念そうな顔をした後。


「それでもありがとう! この話の続きは、あっちでね。()()()くん!」


「なんでその名前をーー」


 世界が崩壊し、意識が朦朧とする。

 ただ、さっきの様に暗闇に覆われるのではなく、柔らかく、暖かい何かに覆われる感覚とともに俺は意識を手放した。






 ◇◇◇


 真っ白な空間。無駄に豪華な椅子。そして正面に座ってる光の玉。

 ここはやっぱりあそこなのだろう。


「お久しぶりですね。女神様」


「いや〜楽しませて貰ったよ。テンプレラブコメ」


「そうですか。それで、この世界はなんだったんですか?」


「それはねーー」


 女神様が語った内容はこうだ。


 決闘の際、エクスが使用した技は『英雄の審判』というスキルで、対象に夢を見せ、その夢に打ち勝てない限り一生目覚める事が出来ないというヤバイものだったらしい。


 それだけならまだしも、そこに水晶龍の短剣の中にいる。()が目をつけ、俺に試練を下したらしい。


 処遇これは、不運な事故が重なった結果。俺がパラレルワールド的なところに飛ばされたというものらしい。


 女神様は俺のそんな姿を見つけ、楽しませて貰ったお礼に、戻る前にどういう事かを説明してくれたようだ。


 ちなみに異世界での俺は3時間ほど死んだように寝ているんだとか。


「そういえばなんで最後に美奈は俺の名前(ミスト)を呼んだんですか?」


「それは……」


 少しばつが悪そうな顔をしながら女神様は爆弾を投下していった。


「君があまりにもラブコメしてたから最初から最後までミサキちゃんに見せちゃいました。あの子今は剣の巫女って言われてるから神託として……てへっ☆」


 可愛い。でも、可愛ければなんでも許されるわけではないと思う。


「何やってんすか! 女神様ぁぁぁぁ!!」


「じゃあね〜」




 またしても意識が暗転し、目が覚め俺の目の前にいたのはーー



「ミスト! 」


 ーーレフィーヤだった。


「ミスト、ミスト、ミスト!」


 飼い主を見つけた犬のように抱きついて来るレフィーヤをあやしながらこの数時間の事を考える。

 もし本当にエンス(以来)がこの歪んだ恋心を持っているならどうにかしないとな。


 まぁ、今は悲しい思いをさせてしまったレフィーヤと、迷惑をかけしまった護衛対象と師匠に、謝罪でもしますかね!



 俺たちの……俺の異世界生活は、これからだ!


時間をかけてしまいましたが、一周記念。これにて完結です! あっ打ち切りでは無いですよ?

次の記念はいつになるのか、それまで更新頑張りますので、次回もお願いします。


読んでいただき本当にありがとうございました。

誤字脱字、矛盾点、質問等ございましたらご指摘していただけると幸いです。

よろしければ次回もご覧ください。


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