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『自己進化 』 ~自分の道は自分で決める~  作者: 零度霊水
『輪廻転生』 〜光を示すもの〜
51/64

51、『祝一週年』 【EX3】 『深海崇史の事件簿』

 普段通りの時間に起きて普段通りの道を歩いて登校する。

 非日常な出来事があればなんていつも思っていたけど、非日常な事があっても無くても日常という物は変わらないらしい。


「ふあぁぁ〜やっぱりかったるいなぁ」


 昨日と同じような事を言いながら帰宅ではなく投稿する。本当にいつも通りだなと苦笑しているとーー


「大丈夫? やっぱり昨日気絶しちゃった事?」


 ーーふと、背後から声がかかった。


「え? いや、なんかここ最近体が痛いだけ。気絶してたのは疲れからじゃないかな? 貧血とか」


 俺に声をかけてきたのはクラス、いや、学校のマドンナ。美奈だった。

 極々一般人である俺からしたらこんな事も非現実だ。


「そっか。でも、気をつけてね。何かあったら心配しちゃうから」


 そんな勘違い男子を量産しそうなセリフを言いながら美奈は困ったように形のいい眉を曲げる。

 こんな顔を見たら鈍感な男子以外即告白するかもしれない。少なくとも、そう遠くないうちに告白する事だろう。

 まぁ、俺がここで告白でもしようものなら一瞬で軽蔑の視線に晒され……は美奈の性格上されないと思うが、普通に断られるだろう。


 中学時代の思い出もあるが、人を助けて惚れられるなんて『ただしイケメンに限る』の代名詞じゃないか。

 第一本当に人を助けたら惚れらるなら医者、消防士、警察官、ボディーガードなんかはモテモテなんじゃないか?

 確かに助けるという事が関係の第一歩に繋がるだろうし、印象も良くなる。

 でも、俺が助けたわけじゃない。俺が助けたのは昨日の一回だけだ。


 何より。せっかく知り合えたのに自分からその関係を破壊したくない。


「わかった。気をつけるよ」


「そうだ。このアプリ使ってる?」


 美奈が見せてきたのはLink(リンク)という。SNSアプリだ。無料で出来るメールや通話、多彩なスタンプと文字の書体まで変えられるという痒いところにも手が届く機能によって利用者爆発的に広がり、今やスマホを持った高校生の八割はこのアプリを使っているらしい。


「うん。使ってるよ」


「じゃあさ、アドレス交換しようよ」


 美少女の連絡先をゲットする。まさにラブコメみたいだ。ただ、彼女は告白は全て断り、竜吾含む男子からも少し距離をとってはいるが、社交性が高く色々な人と交換しているらしい。

 その中の一人に俺も入ったという事だろう。


「わかった」


「よしっ! ありがと」


「こっちこそありがとう」


 スマホに追加された連絡先。使う事はあるのかな。


「あと……さ。スマホの連作先も交換しない?」


 スマホの連絡先なんて友達と交換するか? いや、案外するのか? わかんないな。


 ただ一つわかっている事は絶対勘違いするなという事だ。


「ああ、じゃあおねがい」


 肯定し、スマホを渡す。


「こうして……はい」


「どうも」


 受け取ったスマホには確かに雫田 美奈の文字があった。


 何処と無くラブコメっぽい事をしていたら学校に着いた。

 いや、俺が主人公のラブコメとか絶対売れない。


 校門から下駄箱に行く。

 ちょっとした雑談をしていると靴を履き終わったあたりに、美奈がなにかを感じたように後ろを振り向いた。

 そこにいたのはーー


「少し時間をもらって良いですか?美奈さん。ついてきてください」


 ーー以来 解だった。

 解は美奈の手を取り少し弾きながら歩いて行く。

 まるで俺の存在など無かったかのように解は美奈を連れて行った。


「えっ? ちょっと! 待って」


 美奈は手を弾いて止まった。


「そういえば軽度の男性恐怖症なんでしたっけ。勝手に手を取ったことは謝りますよ」


 まるでそんな設定もあったなと言うような感じで、あっけからんとそう言う。


「それもだけど違うでしょ? 私は崇史くんと話しをしていたんだから少なくとも彼にも断ってから連れて行くでしょ?」


 そうか。美奈は俺の事も気にしてくれたらしい。やさしいな。


「いや、俺のことは気にしないでいいよ。また後で」


「そう? ありがとう。また後でね」


 美奈は解と歩いて行く。



 その後、結局教室で美奈と話す事はなく、『また後で』は起こらずに学校は終わった。

 結局、交換したLinkを使う事も無かった。




 ◇◇◇



「チェック」


「これなら」


「まだ行ける!」


 俺はともひろとチェスをやっていた。

 スポーツ万能で、基本的になんでもできるともひろが選んだ部活はチェスや将棋、リバーシがまとまった部活だ。

 ただ、この学校は最高三種類の部活を兼用する事ができ、ともひろの残り二つは運動だ。


 部活内で、将棋組、チェス組、リバーシ組、と別れてはいるが、一括りにすることによって人数が多いので部員不足で部活が消える可能性も低いし、顧問も少なくて良いとの事でまとまっている。


 ともひろがなぜここを選んだか聞いたことがある。

 そしたら「俺が入れば偶に崇史と勝負できるし、運動系三種目は練習が分散しちゃうしな。それにこれだと俺の実力じゃ試合には出れないだろ? だから唯一気を抜いて練習できそうだから」と言っていた。


 確かにともひろは俺と同じくらいの実力だった。勝率は6:4といったところだ。

 当然、俺が4な。


「これで……チェックメイト!」


駒をゲーム盤に強めに置く。カンっと良い音がなり、俺の勝利が確定する。


「ああ! 負けた」


 この瞬間がチェスをやっていて一番楽しい。

 勝負がついた瞬間ドアが開いた。


 俺には関係なさそうだしはリバーシでもやろうかな。

 なんて考えてるとーー


「崇史いる?」


 ーー名前を呼ばれたのは俺だった。


「行ってこいよ。告白かもしれないぞ?」


 ともひろは少し軽口を混ぜながら行ってきて良い。と伝えてきた。


「んなわけあるか」


部室の入り口にいたのは瞳だった。


「崇史。美奈を知らない?」


「美奈? 見てないけど。なんで?」


「彼女が部活に出ていないらしくて。部活を休む時は事前にちゃんと言ってるしそもそも部活を休む事自体少ないし……」


 彼女だって部活に出ずに探しているという事は俺が考えているより異常な事なのかもしれない。


「わかった。微力ながら俺も協力するよ」


「ありがと」


 部室を出て本館へ戻る。この別館は校門に繋がっている本館との間にグランドを挟んでいる為、色々な施設から遠いのだ。


「でも、なんで俺がここにいるってわかったんだ? 俺は帰宅部だし帰ったと考えるはずだけど」


「解が言ってたのよ。崇史なら盤上遊戯部にいるって……そういえばなんで知ってたのかしら?」


 これはスキルを取ってみるか。


 俺は残っていた『自己進化』を発動する。




 ーーーーーーーーーーーーーーーー



音速移動(スタートアップⅡ)


 十秒間音速の速さで行動する事ができる。このスキルを取ると『十秒加速(スタートアップ)』が『音速移動』に進化する。




限界突破(リミットオーバー)


 このスキルと一部スキルを除くほぼ全てのスキルの限界を超えることが出来る。『十秒加速』なら15秒間加速できるようになり、『基本魔術』なら中級の魔法も使えるようになる。




『鑑定探偵』


 鋭い鑑定眼と探偵に必要な能力がこのスキル獲得者に与えられる。行方不明になった人物の捜索や、物品の鑑定など幅広い活用ができる。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 これは……後の事を考えるならどう考えても『限界突破』を取るべきだ。だが、今の事を考えるなら『鑑定探偵』だ。

 いや、音速で校内を回って探す手もあるが……


 ここは一刻を争うかもしれない。『鑑定探偵』にしておこう。


 ステータスの操作を行なっていると本館1階に着いた。

 ここでなら使えば!


「鑑定眼発動」


「え?」


 鑑定眼を発動しても何も変わらなかった。だが、美奈の捜索という事を目標に設定した瞬間。変化が起こった。

 床に白く足跡が見えるのだ。感覚で美奈の足跡だという事を理解できた。


「俺のスキルで美奈を探してみる。ついてきて」


「う、うん。わかった」


 だんだん行き先が絞れて来る。しかし、行き先が絞れるに連れて焦りも込み上げて来る。


「こっちの方向って……」


「旧館だ」


 この学校で本館から特に遠い館が二つ存在する。室内部活の多くの部室があり、裏口に近い別館。

 来年取り壊されることが決まり、老朽化もひどいので現在立ち入り禁止されている旧館の二つだ。


「美奈はここで気を失って、何者かによってこの旧館に運び込まれたらしい」


「そんな……嘘でしょ……」


「瞳は先生達を呼んでくれ。警察関係は学校の判断を待ったほうがいいだろう」


「そんな! 私も行くわ!」


「いや、ここは俺が行く。これでも男だしな」


「でも!」


「俺を信用しろって言ったって難しいと思う。でも信じてくれ。それに、もし中で考えられる最悪の事が起こっていたとしたら、瞳は取り乱さないか? 何より最悪なのはそのまま瞳も捕まってしまう事だ。

 相手が何者かもわかっていないんだから、捕まるとしても美少女より男の方がいいだろう」


 想定すべきは常に最悪。だったら同じ女性よりまだ、俺の方が立ち直りが早いかもしれない。


「確かに……」


「何より、瞳は人の嘘を見破る力を持っているでしょ。それを俺に使って見て」


 瞳の目が二つの意味で赤くなる。真っ赤な目で涙を流している。


「絶対助けてね! あと、これ使って。美奈の竹刀。使える?」


「数年間だけ学んでたからな」


瞳が差し出してきた竹刀をしっかりと握り、軽く振ってみる。

うん。使えそうだ。


「任せたわよ!」


「任された!」


 俺たちは互いに背を向けて走り出す。こんな事ならともひろにもついてきて貰えばよかった。できれば、瞳の方にも護衛をつけたいのだ。


気を抜かず、竹刀を構えながら旧館を進む。鑑定眼を頼りに、一部屋一部屋確認して行くと突き当たりの部屋にのみ、人の気配があった。


「なんで、お前が!」


 旧館で机の上で手を縛られ口をガムテープ塞がれた美奈が泣いていた。

 解ーー以来のクズは黒板を使って動けない美奈に何かを説明していたようだ。


 黒板には俺と竜吾の名前が大きく書かれている。

多分次回で【EX】は最終回です。


読んでいただき本当にありがとうございました。

誤字脱字、矛盾点、質問等ございましたらご指摘していただけると幸いです。

よろしければ次回もご覧ください。

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