50、『祝一年目』【EX2】 『深海 崇史のステプレ講座』
前回1、2話で終わりそうと言ったのですが、もう少しかかりそうです。すいません。
「お前は……何者なんだ?」
竜吾は俺を警戒するように美奈を背中で庇い、問いかけて来る。こちらの様子に気づいた三者も奇怪なものを見るような目で俺を見て来る。
「えーと、俺は深海 崇史。普通の学生だったんだけど……何故か数秒前にこんな事が出来るようになったんだよね」
説明にもならない説明をしながら俺は人差し指を立て、そこにライター程の大きさの火を作る。
因みに詠唱はしなくても唱えられた。何故だろうか? まぁ、詠唱があったら覚えられないし恥ずかしいで百害ならぬ数害あって一利なしってところだな。
「なんだそれ……」 「すげぇ……」 「それは魔法? 一体どういう原理で……」「現実なの……」
「すごい……」
全員あっけにとられている。そりゃそうだろう。むしろこっちが聞きたいわ! これってなんなの!?ってね。
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『運命変換』を発動いたしました。その代償として消す固有スキルを選択捨てください。
注意!代償を支払わないと24時間後二つのスキルをランダムに削除します。このカーソルが出現中は全ての “スキル” となのつく能力は使えなくなります。
『自己進化』 ←削除しますか? はい/いいえ
『魔法破壊』
『十秒加速』
『基本魔術』
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スキルをタップするとそこにカーソルが移動するようだ。スキル間は広く、推し間違えは無さそうだ。
俺はリキャスト時間が二ヶ月という膨大な時間で、この日本でもう使うことの無さそうな『魔法破壊』を消す。
さて、この状況をどう説明するかな。そんな事を悩んでいたら大きな音がなった。
ガンッ!!!
さっきの大型トラッキングが電柱にぶつかって止まっている。乗っていた中年のおっさんが警察に連れていかれる。
「お前があれから助けてくれたのか?」
「まぁ、一応」
本当にどうしようかなこの状況。言い訳も思いつかないし……
「ありがとう、助かった。俺は森原 竜吾。りゅうごって呼んでくれ。変に疑ったり詮索はしないから安心してくれ」
竜吾からお礼を言われる。最後にこっちを気遣ってくれる。本当に完璧なイケメンだ。これはモテて当然だと思う。
「俺は無双 健二。けんじで良いぜ! サンキューな」
健二はお礼とともに体育会系のノリで肩をバシバシ叩いて来る。だが、不思議とそこまで痛くない。
健二はラグビー系のスポーツをやっていそうなくらいガタイがいいので、普通なら結構響くはずだけど……
「私は麻野 瞳。さっきはありがとうね」
瞳は背が高く平均を明らかに越してそうな一部を除いてスラッとしているので美少女というより美人という印象が強い。
「僕は以来 解。先程はありがとうございます」
解は背が低く痩せ型で眼鏡をかけている。一目で頭良さそうという印象の少年だ。
「改めて、ありがとうね」
美奈から何度目かわからないお礼を言われる。そんなに言わなくても良いのに。
「そんな気に留めないでね」
「ところで、さっきのは魔法ですか? なんでそんな力が? さっきの魔法陣は? 貴方は一体なんなのですか?」
メガネをかけた男が俺を質問責めにして来る。
「ごめん、俺にもよくわからないんだ。魔法陣が現れたら何故かステータスというのを展開できるようになっていて、そこに書いてあった【固有スキル】ってやつで魔法や魔法陣を破壊できたんだ。正直言って俺自身よくわかっていない」
そう、俺自身よくわかっていないのだ。このステータスや固有スキル、『自己進化』というのがなんなのかを。
ただ使い方がわかったそれだけなんだ。
個人的な予想だが俺たちは死ぬ運命だったたのだろう。だが、『運命変換』とやらが発動し運命が変わったのだと思う。
「そうですか……では、どうやってステータスを開いたんですか?」
まだ納得しきれないようで俺に最後と思われる質問をして来る。
「青い板をイメージして声でも頭の中だけでも良いからステータスオープンって唱えるんだよ。こんな風に」
俺の右手の手のひら青白い光が伸び青く透けた板を構成する。
「すごい……綺麗……」
「す、ステータスオープン」
「……」
「ステータスオープンっうお!」
「ステータスオープン」
五人全員の手のひらからちゃんとステータスプレートが出現した。
「『救世主』ってなんだこれ?」
さすが竜吾主人公っぽいスキルを持っているな。さながら俺は主人公のチュートリアル要員ってところかな? 俺自身何にも理解していないけどな。
「私のは『存在察知』って書いてあるよ」
美奈は憶測だが害意の探知とかそんなような事が出来るスキルを持っている? 持っていた? のだろう。
「私は『真偽の魔眼』? 少し痛すぎる気がするんだけど……」
瞳は魔眼を手に入れたようだ。真偽って事は嘘がわかるのか? それとも審議って勝敗がわかるって方のしんぎか? って瞳の瞳いや、目が
「麻野さん」
「瞳でいいわ。私も崇史って呼ぶし」
「じゃあ瞳。目が赤くなってるぞ」
「呼び捨て……いきなり距離を詰めてきたわね。それで、目?」
女子を呼び捨てにするって距離を詰めたことになるのか? ああーわっかんねぇ!
瞳は手鏡をバックから取り出し目を確認している。
「なにこれ……」
「瞳ちゃん! かっこいいよ!」
美奈はキラキラした目で瞳を見ている。
「そ、そう?」
瞳も満更ではなさそうだ。
「真偽って事は嘘がわかるのか?」
「多分そう……だと思う。だれかちょっと嘘ついて見て」
嘘か……
「崇史くん。ちょっとこれ言ってみて」
美奈が近づいてきて俺に嘘を耳打ちする。至近距離から耳にかかる吐息は破壊力抜群だが、それよりも俺の心にダメージを与えたのは美奈の伝えた言葉だった。
「ああ……『俺には現在彼女がいる』」
はぁ、これを嘘として伝えるって事は俺には出来るわけないって事だよなぁ。美奈さん可愛い顔してマジ小悪魔! でもそんな顔も可愛い。はぁ、辛い……
「んー多分、嘘。かなぁ」
あれ?俺に彼女なんていないぞ? 当然だが彼氏もな!
「曖昧だね。なんで?」
「考えられるのは二点。一つ目は彼女がいるけどその存在を忘れている。二つ目は恋人までは進展してないけど心に大事な人がいるとかそんな感じだと思う。
流石に恋人を忘れるってことはないと思うから後者だろうし……彼氏とかいる?」
いや、俺はノーマルだし……
「彼女もいないのに彼氏とかいるわけないだろ。そうだ、実は俺は同性愛者なんだ」
これなら完璧だろう……完璧だよな?
「ああ、確かに嘘か本当かわかるわ。今回ははっきりわかったわ」
「じゃあ、心に決めた人はいるんだ。崇史くん。誰なの?」
「いや、俺にもわからな……うう!」
頭がクラクラする。不思議と痛くはない。貧血に近い症状が出てくる。
「大丈夫!? 崇史くん!」
視界に映る美奈に美しい金色の髪をした誰かの姿が重なる。
世界が回転し、真剣にまずい状況になって来る。俺はバックからスマホを取り出した所で意識が切れた。
「……ト! ……スト! お…がい……お…て!」
今、何か……
「はっ!」
見慣れた天井だ。まぁ当然か俺の自室だし。
目が覚めたら自室にワープしていた。さっきのは夢だったのか?
「よっ! おはよう」
俺の部屋にミニテーブルを置いて皿に乗ったリンゴを食べているのは俺の幼馴染で親友のともひろだった。
「おはよう」
「おお? 元気がないじゃん。やっぱり体調悪いのか。 せっかく俺がまっててやったのに」
「いや、美少女に抱きとめられて気絶したのに目が覚めたら優男がいたらどうだよ」
「ああーそりゃ俺も気分が落ちるわって、俺のせいかよ!」
「当然だろ」
ふと笑みがこぼれ二人で腹を抱えて笑う。
俺たちは普段通りの会話をする。俺も気分はいいし特に問題はない。ともひろもそれがわかっているので冗談を返してくる。
「で、何があったんだよ。お前道端で倒れたらしいじゃん」
って事はさっきのは現実らしいな。
「多分貧血だと思う。それよりもこれを見てくれ」
俺はさっきと同じように人差し指の先にライター程の火を作り出す。
「手品?」
「魔法」
「…………」
「…………」
世界が止まる。
「なにそれ……」
「わかんない……」
「どうやってんの?」
「これを想像しながらステータスオープンって唱えて」
俺はステータスプレートを出現させながら説明する。これで地球人全員がステータスを持っているのかあの魔法陣に触れたものがステータスを持つのかわかるはずだ。
「ステータスオープン……何も起きないな。お前だけしか使えないのか?」
「ステータスは俺以外にも五人使える奴がいる」
「そうか……」
「怖くないのか? 俺はへんな力を持っちゃたんだぞ?」
「いや、お前はお前なんだろ? じゃあ俺は別に怖くないよ」
ともひろマジイケメン。本当にいい親友を俺は持ったよ。
「明日の学校には行けるのか?」
「ああ、大丈夫」
「じゃあ、明日学校で」
どうやら帰るらしい。たしかに外は暗い。もう7時だ。
「ありがとう」
「どーも」
明日は学校か。つってもそんなに変わるわけじゃにと思うけどな。
深海 崇史は気を抜けば死んでしまうような異世界にいるわけではないのでミストよりも楽観的だったり軽口が多いです。
読んでいただき本当にありがとうございました。
誤字脱字、矛盾点、質問等ございましたらご指摘していただけると幸いです。
よろしければ次回もご覧ください。




