49、『祝一年目』 1周年特別企画 『深海 崇史の非日常』
ついに『自己進化』1周年です!
因みに、特別企画はミストが主役ではありません。
「ふあぁぁ~かったりー」
そんな独り言をつぶやきながら俺は帰宅部の活動......という名の下校をしていた。
まあ今日は高校内の全部活動なしだがな~
俺の前には横並びで女子二人、男子三人の合計五人が歩いていた。横並びとか迷惑だろと思ったが、仲間内で注意されたらしく男二人が後ろに移動し、二列に並んでいた。
グループの中心にいるのは違うクラスの俺まで知っている有名人森原 竜吾だ。
彼のうわさは何個かある......オタク仲間曰く『ラノベ主人公のような奴』 クラスメイト曰く『男子剣道部部長のすごくいい人』 重度の非リア曰く『高二にしては恋愛経験が多く、本人達認定の二股をかけていたガチリア充』と色々な噂が飛び交っている。俺が証言するなら『勇者』だな。
俺? 彼女なんていないよ作らないだけ、作らないだけだからっ……ん?金髪の美人の顔が浮かんで来る。
ど、どうした俺!? ついに妄想と現実の区別がつかなくなったのか!? 妄想癖はヤバイよ……
それにしても横にいる女子二人もものすごく美人だな、まさか彼女か?.......いや、でもあの二人は恋人がいた事ないとか言ってた気がするんだよな。俺あんな美少女と面識ないぞ? 夢と現実の区別がつかなくなってるのか?
精神科行こうかな……
閑話休題
さて、いつもの俺なら即家に帰ってラノベ読むなり、アニメ見るなり、親友と電話で駄弁ったりしていたが、今日は愛読しているラノベの新刊を買うために本屋により、新刊ラノベ買い物が終わって帰路に着いたところリア充グループの後ろにつく羽目になっていた。
ちなみにネットを使わなかった理由は、本屋の本に囲まれた感じが好きだからだ。そしてもう一つ、俺はリア充の後ろを歩くのは嫌いだ。
隠者の悲しいさがなんだよ。
「あの夢はなんだったんだ? 」
俺は森原達から思考を移し、昨日見た夢を思い出していた。妙に臨場感があり、記憶に残る夢だった。
腐敗し、灰色になった大地、黒い雲に覆われた空、大勢の人々、魔物の大群。
そこはまるで世界の終焉のような場所で、ラノベやアニメの最終回みたいな場所だった。
そんな絶望の世界をバックに、金色の鎧を装備し、これまた金色のロングソードを持った勇者っぽいやつが魔物をなぎ倒し、両断し、魔物の軍勢を美少女たちと突き進む!
勇者(仮)の周りにはいろんな仲間がいた。赤い髪をした二本の剣を使う者。あいつはなんとなく苦手意識がある。夢なのにな。
魔法を使う者、2メートルを超える大剣を使う者、槍を手足のように使う者、男も女もみんな勇者(仮)に希望を持っているようだった。
俺はそんな光景を見ていた。
ただ見ていたのではなく俺もそこに立っていた。魔物を倒していた。しかし俺の戦う姿は勇者には程遠く、強さも、装備も、スキルも、何もかもが足りなかった。
そして、勇者(仮)が巨大な生物に斬りかかる瞬間目が覚めた。
目が覚めた時には勇者への憧れと、自分の現実に対する虚無感だった。
「「うわ!」」 「「きゃあ!」」 「これは……」
俺が昨日の夢を思い出していると前方の五人の悲鳴? が聞こえた。反射的に顔を上げると竜吾を中心に魔法陣が広がり、俺もその中に全身が入っていた。魔法陣は触れているものを動けなくするようで
五人の先、はるか前方から大型トラックが突っ込んで来るのがわかった。五人は魔法陣に驚き自分達に迫り来る大型トラックに気づいていない。このままでは全員轢かれてしまう。
どうすればいい! どうすればこの運命を覆せる!
感情が昂ぶり、鼓動が燃える。この状況を覆すと決意する!
すると右手の甲から光が溢れ青い板が出現する。
その板にはーー
『運命変換』発動
ーーと、書かれていた。
これは? 一体……いや、俺はこの力の使い方を知っている!
「ステータス解放」
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俺のステータスが出てくる。
名前 深海 崇史
種族 人族 (17)
所属 一般人
レベル 1
職業 無職 (この職を持つもの可能性は未知数だ。何にでもなれるが何にもねれないかもしれない)
能力値
体力 55/55
魔力 26/26
力 33
守備 24
知的 37
魔力 25
魔抗 30
俊敏 36
器用 42
技術 37
犯罪歴 無し
固有スキル
「自己進化」(スキル持ち主が何かを成し遂げた時に2〜5個の固有スキルの中から一つ 選び自分に付与 する)
(他人に表示できるスキルは一つだけであり、表示されてないスキルは『 』で覆われる。)
『運命変換』
スキル
経験スキル 無し
称号
読書家 (つい描写をしてしまう。読書スピードが上がる)
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ステータスが出てくる。使い方はわかる。でも、なぜ俺がこんな力を持っているかはわからない。
だが、今はそんな事どうでも良い!
「自己進化!」
俺の声に反応して前の五人が振り返る。俺よりも大型トラックに目をむけろよ!
ボードが三枚出現しそれぞれに固有スキル名が書かれる。
『絶対領域』 『神呪木刀』 『魔法破壊』 『最強無職』etc……
『自己進化』を使用可能回数ギリギリの三回使い、この三つのスキルを獲得した。
『魔法破壊』
(どんな魔法でも破壊することができる。しかし、連続使用は出来ない。また、破壊した魔法の精度によってリキャスト時間が変わる)
『十秒加速』
(十秒間だけ常識の範疇外のスピードで行動できる。リキャストは12時間。また、発動中は防御力が著しく低下する)
『基本魔術』
(初級ランクの全属性の魔法が使える)
これなら助けられる!
「スペルブレイク!」
ガラスが割れるような音とともに魔法陣が砕け散り、消滅する。
「何今の」「魔法?」
「俺なんかよりも前見て!」
「ひっ! トラック!?」 「いや……」
彼らはようやく自分たちが死の淵に立っていることに気づいたようだ。
「エンチャント! スタートアップ!」
10
瞬間、世界が遅れる。空を飛ぶ烏は少しづつ動いているのだろう。だが、目視して認識できない。時速数センチとかなのではないだろうか。
迫って来るトラックも、魔法陣の消えゆく粒子も、しぶきをあげる水たまりも、全てがまるで時が止まったかのように遅くなる。
9
視界の隅にタイマーが出現し減って行く。
8
どうやら考えている時間は少なそうだ。
地面を蹴り、一瞬で五人に近づき、極力触れないようにし、女子二人の脇腹を持ち、向こう側へ投げる。
6
竜吾とガタイのいい方は男なので持つ場所を気にせず、エンチャントによって上がった筋力で投げる。
4
メガネをかけているもう一人も投げ、自分も反対側の歩道に向かう。
3
「ウィンドクッション」
風が衝撃吸収材となる魔法を放って彼らが傷つかないように配慮する。
1.5
まずい! 最初に投げた女子の一人が飛びすぎている。このままでは屋根に突っ込んで大怪我、最悪死んでしまう。
1
間に合ってくれよ! 俺は足に力を込めて、飛び上がる!
0.5
彼女を俗に言うお姫様抱っことやらで抱きとめ、着地する。
0
世界が元の速度を取り戻す。
「タイムアウト。リキャスト開始します」
機械音が聞こえ全てが元に戻る。
「うわぁぁ! あれ?俺、なんでここに」
「なんだったの……」
「今の魔法陣は……」
三者は驚愕を隠しきれない様子で未だに爆走を続けている大型トラックを見て呆けている。
パトカーにも終われているし、犯罪者か何かだったようだ。
「一体何が?」
竜吾もさすがに驚いているようだ。
「きゃあ! あれ? 私死んだんじゃ」
「生きてるよ。ちゃんとね」
俺は助けた女子を下ろす。エンチャントはまだ聞いているし体重も軽いので腕への負担は無いが、俺なんかにお姫様抱っこされても嫌悪感しか抱かないと思うのですぐに下ろしたほうがいいと判断した。
「君は、誰?」
まだ、助かったという現実味が無いのだろう。トラックが爆走してきたと思ったら男の腕の中にいたのだ。驚きはすれど、冷静になるのは難しい。
少し寝ぼけたような感じで、首を少し傾げながら俺にそう聞いて来る。
「深海 崇史。えっと、よろしく」
「深海、たかし……私は美奈って名前なんだけどどこかで会った事ない?」
逆ナンパかよって言いたくなるがそんな事万が一にもあり得ない。
それよりも、昔あったことがある?こんだけの美少女に会っていたら忘れないと思うが……俺の幼馴染は親友だけだし……
「やっぱり覚えていないか」
彼女は残念そうにそう言った後、こう告げる。
「私は昔貴方に助けられたの。しかも二回も! また助けられちゃったね。ありがとう」
そう言って花の咲くような笑顔を俺に向けて来る。
そうだ! 思い出した。
あの時中学三年だった俺はあいつと家に帰っていたんだ。そしたらピンポイントで、同い年くらいの女の子が高校生二人組に廃屋に運び込まれてて、あいつはすぐに走って行ったんだ。
俺も、何回かあいつに救われたことがあったから別に止めなかった。
やばいってすぐにわかったし、そこらへんに落ちてた棒を拾って追っていった。
そしてあいつが、がら空きのドアから突っ込んでいき、平凡な俺はあいつが後ろ取られないように、どうにか守りきった。
身体中傷だらけで後日筋肉痛もすごかった。
あいつは警察を呼び、いつも通り去っていった。事情聴取とかは主に俺がやっていたし。
そこは無責任だったと思う、俺は警察の人に必死に事情を説明し、数時間後やっと解放された。しかし、家で怒られた。
彼女は未遂とはいえ、性的暴行を受けていたので、婦警さんに連れていかれていた。
「中学三年生の時?」
「うん。もう一つはもっと昔だけど」
「そっか。でも、俺が助けたのは今回だけだよ。残り二つはあいつが助けたんだから。白馬の王子様がミスしたならその友達が補わないとね」
「ううん。私にとって白馬の王子様は君だけだよ」
「それってどうい「美奈! 大丈夫か!」
俺の質問を遮って竜吾がかけて来る。
「大丈夫。崇史くん、改めて。私は雫田 美奈 。 美奈って呼んでね。これからよろしく」
美奈は満遍の笑みとともに手を差し出して来る。
「こっちこそ、よろしく」
なんとなくラブコメっぽい。
ただ、頭の片隅で金髪の美人が浮かんで来る。そして、自分の居場所はここじゃ無いような感じも……
1周年特別編の続きは来年……ではなく、明日には上がります。後1話か2話で終わるのですぐに本編に戻れると思います。
ただ、今は特別編を楽しんでいただければ幸いです。
この世界での深海 崇史は異世界での記憶を “ほとんど” 失ったミストと考えて頂くと疑問点にも納得がいくと思います。
それと、1周年に対する気持ちを活動報告に書いているのでそちらもよろしくお願いします。
読んでいただき本当にありがとうございました。
誤字脱字、矛盾点、質問等ございましたらご指摘していただけると幸いです。
よろしければ次回もご覧ください。




