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『自己進化 』 ~自分の道は自分で決める~  作者: 零度霊水
『輪廻転生』 〜光を示すもの〜
40/64

40、『幻影忍者』 毎朝俺に味噌汁を作ってくれないか?

 俺は今一度敵を見据える。

 和服の黒装束。使ってる武器はククリナイフ。イメージは西洋の武器を持った忍者。いや、身体の凹凸から見るにくノ一か。

 顔はマスクで鼻から下を隠している為、その漆黒に染まった瞳しか見えない。

 黒装束の襲撃者は二刀のククリを右手に持っている方は上に立てて構え、左手に持っている方は横の水平に構える。そしてこちらから目を離さない。どうやらカウンターの構えのようだ。


 俺は素早く水晶龍の短剣(アイシクルダガー)を右手から左手に持ち帰ると、右手を思いっきり何もないところに突っ込んだ。

 そして槍を掴み全力で投げる。


「なッ!」


 突然現れた槍に驚きながらも余裕を持って弾き飛ばす。しかし、予期せぬ攻撃というものはどうやっても隙ができる。

 黒装束の体勢が崩れた。


 黒装束がアレを弾けたのは踏んできた場数の違いだろう。でも、数は少なくてもそれなりの場数なら俺も踏んできた。

 だから、俺はこの隙を見逃すほどお人好しでも、シロウトでもない!


 一瞬で加速し、距離を詰める。移動中に左腰から紡がれる思い(アサシンベルク)を抜刀する。それと同時に氷柱を4本作り出し、射出!


 崩れた体勢からは全てを破壊する事が出来ず一本を右足に受ける。

 これで移動スピードは落ちたはずだ。


 黒装束は仰け反るようによろめいているので、低く構えたアサシンベルクを一閃! 斜め下から振り上げる。


 ガキンッ! と金属と金属がぶつかり合う音がなり、火花が散る。黒装束は踏みとどまろうとするが、右足の怪我によってしりもちをつく。


 即座にダガーを落としアサシンベルクを両手で持つ。


「うっらぁぁ!」


 上段から剣を右腕めがけ振り下ろす!

 決まった!


 剣は黒装束の右手を両断するーー




 ーーはずだった。



 振り下ろす瞬間、一秒にも満たない間だが、視界がぐらつく。その一瞬を黒装束は見逃さずアサシンベルクが弾かれる。

 そして数メートル離れた石畳に突き刺さった。


 ヤバイ!

 真横に振られるククリナイフを全力で姿勢を低くした後転で避け、落としたダガーを構える。


「そろそろ諦めたらどうだ?」


 このタイミングでの会話。

 増援でも来るのかはたまた足の傷でも直すのか。もしかしたら大技を溜める為の時間かもしれない


 どんな理由にしろここで時間稼ぎをされるのは得策ではない。


「まだ死にたくないからな。俺も美人とは戦いたくないし、それにここ町の中だぜ? そっちこそ諦めて帰ってくれると助かるんだけど、な!!」


 こっちはまだ余裕だぞという意思表示を込めてわざと調子に乗った軽口を叩いて挑発する。そして腰のベルトから麻痺毒のナイフを投擲する。

 これで話を強引に打ち切る。


「チッ余裕だな」


 ナイフを弾き一瞬で加速。

 速い! 足を怪我してこの速度。これでまだ本領発揮じゃないのかよ!


 俺の顔を突き刺そうとする相手のククリナイフをダガーで横に打ちはらう。

 ぎりぎりだったので、刃が俺の頬をかすめる。


 くっそ、案外痛いな。


 2本目のククリをダガーで上にパリィし回転しながら相手の懐に入り込む。

 そのまま下から喉を突き刺そうとするが、相手の膝蹴りを腹にくらう。これを後ろに跳びのき後転する事で受けながしーー



 ーーん? 何故かダガーの感覚が違う。


 相手はアサシンベルクを背にして戦っているので取りに行けない。仕方なく反対の方に距離を取る。


 そしてダガーに『詳細鑑定』を使う。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 水晶龍の短剣(アイシクルダガー) グレード(ナイン)


 勇者の実力を図っていた。神の使いの龍の角、牙、爪を『神の武器作成(ウェポンミキサー)』で混ぜ合わせて完成した武器。


 勇者の能力や心意気を試験していたという個性が色濃く出ており、使用者の心の強さ、成長に応じて力を貸す。




 Level Ⅰ 水晶の弾丸(アイスクリスタル)


 撃てる弾数は使用者の心意気によって変わる。強度はただの水晶。使用者の周囲に30センチほどの水晶の氷柱を出現させ対象に射出できる。


 Level Ⅱ 水晶の吹雪(ダイヤモンドダスト)


 放てる回数は使用者の心意気によって違う。使用者は自分を中心に氷の吹雪を身に纏い、放つことができる。そして任意のタイミングで吹雪を硬い水晶に変えることができる。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 これは……どうやら俺はこいつ(アイシクルダガー)に少し認められたらしい。


 相手は待ってくれない。即興で作戦を作り、カウンターの構えを取る。


 来る!


 早く(はやく!)速く(はやく!) 疾く(はやく!)


 余計な事は考えるな。思考を空っぽにしろ! 必要なのは作戦を実行する瞬間を見逃さない目と体と『絶対に勝つ!』という意志……気概だけあれば良い!


 キィィン!


 右袈裟斬り。下からダガーをかちあげてカウンター。

 仰け反った所に腹めがけ蹴り一発。



 神速の剣撃。4本の斬撃がほぼ同時に襲いかかってくる。

 姿勢を極限まで落とし突き二発回避。そこからバックステップ一気に飛び抜き十字斬り(クロススラッシュ)回避。


 後ろに回り込んでーー


 ーー振り向きざまに放たれた二発の一文字斬りも同じく低くしゃがみこみ回避。

 黒装束の上から両足を斬りつける!


「ぐっ!」


 また十字斬りを放ってくる。左手を適当に突っ込み槍を取り出す。

 すんでのところで槍とダガーを使って数秒耐え、バックステップ。


 すぐに追いかけてくる。また攻撃の速度が上がった。


 右振り下ろし。フットワークで回避。


 ーー速く!


 全身をバネにして加速! 相手の左手首を斬りつけ二刀流を封じる。


 ーー正確に!


 腹にモロに膝蹴りをくらい吹っ飛ぶ。地面を転がり衝撃を殺し顔を上げる。

 速い。もうすぐそこにいる。


 ーー冷静に!


 俺との距離約1メートル。ここだ!


生活魔法!(ライト!)


 ただの生活魔法。少し強めの明かりを作り出すだけの魔法。攻撃力はゼロ。だが、この距離なら!


「く、うっ!」


 目を開けられなくなる!


 ーー決めろ!


水晶の吹雪(ダイヤモンドダスト)!」


 俺の周りを氷の塵が舞う。太陽の光を反射し、とても美しい。

 吹雪で黒装束の足を凍らせ水晶化!


「うごけ……」


 俺は即座に首にダガーを当てる。


「お前は誰だ。何故俺をつけていた」


「金で雇われたチンピラからシフォン様を守る為だ!」


 ん? こいつ。勘違いしてるぞ。


「『幻影(ファントム)』」


 また視界がぐらつく。しかも……さっきより強く……


 構成していた水晶が溶ける。


 拘束から逃れた黒装束は俺を殺そうとクナイを投げる。


「話は聞いた。貴方は勘違いしている。さぁ、私の恋人から離れてもらおうか。ツバキ(黒装束)さん」


 レフィーヤが現れ、精霊術でクナイを弾く。


「なぜ? 私の名を?」


「私達はシフォンさんを守る為の護衛。それでこれが証拠」


 レフィーヤは依頼書の控えを投げ渡す。


「すみません。本当に申し訳ない事をしました。私はシフォン様の専属護衛の椿(ツバキ)です。この埋め合わせは必ずします。それで……シフォン様はどちらに?」


 ツバキはさっきの強い口調からとても丁寧な口調に変わる。


「戦場に連れて行くわけにはいかないから既に屋敷に帰っているが。それがどうk「ッ!理由は移動しながら話します。なので今すぐ屋敷に戻りましょう! 」


 黒装束ーーツバキは焦ったように走り出す。

 投擲物やアサシンベルクは会話を聞きながら回収したので俺もツバキ、レフィーヤの後に続く。


「その前に二人とも回復しないと」


「ああ、そうでした」


 椿は懐から小瓶を取り出し中身を飲み干す。すると足や手の傷が治った。俺もポーションを飲む。

 俺が蹴ったのに瓶が割れていない。つまりあの服は特殊な服って事か。


 なんとツバキは壁を駆け上がり屋根の上を走り出した。俺たちもそれに続く。


「それで、理由はなんなんだ?」


「貴方方は何故シフォン様が屋敷に帰ったのにまだ護衛依頼が続いているという事を疑問に思いませんか?

  シフォン様はクズやろ……領主の妻から命を狙われているのです」


 今クズ野郎って言ってたな。ここの領主はそんなにクズなのか? それよりも家族に命を狙われるっていったい……


「理由は?」


「一つは女好きの領主がメイドに無理やり手を出して生まれた妾の子だから。そしてもう一つはシフォン様の母親が……すみません。これ以上は私の口からは」


「わかった」


 ちなみにさっきから受け答えしているのは俺である。普通なら年上(っぽい)人には敬語を使うのだが、殺されかけた相手にすぐに敬語で話せといっても無理だろう。


 俺は屋敷の場所を知らないのでひたすらツバキに付いて行く。


「ここです」


 ツバキは謎のバッチを俺たちは依頼書を門番に見せる。ついでに犯罪歴があるかどうかが分かる水晶に触れる。


「シフォンの部屋は離れの一階だ。くれぐれもファイル(領主様)様に迷惑をかけるなよ」


 シフォンが呼び捨てで呼ばれていると言うだけでこの家でのシフォンの境遇がわかる。同年代の友達がいないと言っていたのもこういう理由だろう。


「では、行きましょう」


 ツバキに追従し、庭を進んでいく。離れとやらは普通の家を少しこじんまりとさせた様な家で、領主家の離れとは思えないような作りだった。

 いや、領主の離れならこんなもんなのか?


「シフォン様、ツバキです。入ってもよろしいでしょうか?」


「良いですよ」


「では、失礼します」


「「失礼します」」


 内装も特別豪華という訳でもない普通の家だった。


「レフィーヤさんにミストさん。なぜツバキと一緒にいるのですか?」


「先程知り合いました。それで、シフォン様。今日は何もされませんでしたか?」


 今日は? つまりなにかをやられているという事か。


「心配しなくても大丈夫ですよ。ツバキ」


「本当に何もされていないのですか? 屋敷の中にも味方はいます。聞けばわかりますよ」


 それでもなおツバキは引き下がらない。


「うう……本当は少し嫌味を言われました」


 シフォンは少しバツが悪そうに答える。だが、そうまでして聞き出す必要があるのか?


「嫌な事思い出させてしまい申し訳ございません」


「ううん。ツバキが心配してくれているのはわかっているから」


 それにしても妾の子ってだけでそこまで嫌悪される物なのか? 流石に行き過ぎな気が……

 その時扉が大きな音を立てて開いた。


「あらあら。()()()が三匹も集まって全く汚らわしい。そこにいる男も冴えないし。早くこの家から出て行ってもらいたいですわ」


「ほんとそうよねママ」


 扉の向こうにいたのは三十代後半くらいの金髪の女性とぶt……まんじゅ……とても個性的な体型の女の子だった。


「イケメンだったら良かったのに。こんな冴えない男じゃいる意味ないわ。まさに劣等種にお似合いって感じね」


 このまんじゅうが、冴えない男ってのはまだしもレフィーヤを劣等種だと? てめーの千倍。いや、比べるのもおこがましいレベルでレフィーヤのがてめーより勝ってるわ。


 それに劣等種が三人ってシフォンにツバキも人族じゃ無いのか。


 俺は人の思想にとやかく言いたくないがこいつがやっているのは差別だ。

 人族至上主義とかいうよくわかんない考え方をしているらしい。


「全く混ざり物はいるだけで空気が汚れるわ。全くあの人も()()なんかに手を出す事ないのに」


 混ざり物だの魚人だのふざけんなよこのババア。俺は皆を隠すように一歩前へ出る。


「あら? 冴えない冒険者貴方は何の権限があってこの屋敷に立ち入っているのかしら?」


「護衛依頼です。シフォン様の……」


「そう。なら勝手に護衛してると良いわ。この屋敷の外で。ここは混ざりものの所有物ではないし、私兵もいる。さぁ、出て行ってちょうだい」


 ぐ、確かに正論だ。ここは法律に逆らってでもここに残るべきか? いや、ここは一旦引くべきだろう。


「わかりました。細かいことを話し合ったらすぐに出て行きます。なので少し時間をください。それに私は時間が欲しいのです。美しい夫人とその娘さんに会う口実を考える為の……」


 心にも思っていない。喋るだけで吐き気がするような事を口にする。


「そう。私を口説きたいならもっとカッコよくなることね」


 そう言って二人は出て行く。うるせぇ! たとえ俺がイケメンでもテメェーらはお断りだよ。


「うう。レフィーヤ好きだ。愛してる。 毎朝俺の為にに味噌汁を作ってくれないか?」


「え? 味噌汁がわからないし流石に毎日は無理かなぁ」


 結婚してくれって意味は伝わらなかったらしい。よかった。ノリで告白とか最悪だからな。


「最悪だ。俺の尊厳は消え去った。じゃあ、細かい事を話し合おうか」


「は、はい……」


 話し合いを終えた俺達は酒場で彼に出会う。やがて俺の親友となる男と……


毎朝俺に味噌汁を作ってくれないか?の意味は告白です。

それと今回の戦闘シーンは今までと違う感じにして見ました。詳しくは活動報告に書いているのでそちらもよろしくお願いします。


読んでいただきありがとうございました。

誤字脱字や物語のおかしな点、矛盾等ございましたらご指摘頂けると幸いです。

よろしければ次回もお願いします。

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