34、『人生終了』 パンドラボックス
連日投稿いけました!
『 “裏ボス” が討伐されたので今から五分後に迷宮内の人間を全て広場に転移する。勝者のパーティーは賞品を考えておいてくれ』
迷宮の創造主の声が響く。
「ミスト!?」
レフィーヤが異変に気付く。
「なっ!まさか私を庇って」
あーあ、レフィーヤに気づかれてしまった。結局気づかれるんだけどね。彼女の足枷にはなりたくなかったんだけどな……
俺は、どうにか岩に寄りかかって座る。痛みは強いんだけど案外体は動くもんだな……
「本当……ごめんな、レフィーヤ。君が母に庇われた事が心の傷になっているのを知っているのに……こんな死に方……」
本当に俺は最低のやつだ。レフィーヤの心の傷が晴れた途端また傷を作る。
傷を作るっていうのは俺に好意があるという自惚れているわけじゃない。誰だって自分をかばって人が死んだら少なくとも数週間は心に傷が出来るだろ? ましてやレフィーヤは同じ庇い方でトラウマを背負っているんだ。それななのに俺は死に逃げする……本当に酷い話だ。
「どうして……私を……?」
レフィーヤが駆け寄ってきて、泣きながら俺に聞いてくる。
泣かないでよ、レフィーヤ。
「ただ、君を守りたいから守った。理由をつけるなら……君が、レフィーヤのことが、人として……異性として好きだから……分不相応でも君を守りたかった」
ムードもへったくれもない。声を出すのすら辛い、こんな告白で本当にごめん。
タイミングも、状況も、何もかもが最悪だ……むしろこのタイミングで告白した事は間違いなんじゃないか?
まぁ、もう玉砕でもなんでも良いか……俺良いところ無かったし……
「こんな……復讐に囚われていた私のどこが……」
俺はレフィーヤの言葉にかぶせて喋る。ストーカーぽくっても気持ち悪くてもどうでもいい。
もうはっきり言って死ぬ前のやけくそだ。
「怒った顔も、普段の硬い、キリッとしたレフィーヤも……たまに見せる素の表情も、寝顔も、戦ってる時の顔も、もちろん……笑った顔も……どんなレフィーヤも……大好きだ。理屈じゃなく、感覚で、感性でレフィーヤの事が大好きなんだ」
ここでの正解は『手伝ったんだから死ぬ前にキスぐらいさせろ』とか心にもない事を言いまくってレフィーヤからの心象をさげ、とんでもないクズ野郎だと認識させるべきなんだろう。
そんな事も出来ない俺は本当にダメだなぁ……
「ありがとう……でもっ、こんなところで告白なんて……私も、ミストの事が大好きだ!」
えっ? 俺の事が……大好き? 友達として?
「友達としてじゃない。異性としてミストが大好き!」
レフィーヤは俺に抱きついてくる。柔らかい感覚が全身に伝わる。
表現が童貞くさいとか知らない。だって俺は未だに守り続けてるし……
ただ、レフィーヤ無理してないか?
「え? 俺を好き? 俺に惚れる要因無くない?……お世辞はいいよ……悲しくなるだk」
俺はその先の言葉を話せなかった。ここで息絶えたとかじゃなく口封じされたのだ……物理的に……
“ちゅ” っと音がなる。
俺はレフィーヤにキスされたのだ。ほっぺにではなく、マウストゥーマウスだ。
何秒続いたのかは俺はわからない。一瞬だったのかもう少し長かったのか。俺が覚えているのは目を瞑った超至近距離のレフィーヤの顔と唇に微かに残る柔らかい感触だけだ。
小鳥がつつくような本当に軽く、優しいキスだが、それでも俺は確かにキスしたのだ。こんな美少女にファーストキスを受け取って貰ったのだ。
「私のファーストキスだよ。これで信じてもらえた? 私はミストの事が感覚的に、感性として大好き。でも、強いて理由を上げるなら。ひたむきに頑張っているところかな」
そうか……本当に嬉しい。レフィーヤの硬い口調が砕けていく。でもレフィーヤ、ファーストキスをずっと守り抜くってガード固すぎない?
「泣かないで、レフィーヤ……すごく、嬉……しいよ。ただ、ごめん……足枷に、なっちゃってさ……」
だんだん声が出なくなってくる。思考能力もなくなってくる。ただ、レフィーヤに抱きつかれてるから体は寒くない。
「本当にそうだよ……勝手に、勝手に居なくなろうとして……私はミストを絶対に忘れない。安心して、短いけど、ミストとの思い出でミストが私を助けてくれた事を絶対に足枷なんかにしない。絶対に死なせない。賞品の中に魔法の効果を打ち消す物があるかもしれない」
そう言ってレフィーヤはカタログを見ていく。
「無い! なんで無いの!? このままじゃ、私のせいでミストは!」
もう、考えがまとまらない。
「これは……運命なんだよ。運命なんて……信じて無かったんだどなぁ……でも、レフィーヤのせいじゃ……ない。俺は……レフィーヤを助……けた事を……誇りに思う」
もう、レフィーヤは何も喋らなかった。ただ、俺を抱きしめ、キスをしてくれた。
そして世界が掠れて、また……走馬灯を見た。地球の時よりずっと短い人生だったが、楽しかった。
戦闘なんかも出来たし、冒険者にだってなる事が出来た。初級だが、迷宮を突破することも出来た。
エルフの美少女とも知り合えた。
でも、完璧に幸せだった訳ではない。
これからレフィーヤとデートとか色々やって見たかった。報酬金で宴会とかやりたかった。
何だかんだ言って成り上がりとかもしてみたかった。
まだやり直している事も多い。
でも、ご都合主義は起こらない。世界は俺の為に回っていない。『運命』は……変わらない、変えられない。
もう、なんの感触も感じられない。ただ、俺を抱き締めているレフィーヤの暖かさだけは感じることができた。
視界が暗くなってくる。頭が、働かない。
どう……やら、此処までか。地球……では巻き込……まれて死んだが、こっちでは……美少女を救って死ぬ。全然……違う、な……
俺が第二の人生で最後に見た光景は、突っ込んでくる暴走トラックではなく、泣き笑いのような顔をしたエルフの天使だった。
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冷たくなった、物言わぬ死体を抱きしめながらレフィーヤはただ泣いていた。
その涙が、愛する者が死んだ事による悲しみの涙なのか、自分を庇って愛する者がまた死んだ事による悲しみの涙なのかは彼女以外、神にだってわからない。
ただ、冷たくなった彼をひたすら抱きしめているところを見るに、答えは分かりきっていた。
薄い紫色の髪をした女神はモニターを閉じ、髪の毛を金髪にする。
「彼に前会った時は髪の毛の色変えてたんだっけ? 思い出せないし良いや」
独り言を呟きながら女神は部屋を真っ白にし、椅子を二つ置き、髪の毛を本来の色に戻した上で、自身の姿を光の玉に見えるようにする。
「全く、運命神の私の目にとまるなんて運が良いわね」
“運命神” の前には名をミストと言う、1人の少年が座っていた。
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「ん? 俺死んだよな? いや、死んだからここにいるのか?」
俺が座っていたのはいつぞやの真っ白い空間だった。
目の前にはやはり、光り輝く玉がある。
「久しぶり、私よ私、覚えてる?」
まるでオレオレ詐欺の様に訪ねてくる。あれ? 母さん助けて詐欺だっけ?
まぁいいか。
「俺に名前とステータスをくれた女神様ですか?」
光の玉は頷いたかのように、コクリと動く。
「正解! じゃあ真の姿解放!」
俺の前に居たのは薄い紫色の髪をした女神様だった。
「女神様イメチェンしたんですか?」
「いいえ、これが私の、運命神の本当の姿よ。むしろ前回の方がイメチェン」
そうだったのか……でも俺なんでレフィーヤと壮絶な別れ方したのに気に留めてないんだ?
なんだか考え始めたらとてつもなく気持ち悪い。
「本題の一部を話すと、君は『運命変換』で自分の運命を塗り替えた。だから生き返る為にここにきたのよ」
そう、だったのか……まだ気持ち悪さは消えない。
「本当はあの転移魔法陣を通って召喚された人には必ず、固有スキルが三つ以上発現するの。でも、君は一つしかもっていなかった。……その訳を話すわ。このスキルはあげるからこれで君自身を見てみなさい」
俺が貰ったのは『詳細解析』というスキルだった。それを使いステータスボードを見ていると。『自己進化』以外に、『光の道しるべ』という固有スキルと『卑屈の混乱』、『主人公もどき』という三つの固有スキルがあった。
「貴方は巻き込まれた、少し特殊な人間なの。生き返るのは貴方が死んですぐの時間に戻すから聞いて行きなさい。貴方に課せられた運命を」
女神様は前回あった時とは、口調も、雰囲気も何もかもが大違いだった。
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