32、『暗澹冥濛』 暗闇のエルフ
3日も遅れて申し訳ありません。
前話のタイトルは適してないと思い、今回のタイトルに使いました。
暗澹冥濛の意味は暗くて先が見えない様子や、希望のないことの例えです。
レフィーヤ視点
◇◇◇◇◇◇◇
絶望、憎悪、後悔の記憶が目の前に再生される……
肌が焼けそうなほど熱い熱風が私の頬をチリチリと熱する。近くで燃え盛る炎、村に広がる黒い煙、いつ死んでもおかしくない現実によって感じる焦燥感。色々な要因によって私の中の水分と思考能力、危機感知能力を奪っていく。
数時間前まで普通に過ごしていた家が強力な火魔法により一瞬で燃え上がり、思い出と共に炭になってしまった。
家の中に一人だけ残っていた弟は骨すら残らず焼けてしまった。
それでもなお、泣いている暇はない。周りの家も燃えている。赤い肌をもつ上位種のオーク…… “レッドオーク” の大群が村を襲ってきた。
母に手を引かれ兄と共に逃げる。父はこの村で最も強い戦士なのでレッドオークリーダーを倒すために村長の所へ向かった。
「風刃!」
「暴風弾」
「微精霊の風」
母と兄が風魔法を使ってレッドオークをなぎ倒していく。
私も精霊術を使って交戦するが、あまり使いこなせない為、浅い攻撃しか与えられない。
このレッドオークが魔法耐性が高いというのも効果的なダメージを与えられない要因の一つでもあった。
そんなに大きくない村を走り抜ける。いつもなら家から五分程度で村を出れるのに瓦礫と魔物によって思うように進めず、この地獄は永遠に続くかのように感じられた。
もどかしいや……私が父のように戦えたら、精霊術以外の戦闘技術を持っていれば!
余計な事を考えていたからなのか……「あっ」私は落ちていた炭にぶつかり転んでしまった。
「竜巻のっきゃぁ!」
私が転んだから手を繋いでいた母もつられてたたらを踏んでしまう。母の高範囲攻撃魔法が中断され、あっという間にレッドオークに囲まれてしまう。
「ブモォ!」
「ぐっっはぁぁ!」
兄がオークの太い腕に殴れ、遠くへ飛ばされる。ふとオークの隙間から他のエルフが陵辱されてるのが見えた。
村長の奥さんは喉にナイフを刺し、既に自害しているようだった。酷い死に顔だった。そんな死体をオーク共は弄んでいた。
ゾッとする。自害したとしても、清い体のままで死ねたとしてもすぐに陵辱の限りを尽くされてしまう。
オークがニタニタと笑いながら私たちに近ずいてくる。もう少しで手を掴まれそうになった時オーク達がいっせいに動き、道が出来上がる。
そこを歩いてきたのは、他のオークとは明らかに違う黄金に輝く槍を持つ真紅の目をしたオークだった。
「娘の方は熟してねぇが、母親の方は上玉じゃねぇか! ククク……これだからエルフはやめられねぇぜ。息子たちガキは好きにしていいが、こっちには手ェ出すんじゃねぇぞ!」
明らかに突然変異体のオークは人族語を喋った。そしてそれの言葉あ絶望へのカウントダウンでもあった。
「ごめんなさい……私が転んだから……ごめんなさい……」
「レフィーヤのせいじゃないよ。大丈夫、お父さんが来てくれるから……大丈夫」
私はすぐに諦め、屈服してしまった。でも、母は諦めてはいなかった。
その後、その言葉通りに父が駆けつけて、戦いの末に奴の片目を奪った。
「グアアアアァァァ!!」
「お前を……殺す!」
父が駆け出した! 変異体のオークは槍を投げーーえ?
背中を押される感覚、凶悪な武器が肉を屠る音、微かな悲鳴、頬にかかる血。
振り返ると母は重傷を負っており助からないと一目でわかってしまったっ。
オークが狙ったのは父では無く私だった。私を庇って母は、重傷を負った。
「生きて……レフィーヤ。もうすぐ村長が禁呪を使う。村長から言霊魔法が届いたの……レナードを連れて……逃げて!」
「俺の……俺の妻をぉぉぉぉ!」
「炎の罠」
父が炎で出来た鎖に繋がれ、動けなくなる。私はそこまでしか見ていない。母から手渡された指輪を握りしめ、兄の飛んでった方向に一心不乱に駆け出した!
陵辱の限りを尽くしているオーク共の視界をかいくぐり、壁に穴の空いている小屋を見つける。
兄は小さな小屋の中で倒れていた。倒れている兄に駆け寄り、回復で足を直し、二人で逃げた。端っこの方だったので魔物に会うこともなく村を出れた。村を出て数分後に村が爆発した。衝撃波で私の髪が激しく揺れる。
私達の村に代々伝わる禁呪を村長が発動したのだ。
煙に包まれた村の中でただ一人、生きている存在。変異体だけはあの爆発の中生き残っていた。
それを一目見た後、私は走り出した。胸の中に復讐の炎を燃やしながら……
◆◆◆
「はぁ……はぁ……はぁ……」
気づけば私は宿の壁に手をつき、息を切らしていた。
どれだけ今が楽しくても、あいつを殺さない限り、私は暗闇から抜け出せない。
「やっと……見つけた。必ず……殺す……」
私はギルドに向かって歩き出す。一つ問題があるとすれば、せっかくミストに感謝の気持ちを込めて買ったこれが渡し方によってはミストに恩を着させてパーティーを続行させる。とても醜いものになってしまうことだ。
◆◆◆
◇◇◇◇◇◇
ミスト視点
◇◇◇◇◇◇
ギルドに着くと誰がどの順番で迷宮に入るかの話し合いがあった。
普段のパーティーを急に変えても連携に問題が出るとかで、普段のパーティーで行くことになった。ただ、罠解除系のスキルを持つ者がいないパーティーは組み直しも出来るらしい。まだパーティー解約をしていない為、レフィーヤの希望もあり、俺たちは第一軍に編成された。
先行隊の情報によると1〜3層は動く骨とゴブリンしかいないらしいが、四層からは道が整備されており、部屋や宝箱が多いらしい。しかし罠が増え、凶悪さも上がっていると伝えられた。道の幅は三人が横並びに戦える程度しかないらしく、人海戦術は使えないようだ。
領主も作戦会議に加わり、一軍は冒険者二十人、兵士十人。二軍は冒険者十五人、兵士十五人というふうに順番を決めていった。
あいにく、ギルド長は集まりに出かけているらしく、中年の服ギルドマスターが話し合いの舵を取っていた
これは三十人がパーティー毎に数分ごとにダンジョンに潜っていき、どこかのパーティーが各階層に設置されている転移陣を解放する、というものだ。あいつが『ゲーム』と言っていたのも頷ける。誰か一人でも解放すれば誰でも使えるらしく、俺たちは四層から挑戦するようだ。
ミーティングが終わり、30分で準備しろ! と言われ。パーティー内で作戦の確認をしたり、今だけ無料で配られているポーションを受けとったりする時間となった。
ただ、レフィーヤの様子が少しおかしかった。
「レフィーヤ、疲れているようだけど大丈夫か?」
「私は何も問題ないよ。ただ、ミストごめん。私はどうしてもあのオークを倒さなきゃいけない。本当に自分勝手だけど……手伝って欲しい」
ああ、あの隻眼の赤オークがレフィーヤの言っていた因縁の魔物ってやつか……裏ボス設定されてるとか絶対やばいしなぁ……まず俺表示できる固有スキルの数は無能って見られる一つな訳だしさ……逃げてもいいんじゃないか? 俺一般人だし、三十人は少しなら増減しても問題ないって言ってたから俺一人が抜けたところで別におかしいことじゃないだろ。俺含め、ランクD冒険者なんて三分の一くらいしか参加してないわけだし……
いや、周りに流されるな。周りを理由に自分の本音から逃げるな! レフィーヤに恋人がいて、自分とは絶対に付き合えないから組みたくないんだろ? いいじゃないか最後のパーティーくらい力を貸したって。こんな俺でもいいって言うならさ……
「わかった。俺なんかで良ければ協力しよう」
「本当!? ありがとう!」
たまに見せる素のレフィーヤは表現できないくらい可愛い。こんな彼女がいるとは……彼氏さんは幸せですねっ!
「それと……昨日別々に帰ったでしょ。久しぶりに兄と再開して町を回ってたんだけど……その時に見つけたんだ……これ」
レフィーヤが恥ずかしそうに真っ白い頬を赤らめながら渡してきたのは漆黒のマフラーだった。
「前ダンジョンで異常事態が起きた時迷惑かけたから。お礼になればと思って……」
正直に言おう。すっげぇぇぇぇぇぇぇ嬉しい! 昨日俺がレフィーヤの恋人だと勘違いしたのは兄だったらしいし、好きな子からのプレゼントだし、トラウマなんてさよならだ! だが、俺はここで感激しすぎて抱きついたりなんてしない! んなこと出来るのはリュウゴかエクスくらいだろ。俺がやったらセクハラで訴えられるわ!
「レフィーヤ、本当に嬉しい! ありがとう! 絶対大切にする。ただ、パーティーメンバーなんだから助けるのは当たり前だろ? 何より俺はレフィーヤに何回も助けられてるんだからさ……必ず埋め合わせはするけど……こんなに良いもの貰ったら、レフィーヤに恩返しきれないよ」
俺はふつうに笑えているだろうか? ニヤケて無いだろうか? すごく心配だ……
「ふふっわかった。ただ、それは戦闘中も装備してほしい。認識阻害のエンチャントがかかっているから」
「わかった。でもなんで認識阻害?」
「キングゴブリンに暗殺を成功させたミストが……その……かっこよかったから……」
レフィーヤは最後の方はすごく小さな声でボソボソっと喋った。でも……レフィーヤさん。俺、耳はすごく良いんです。今なら俺はこの気持ちだけでキングゴブリンも殺せそうです。
ただ、一つ心配なのはやっぱりレフィーヤの様子が普段と違う事だ。口調が全く硬くない。同い年くらいの人と話しているようだ。
因みに、マフラーは違和感なくまるでそこにあるのが当然というように馴染んだ。
閑話休題
二人でダンジョンを進んでいく。四層に来て中位雑鬼を3体しか倒していない。このルートは魔物が少ないルートなのかもしれない。
『迷宮突破』を発動させながら罠を警戒していると、とある反応があった。
「レフィーヤ、この先に宝箱が一つある」
「罠は?」
「多分かかってない。一応レフィーヤも確認してみてくれ」
「わかった……私の方で調べてもかかっていない」
部屋に入るとそこにあったのは、おそらくだが金で作られた装飾のない宝箱だった。しかし、とても輝いている。この宝箱だけでも持ち帰れたら高値で売れるだろう。
宝箱を持ち上げようとすると地面にくっついているようで持ち上げられなかった。壊す事も出来ないようだ。
鍵や、罠の類は無く、魔物もいない。これはあたりルートかもしれないな。
「開けるぞ……ふっ」
腕に力を込め、重いふたを開ける。
ギギギギ
少し音を上げながら宝箱を開けると中に入っていたのは大きな翠色の宝石だった。
「これ……あたりなんじゃないか?」
「うん。すごく綺麗な宝石だし、もしかしたら魔法のエンチャントがかかってるかもしれない。持って行こう」
やっぱり様子が違う。いつもなら『ああ、確かに綺麗だから高く売れると思う』とかそんな感じに喋るのに……
◇◇◇
その後、ボブゴブリンを三体倒した。戦っていて思ったが、俺はまだ「紡がれる思い」を使いこなせていない。どうやらレフィーヤはなんとしても隻眼の赤オークと戦いたいらしい。
もし戦うとしたら俺の攻撃力が足りない。
出来ればレベルが上がって欲しい。そうすればある程度は技術と力が上がるから。
ステータス解放
やっぱりレベルは上がってないか……ん? 『自己進化』が使える?
これは、火力不足を補えるかもしれない。
「レフィーヤ、次の部屋で一旦休憩しよう。あまり戦闘はしてないが、水分補給と休憩は出来る時にしておいたほうがいい」
俺は自己進化を使う為に休憩を提案する。
「……そうだな。武器に血や脂もついてきたし、一旦休もう」
部屋に着くとまず水分を補給して血を拭き取る。そして、レフィーヤに見えないように『自己進化』を使用する。
ステータスに手を加えるなんて変な奴に見えかねないからな……見られないようにしないと。
さて……『自己進化』発動!
▲▲▲
初、宝箱獲得おめでとうございます。
今回は二つのスキルのうち、一つを選択してもらいます。
『必勝一手』
一度だけ相手に必勝に繋がる一撃を放てます。この攻撃は、外れることもあります。
この固有スキル発動後このスキルは消えます。尚、攻撃が外れたとしてもスキルは消えます。
『必勝への一手それを当てられるかは貴方の器量にかかっている』
『属性付与』
武器に魔法の属性を付与できる。消費魔力量によって持続時間は変わるが、最低15分は持つ。
魔力を貯める時に、属性魔法を一緒に当てればその属性を付与できる。
魔力のみなら基本属性のうち、ランダムで付与される。重複は出来ないが、上書きは可能。
『武器への属性付与。それは魔法の武器を一時的に作り上げる』
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これは……どうする?
戦闘面を考えるなら絶対に『属性付与』だ。一回きりの使い捨てスキルよりもこっちのが明らかに有用性が高い。でも、裏ボスを倒すのなら……レフィーヤの復讐を手伝うなら……俺の役目はオークを倒すことじゃなく、レフィーヤに勝利の道を作ることだ!
俺は全力で姿を消してアサシンベルクで必勝への一手を打ち、レフィーヤの勝利をサポートすれば良い。
俺は『必勝一手』を選択した。
「そろそろ行こうか」
レフィーヤがそろそろ行きたいらしい。
「わかった」
『迷宮突破』を発動し、地面を見て罠を調べる……どうやらないようだ。
レフィーヤと頷きあい、部屋を出たーー
ーー瞬間、天井から魔法陣が降ってきた!
「うおっ!」
「ッッ!」
強い光に包まれ、転移した先には例の隻眼の赤オークがいた。
読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字や文章のおかしな点等ございましたら、ご指摘していただけると幸いです。
ブクマや評価、 “感想” 等頂けると本当に嬉しいです。
本当にありがとうございました。
2章もあと数話で終わりなので、連日投稿なんて考えています。




