30、『迷宮遊戯』 ダンジョンメイキング
遅れてすみません。
詳しくはあとがきで書いています。
時間をかけた分普段より多目になっています。
どうにか記憶の片隅で消そうとしていた記憶が蘇る。
「好きです! 付き合ってください」
中学三年生の夏休み少し前、俺はここ数ヶ月親しくしていた短い茶色の髪をした女子に告白していた。
特別大好きという訳では無かったが、夏休み中2人で出かけたり、電話したりしたかったし、『好き』という感情はたしかにあった。
この頃の俺は容姿にも性格にも多少は自信があり、中の上くらいだと思っていた。
まぁ、有り体に言うならば思い上がっていた。
今ほど自分に卑屈でもなかった。
「ごめん、無理。ここ最近親しくしたくらいで好きにはるほどあんたの容姿は良く無いし。性格はまぁ、いい方だと思うけどなんか頼りないし……何より、私はあんたよりーーの方がずっと好みだから。勘違いしないで」
そう俺の告白を断って彼女は去っていった。
そう彼女が好きなのは自分ではなく、親友の方だった。
でも、これで親友を恨むのはただのクズだし、逆恨みはしてはいけないとわかっていた。潔く諦めて忘れようと思った……だが、俺の考えは甘かった。
この後土日を挟み、俺は沈んだ気分で学校に行った。
異変に気付いたのは教室に入ってからだ。俺はもともとクラスで目立つ方ではなかったが、俺が教室に入った瞬間軽蔑の目を向けてくる人達が何人かいた。
そして、親友が俺に気づき俺を教室から連れ出した。
親友が言うには土曜日に親友は例の彼女に告白されたらしい。でも、親友は当時恋人がいたので当然断った。
すると、逆上して何故か俺を標的にして攻撃してきたらしい。俺の顔写真と、俺に告白されて断ったら抱きつかれて怖かったなど、八割程と言うか、告白した事と振られた事以外嘘の情報を学年中にばら撒いていた。
カースト上位の者が圧倒的優位に立つ中学校という空間で、上位の者が下位のものを攻撃したらどうなるかなんて火を見るよりも明らかだ。
その後親友や、俺を疑わなかった友達達と協力し、どうにか信頼を勝ち取った。
▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎▶︎
「は……はは……」
俺が消し去りたい過去を思い出していると雨が降ってきた。
「はぁ〜、やっぱりダメだったか……少しは自信、あったんだけどなぁ……思い上がりだったのか……何も成長して無いな、俺」
独り言をポツポツとつぶやきながら雨に濡れるのも構わず、フラフラと宿に帰った。
「いらっしゃいませ」
「えっと、夕食を貰えるか?」
「はい」
10分程待つと夕食が出てきた。
野菜炒め、米、スープだった。メニュー内容は奇しくも前回レフィーヤと食べた時と同じものだった。
味? まぁ、美味しかったんじゃ無いかな? 前食べた時は美味しかったし。味なんてほとんど感じなかったけど……
部屋に行き、レフィーヤから受け取っていた合鍵を使って部屋に入る。
武器の手入れやステータスの確認、『自己進化』の固有スキル選択などやる事は沢山ある。
でもレフィーヤが帰ってきたら俺は一方的に気まずい思いをするし、どこか引け目を感じてしまうだろう。
「寝るか……」
布団に入って寝た。
◇◇◇
目が覚めたら早朝だった。かすかな光が顔にかかる。まだ太陽が出きって無い。四時半ぐらいだろうか?
ふと、隣のベットを見るとレフィーヤが寝ていた。
「ん? なんだこれ……バリア?」
レフィーヤの周りに透明な膜ができているの気づいた。
前回はレフィーヤ自体に見とれて細かいところまで見ていなかったんだな。
これをレフィーヤの身を守るものと仮定すると下手に触れない方がいいだろう。もし感知センサーの様なものがあったらまずい。
まぁ、レフィーヤとのパーティーも彼女への片思いも今日で終わり……いや、今日で終わりにしないとな。
出来るだけ早く忘れられるよう努力しないと……いや、努力でどうにかなるか知らないけど。
一応またレフィーヤに置き手紙を残して合鍵だけの持ち、部屋を出る。当然安全のために鍵はかけていく。
中庭に出て『紡がれる思い』を取り出し、素振りする。
フランベルジュという剣は対人戦において多大な攻撃力を持つ。炎の様な刀身によって、相手の傷をなおりにくくしたり、大きな傷を与えたり出来るなどの利点がある。
弱点は薄く折れやすい為、ショートソード程雑に扱えない。流石のショートソードでも飛んでくる大石を叩き落としたら折れたけどな。
素人目線から見ると薄かったり折れやすかったりと、フランベルジュと刀は性質が似てる様に感じる。
使いこなせるか不安だったが、幸い『基本斬撃』の “剣術” というカテゴリーにフランベルジュも含まれるようなので、もう基本なのかどうなのかもわからないが、一応基本は出来るらしい。
使い勝手がいいなら嬉しいのでよかった。
ただ怖いんだよな、こんなに使い勝手がいいスキルだと何らかのデメリットがあるんじゃ無いかって……
閑話休題
素振りをしていると、レフィーヤがまた風を飛ばしてきた為、素振りを切り上げて宿の中に戻る。
本当にこの前の朝となんら変わらない……俺の気持ち以外は……
朝食を二人分頼み待っているとレフィーヤが降りてきた。手を振ってこちらの位置を伝える。
レフィーヤが席に着くとすぐに朝食が来たので、食べながら話すことになった。
“今後” の事を
まずレフィーヤが会話の一歩目を切り出す。
「今日でパーティー解散の予定だったけど、私はもう少しこの街にいるし、ミストが良ければだけどまた少しの間パーティーを組んでくれないか?」
少し前の俺なら飛びついていただろう。
でも、今の俺は違った。
「ごめん、レフィーヤ。一日考えさせてほしい。レフィーヤと一緒に戦ってると楽しいし、安定するんだけど。自分に不甲斐なさを感じてしまうんだ。もし俺が、レフィーヤに助けられてでもパーティーを組みたいって思ったら俺が頭を下げて、それこそ土下座してでもレフィーヤにパーティーを組んでくれと頼み込む。だからレフィーヤも考えておいてほしい。本当に俺はレフィーヤがパーティーに誘うほどの人物なのかを」
これはただの俺のエゴだ。俺がレフィーヤといると辛いからこんなに俺にとって好条件なレフィーヤの誘いを断っている。
俺は明らかに上から目線で話している。自分で自分が嫌になってくる。
だが、自分勝手でも、ヘタレでもなんでもいい。他の人にとっては些細な事でも俺にとっては辛いんだ……
俺の答えはもう決まっている。
もう俺は、レフィーヤとパーティーは組めない。
「そうか、わかった……でも、私はミストは十分凄い人だと思うよ」
お世辞でもそう言われると嬉しいな。
「ありがとう」
「さて、話は変わるけど昨日は帰るのが遅くなってしまった。ごめん」
「いや、いいよ。というか俺に気を使う必要もない。レフィーヤだって付き合いがあるだろうし、俺たちはパーティーメンバーとはいえ、細かく言えば他人だからな」
まぁ、結局のところ俺とレフィーヤは “他人” だからな。
「そうか」
「それに、パーティーもこの宿も今日で一旦終わりだしさ」
その後、明日の集合場所だけ決めてレフィーヤとは別れることになった。
◇◇◇
整備されている石畳の道を歩きながら今後の事を考える。
「この後どうするかなぁ……」
つい独り言が漏れてしまう。
まず初めに、この街に初めて来た時に泊まった宿の予約をして、ギルドの訓練所でアサシンベルクを手に馴染ませて……ああ、ポーションも買わないと。確か持っていたのは時全部使い切っちゃったし。
レベルアップの確認と『自己進化』のスキル選択もあるな……
「とりあえず宿のチェックインからだな」
たった今立てた今日の予定に従い、前に泊まった宿に歩き出す。
そして一日分頼んだ。俺の実力だとソロで中級迷宮を突破するのは難しいし、丁度よく戦士職を探しているパーティーがあるとは思えない。一応探してはみるが。
閑話休題
宿の部屋に入り、ステータス解放と唱える。
◆◆◆
名前 ミスト
種族 人族 (17)
所属 冒険者 一般人(異世界人)
レベル 12
職業 見習い暗殺者(暗殺者を目指すものが持つ職業。対象に気付かれずに攻撃を当てる事が出来ればステータスに補正。)
能力値
体力 72/86 (+5)
魔力 35/45 (+5) (+3)
力 55 (+5)
守備 38 (+5)
知的 46 (+5)
魔力 33 (+5) (+4)
魔抗 37 (+5)
俊敏 44 (+5) (+8)
器用 49 (+5) (+2)
技術 55 (+5) (+3)
レベル10になったので全ステータス+5アップ
合計20アップ
犯罪歴 無し
固有スキル
『自己進化』(スキル持ち主が何かを成し遂げた時に2〜5個の固有スキルの中から一つ選び自分に付与する)
(他人に表示できるスキルは一つだけであり、表示されてないスキルは『 』で覆われる。)
(能力値がスキルの持ち主の願いを多少は反映する。討伐時に使った能力値が優先して上がる)
「基本斬撃」 『無我夢中』 『迷宮突破』
スキル 「生活魔法」(生活に便利な魔法が使える)
「死に損ない」 (致死に至るダメージを負った時、体力が一桁になった時に発動。自分が死ぬまでの時間を数分間延長できる。その間に、回復が出来ればそのまま生きながらえることも可能)
「激痛耐性ーー大」
(強い痛みに大きな耐性を確保し、痛みに耐えられるようになる。)
経験スキル
「忍び足」
(存在を感知されにくくする事に大きな補正と、バレずに攻撃を繰り出せば攻撃力に補正大)
称号
異世界人(異世界から来た者。本の内容などを覚えやすくなり、記憶力が上がる)
読書家 (多くの本を読んだ者が獲得する称号。つい描写をしてしまう。読書スピードが上がる)
女神様の玩具(たまに女神様が自分の行動を見てくれるかも?)
足掻きし者(変えられない運命を足掻いて変えた者が獲得する称号。スキル「死に損ない」を獲得する。)
意思を紡ぐもの(受け継がれる意思を紡ぐ資格を得たものに送られる称号。紡ぐ権利を得た時に、真の力を発揮するだろう)
◆◆◆
やっとレベル10の壁を超えられた。しかも激痛の耐性も獲得できたし、職業も見習い暗殺者になれた。
意思を紡ぐものは本当に俺が資格を貰っていいのかわからないが、託されたのなら真の力とやらを目指してみよう。
さて、ここからだ!
俺は意を決して『自己進化』をタップするーー
ーーするといつも通りのボードが出てくる。
▲▲▲
初級迷宮突破おめでとうございます。今回はこちらの三つの中から進化の道を選んで頂きます。
『暗殺技能』
暗殺に必要な技能をほとんど全て獲得する事が出来る。しかし、心構えや職業。経験スキルは獲得できないので、このスキルでなれるのは空っぽの暗殺者だろう。
『スキルに頼るだけじゃあ真の暗殺者にはなれない』
『美男紳士』
このスキルがあればあら不思議! どんな平凡な男も一瞬でイケメンの紳士になれます。
しかし、取り繕った自分をいつ見抜かれるかはわかりません。
『本当の紳士はスキルにあぐらをかいてはいけない』
『狂気新生』
『無我夢中』の進化スキル。発動条件などは変わらない。
全能力値が3倍になる代わりに、残り体力が1割を切るまで止まらない。
獲物が近くにいないと自分から探しに行く。
『さらなる狂気は使用者を新たなる人種ステージに進化させるだろう。だが、怒りに呑まれた狂気のいく末は誰にでも予想がつくだろう』
▼▼▼
うーん。なんか今回のスキルの説明、キツくないか? いや、俺はどこか心の中で女々しい俺自身をキツく言って貰いたかったのかな?
それにしても俺は、どれだけの狂気に包まれてるんだよ。絶対に、取らないからな!
『美男紳士』が欲しいが、これからまたソロに戻る事を考えるとどう考えても『暗殺技能』だよなぁ……
10分ほど悩み、『暗殺技能』を取ることにした。
「選択っと……ん?」
『暗殺技能』を獲得した後、もう一度ステータスボードを見ると『自己進化』の文字が今までに発動条件が満たされた時よりも強く光っている事に気付いた。
「押してみるか……」
ステータスボードに触れようとした瞬間ーー
ーー街に若い男の声が響いた
『これより、創造遊戯を始める!』
3日も遅れてしまい普段読んでくださる方に大変ご迷惑をおかけしました。
最近遅れていた理由に関して、詳しくは4/26日に活動報告を上げるので、そちらも読んで頂ければ幸いです。
読んでいただき、ありがとうございます。
誤字脱字や文章のおかしな点等ございましたら、ご指摘していただけると幸いです。
ブクマや評価、 “感想” 等頂けると本当に嬉しいです。
本当にありがとうございました。




