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『自己進化 』 ~自分の道は自分で決める~  作者: 零度霊水
『新人期間』 〜暗闇のエルフ〜
28/64

28、『王様雑鬼』 扉の向こう側

遅れてしまい本当に申し訳ございません。

「準備は大丈夫?」


 レフィーヤが最終確認を聞いてくる。

 今更怖気付いたってどうにもならないでしょ。だったここは自信満々に言っときますかね。


「ああ、準備も覚悟もバッチリだ!」


「それじゃあ、行くぞ」


 俺たちは二人で一緒に迷宮主(ボス)がいる部屋の扉を開ける。俺が右、レフィーヤが左だ。

 確か普段はここで出てくるボスは武装した赤雑鬼(レッドゴブリン)が三びき出てくるセットか中級の火魔法を使うゴブリンメイジと盾を持ったゴブリンタンクがそれぞれ1匹づつ出てくるセットのどちらかだ。

 このセットのどちらかが出てくれば多分だが、比較的楽に戦闘を行い、ほぼ確実に勝利を掴めるだろう。

 だが、今迷宮内は異常事態(イレギュラー)が起きていて魔力が濃くなっているのか迷宮内に普通にいる魔物(モンスター)も強化されていた。

 というかレッドゴブリンが普通に迷宮内を歩いているのを見たときはビビった。

 小さく声を出してしまい、危うく戦闘になりそうだった。


 このことから考えるにまず間違いなくボスも強化されているだろう。この迷宮は、雑鬼(ゴブリン)しか出ないのだが、もしかしたらもっと上位のモンスターが出現するかもしれない。


 力を込めて扉を押し込むとギギギギギと重い音を立てながら扉が開く。

 扉の開いた先にいたのはーー


「あ、あれは……」


「あの()を見れば俺でもわかる」


 そのモンスターは銀色に輝く鎧と身の丈に合わない大きな盾を装備しているゴブリンナイトを二体側に控えさせていた。

 武器はそれぞれロングソードとハルバードだ。

 背は小学生くらいの高さで全身が暗い緑色をしている。大きな赤い宝石のついた杖と豪華な紅白色のローブを着ていて装備も豪華で派手だ。

 だが、このモンスターの一番の特徴は豪華な杖でも派手なローブでもない。小さな体に似合わない不恰好の大きい頭に乗った金色の冠だ!


「なんでキングゴブリンがいるんだよ!」


「まさか、キングゴブリンがいるなんて」



 ーー王様雑鬼(キングゴブリン)だ。


「それでも、やるしかないよな」


 こんな仲間を引っ張っていったり、奮い立たせるなんて俺の柄じゃないんだよな。

 あっち(地球)じゃそもそも誰かを心から信じるなんて事が出来なかった。むしろ出来る奴の方が少ないんじゃ無いだろうか?

 あいつは、リュウゴ(勇者)はできてそうだけどな。


「ああ」


「行くぞ!」


 でも、こうでもしないと、必死で見栄を張らないと一般人()じゃ勝てないから、怖じ気付いちゃうから俺は()を奮い立たせる。仲間(レフィーヤ)じゃなく、俺自身を。







  ◇◇◇








 俺達はほぼ同時に武器を抜く。俺はショートソードを、レフィーヤは夜風の剣(ナイトウィンド)を使う。

 黒い刀身に黄緑色で『風』を体現するような紋章がデザインされている。刀身の長さは目測だが80センチ以上はありそうだ。


 疾走する俺達の前にゴブリンナイトが立ちはだかる。


「私が(ハルバード)を受け持つ、ミストは(ロングソード)を頼む。それとキングゴブリンには気をつけたほうがいい。どの属性かはわからないが奴の得意な属性なら上位魔法も来るはずだから」


「了解。そっち、任せたぞ」


「ああ」


 俺は目の前のゴブリンナイトのみを標的に定め、剣を振りかぶる。


 カーンと甲高い音を立て俺の剣は敵の右手に持つ盾に防がれる。

 敵は俺が無防備になった一瞬をつきなぎ払いをしてくる。


「ッッ」


 すぐに後ろに飛び跳ねて避けるが、どうやら避けきれなかったらしい。

 だが、皮鎧に使われている素材は相当良いものらしく少し傷が付いているだけだった。

 何がミスリルが使われている部分以外は普通の鎧だよ。あの嘘つき(王女)め、充分良いものじゃないか。

 でも、本当にありがたい。


「ゲヒャアア!!」


 敵は片手で長剣を上段に構え盾で体をガードしながら突っ込んできた。背は低いので威圧感は無いが、剣先が丁度俺の心臓の位置にあるため避けないとまずいだろう。


「シッ」


 叩きつけてくる剣を右に避けて躱し、お返しとばかりに首筋に剣を突き立てーー


 ーーずに全力でバックステップをする。

 するとさっきまで俺がいた場所に速度重視の魔法、火の投げ槍(フレイムジャベリン)が突き刺さる。


「ちっ」


 出来ればあのまま決めたかった。

 俺の剣術だけではあいつに勝てない。もっと鋭い剣術を! 剣技を! もっと早く!

 レフィーヤの方を確認しようとしたらよそ見するなという事だろう。

またしてもゴブリンナイトは剣を斜めに振り下ろそうとしている。

 右袈裟斬りを狙っているようだ。


「ゲギャァァァ!!」


 敵は剣を振り下ろした!


 俺は相手の低い位置にある刀身と打ち合えるよう腰を低く落とし、足に力を込め袈裟斬りをガード。

 そして踏ん張る。


 ガキンッッ


 金属と金属が打ち合う音が響き火花が散る。

 低い位置から全身力を使い自分の剣を相手の長剣ごと打ち上げる!


 いくら力が強いタイプの魔物とはいえ敵は片手で剣を持ち、こっちは両手で剣を持っている。言うなればこれは確定していた事!


「せあ!!」


 俺は相手の打ち上がっている剣を警戒し、左肩(剣を持った方の肩)の鎧の隙間を狙って突きを放つ。


「フレイムアロー」


 キングゴブリンの詠唱と魔法名が聞こえ魔法が放たれるーー

 ーーが、俺には当たらない。

 ゴブリンナイトに足払いをして、体制をよろけさせる。結果、魔法の射線にはゴブリンナイトが重なり俺の盾となる。


「グギャア!」


 三本の火矢をくらいゴブリンナイトがこっちに吹っ飛んでくる。俺は飛んでくるゴブリンナイトを避けながらすれ違いざまに切り裂く!


 ドサ!


 重い音を立てて敵の左腕が落ちる。


「グギャァ」


 敵が憎悪を込めた声を上げる。

 頭にも防具をつけているので表情はわからないが醜悪な表情をしているだろう。

 俺は剣を仕舞い、水晶龍の短剣(アイシクルダガー)を構える。


「はぁ!」


 俺は周囲に氷柱を三本浮かせ走る。

 氷柱を飛ばすと敵は盾で全身を隠して全て防いでしまう。が、俺が相手の視線から隠れた隙に相手の攻撃の死角となる左肩を狙い傷口に思いっきりナイフを突き刺す!


「ギャアァ!!」


 敵が俺を盾で殴る前にナイフを回し体の中をぐちゃぐちゃにする。

 ナイフを抜くと血が顔にかかり吐き気がするが、気持ちに打ち勝ち喉を刺す。


「グ……ギャアァ……」


 最後に掠れた悲鳴をあげゴブリンナイトは事切れる。

どうやらボス部屋はモンスターを全て倒さないと灰にならないらしい。もしかしたらここだけかもしれないがな。

 警戒はしたまま、ナイフを引き抜き、バックから布を出し顔を拭きながらレフィーヤを見る。

 なるほど、俺にあまり魔法が飛んでこない理由がわかった。

 キングゴブリンはレフィーヤが攻撃を仕掛けるたびに様々な属性の魔法を使いレフィーヤを邪魔していた。

 ゴブリンナイト(ハルバード)との連携も完璧だ。

 きっとこいつらの本来の戦い方はこの連携なんだろう。でも、レフィーヤが強すぎた為にサポートがこっち(ハルバード)に偏った。だからこそ俺はあいつ(ロングソード)に勝つ事が出来た。


 キングゴブリンはレフィーヤにかかりっきりでこっちのゴブリンナイトが倒された以降はこっちに視線を向けてこない。

 ここからキングゴブリンがいるところまでざっと20メートル。

 ここはどうするか? 走って攻撃をするか、暗殺を狙うか。


 レフィーヤは攻めあぐねてはいるが辛そうではない。まだ余裕がありそうだ。だが、これ以上長引けばいずれは負けてしまうかもしれない。

 よし、暗殺を狙うか……


 俺が履いている運動靴はこの世界の靴の音に比べて音が立たない。当たり前だが、本職の人には負けるがな。

だが、迂回すればいけるかもしれない。


「よしっ」


 俺は気合を入れ直し、音が立つ剣と短剣の鞘をカバンに仕舞う。

 俺は自己暗示を行う。

 気配を消せ。なに、簡単だろう? 学園祭の打ち上げで友達が急遽休んだ時、他の友達は事前に断っていたし、リア充な友達は彼女と楽しげに話していた。

 その上親友は別クラス。必死で影を、気配を消していたあの時を! 今回は俺の命がかかってる。絶対に成功させるんだ。


 そう心に誓い。この世界を第三者気分で見る。歩き出した瞬間、ずっと鍵がかかっていた扉の向こう側が見えた気がした。


 腰を低く落とし、音を出来るだけ消して移動する。俺はプロでも本職でもないので完全に音を消すことなんて出来ない。そもそも気配を消す感覚なんていうものがわからない。それでも全力で気配を消し、バックスタブを狙う。

 俺にもっと力が、器量が、技術があればもっと戦えるのに。

 暗殺は中二的に見てめっちゃカッコいい。でも、好きな人(レフィーヤ)の前くらいは堂々と戦いたい。


 そんな事を考えながら移動する。もちろん警戒は怠らない。

 さて、標的の近くまできたがいかんせん隙がない。嫌、隙はあるんだが、距離的に近づく前に奴の得意な雷魔法で防がれる。

 どうするか考えているとキングゴブリンが上位属性の雷の詠唱が長い呪文(多分上級魔法)を唱え始めていた。


 ここしかない!


 俺は詠唱にかかる時間や呪文の種類は殆ど知らないので敵の脊髄を狙い全力で駆け出す!

 が、どうやらあいつが唱えていたのは中級呪文のようで残り数十センチのところで俺の方を向きデュアルライトニングなる呪文を放ってきた。


 一直線に伸びる雷の光線が二本俺を襲う。


「ぐぅ」


 どうにか左手の籠手に付いているミスリルで光線一本は魔力を飛ばすが、もう一本は避けきれずに脇腹を貫く!

 酷い痛みの中、この皮鎧は魔法に弱いという事を学ぶ。

 痛みで目が眩むが最初に決めた意思(ナイフを)突き通す(突き刺す)


 人間と同じ構造をしている生物の弱点(と思われる)をおもいっきり突き刺した為、すぐにキングゴブリンは事切れた。


 俺も凄い辛い。雷の熱によって傷口は焼けて塞がっている為血は出ないが、酷い痛みが身体中にはしる。

 顔を動かしてレフィーヤを見るとゴブリンナイトの首をはねていた。

俺の目の前で事切れていたキングゴブリンが灰となり爆発する。

 この爆発にダメージは無いはずだから……これで安心だな。

 何かが床に落ちる音を聴きながら俺の視界は暗転した。


読んでいただき、ありがとうございます。

誤字脱字や文章のおかしな点等ございましたら、ご指摘していただけると幸いです。

ブクマや評価、感想等頂けると本当に嬉しいです。

本当にありがとうございました。


春休みも終盤。中高生の皆さんは宿題に追われている頃でしょうか?

私もリアルの事情が立て込んでおり、ここ最近の更新が大変遅れてしまいました。

本当に申し訳ありません。これからもエタらずに頑張りますので読んでくださるととても嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。


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