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『自己進化 』 ~自分の道は自分で決める~  作者: 零度霊水
『新人期間』 〜暗闇のエルフ〜
23/64

23、『自業自得』 覚悟の有無

大変お待たせして申し訳ありません!


 最悪だ。本当に......


「本当に......本当に貴方がシャンを護衛、いや......殺したんですか!?」


 シャンの彼女が悲痛な声をあげる。


「確かに俺が護衛依頼を受けた......でもっ......俺だって必死に守っ」


「守れなかったじゃないですか! その上、自分は平然と生き延びて! 」


 俺の言葉を遮って彼女が叫ぶ。


「違う、俺だってさっきまで死にかけていて......それで」


「でも結局シャンは死んでしまい、貴方は生き残った。それが結果じゃないですか!? まず、貴方は本当にランクD何ですか? シャンが行ったのはランクDになる為の依頼です。そんなところにいる魔物から人を守れないで......最初っからできないなら軽く了承しないでください!!


 彼女の言っていることは後半からぐちゃぐちゃになっていた。ただ、彼女がシャンの事を本気で愛しているという気持ちはこの場にいる全員に伝わっていた。


「いやっあの時は異常事態(イレギュラー)が起きて、オーク(ランクC)が大量に現れて......」


「本当にオークなんていたんですか? これも貴方の嘘なんじゃないですか?」


 俺は自然と声を出すのをやめてしまった。周りの冒険者の俺を見る目がどう見ても犯罪者を見る目だった。

 やめてくれ! 俺をそんな目で見ないでくれ!

 俺はもともと自分から人の目に写りに行くような人間じゃない。そんな俺が大勢の嘲笑、正面からの強い敵意を一身に受ける。


『もうどうでもいいや』


 異世界に召喚された一般人の高校生(少年)の心は壊れかけていた.....


「もう諦めろにいちゃん。どうやらめんどくさい依頼人(ハズレ)に引っかかったようだなぁ。

 これだから個人の護衛依頼はこれだからめんどくさいんだ。あっちの願いを聞いてさっさとご引き取りねがうしかないんじゃねぇの? 」


 優男の隣にいたおっさんが俺の肩を軽く叩いて相手に聞こえないように耳打ちしてくる。

 だが、それは助言ではなく明らかに嘲笑を含んでいるものだった。


「お嬢さんはこいつ()に何をして欲しいんだ?」


 優男が彼女に聞く。彼女が美人だから心が弱っているところを狙って落とそうとしているのかもしれない。

 あと残っているのはおっさんと同じ野次馬だろう。冒険者は死と隣り合わせの職業だ。ランクC以下はいつ死んでもおかしくない、それが冒険者だ。

 この中で本気で彼女を心配している者はいるのだろうか?


「何かして欲しいとかは特には......ただ、気持ちの整理がつかなくて」


「じゃあ手っ取り早くこいつに死んでもらうとか? 」


「えっ?」


 彼女も驚いている。そうだろうってかこいつは馬鹿か? お前にも彼女にも俺を殺す権利なんてない。

 つーか、なんだこれ? あほらし、いっそこのまま帰るかな。確かに俺は守れなかったでもさ、あいつらだって冒険者だったんだし死と隣り合わせなのはわかってただろ。悪いとは思っているけどさ。

 イレギュラーが起きたんだし、これが俺の限界だ。


 俺の思考が完全にダークサイドに落ちかけた時、救世主(レフィーヤ)はついに声を出した。


「そろそろこの争いをやめないか」


「貴方は?」


「ランクB冒険者のレフィーヤだ。私が彼を救出者、回復した」


「なんでシャンを助けてくれなかったんですか?」


「私が行った時にはすでに事切れていた。魔法で頭を撃ち抜かれてな。彼らがあったのは明らかなイレギュラーだった。普通はオークはあそこには行かないし、オークメイジはいない。いわばこれは不幸な事故だった」


 ああ、オークマジシャン(仮)ってオークメイジってのが正式な名前だったのか。


「そんな事言われたって......」


「気持ちはわかる。私も昔大切な家族を()()に殺された。でも、ここは抑えるしかないんだ。

 この世に絶対は無い。いくら護衛を雇っていても人間......いや、生物は死ぬときは死ぬんだ」


 彼女の言葉を聞いてるうちに俺の思考も落ち着きを取り戻してきた。俺の壊れかけていた心が徐々に回復する。

 彼女も落ち着いたのかレフィーヤの言葉をすんなり聞く。


「わかりました。これは魔物が起こした不幸な事故だと考えます。でもーー


 彼女は納得したようにこちらを向き、言葉をつなげる。


 ーー私は貴方を恨みます。たとえシャンが死んでしまったのが不幸な事故だったとしても、貴方がそこにいただけの人であったとしても、私は貴方を恨みます。これだけはどうしても気持ちの整理がつかないんです。すみません」


 彼女は軽く頭を下げるとギルドから出て行こうとする。


「本当にすみませんでした」


 俺は彼女に頭を下げて心から謝罪する。彼女は特に反応を示さずに出て行った。

 俺が最後にやったのは無様な行為かもしれない。でも、心から謝ることすらできなくなったら俺が俺で無くなるような気がした。


 静かになったギルドで一番に口を開いたのはレフィーヤだった。


「パーティー申請を頼む」


 そうか、そういえば元々パーティー申請をしようとしてんだっけ。


「わかりました。では、カードを......はい、登録は完了しました」


 ギルドカードにパーティーメンバー…レフィーヤと書かれていた。


「行こう」


 レフィーヤにそう言われて俺たちはギルドを出る。

 宿屋街に向かいながら会話をする。


「さっきはありがとう」


「いや、私はただこんなに遅くなると宿が取れるか心配だったから早く帰りたかっただけだ」


 たしかにもう夕方、どちらかというと夜に近かった。


「そうか......わかった、そういうことにしておくよ。でも、ありがとう」


「じゃあこっちも、どういたしまして」


 レフィーヤは花の咲くような笑顔でこちらの礼に答えてくれる。

 後に俺はこう語る。『思えば本気でレフィーヤに惚れたのはこの時かもしれない。でも、ここで引き返していればこんな事にはならなかったのに』と......


「ただ、君には覚悟が足りなかった。人を守るという覚悟が。そして彼女にも冒険者を愛するという覚悟が足りなかった。そこは忘れないようにした方がいい」


覚悟の有無か......俺には無かったな。



◇◇◇




その後レフィーヤと少し会話をし、あることに気づいた。


「そういえばレフィーヤ。昨日と同じ宿に行かないのか? 」


「そうだね。ちょっとした理由があって昨日は急いでてさ」


「そうか。俺も今日の宿は決まってないんだよな」


「じゃあ一緒の宿にでも泊まるか?」


「それがいいかもね」


 俺は苦笑いしながら答える。

 その後俺はこの選択が大正解でもあり、ちょっとした失敗である事をレフィーヤと2人部屋を借りた時に悟った。


読んでいただき本当にありがとうございます。

前書きでも書いたように大変お待たせしてしまいました。

待ってくれている人がいたら本当に申し訳ございません。


これからはもっと更新頻度を上げていきますので、これからもよろしければ『自己進化』をよろしくお願いします。

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