16、『護衛依頼』 また主人公みたいな奴が出てきたなぁ
書き始めて気づいたら日付が変わっていた.....
集合場所で数分間待っていると金髪の女性が来た。冒険者の格好をしているので、同じ依頼を受けたと考えられる。
相手がお辞儀してきたのでこちらも頭を下げる。
ん? この人耳尖ってね? まさかエルフか!?
ヤバイ、緊張する。なんたって隣にいるのは夢にまで見たエルフだ! ! 恋人とかになれないのはわかっているが美形、そしてエルフという事実が俺の心拍数を上昇させる。
そんな悶々とした気分を味わっていると依頼主が馬車に乗って現れた。
「今回はよろしくおねがします。では乗合場所に行くので乗ってくださ......あれ? おかしいですね、今回雇った冒険者は四名だったのですが」
その時、依頼主の反対側から白いコートを着た、赤髪の同い年くらいの少年と茶髪の中学生くらいの少女が叫びながら走ってきた。
俺と依頼主はその光景をポカーンと見つめる。エルフの女性はぼーっとしている。
「なんで教えてくれなかったんだエイラァァァァ! ! 」
「私は何度も起こしました! お昼を過ぎても寝ているエクス様が悪いんです! 」
「仕方ないだろ! 明け方まで起きていたんだから! 」
「エクス様はいつも長いんです! 」
そんな掛け合いをしながら二人は到着した。
まるでラノベでよくある主人公とヒロインの軽口みたいだった。
「すまない、遅れた! 」
「すみません。遅れました」
二人は馬車に乗った依頼主に頭を下げる。
「まだ大丈夫なので早く乗ってください。そちらのお二人も1台目に乗ってください」
そう急かされたのでドアを開き1台目に乗る。1台目は基本護衛が乗る場所で仮眠を取る者は主にここで寝る。
馬車の中は思ったよりも広かった。軽自動車の座席を全部取っ払ったのと同じぐらいの広さがある。
座席は向かい合わせで座るように設計されていたので俺とエルフの女性が隣同士に、赤髪の少年と茶髪の少女が隣同士に座った。
向かいに座っているのは赤髪だ。
「えーと、護衛依頼ではまず顔合わせと自己紹介するんだよな」
馬車が走り出すと同時に赤髪がそう切り出した。
「俺はそう聞いたけど」
「じゃあ俺から行くぞ。俺はエクス、家名はない。新人冒険者だが冒険者ランクはD。
歳は17歳で、使う武器は二本の魔法剣。職業は詳しくは言えないが、上位職だ」
エクスが自己紹介を始める。
エクスの服装は、全身を覆う真っ白のコートを纏い、背中に赤色と金色の二本のロングソード。
容姿は美形で、彼女を作ることには困らないだろう。その上スラッと背が高く、性格も堂々としている。
しかもエクスは新人研修にいたので冒険者になったばかりで上位職、装備が新人とは思えない、仲のいい少女がいる、Sランク冒険者に認められる。
主人公ルートキタコレ! 状態だよ! うーん、新人としての格差を見せつけられるようだ。
そうそう、職業を言わないのは別におかしな事じゃない。
冒険者同士は同業者でありライバルだからだ。基本的にパーティーメンバーくらいにしか教えない。
因みに上位職ってのはその武器、戦い方を極めた者が慣れる凄い職業だ。
「私はエイラ。家名はなくてついでにエクス様の奴隷。冒険者ランクはC。歳は15歳。魔法職で、火属性と土属性が使えるわ」
エイラの喋り方がさっきより硬いのは俺たちと他人だからだと思う。
エイラは小柄な少女で何がとは言わないがぺったんこだ。遠距離攻撃を行える者が一人でもいれば馬車の護衛はやりやすくなる為、ありがたかった。
エクスが奴隷を所持している事は納得できた。主人公みたいな奴なので奴隷を所持していても何らおかしくは無い。
「次は私の番だな。私の名前ははレフィーヤだ。皆も気づいてると思うがエルフで、歳はエルフ換算で20歳。冒険者ランクはB。武器はロングソードだ」
レフィーヤは金髪のエルフだ。胸はエイラとは違って爆乳だ。
上半身には銀色の胸プレートをつけ、下半身はなんらかの魔物の皮で作ったジーパンのような物を履いている。
容姿はまるで人形のように整っているが、それでいてしっかりと人間味がある。
身長は高く、体型は出るところは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる。
ただ、口調が硬い、どこか騎士のようだ。
エルフ換算20歳って事は多分40歳だな。でもお姉さんは大好物です!
これは、この気持ちは一目惚れなのかもしれない。地球にいた時は一目惚れなんてあり得ないと思っていた。
どうせ叶わないとわかっていても好きになるんだなぁ。
まぁどうせエクスのヒロインとかなんだろ。
はぁぁぁ〜あ、もうやだ。
「高ランク冒険者が何故こんな依頼を受けたんだ? 」
「すまないな。詳しい理由は今日会ったばっかりの君達には言えなくてな」
「そうか......」
エクスとレフィーヤが会話している。どうやらレフィーヤには何かあるようだ。
もっと俺に実力が、強さがあればどうにか出来たのかな?
次が俺の番なんだがどうやら町の外に出るようだ。乗客が乗ってきたのはレフィーヤの自己紹介の途中だった。
「では皆さん一回外に出て善悪の水晶に触れてください」
どうして俺の自己紹介は毎回ビミョーな空気になるんだろうか?
善悪の水晶とは水晶に触れた者に犯罪歴が有れば赤く、無ければ青く光る水晶で、町から出るときには絶対に触らなければいけない。
その上で一般人はステータス、冒険者は冒険者カードを見せなきゃいけない。はっきり言って水晶に触る意味は無いが王都だから色々めんどくさいんだろう。
全員無事に通れたので自己紹介を再開する。
「えーと、俺はミスト。新人冒険者のDランク。17歳で使用武器は短剣とショートソード」
「あぁ、新人研修にいた奴か」
どうやらエクスは俺の事を覚えていたらしい。
「じゃあ取り敢えず魔物が来た時の対処法だが俺とレフィーヤが前に出る。ミストは馬車とエイラの護衛。エイラは遠距離攻撃。この陣営で良いか? 」
エクスが仕切っているが、陣営はこれが最善だと思う。
エクスとレフィーヤが敵を殲滅。撃ち漏らしを魔法で射撃。それでも取りこぼしがあったらこの中で最弱の俺が時間稼ぎをする。完璧な作戦だな。
「俺はいいぞ」
「私も異論はない」
「私もないわ」
まぁ、異論があるにしろ俺との力の差がでかすぎてあんまり話したくないんだよね。
ドアを開け外を見るとなだらかな草原の景色が流れていた。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字等ありましたら教えていただけると幸いです。




