14、『英雄候補』 Sランク冒険者に認めらし者
4/20 タイトルを少し変更しました。
「お願いします」
俺はダインから20メートルぐらい離れた所に立ち、お辞儀する。武器は自分の使ってる物を使うように言われている。
「おう! いつでもいいぞ、かかってきな! 」
そう言われたら行くしかないよな! !
俺は走りながらショートソードを右腰からを抜く。地球にいた時の筋力じゃこんな物振り回せないが、異世界に来た時に少し補正がかかったらしい、その上スキルの効果で恐ろしいほど手に馴染む。
まるで長年剣を使ってきたような感じだ。
どうやら足も早くなっているらしい、あっという間に距離を詰めれそうだ。
ダインが射程内に入った瞬間、俺は体を地面スレスレまで低く落とし、全身を使って両手で剣を右から斜めに振り上げる。
しかし、ダインはスムーズな動きで右に動き、当然のように避ける。
そんな事は分かりきっていたので、勢いをそのまま利用し後ろを向き、思いっきり飛び前転をかます。
すると数秒前自分がいた場所が爆散する。
あっぶねー、後数秒遅れていたら潰されてたぞ!
俺は距離を取るとすぐに立ち上がり、剣を振りかぶり、ダインの右肩目掛け思いっきり振り下ろす。
「せあぁぁぁぁ! ! 」
これも白刃どりされ、あっけなく止められる。
ダインは俺の剣を片手で抑え、反対の手を振りかぶる。
俺が両手で持っている剣はピクリとも動かない、何もしなければ俺はこのまま負けるーー
ーー俺は剣から手を離し、腰から水晶龍の短剣を抜き、逆手持ちしてダインの首に狙いを定める。
体を独楽のように回転させ斬りつけるがあっさりと足掛けされ転け、顔を上げたら目の前に拳があった。
「ショートソードを離して短剣に持ち替えたところは良かったぞ。でも経験が足りない、これからも訓練や実践を頑張ってな! 」
「はい! 」
やっぱり俺の実力じゃあここまでか、新人研修とかで俺TUEEEEEEやる主人公とかに憧れていたんだけどなぁ
「じゃあ最後、剣二本持ったお前の番だ」
最後に戦うのは赤髪のイケメンだ。赤い剣と金色の剣の二本を両肩に装備し、白いコートを着ている。この時期に暑く無いのか?
まぁ兎に角『転生勇者』みたいな、物語の主人公の様な奴だ。
「おう! 」
彼は威勢良く返事をすると、俺とは段違いのスピードで駆け出した。走りながら剣を抜く。
赤い剣を振りかぶると刀身が紅く輝いた!
なんだアレ? 凄くカッコいい! まさかあれが魔法剣ってやつか?
「おっらぁぁ! ! 」
彼は紅い剣を振り下ろした! が、あっけなく避けられてしまう。紅い剣は空振り、勢いそのままに地面を切り裂いた、その瞬間地面が爆発した、しかも火の粉が見えるので魔法的な力も加わっているのだろう。
ダインはすぐにバックステップをして離れた。
彼が金色の剣を地面に突き刺した、その瞬間剣が輝き出した! すると、地面から金色の鎖が飛び出しダインに巻きついた! 彼は走り出しダインに紅い剣を突き刺すーー
ーーが、ダインは一瞬で鎖を引きちぎり、片手で剣を抑え膝蹴りを繰り出す。彼の顎の少し手前で寸止めし模擬戦は終わった。
う〜ん二人とも本気じゃなさそうだったな
「うん、お前なかなかやるなぁ、期待の新人だぜ! 俺も追い越されちまいそうだなぁ」
「いつか追い越してやるよ」
そう言って二人は握手を交わす。
Sランク冒険者に認められる、か......もしかしたら俺は赤髪の英雄伝の一ページに立ち会っているんじゃないだろうか?
「それじゃあ今日は解散だ! 」
冒険者ギルドから外に出ると空はもう鮮やかなオレンジ色になっていた。冒険者ギルドで紹介された宿に向かう途中の道で昼間の串焼き屋が店仕舞いしていた。
小腹が空いていたが、もうやっていないだろうと通り過ぎようとしたら「昼間のにいちゃん、まだ少し余ってんだ、買ってかねぇか? 」と声がかかった。
「覚えてたんだな、じゃあ二本くれ」
そう言って金を出す。
「毎度ありぃ! 焼き直すから少し待ってくれ」
数分待っていると焼きあがったようだ。串焼きを食べながら移動するが、昼間微かに存在した合成調味料の物足りなさが消えていた。
まるで段々と元の世界での常識や習慣がこっちの世界に上書きされるような感じだ。
こうやってこの世界に慣れて行くんだろうなぁ。
閑話休題
そんな事を考えていると宿に着いた。宿の名前は【光の居所】と書いてある。
扉を開けると金髪ショートのスレンダー美人がいた。
因みに俺は美人と話すことにそこまで気後れはしない。どうせ近い関係になれないと分かりきっているからな、期待するだけ無駄だ。
「いらっしゃいませ、食事ですか? 宿ですか? 」
「宿を頼む。人数は1人で一泊だ」
「わかりました。夕食は六時から8時までの間にここで定食を頼んで頂ければ出せます。時間外と、定食以外の物を頼むときは別料金を頂きます。お湯は別料金で桶一杯五百ジルドになります」
「わかった」
俺は料金六千ジルドを払う。ギルドで事前に料金がわかるのでちゃんと聞いていればお金が足りなくなるなんて事は無いらしい。
この光の居所は料理は美味いし、美人奥さんに美少女の娘がいる、その上安い! と王都でも評価が高い。
安いと言っても、初心者冒険者が泊まれるような宿じゃないが、俺は幸い国からお金を貰っているので泊まれる。
正直言って税金をこんな事に使っていいのか迷うが泊まる所に妥協はしたくないので考える事を放棄した。
「はい、確かに受け取りました。エイラ! 案内お願い! 」
「わかった〜! 」
緩い返事とともに奥から出て来たのは、母親に似た金髪ショートのスレンダー美少女だった。
「えーと、2ー2か。じゃあお客さん私についてきて」
「ああ」
二人で歩いて行く。宿の中は掃除が行き届いており、窓もある。家政婦? の人が掃除している。
「ここだよぉ」
「ありがとう」
そう言って部屋に入る。
随分フランクな子だったなぁ。
部屋の中はシングルサイズのベット、一般的な机と椅子、壁にハンガーとクローゼット。これだけかな。
うぉぉ、ベット下の収納とかマジかよって俺ネタ何も持ってないじゃん。
「5時か......」
何もやる事がないな......武器の手入れでもしてるか......道具何も無いじゃん。姫様から貰った道具セットにも入って無かったしなぁ。
無計画すぎだろ俺。もっと色々買ってくるべきだろ。
「はぁ〜」
ついため息が出てしまう。異世界きてまともに会話していないからなぁ、最近頭の中でずっと一人で考えたり、独り言喋ってたりしてるからさぁ、楽しく会話できる友達か彼女欲しいなぁ。
「はぁ〜」
はぁ、ため息しか出ない。
お腹もそんなに減ってないし、お湯頼んで寝るか。
◇◇◇
「夕食はいりません、それとお湯貰います」
そう言って俺は五百ジルド差し出す。今更だが、この世界に10円の単価は無いので最低額が百ジルドだ。本当になんで歴代勇者は貨幣にあんまり手を出さなかったんだろう? いや、すでに結構力入れてるのかな。
「わかりました。少しお待ちください」
そう言って奥さんは裏に引っ込んで行く、お湯を沸かして居るのだろう。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
お湯を受け取り部屋に戻る。ここでお湯をこぼしたら終わりだがこぼさずに部屋まで来れた。
良かった。ああ、いけない。また無駄に考え込んでしまっているなぁ。
その後バックに入っていたタオルで体を拭き、寝た。
お風呂には入りたい気持ちもあるが、どうしてもという訳ではない。
初の戦闘(と言っても模擬戦だが)があったのですんなり寝れた。
読んでいただき有難うございます。
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