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第81話 暗転

 轟音と共に地面がめくれ炎と凍気がリリに当たる。

 灰も残さない獄炎と動くものは存在できない凍結の世界。

 世界に並ぶものがないと言われる神殺し(ミストルティン)級の技にさすがのリリもその力を維持できなかったようだ。

 操っていた根は力なく地面に落ち、どさりとリリが地面に倒れた。


「よっしやゃあぁ!」


 ムショクが、思わず声を上げる。

 らしくないと自分でも思ったが、それほど辛い戦いだった。

 ムショクの勝鬨かちどきに、他のみんなも喜びと安心の声を上げた。

 フィリンがいち早くムショクに駆けつけた。


「ムショクさん、ありがとうございます。

 リリを倒せるなんて……私……諦めていて……本当に、夢かと……」


 フィリンの目から涙が流れる。

 それを拭うことさえ、解放感から忘れているのか、涙がこぼれ落ちている。


「ムショク! やったな!」


 ハウルがムショクに飛びつくと、首に打てをまわした。

 まるで子供のように飛び跳ねるハウルにムショクは自然と笑みがこぼれた。


「来てくれて助かったぞ」

「当たり前だ。

 今までもこれからもいつでも来るからな」

「お疲れ様ですね」


 リラーレンは喜んで抱きついているハウルを見て複雑そうな顔を見せた。


「どうした、リラ。

 勝てたぞ!」


 ハウルが、今度はリラーレンに飛びついて、彼女もようやく笑顔になった。

 ムショクの近くに全員が集まった。


「ナヴィ、助かったぞ」

「まったく……いつも、無茶ばかりしますね。

 まぁ、そんなのも悪くないで――」


 ナヴィの照れ笑いが突然真っ青になった。

 その意味が分かるまで、少しだけ時間がかかった。


 お腹がじんわりと熱くなるのを感じた。

 そして、不快な違和感。

 誘われるように自分の腹部を見ると、そこから白い手が生えてた。


 狂った笑い声と共に手がなくなり、代わりに赤い血が吹き出した。

 青ざめたナヴィの顔にムショクの血が飛び散る。


「あははははは、これこれこれこれ、この魔力ぅ!!!」


 いつの間にか立ち上がっていたリリが、ムショクの首に噛み付いた。

 今度は痛みを感じたが、それも一瞬だった。

 そこで、ぷつりとムショクの意識は途絶えた。

 最後にナヴィが何か叫んだような気がした。

 それもムショクの耳には届かなかった。


>>第82話 慟哭、天を貫く

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