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第68話 指輪とポーション

「最後に宝石を嵌め込みます。

 宝石は『旅する溶岩化石』から取れた『マグマジェル』を使いましょう」

 

 そう言って、ナヴィはマグマジェルを取り出した。


「カットもブラッシングもしていないので、まだまだ原石ですが、

 これを作った骨の指環につけて完成です」

「まぁ、普通宝石なんてポンポン取れないよな?」

「発掘になるとそうですが、ヘルムガートの腰骨から取れた『破壊の虹玉』に、

 ゲイヘルンの『紅龍玉の結晶』。

 モンスターから取れるものもそこそこありますよ」

「もしかして、やっぱり戦闘スキルは必要だったか?」

「ようやく気付きましたか」


 ナヴィの呆れた言葉に、ムショクは苦笑した。


「まずは、これが入るようなくぼみを指輪の台座に彫り込んで下さい」

「分かった」


 ムショクは、龍の牙の先端を使い、丁寧に何度も骨を削る。

 時折、嵌める予定の石を置いて、形や大きさが問題ないかを測る。

 しばらくの間作業を続けていると、きりがついたのかムショクは長い息を吐いた。

 

「いい感じかな」


 そう言ってナヴィに見せた。

 

 名前:骨の指環

 カテゴリ:装飾品

 ランク:龍神級(ドラゴムクラス)

 品質:高品質

 効果:属性耐性、霊撃付与

 エンチャント:追加激減、攻撃力倍加


「形としてはいいんですが……」

「何かあるの?」


 ナヴィは困ったような顔に今度はティネリアが話しかけた。


「それより、次だ次!」


 考え込むナヴィを無視してムショクが早く早くと囃したてた。

 もう、指輪の形ができた。

 完成目の前で立ち止まられても困る。

 

「はいはい。後は、その宝石を嵌めて完成です」

「そうか。

 なら――」

 

 そのくらい自分でやって下さいよというナヴィの表情を無視して、

 ムショクはミンティアの草を絞りそこから出た汁を石にかけた。

 その汁はまるで吸い込まれるように、石に触れると消えていった。

 

「……もっといりそうだな」


 ムショクがそれを見て1人ごちた。

 

「何しているんですか?」

「ミンティアの草の汁をかけてみた」

「そんな無駄なことを……」

「そうなのか?」


 ナヴィがそう言うならそうなのだろう。と一瞬納得しそうになったが、

 それも一瞬だった。

 よく考え欲しい。

 こいつは全知の皮を被った無知なのだ。


「でも、取りあえずやってみるか」

「はいはい。頑張って下さいね」


 ムショクとしても何も当てずっぽうでやったわけではない。

 少しだけ確信があった。

 それは『紅龍玉の結晶』を見た時のことだ。

 ゲイヘルンから取り出した『紅龍玉の結晶』を取り出した時、そこについている血がまるで飲むように石に吸われていった。

 だから、宝石にもそう言った事が起きるのでは。そして、それは、宝石に何か変化を、もたらすのではと予想した。

 しかし、何度か繰り返し薬草の汁をかけたが、何か変わるわけではなかった。

 どうも、これは無意味だったのかもしれない。

 

「さすがにダメか」

「そりゃそうですよ。

 そんな簡単に石に付属効果つけられたらたまったもんじゃありませんよ」

「そんなもんか?」


 諦めるしかなさそうだ。

 残念そうに石を指先でつまむと、僅かに温かみが感じられた。

 おっと思ったが、それも一瞬で石はいつもの感触に戻っていた。

 

「……」


 そのわずかな違和感をムショクは逃さなかった。

 やはり何か変わった。

 シオナ火山の洞窟でナヴィが『海底石』を見て「石は記憶を残す」と言っていた。

 もしかしてとムショクは先ほどと同じくらいの薬草を絞り、また石を持った。

 今回も先ほどと同じく、僅かな温かみが感じられ、すぐにその感触はなくなった。

 

 やはり。石が変化している。

 ただ、長続きはしない。

 使用に耐えうるくらい効果を長続きさせたいが、その条件は何だろうか。

 

 かける液体の効果、濃度、時間。

 それ以外の何か。


 仮定だけなら山の様に出てくる。

 時間があれば1つずつ試すのだが、今は、おそらくその時間はない。

 過程に上がるようなものを全て詰め込むか……

 

 何よりも濃く、何よりも効果がある液体。

 ムショクはクスリと笑った。


「得意分野じゃないか」


 ポーションの純化。

 それは同時にポーションの新しい形を連想させた。

 

「ナヴィ。指輪作りはいったん保留で、ポーションを作るぞ」

「まったく。急になんですか?」

「いいからいいから」


 ムショクはナヴィと共に辺りに生えているめぼしい薬草を探し始めた。

>>第69話 ムショクの真価

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