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第45話 ハンネとフラン

「はは、様になってるじゃない」


 ついたてがなくなり2人の姿が見えた。

 緑を基調とし、首元まで伸びた白いブラウスがのぞく。下はクリーム色をしたズボンで腰には黄金色の紐が幾重にもゆるりと巻かれ、垂れ下がったシルバーのシャトレーンには、飾り羽が付いていた。

 パンツルックのフィリンに対して、紫を基調としたシハナの服はドレスに近く長いスカートに緩やかな服だった。


「ん?」


 ゾフィーか何か気になったらしく、シハナの方をまじまじと見た。


「その編み込みと飾り付けはあんたが言ったのかい?」

「そうですわ。

 何かまずいことありまして?」

「いや、なかなか渋い趣味だ。

 これは100年ほど前に王族で流行ったやつだね。

 今の服の色合いといい組み合わせだ」


 ゾフィーはシハナのそれをたいそう気に入ったらしく、まじまじと見る。


「旅の用意をしたいんだが、いいか?」

「分かったよ。

怒涛の装甲鳥(アングリーバード)』は、街を出たところに待機させておくよ。

 用意ができたらすぐ来ておくれ」

「分かったよ。

 フィリンとシハナは一緒にいてくれ、アトリエから荷物やポーションを持ってすぐ戻ってくる」

「分かりました」

「分かりましたわ」


 ムショクの言葉にフィリンとシハナが同時に頷いた。


----



 ムショクがアトリエから街に帰って来ると、すでに街の入り口には、フィリンとシハナ、それにゾフィーの姿があった。

 その横には、彼女たちの身長を軽々と超える蒼い鳥の姿があった。羽は飛べないほど短かったが、代わりに、太い足と鉤爪があった。


「遅くなってすまない」

「私たちも今来たところです。

 こちらの翼の先が黒いのがハイネで、首元の毛が長いのがフランと言うらしいです」


 フランにはフィリン、ハイネはムショクが乗ることとなった。シハナをどちらに乗せようかと言う話になったが、フィリンの強い要望により、経験者でもある彼女と共に乗ることとなった。

 『怒涛の装甲鳥(アングリーバード)』の旅の諸注意とかんたんな操作を教えられる。

 時間もないので後は実地で覚えろとのことだった。


「乗る前に軽く手綱を引っ張ってください」


 言われたとおりな手綱を軽く引っ張ると、鐙に足をかけ、そのまま飛び乗った。


「馬と違って臆病じゃないので、力任せでも大丈夫です」


 フィリンは乗り慣れたもので、ふわりと『怒涛の装甲鳥(アングリーバード)』に乗ると、シハナの手を取り持ち上げた。


「あれ? シハナさん?」


 フィリンが、不思議そうにシハナを見た。


「言わないでいただけませんこと?」

「……はい。名前を聞いたときから不思議に思ってました」


 シハナは「感謝しますわ」とフィリンに小さな声で感謝を示した。


「では、ゾフィーさん。

 ゲイルさんやタンクさんによろしく言ってください」

「任せておきな。

 あんたらも、気をつけるんだよ」

「はい」

「あんたらの旅に幸運の一滴を」


 ムショクが手綱を動かすとハンネとフランは、走り出した。


 フェグリアから出て、まずは東のテオドックに向かう。

 そこから北に向かい風と氷の国へ入ることになる。

 徒歩で歩いてきた数日の道が『怒涛の装甲鳥(アングリーバード)』に乗ると風のように通り過ぎる。

 最初は乗り慣れなく必死に手綱を握っていたが、すぐにそれも慣れた。

 馬と違って、鞍に全体重を掛けても嫌がらない。

 むしろ、そっちの方がいいらしく下手に気を使うとむず痒そうに体を揺すった。

 完全に跨り手綱を握ると、羽毛が腰を優しく包んだ。

 走るたびに動くが、大きく揺れることはなく、たまに揺れてもその羽毛で衝撃はほとんどなかった。

 快適とは言い難いが、それでも徒歩とは比べ物にならないスピードだった。


 フェグリアから徒歩で数日かかったヘゲナの森が見えてきた。

 前回はここで雨が降って逃げ込んだのだ。

 今はそんな素振りも一切ない晴れた空が広がっている。

 やはり、雨はレアな天気なのだろう。


「ブレンデリアはいるのかな?」

「あの変人は一所に留まらないですからね。

 たぶん、いないと思いますよ」

「相変わらず仲が悪いな」

「向こうが突っかかってくるだけです」


 どう見ても威嚇しているのはナヴィの方だとは思うが、それを言ったらまた怒りそうだ


 しばらく乗っているとフランとハイネが分かってきた。フィリンたちが乗っているフランはどうも汚れるのが嫌いのようで、まっすぐ走っていても、土の硬いところを好む。

 乗り心地は良さそうであった。

 変わってハイネは汚れるのは気にしないが、曲がるのが嫌いなのかまっすぐ走る。

 ただ、ジャンプが高く、大抵の障害物は飛んで避ける。



「テオドックは素通りしますが、大丈夫ですよね?」


 ナヴィの言葉に全員が頷いた。

 今回の旅は時間制限がある。悠長に買い物などできない。

 本当ならハウルやリラーレンと共に行くほうがいいのだろうが彼女たちとはあれ以来会っていない。こちらから連絡する方法も見当たらない。

 テオドックを探し回っても見つかる保証はない。

 なら、やはりこのまま進むべきだ。

 脇目も振らない旅は無機質ではある。

 恐らくそこにあったであろうアイテムをみすみす通り過ぎることになる。


 走り始めて太陽が真上を通り過ぎた。日差しは強くなったが、ハイネとフランの上は風が身体に直に当たるため、手先は冷えた。

 ゾフィーにもらったコートはまだ着るには暑かった。


>>第46話 食事探しと言う名のアイテム採集

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