第33話 古代龍の息吹とブレンデリア
リラーレンは引っ付いたばかりの腕を抱きしめてその場に座り込み、ハウルはなんとか拳を構えようとはしているが、
脇腹からは血が流れ続け、立っている足も震えていた。
「大丈夫だ。これはゲーム、これはゲーム」
ハウルが呪文のように何度もそう唱えている。
そう。それは、絶対のはずだ。
目が覚めたら何事もなく『FtC-Diver』から出て、この状況を笑って話せるはずである。
なのに、それが幻想のように思わせる痛み。火傷や痣が、身体を強張らせる。
「私たち、死ぬんですの?」
「これは、ゲームだろ! リラ!」
発狂したように叫ぶハウル。
その怒りがリラに向いているのか、今の状況に向いているのか分からない。
「なぁ、そうだろ? ムショク?」
縋り付くような目でこちらを見る。
だが、その答えを持っていないのも彼女は知っている。
「僕はまだ、死ねないんだ。
あいつに謝ってない。あいつに謝らないと……」
ハウルの拳が下に向き、構えが解けた。
ゲイヘルンが動けないでいるムショク達に向かって大きく口を開けた。
その喉の奥はまるで溶岩のように赤く怪しく輝いている。
その技が何かは分からないが、その先の自分たちの未来は容易に想像できた。
「真緒さん……」
リラーレンは、ハウルの袖を強く握りしめた。
「諦めるな! 逃げよう、リラ!」
そう言っているハウルもリラの足も動いてはいなかった。
リラーレンが絶望の目でゲイヘルンを見上げる。
「ムショク……」
ナヴィが小さく呟くとギュッと俺の襟を引っ張った。
「おっ、何か、手があるのか?」
やっぱり、ナヴィだ。
なんだかんだ言っても頼りになる。
と思ったが、ふと、彼女の行動に違和感を覚えた。
独り言ではなく、ナヴィはムショクに話しかけている。
目の前まで来ると言葉を続けた。
「ゲイヘルンが今から撃つのは煉獄の炎息と言われるものです。
古代、神を倒すために龍神族が編み出した最強の技で、ファリシアン戦記では、灰さえも残さない破滅の炎と書かれています」
「なんかすごそうなやつだな」
「数少ない神殺しと呼ばれる技の一つですからね。防御無視と貫通効果があるのであらゆる防御手段を駆逐します」
「それを防ぐ方法はあるのか?」
そこが一番知りたい。
ゲイヘルンの必殺を回避できるならまだ勝てる機はある。
「ないです」
両目に涙を一杯にため、その顔は笑顔だった。
涙を零さないように、心を乱さないように。
張り付いた笑顔のまま、手は腰に当てて偉そうな風を装うが、その手は震えていた。
「さすが、龍神族です。
威力範囲とも私の予想を遥かに超えてますね。
逃げるしか方法はないですが、それを許さない範囲です」
ナヴィの声がずっと震えている。
「えーっとですね……そう、逃げる方法ですよね……
煉獄の炎息は発動とリキャストがとてつもなく遅くて……えーっと……そう、逃げるんです。
逃げられるんですよ……きっと……」
ナヴィの瞳から、涙が一筋頬を濡らした。
その瞬間、耐えきれなくなった涙が、次から次に溢れ出てきている。
「私も、生きたかったよぉ……
……何で、ナヴィなんですか……
私だってムショクと冒険したいよぉ……」
いつも不遜で騒がしいナヴィが、その感情を隠すことなく、目の前で泣き続けた。
1つの希望も残さないような、恐ろしい唸り声と共に、ゲイヘルンの喉の炎が輝きを増す。
その瞬間、唸り狂う炎が、叫び声の様な咆哮をあげながら目の前に広がった。
禍々しく広がる炎に逃げ場はなかった。
ナヴィはムショクを抱きしめ、その後ろで、ハウルとリラーレンが抱き合っていた。
最期はナヴィとだったが、それも悪くないなとムショクは目を瞑った。
暗闇の中、ナヴィに抱きしめられた感触。耳を劈く轟音は静寂へと変わった。
「ふむ。で、ここで、君の物語は終わるわけかい?」
静寂の中、聞き慣れた声が聞こえ、ムショクはゆっくり目を開けた。
人形のようなドレスを身に纏い、漆黒の髪を持つ彼女は、何食わぬ顔でそこに立っていた。
幼い容姿を持ちながら、ナヴィにして規格外と言わしめた廃墟の主。ブレンデリアである。
「ドラゴンモドキの時もそうだったが、君はどうやら直ぐに諦める節がある」
その背後には、ゲイヘルンが吐いた恐ろしい炎があるが、それは一向にその場所から動く気配がなかった。
「そのくせ、手がないわけではない」
炎の前を右に左に思案げに往復する。
ナヴィもハウルもリラーレンも、ゲイヘルンの炎と同様に、そこから一切動いていない。
いや、何もかもが止まっているように見える。まるで時間が止まったかのようにだ。
恐ろしい炎と幼い容姿のミスマッチが非現実感を更に強める。
「叡智の象徴と呼ばれる錬金術師としてどうかと思うが……おい、聞いているのか?」
少し怒ったのか、眉間に皺を寄せてこちらを見た。
「これは……」
「ふむ。質問か? 良い心掛けだ」
「これはなんなんだ?」
「ふむ」
ムショクの問いかけに、ブレンデリアは少し考えを巡らせた。言葉にするのは簡単である。
しかし、それで理解できるものではない。
人から説明してもらうとその瞬間はとても理解できる気がする。それは、思考の順番を手助けしてもらっているからなのだ。
いざ一人で思い出すと、思考の順番が辿れずなぜか分からなくなる。あくまでも、説明した者が理解した思考の順番なのだ。
理解というのはその思考のプロセスを自分で掴むことにある。
「私なりに研究を続けた結果だ。
『フェアリーテイルクライシス』のな」
その言葉はブレンデリアが前も言っていた。
「『フェアリーテイルクライシス』ってなんだ?
この時が止まっている世界がか?」
ナヴィの涙は溢れ出し頬を辿っている途中で止まっている。地面に生えている氷結草も、ピクリとも動かない。
だが、固まっているのかと花を摘むと簡単に摘める。
摘み取った花でナヴィの涙を拭い取ると、涙の一滴が花の中に落ちた。
「なぜ、人々の想像する神は時代や場所を問わず同じだと思う?」
天地を創造した神々。
争い殺し合った神々。
姿形が違うこともあったが時代や場所が変わってもその性格はどれも似ている箇所があった。
「想像するものの限界と言うか、枠があるからじゃないか? 後は、根源的に共通する思考があるとか?」
ムショクは少し考え、ブレンデリアの問いに答えた。
「普遍的無意識というわけか。
悲しいかなそれは振り返った者の意見だ。
最初の戯言を発した者は、果たしてその枠にいたのだろうか?」
「その時にはその発想は狂っていたと?」
「そこまでは言わんが……間違いでもない」
まるで試すような物言いに、何が言いたいかさっぱり分からなかった。
「何が言いたいんだ?」
「彼らは想像したのではない。
見たのだよ。実際に。
だからこそ、馬鹿にされようが、話すことしかできなかったんだ。分かるか?」
「伝説は本当にあったと言うつもりか?」
「そうだ――ただし、ここではない、どこかでだ」
ブレンデリアの言葉は正直反応に困った。
例えば、彼女は北欧神話でトールが持っているミョルニルが実現したと言っている。
「どんなに強く打ちつけても壊れることなく、投げても的を外さず再び手に戻るものが、存在すると? それこそお伽話だ」
「確かにお伽話だよ。
音の3倍の速度で人を運ぶ鉄の乗り物や落ちたその瞬間、高熱によって数万人の命を奪うアイテム。
昼夜を問わず空を照らし、気の遠くなるほどの距離のがある人間と一瞬にして会話ができるアイテムがそこら中にある世界なんてあると思うかい?」
言い知れない不安を感じた。
「待て、お前はゲームの人間だろう?
なんで、俺達の世界のことを話す?」
「足りないかい?
そんな恵まれている世界にもかかわらず、人は腐り狭く息苦しい。
病院さえも燃やされる」
「どういうことだ?」
「ほれ、最近あったじゃろ?」
「あれは――」
そう言葉を続けようとして、口が止まった。
脳裏にサイレンの音が響き、身体中を駆け抜ける寒気。
冷や汗が背中に流れ、このゲームを始める前のことを思い出した。
偶然目にしたニュースのヘッドラインの内容だ。今話している相手がなんでこのゲームに入る直前の事件を知っている。
「あり得ないなんて言葉は簡単に使えるものだ。
君がもし日常的にその言葉を使っているなら非難すべき言葉だよ」
この状況を、否定しようと思った言葉を諌められた。
「そうそう。ありえないついでに聞きたいのだが、
君はこの最悪な状況でもまだ勝てる道が残っているような素振りであったが?
どうなんだい?」
プレゼントを開ける子供のように無邪気な、そして、どこか含みのある笑顔。
「どうもこうも、どう見ても絶望だろう?」
「ドラゴンモドキの時もそうだったさ。
あれは私の目から見ても絶望的だったよ。
そもそも錬金術師たるもの、切り札を持たないことは死と同義だぞ?」
「痛みいるよ」
ほらもったいぶるなというブレンデリアの欲しがるような顔にため息をついた。
初めにそれに気づいたのは『はぐれキノコ』との戦闘だった。傘から取れた胞子は、攻撃手段の1つだったが、同時にアイテムでもあった。
そして、もしかしたら、と言う疑問が浮かんだ。
「さて、この空間もそろそろ終わりに向かう。
できなければ死ぬぞ?」
「あぁ」
「では、行け。
君の側には叡智と真理がついている」
ブレンデリアの言葉と共に固まっていた時が少しずつ動き出した。
氷が溶けるように、ゆっくりではあるが確実に炎の壁が迫ってくる。
涙を拭い取った花を握りつぶし、それを地面に垂らす。
袖を掴んでいるナヴィをそこにおくと、それに向かって歩いていった。
別に自殺願望があるわけでない。死ぬなら真っ先にというわけでもない。
どこかに書いてあったそれを思い出す。
『龍が口を開けたらチャンス到来!』
半ば確信めきながら、その炎に手を伸ばす。
焼け付くような痛みが走ったが、それも一瞬で、その熱さはすぐに和らいだ。『毒の胞子』を掴んだ時と同じ感覚だ。
いける。そう確信した瞬間、世界はいつも元通りの時を刻んでいた。
「『古代龍の息吹』を取ったぞー!」
叫び声と同時に炎が手の中に集約されて結晶のようになる。
疑問が確信に変わった瞬間だ。
錬金術師の手は神の手、その指は悪魔の指なのだ。それがアイテムなら何でも採れる。
後ろにいた3人が呆然とした顔でムショクを見る。
特にナヴィは、その技の威力を知っていたからこそ、目の前の現実が理解できなかった。
「ナヴィ! 鞄から透明なポーションを2つ取り出せ!」
ムショクの声に、慌ててカバンに飛び込み指定した2つを取り出す。
「最高傑作だ! 死ぬか飲むか選べ!」
その言葉の意味を周りは瞬時に理解した。
出されたポーションは2つ。
それは確実にリラーレンとハウルのものだろう。
死ぬか飲むか。
通常のポーションなら、その言葉に悩みもせず飲み干すだろう。
だが、目の前に出されたポーションはただのポーションではない。
製作者が最高傑作と言った透明なムショクのポーションだ。
「そもそも、なんで、俺こんなことになってんだ? っていうか、錬金術師だぜ。前衛じゃないっての。働かせんな。俺は無職だぞ。ソロプレイさせろよ。楽させろよ」
横でナヴィが呆れた顔で見た。
「こんな時にも愚痴ってるんですか?
相変わらずクズですね」
「おっ、いつも通りに戻ったな」
「何ですかその言い方は」
膨れた顔で視線をそらしたが、それが恥ずかしさからだと言うのは誰の目を見ても明らかだった。
「ナヴィ! 煉獄の炎息のリキャスト時間は?」
「後30秒です! それまで、反動で動けません!」
「畳み掛けるぞ!」
後ろを振り向くと二人が口を押さえてのたうち回っている。
「何遊んでるんだ! いくぞ!」
「この鬼め……」
「世にある味だとは思えませんわ」
ムショクのポーション。
その名に恥じぬ透明なポーションである。臭いもしない。
ただし、強烈な味がある。
驚くほど甘く、驚くほど苦い。見た目は液体だが、唾液に触れるとゲル化して喉や舌に張り付く。
そこから派生する酸味や塩味と辛味。辛味は痛みに近いが、ポーションの効果でそれはすぐに治り、辛かった記憶だけが残る。
だが、効果は折り紙付きだ。
全パラメータがアップし、属性や状態異常とあらゆる耐性がつく。更に魔力と体力の自動回復つきだ。
「信じられませんわ。さっきから驚くほどの数値が自動回復してるんですが」
「僕もだ」
「節約も後先も考えなくていいぞ」
そういうことならとニコリと笑ったリラーレン。
ハウルはレイジングフィストの重ねがけで、攻撃力をさらに上げる。
行きますわよとリラーレンが詠唱を始めた。
「其は混沌と静謐の狭間の星。
宵闇よりも明るく暁よりも暗く照らす八芒。
八極を照らせ、アウセクリスアロー」
リラーレンの背後から8つの光が矢が形作る。
「一の矢!」
そのうち一本が赤く光り、ゲイヘルンを襲う。
それと同時にハウルが飛び出した。
ハウルは目の前で拳を合わせて叫んだ。
「無想阿修羅!」
「二の矢! 三の矢!」
ハウルが弧を描くように左手で殴りつけると、次いで右手で殴り上げた。
鈍い音と共にゲイヘルンの身体が浮く。
間髪いれずに、リラーレンの矢がゲイヘルンを穿つ。
浮き上がったゲイヘルンを追うように飛び上がると顎を蹴り上げた。
「はあぁぁ!」
気迫の帯びた声と共にラッシュが続く。時折、巨人の手ほどの大きな拳がダブって見えた。
「弦張りて飛ばせ、四の矢!」
ハウルのラッシュの合間に1本の光の矢がゲイヘルンに触れると、まるで空中に張り付いたように身体が固まった。
「四重奏の奏でよ、終焉へ!
五の矢! 六の矢! 七の矢! 八の矢!」
4本の矢が光の煙を残しながら同時にゲイヘルンを襲う。
「終わりだぁ!」
ハウルは空中で一回りすると踵をゲイヘルンに叩きつけた。
鈍い音を立てて、ゲイヘルンが地面に叩き落される。
「まだですわ!」
踵で叩き落されたその場所に巨大な魔法陣が広がる。
「開け! 地獄の大釜よ! サラテザーク」
魔法陣が闇色に染まり、そこから無数の黒い炎の鎖がゲイヘルンを縛った。
「開け! 極楽の門扉よ! エルゼターク」
ゲイヘルンの僅か上に白く光る魔法陣が浮かび、金色の鎖が伸び、黒の鎖と同様にゲイヘルンを縛った。
「拒絶せよ! 閉門!」
リラーレンの声と共に魔法陣が消え、同時に鎖が爆発した。
虹色に耀く煙の中、唸り声と共に激しく尾を振った。
爆発の煙で初動が見えなかったハウルは防御が間に合わず、尾に打ちつけられその身体が枯葉の様に吹き飛んだ。
ゲイヘルンは、こちらを睨みつけると、一つ翼を打った。
風が暴風となり、ムショクに向かう。
「マズい!」
これはただの風だ。
アイテムとして取れるものではない。
強化されてないムショクの身体は、低レベルのそれと変わらない。
一撃で瀕死、もしかしたら死んでもおかしくはない。
その瞬間、目の前にリラーレンが、飛び出した。
「フェイルウォール」
透明なレンガが積み重なったような壁ができた。
が、ゲイヘルンの、風の刃を完全には受け止められず、吹き飛ばされたリラーレンが、小さな叫び声と共にムショクと折り重なった。
ゲイヘルンが空中に飛び上がって、叫び声を上げた。
「キャストタイムキャンセル!?」
ナヴィが驚きの声を上げた。
「なんだそれ!?」
「煉獄の炎息がきます!」
「反動で動けないんじゃなかったのかよ!」
「あの威力を止める魔法はないですわよ!
さっきみたいに取れますの!」
「ダメだ。
取るまでにハウルが巻き込まれる」
ハウルの方がゲイヘルンに近い。
ここに届く前に、ハウルが先に巻き込まれてしまう。
「ハウル! 逃げてください!」
リラーレンが叫び声を上げたと同時にゲイヘルンが口を開けた。
「ハウル! このままやるぞ!」
ムショクの声が耳に入ったのだろう。ハウルはゲイヘルンを睨みつけたまま「おう!」と吼えた。
ムショクはカバンから『メルフラゴ』を取り出した。
「そんなアイテムだけでは――」
「ハウル! 痛みは我慢しろ!」
リラーレンが叫ぶのを無視して、それをハウルの近くに投げる。
「仕込みってのは大事だな」
石に氷結の属性を込めて相手を貫く『ステュクスの牙』の強化版。いや、拡大版と表現する方が正しいだろ。
あれが牙なら、これは顎だ。
材料は『海底石』、『スライムの体液』、『氷結草の花の雫』。そして、『妖精の涙』。
『海底石』は規模が違う。
足場全てがアイテムだ。
全力で投げた『メルフラゴ』が着弾と同時に爆音と衝撃を走らせる。
それと同時、巨大な氷の牙が幾つも地面から生み出され、ゲイヘルンの身体を貫く。『ステュクスの顎』がゲイヘルンを完全に捕えた。
「工程は細かく。手間の中に質が生まれる。だっけか?
手間掛けたよ。全く」
隙を見ては、何度も何度も氷結草の花を絞った。
それが実を結んだ。
羽ばたき逃げようにも穴の空いた翼は風を捉えられず、氷牙は、ゲイヘルンの体を貫き、足を取り、仮にはばたけても逃がす気はなかった。
「さて、ハウル。
もう一本行っとくか」
取り出した赤いポーションをハウルに投げて渡す。
「くそっ、こうなりゃヤケだ!」
ムショクから渡された赤いポーションを受け取ると、一気にあおる。
咳のようなクシャミのような、音と共に赤いポーションが口から鼻から漏れる。
吐くのは我慢できたようだ。
それを袖で拭く。
ハウルの瞳が真っ赤に燃え、身体の周囲に赤いオーラをまとった。
それと同時に、ゲイヘルンを支えていた巨大な氷の牙が折れ、その巨体が落下した。
「それもこれも、お前のせいだ!」
ハウルが、ゲイヘルンに怒りに満ちた雄叫びを上げた。
その直後、ハウルの手が金色に輝いた。
「これで終わりだぁ! 陰陽金剛掌」
両の手の平を並べ、大きな踏み込みと共に落ちてきたゲイヘルンの腹に当てた。
澄んだ金属音の様な音と共に、破裂音が混じる。
ゲイヘルンだけ時が止まったように無防備に硬直した。
「からの……背拳!」
ハウルは、一度身を縮めると流れるように肩から背中を硬直したゲイヘルンに当てた。
鈍い音と共にゲイヘルンは呻き声を上げ、倒れ込んだ。
>>第34話 勝利。そして、龍の解体




