第17話 バッカスの注文
ベイヘル森林で一夜明け、クエスト依頼アイテムの制作完了報告をするため、ゲイルのところに顔を出すと、そこにフィリンもいた。
「こんにちは。
フィリンさんがここにいるのって珍しいですね。
お店大丈夫なんですか?」
「お陰様で」
少し眠そうな目。
いつもの百合の香りの中、蜂蜜のような甘い香りが漂う。
その横でゲイルが大口を開けて笑っている。
どこかでお酒を飲んだのか、身体から酒の臭いが漂ってくる。
「あ、あの……お話していたリュックです」
フィリンさんが、革でできた大きなリュックを手渡した。
「ここに来られるかもって聞いたので……」
リュックを受け取るとそれを背負ってみる。
革であったが背中の部分は固くなく、むしろ、背中の一部のように違和感がなく。
むしろ、身体が軽くなったようだった。
「材料は『ダイダルホース』のコードバンで、『フリグラ草』のツタで編み込んでいます。
ダイダルホースのコードバンは汚れに強いんで、冒険用にはぴったりだと思います。
あと、飾りに『夜明けガラスの風切り羽』を使っています。
これは浮遊の魔法がかかっている羽なんで、かなり軽くなるはずです」
殆どのアイテムはムショクが聞いたことのないものだった。
濃い茶色の分厚い革で作られたリュックは正面や、横に大小さまざまなポケットがついている。
確かに、冒険用には持って来いだ。
「フィリンさん。ありがとう」
ムショクの言葉に、フィリンは頰を赤らめて俯く。
「いえ……気に入って貰えたなら光栄です……
あと……これも受け取ってもらっていいですか?」
フィリンが渡したのは、多種多様なガラスの小瓶だった。
「『コリンの水晶瓶』です。
熱にも衝撃にも強いので、ポーションなどを入れられると思います」
「そうなんだよな。火焔油を作った時も、入れるところに困っていたんだ。
助かるよ。でも、なんか高価そうなんだけど大丈夫か?」
何か追加で払うべきかと思ったが、あいにく持っているものですぐ出せるのはポーションくらいしかない。
「い、いえ! 大丈夫です!
ムショクさんが下さったポーションがかなり高値で売れたので!」
「そうなのか?」
「はい」
あの薬草だけで作ったポーションが高値になった。
ナヴィやフィリンが高い高いと言っていたが、ムショクは実感がなかった。
あれは趣味の極みの1つである。
「ちなみに、いくらぐらいなんだ?」
「えーっと……全部で2000万ルリアです」
ポーション一つが100ルリア。
物価的に2000万ルリアがどのくらいの価値になるかすぐには想像がつかなかったのだが、横でゲイルとナヴィが驚いているので、相応の価値なのだろう。
「ナヴィ、それって凄いのか?」
「凄いって……小さい船なら買えますよ?」
ゲイルがフィリンに飲みに行く相談をしている。
どうやらおごってもらう画策をしているようだ。
「じゃあ、次はわしじゃな」
今度はゲイルさんが大鍋を取り出した。
「『隕鉄』と『シンクレア銅鉱』を使用して、表面には反射の魔法をコーティング。
それにより、焦げ付きなく使うことができるんじゃ」
焦げ付きのない鍋か。
一人暮らしなら喉から手が出るほど欲しいそれが、ここでは魔法で簡単に作れるのか。
「これらは、祝福付きの炎で作り上げてるぞ!」
ゲイルの言葉に、今度はフィリンが驚きの声を上げた。
「祝福付きなんですか!」
ゲイルさんが少し自慢げに笑った。
「お前さんの祝福は良いの。
普通ならすぐになくなる祝福がまだ炉で燃えておるわい」
ゲイルが嬉しそうに鍋の端を指で弾く。
彼の太く煤に汚れた指が澄んだ綺麗な音を鳴らす。
「祝福の効果でコーティングの質が上がっておるからの、並大抵の火では焦げ付かんぞ!」
「ムショク! 冒険者っぽくなったじゃないですか!」
「だな!」
元手をかけないで良さそうなアイテムが入った。
レベルも上がったし、これでちょっと冒険者っぽくなった。
「で、じゃな。
ちょっと、ほかの依頼とか受けてみんか?」
「他の?」
「はい……東大通りの曙の竜ってご存知ですか?」
ナヴィの方を向くと、彼女が代わりに頷いた。
「深夜から夜明けにかけて不定期で開く酒場ですよね?」
「そうじゃ。そこのマスターがお前にちょっと依頼をしたいといってな」
「なんで、俺なんかに?」
「すみません……私が勧めてしまって……」
フィリンさんが申し訳なさそうに、頭を下げる。
耳の先までうな垂れると、困った犬を見ているみたいで心が痛む。
「どうじゃ? 受けてみんか?」
どうじゃと言われても困ってしまう。
やっと冒険者っぽくなってきたが、装備も技術もまだまだだ。
クエストの難易度が高ければ断ることもできるが、紹介者が顔見知りなだけに断りにくい。
とはいえ、ここで断る雰囲気でもない。
「分かりました。
どこに行けばいいですか?」
「ありがとうございます。
東大通りの曙の竜でバッカスという方が待っています」
場所はナヴィが知っているということなので、
二人に別れを告げると俺たちは曙の竜に向かった。
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フェグリアには真紅の広場という中央にある大きな広場から八方に広がる大きな通りがある。
北に向かう雷帝通り。南に向かう古老と聖者通りなど、それぞれの通りには正式名称があるが、
ほとんどはその通りの向きでよばれる。
東大通りもその一つで、正式な名前は竜の尾っぽ通りという名前だ。
真紅の広場から東大通りをまっすぐに歩き、その一番端。
そこから先は細い通りが網目のように広がる。
大通りと細道の境に目的の曙の竜があった。
茶色く薄汚れた石造りのその建物は、外見からではどう見ても酒場に見えなかった。
看板もなく、窓もない。まるで倉庫のような建物。
それが東大通りの突き当りでまるで蓋をするかのように立ちはだかっている。
「ここがそうなのか?」
「たぶん」
ナヴィも少し戸惑っているようだ。
「よぉ、お前さんたちが依頼を受けてくれるってやつらかい?」
呆然と店を眺めていると後ろから急に声をかけられた。
「誰だ?」
無精ひげで長い髪を後ろで縛っている男は、
不信そうに見たムショクを気にも留めず、眠たそうな目で近づいた。
「俺ぁ、バッカスってんだ。
この曙の竜のマスターをしている」
「あんたが依頼したっていう?」
黒いパンツと少しよれた白いドレスシャツにだらしなくぶら下げられた紺色のネクタイ。
信頼に足る人物か少し悩んでしまう。
紹介者がゲイルとフィリンならそう構える必要はなさそうなのだが。
「そうそう。
正確には、紹介されただけで、俺が依頼したってわけじゃないんだがな。
まぁ、細かいところはいいか」
面倒くさそうに伸びをすると馴れ馴れしく肩を組んだ。
「お前、冒険者ギルドじゃないんだって?」
口からうっすらと酒の臭いが漂う。
「まぁな」
組まれた手を外し、この男と距離を取る。
「で、依頼はあるのか?」
「おいおい、冷たいね。
話に聞いていたのと、ちょっと違うんじゃないの?」
あの2人は自分をどういう風に紹介したんだと悩む。
「まぁ、いいか。
依頼内容は簡単だ。食材の採集だ。
俺の店のメイン料理でもあるドラゴンテイル焼きがなくなっちまってな」
ウインドウの中にクエストが一つ現れた。
クエスト名は『バッカスの食材調達』。
クリア条件が『ドラゴンモドキの尻尾×10』か『火焔龍の尻尾×1』。
クエスト報酬は任意。
「調達の報酬だが、あんたが好きなものをやろう。
食材調達は一応店の生命線だからな。
それなりのお返しはしたいのさ」
俺はナヴィのほうをちらりと見た。
「ドラゴンモドキの尻尾なら今のムショクでも問題ないと思います。
ただ、火焔龍の尻尾は絶対に無理ですね」
「どちらかでいいんだよな?」
「はい。だから、このくらいのクエストなら受けてもいいかんじですね」
クエストのレベル的には問題なさそうだ。
ナヴィと話してわかったことがある。
攻略の方法に関わる質問をすると答えられないが、できるかどうかなど、攻略にかかわらない情報なら聞くことができる。
自称通りナビ的な使い方しかできない。
「この報酬任意ってのは?」
「ゲームシステム的にはないですね。
独自の判断っぽいですね」
なら、本当になんでももらえるのか。
とはいえ、欲しいものは特にない。
「ナヴィは何か欲しいものあるか?」
「私ですか?
……うーん、考えてもみなかったですが……
おいしいものとかですか?」
食い意地が張った妖精である。
しかし、食べ物。
火焔茸は美味かった。
あれに酒があれば最高だったんだが……
ムショクはハッとして、自分のスキルウインドウを見た。
あるじゃないか。
醸造スキル。
これ、自分で好みのお酒を造れるはずだ。
「バッカス。その依頼受けた。
報酬は曙の竜の美味い酒のレシピだ」
これで依頼をこなせば、美味い酒とつまみを食べながら冒険ができるってもんだ。
「……やっぱりか」
バッカスの低い声。
先ほどの眠そうな顔はどこにいったのか、今はサメのような鋭い目つきでこちらを見ている。
どういうことだとナヴィを見たが彼女も分からないようだ。
バッカスの目から避けるように肩に隠れた。
「フィリンちゃんも旦那もバカだぜ。
やっぱり、こいつは冒険者ギルドの回しもんだぜ」
「ちょっと待て、意味が分からんぞ」
ギルドの回し者だったらどれだけよかったことか。
後ろで隠れているハエ妖精――じゃなかった、ナヴィのせいで普通に冒険すらできない身分だ。
「ソーマ!」
「はい。マスター」
バッカスの声に後ろから鈴のような可愛い声が聞こえてきた。
驚いて振り向くと、そこには半身ほどの大きさの剣を持った少女がいた。
どうみても、料理用じゃない。
砂金のような短い金色の髪に、砂漠のような美しい褐色の肌。
街中でみたら周りの目を奪うような美しい顔と、大きな胸。
カーキ色のロングスカートと白いシャツという休日感を前面に押し出した服だが、それでも彼女の美しさは損なわれてはいない。
が、今はそれどころではない。
「逃げたら、ソーマがたたっ斬る。
逃げなきゃ。何が目的で近づいたか吐くまで拷問してやる」
すぐさま対応できるよう、ソーマがすり足で近づいてくる。
「ちょっと待て! なんでそうなるんだよ!」
「神の酒と呼ばれた命の水を知りたい奴なんて、ギルド以外にいると思うのか?」
「知らん! 知らん!」
そもそも。命の水ってなんだよ。
そんなの知りたくも――」
神の酒と呼ばれたお酒。
気になる。
「それって美味いのか?」
「ソーマ!」
怒声に近い叫び声に少女が持っていた大剣を大きく振りかぶる。
「ちょっと、待てって! 俺は本当にギルドと関係ない!」
「証拠はあるのか?」
そんなものあるわけない。
念のため、ナヴィに聞いてみたが、答えは想像通りだった。
「あるわけないじゃないですか」
「だよな。
どうせ、それ見せても裏で繋がってるとか言われたら終わりだしな」
「ですね。
あっ、これってもしかして、ムショクが死んだら私は解放されるんですかね?」
こいつ、いい根性してるのな。
そっちがその気なら。こっちにも考えがある。
ムショクはナヴィを優しく握りしめると、バッカスとソーマに見せた。
「お前ら!」
ありったけの声で叫ぶ。
「こいつは、この街に住むアイドルのナヴィだぞ!
優しくて可愛いナビ妖精だぞ!」
褒められて、手の中で照れてニヤけるナヴィ。
このアホ顔が憎い。
「俺は今から全力でこいつを盾にする。
剣で斬ろうものなら、俺ごとナヴィもまっぷたつだ!」
今まで悠然と大剣を構えていた少女が少し身構えた。
どうやら有効みたいだ。
よくやったナヴィ。
「なっ、なっ、なんてことするんですか!」
「お前が俺を殺して自由になる気なら、道連れだ」
ナヴィが手から逃げ出そうとするまえに、強く握りしめる。
俺の盾だ。
逃がすはずがない。
「酷すぎる!」
「どの口がそれを言うんだよ!」
「はぁ? この口ですよ。この口。
かわいいナヴィちゃんのお口ですよ」
ナビの小さい指が自分の唇をぷにぷにと押す。
「ムショクの口とは大違いですね。
ムショクのお口はお口でも汚れる汚口ですね」
盾の癖に挑発するとはいい度胸である。
「じゃあ、たっぷりその汚口とやらを楽しませてやるよ」
掴んでるナヴィをおもむろに口の中に入れる。
手のひらサイズと言っても口の中に入れるには大きすぎる。
胸元ぎりぎりまでは入るがそれより上は口からはみ出る。
ナヴィも必死で両手で口からもがき出ようとするが、唇をしっかりと結んで逃さない。
「ぎゃー! 何するんですか!」
「はまぁひろ!」
「しゃべるなぁ! 舌が! 舌ぁ!」
口の中で必死で動く足の感触が伝わる。
が、舌はそれでもナヴィに絡みつく。
少し塩っぽい。
「ちょ……やめましょ……マジで!」
「ほもひしったた!」
「だから! しゃべるなぁ!」
蹴る足をうまく絡め取り、ナヴィの身体を丹念に舐める。
顔が見えないのは残念だが。嫌がる様が思い浮かぶ。
「お前ら……何やってんだ?」
呆れ顔のバッカスとソーマ。
弁解をしようと口を緩めた瞬間、ナヴィがすぐ様体をひねり、唇に噛み付いた。
「いってぇ!」
あまりの痛さに口を大きく開けたと同時に、ナヴィが口から飛び出した。
「フーフー、ムショクぅー!」
ナヴィの緑の服がしっとりと濡れ、その足から涎がポタリと垂れ落ちる。
「な、なんだよ」
「ウガーッ!」
ナヴィが俺の顔に飛びつくと、その身体をこすり付ける。
「臭ぇ! よだれ臭ぇ!」
「だーれーのよだれかー」
こいつ、全力でよだれを顔になすりつけやがる。
「全く! 何てことするんですか!」
一頻り塗りつけたら満足がいったようだ。
ナヴィのせいでたまにふわりとよだれの臭いが鼻をかすめる。
これは、顔を洗わないとダメだな。
「お前ら……終わったか?」
どうやら彼らはずっと待っていたみたいだ。
「取り敢えず、顔を洗わせてくれ」
「私は服を洗いたいです!」
俺の言葉にナヴィが続く。
「お前ら……さっきまで襲われそうになってたんだぞ?」
バッカスの言葉。
確かにそうだった。
すっかり忘れていたが。
「まぁ、いい。
お前らがギルドの回しもんとは思えなくなったわ」
バッカスが、ソーマに手で剣を下ろすように指示をした。
「ただ、解せんのはなぜ命の水を狙う?」
「そんなの初めて聞いたし、美味くないならいらん。
美味い食材が手に入ったし、酒を飲みながら冒険できればいいなと思っただけだぞ」
「美味い食材?」
「お前らの知らん食材だ」
さっきの復讐とばかりに偉そうに笑う。
ナヴィさえも知らなかったってことは、本当に誰も食べていないはずだ。
「俺ぁ、曙の竜で古今東西の食材を扱ってるんだ。
そんなことはありえないな」
「ないない。だって、お前も知らなかったんだよな?」
と、ナヴィのほうを見ると、面目なさそうに頷いた。
「はい。悔しいですが、初めて食べました」
「ほらな?
お前らじゃ無理だって」
「おぉ、じゃあ、お前がもし、本当に俺が食べたことのない食材を出したら
命の水のレシピを出してやろうじゃないか!」
「その発言後悔するなよ?」
フィリンさんからもらったリュックの中から火焔茸を取り出す。
「ほらよ」
「これは火焔茸か? こんなもの食えるわけねぇだろ!
焼いても煮ても独特の苦みが残っちまうだろ!」
あの苦味はひどかった。
試しにと食べるものじゃないと後悔したものだ。
が、その味の印象しかないならやはり食べたことがないのだろう。
「ほら、食え。いいから食え」
「だから、言ってんだろ!
食える食えないの話なら食材かもしれんが、うまくはないって言ってんだろう!」
どうやら、火焔茸をそのまま出されたのが気に召さなかったようだ。
「これが美味いとか味覚がおかしいだろ?」
「おっ、食べる前にギブアップか。
早かったな」
「だから――」
「まず、食べてみろ」
なかなか往生際の悪い男である。
「ちっ、わかったよ。
だが、俺の言った通り苦かったらぶっ飛ばす」
観念したのか、バッカスが嫌そうな顔をしながら火焔茸を一口齧る。
横で見ているソーマもすでに苦そうなものを食べている顔になっている。
バッカスは齧り取った茸を警戒しながらゆっくりかみしめる。
バッカスの眉間に皺が寄るたびに、ソーマが顔をしかめる。
最初は嫌そうな顔で噛んでいたが、徐々に力んだ顔が緩んでいく。
「……」
思案気にもう一口。
おいしいかまずいかは最初の一口で分かるはずである。
「なっ? 美味いだろ?
錬金術のアイテムの中で、火焔油ってのがあるんだが、
その生成の中で、苦みの元になっている発火成分を抽出する工程がある。
いわゆる、アイテム生成の残りかすって感じだな。
食べるには十分すぎるくらいだ」
バッカスは火焔茸の匂いを嗅ぎ、傘のみ、柄のみなどそれぞれの部分を丹念に食べ分ける。
「で、美味いだろ?」
「……」
バッカスは俺に聞こえない何かをつぶやいた。
俺から目線をそらしているが、口はしっかり動かしている。
よっぽど苦みがない火焔茸が気に入ったようだ。
「えっ? なんて?」
「分かった。分かった。
俺が悪かった。
確かに、俺が食ったことがない食材だ」
「じゃあ、お酒のレシピを教えてくれ」
「まぁ、約束したからな。
しかし、よくこんな食べ方を見つけたな」
「そうですよ。普通口にしない茸ですよ!」
バッカスの言葉にナヴィが続いた。
確かに、ナヴィが言う通り、普通は口につけないかもしれない。
ただ、ゲームじゃない現実の世界でこれと似たようなものを食べたことがある。
「ベニテングダケってしっているか?」
ムショクの言葉に、ナヴィは首を振った。
「俺の国では毒キノコと言ったらまずこれを思い浮かべるほどメジャーな茸なんだ
色や性質が火焔茸とよく似ているんだよな」
「たとえばどういうところなんですか?」
「うーん、毒が水溶性で水に溶けだすところとか、
後、乾いたら毒性が上がるところとかかな。
水につけて火焔油を取り出したり、乾かした火焔粉の材料にしたりとか。
何となく似ている気がしないか?」
「まぁ、言われたらそういう気もしますが、
でも毒キノコってことは食べ物じゃないですよね?」
「まぁ、美味かったけど一般では食べられるものじゃないな」
ムショクの言葉に二人は途端に呆れた顔でこちらを見た。
「食べたんですか! アホですか? アホですね?」
「なんでだよ!」
「毒キノコって、最も忌避する食べ物の一つですよ!」
「ちゃんと食べる風習があるんだよ!」
「毒をですか?」
「俺のとこの国だと毒でも、おいしければ食べられるような食べ方を考えるしな。
フグっていう毒性の魚も毒抜きして食べるしさ」
「ムショクのいたところって、食べ物が少なかったんですか?」
「いや、そうじゃないんだが……食べるのが好きなのかな?」
今でもフグを食べて死ぬ人が年にちらほらいるくらいだからな。
食べることが好きなんだよな。
「まっ、じゃあ、クエストが終わったら酒と火焔茸のおいしい料理法を教えてくれ」
「おい、増えてんじゃねぇか」
「数の指定しなかったろ?」
「ふん。まぁ、いい。
料理法は食材を教えてもらったお礼だ。
まぁ、せいぜい死ぬなよ」
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