第15話
あの廃病院での一件から、守護霊のついた俺はすこぶる健康な生活を送っていた。
相変わらず怖いものを見たり遭遇したりはするが、そいつらは俺の守護霊のおかげで一定距離から近づいて来られないようだ。頻繁に体調を崩すこともなく、珍しく休まずに学校にも通えていた。
6月には体育祭などという学校行事もあったが、ぼっちで存在感の薄い俺にはこれといって楽しくもない行事だった。
みんなが応援合戦などでわいわいしているのを醒めた目で見るばかりだったが、昼ごはんは料理屋をやっている松田家の豪華な昼ごはんと、咲桜の作ってくれたお弁当に舌鼓を打ち、唯一充実した時を過ごした。
球技などの集団プレイがめっきり苦手なため、玉入れなどの競技でクラスの足を引っ張りまくったわけだが、リレー競争では日頃からトレーニングをしていた力を発揮して、難なく1位で完走することが出来た。後で椿から歓声が上がっていたよと教えてもらったが、それ以外何事もなく体育祭は幕を閉じた。
梅雨も終わり、もうすぐ7月になろうとしていた。俺の命もあと半年を切ろうとしている。何度か野ばらさんに会ってお祓いを続けていたが、あまり手ごたえがないままだ。というのも、俺についていた悪霊の大半を打ち消すことはできたので、ようやく本命の山神を引きずり出そうとしたが、向こうがなかなか乗ってこないのだ。
「山神系は本当に人の話を聞かないことで有名だからな~無視しているというよりは話が通じていないのだろう」というのは野ばらさんの談だ。あの神主と笛を吹く神様のいる神社で何度も神を鎮める儀式を行ったが、一行に山神の気配は消えなかった。
そんなある日、俺は夜中に目が覚めた。何か良くない夢を見ていたのか、嫌な気持ちの目覚めだった。時計を見ると、2時半。嫌な時間帯に起きたなと思っていると、俺は目の端に何かを見てギョッとして凍りついた。
天井に何かが張り付いている・・・。
その瞬間、俺は金縛りに合った。体を動かせずに、額から汗だけが滑り落ちる。
天井に張り付いている何かは、人の形をしていた。
手足は天井方向にヤモリのようにくっついているのに、顔だけはこちらを見ている。
俺は目をつぶることも出来ず、必死に頭の中でお経を唱えた。
そして、たまに怖くて眠れない時によくやるおまじないをした。
それは、臍の下の辺りから緑色のエネルギーが出て体全体を包み込むイメージするのだ。
丹田の辺りが暖かくなってそれが全身にいきわたっていくようになる、だんだん眠りに落ちることが出来た経験から、そのイメージを頭に浮かべようとした。
しかし、天井の女の顔だけが、ふっと目の前に降りてきて自分の間近に来た時は恐怖で頭がいっぱいになった。女は恐ろしい顔で「ムダダヨ」といってニヤリと笑った。
そこから俺は失神して記憶が途切れてしまった。




