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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
高1 5月休
95/119

95 帰還

 


 他の町で新たな店を開こうかと、手続きの為に役所に出向こうと道を歩いていたその時、ミツヤから連絡が入る。


 《もうじき2年だよな》


 うげ、オレ、マジでこの世界に何しに来たのか分からねぇ。


 《多少は伸びても構わんぞ……それがよ、オレ、今、大迷宮に居るんだけどよ、ここのモンスターの沸きが悪くなっちまってよ……階層踏破はしないのか……それがさ、100階層は越えてるって話だったんだけどよ、50層で終わりだったんだわ……じゃあかつての勇者は寸前で……ああ、間抜けだよな。後4階層でクリアしてたのに……つまり、クリアしたと……いや、内緒にしてるぜ。名誉とか何とかウザいからよ……そう言う時はな、そこらの雑魚で金があるような奴に、クリア資料を売るんだよ……くっくっくっ、おしっ、それして戻るぜ……ならオレも戻ろうか》


 結局、オレは魔族と竜族に苛められ、それを人族をからかって張らして終わった異世界体験旅行。

 金貨100枚の袋が8751あるけど、またぞろ延べ棒にする気力は無い。

 しかしこれ、金の含有量1パーセントの金メッキ鉄貨だから、残しておくのも意味が無い。

 そんな訳で何かにしようと思ってつらつらと見て歩いていたら、ちょうど良い物を発見し、洗いざらい買い求めた。


 魔術師は杖や指輪型の魔法発動体を使うんだけど、別に無くても構わない。

 あれば効率的に、しかも使用量の節約になるから使うだけであり、魔力に余裕があれば別に使う必要は無い。

 だからオレは使った事は無いせいで、こういう品はよく見てなかったな。


 オレが使ってたのは老人用の杖だけど、ここにあるのはちゃんとした樹木系モンスターの枝で作った本物の魔術杖だ。

 先にある魔石ホルダーのような場所に魔石を入れると良いらしい。

 よくよく聞くとこれは魔導具の一種らしく、厳密に言えばこれも魔助具と言えるかも知れない。

 つまり、魔法の発動を助け、また弱い魔法なら魔力の消費無しに発動するという代物だ。


 魔力が無くても使える。


 これ、もしかしてあっちでも使えたりしないのかな。

 強い魔法はその発動を助け、弱い魔法は魔力が要らない。

 どのみち、魔法の無い世界なんだから、弱い魔法でも大騒ぎになりそうな。


 試しに1本……金貨5枚か。


 とりあえず飴として使ってる魔石を入れ、魔力を込めずに振ってみる。

 ぽわっと火付けの道具みたいな弱い火が出る。

 成程、戦闘には無理だけど、火付けの魔導具の代わりに使えるのか。

 それにしても、それならもっと高いはずだが、どうして魔導具なのに安いのかを聞いてみた。


「それはの、流れてきた魔技共がの、全員まずはそれを売って資金にしようとするからじゃ」


 つまり供給過多で暴落しているらしい。

 念の為に在庫を聞いてみると、それはそれは大量に倉庫の肥やしになっているとか。


「ワシもの、若い頃には苦労をしての、じゃから儲けにならずとも買い取りは断った事は無いのじゃ」


 青いオーラの店ではこんな話も聞ける。

 なのであるだけ売ってくれと聞いてみる。


「物凄い量じゃぞ。そりゃ買ってくれるのは嬉しいがの」


 そして金貨の袋をわんさか出していくと、使用人に大声で在庫を運ぶように指示を出し始めた。

 次から次に運ばれてくる、10本を束ねた魔術杖。

 なんかもう扱いが酷いと言うか、まるで焚き付けの薪のような扱いだよな。

 でも、使用人の往復が止まらないんだけど、この人ってもしかして財産注ぎ込んで在庫の山を拵えてたんじゃ?


「やれやれ、先祖代々の財産もいよいよ尽きると思うたが、これで何とか息を付くの」


 大量に運ばれてきた魔術杖、その総数は18520本。


「何でこんなにあるんだよ」

「売れぬからじゃ。金貨5枚と言うのは買い取り額での、これは原価売りじゃ」

「原価でも売れないって」

「今は指輪のほうが人気が高いでの、今時杖などは時代遅れと言われておるわ」

「まあいいや、買えるだけ買い取るから」

「いくらあるかは知らぬが、無理をするでないぞ」


 金貨の袋を千袋入れた箱を出す。


「おぬし、勇者かいの」

「それがさ、瀕死になっちまってさ」

「なんとおぬし、魔皇子かいの」

「でも勇者召喚された」

「なんとも愚かじゃの。よりにもよって魔皇子を召喚したのかの」

「人の振りしてしばらく過ごし、とっとと魔族領に逃げたさ」

「あの国の滅びの訳はどうなのじゃ」

「初回は暗殺未遂、二回目も未遂で反撃したまで。さすがに2回も殺されかけて、そのまま済ますはずがないよね」

「反撃じゃと申すのかの」

「そうさ、誰が世界など欲しがるよ。自由に暮らしていたら侵攻されて暗殺未遂、それで親父が怒ってさ、逆侵攻をしたら勇者召喚だ」

「愚かしき国の所業かいの」

「まあいい、金貨100枚入った袋が1000入りの箱だ。釣りは要らん」

「そりゃまた豪勢な事じゃの」

「なんの、そこらの砂糖貴族からせしめた金だ」

「それも戦争のようなものかの」

「金が有り余るから余計な事を考えるんだ。だったら減らしてやればいい」

「成程の」


 しかし、金が減らないな。


 次は何処の店で散財しようかと、またしてもつらつらと店を眺めて回る。

 どのみちミツヤは馬車移動だろうから、まだまだ待ち合わせの場所には遠い。

 それでもツンツンと【転移ワールドアクセス】しながら青いオーラの店に寄り、何かしらの在庫を買い求めていく。


 ゴブセンのつぼと言うのを見つけた。


 話を聞いてみると、ゴブリンの魔石を千個入れたつぼの事で、これで大型魔石の代用品にしようという試みで、試作品で成功した為か大量に造られた結果、そこの貴族が没落し、処分品としてここに来た品らしい。

 どうやら儲けの事しか頭に無くて、運営費用すら削ってどうにもならなくなったとか、情けない話を聞かされた。

 ゴブリンの魔石が千個入りなので、魔石単価銅貨25枚でも金貨2枚銀貨50枚になる。

 後はつぼの代金を足して金貨3枚での売りと言われ、数を聞いたらまたこれが派手な数。


「遠い親戚じゃからの、買い取らぬ訳にはいかなくての」


 またぞろ全て買い取る話になり、使用人が倉からドンドンと……100入った木箱がつらつらと積み重ねられていく。


「何でこんなに」

「欲ぼけ共が、ワシの祖先の地を台無しにしてくれよって」

「儲けたら買い取れるな」

「さすがに全て買うてくれるとはの。なれば土地だけでも何とかなろうの」


 そんな訳で木箱は583箱もあり、倉の殆どを占めていた品が無くなった事になる。

 583×300=金貨100枚袋が1749袋となり。


「金貨100枚袋が千入った箱だ。2箱で釣りは要らん」

「それはありがたいの」


 やれやれ、かなり減ったがまだあるな。


 ☆


 シルバストと言えば世界の9割の銀を産出すると言われている国。

 この国は世界5大国と言われる国々から少し離れた場所にあり、国土の8割とも言われる山岳地帯から採れる銀の採掘で成り立っている国である。

 そのせいか、この国では銀が安くて金が高い。

 元々、銀は比較的安価であり、金はかなり高価というのは通貨の酷い惨状で分かると思うが、そう言う訳でシルバスト銀貨のみは無垢である。

 それゆえか、金貨より価値が高いとされていて、金貨5枚ぐらいで取引されている。


 もうあんなゴミ金貨は要らないので、全てこいつにしようと思った訳だ。

 とりあえず100枚入り5000袋をそっくり両替し、シルバスト銀貨100枚入り袋を1000袋手に入れる。

 もちろん【暗示インプリント】を使ったのは言うまでもなく、なので騒ぎにもならずに素直に取引は終わる。


 後はそこらのみやげ物を適当に買い、全ての金貨を使い尽くし、ミツヤと合流するに至る。

 それにしても金貨75100枚で売ってくれるとは、ちょっとラッキーだったかな。

 まあ、【暗示インプリント】さまさまと言うべきなんだろうけど、100キロの銀塊を値切ったら金貨20枚まで下がったんだ。

 まあもう他に買いたい物も無かったからこれでいいやと、あり金で銀塊を買ったという訳だ。


 3755個の100キロ銀塊を最後の土産に、いよいよこの世界ともお別れになる。


 もう、当分、いや、もしかするともう2度と。

 そんな思いで【転移ワールドアクセス】を発動。

 3人は斉藤さんの事務所の脇の、斉藤さん専用の個室の一角に戻る。

 斉藤さんは何か色々と用を済ませたと言っていたが、何をしていたのかは聞いてない。

 ミツヤは迷宮探索で踏破したと言っていたが、ラストにモンスターの数が減った事が踏破の切欠になったとか。

 どうして数が減ったのか、それが不思議そうだったが、あえてそれは言ってない。

 なにはともあれ、勇者召喚から始まった一連の騒動は、各々一区切りを付けてここに終了したのである。


「さて、後何日残っているかな」

「2日になってるぜ。ちょいと越しちまったな」

「まあいい、2日はのんびりしようぜ」

「ああ、さすがに疲れたぜ」



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