92 雷竜
そりゃ確かにR指定の付かない方法だけどさ、それでもその数が問題になる訳だよ。
王族関係者だけで14人で、王宮に62人で、後は国民全ての女性が希望したけどそれは無理だと断って、とりあえず魔皇子に頼まれて10回で、男が5人女が5人になって、男のほうに次期魔皇子っぽくなれそうな奴が居て、次の魔皇子候補になって、今は奥向きで夜が安心なアイテム作りになっている、元魔皇子、現魔皇女なあいつだ。
元々、表向きの仕事は向かなくて、それでも他に候補者がおらず、仕方なく魔皇子として立ったのは良いが、体調の悪い時に襲われたとは言え、蘇生状態になったとしても、もう表に出るのは嫌だと言い出して、なし崩し的に次を造る事になっちまったと。
本来、他の王族から魔力供給になるんだけど、それまで一番魔力の強かった魔王の子に相応しい魔力の所持者がおらず、二の足を踏んでいたところにオレがやって来た訳だ。
渡りに船だとさ。
確かに魂的には親だけど、実質的には他人な訳だ。
だから近すぎる血筋って事もなく、半ば無理矢理に種付けさせられたんだ。
『済まぬの、これもワシのわがままと思うて、何とかやってはくれぬかの』
こんな切り札、何回も使うとかずるいよな。
結局、毎月1回のペースで魔力注入になってよ、1年弱で子供10人って事になっちまったと。
後は帰還の時までに14人の王族に注入してさ。
いやだからね、魔皇女に10回なのに他が1回ってのは納得出来ないとか言われてよ、全員平等とか言われてよ、都合150回消費する事になってよ、
終わったから逃げようと思ったんだ。
そうしたら、王宮にはまだ62人も居たんだよ。
全員平等とかになったら、620回になっちまう。
それじゃますます何しに来たのか分からなくなるから、慌てて逃げようとしたんだ。
でもさ、またそこで切り札が炸裂したんだ。
もうね、あの親の波を忘れないとか言った事、取り消していい?
確かに種族繁栄は大事かも知れないけど、朝から晩まで【注入】の連続ってさ、精神が疲れるんだよ。
しかもだよ、1回の必要魔力は1000ぐらいなんだけど、多いほうが安心って、なんだかアレと似たような台詞を言われてさ、5000ぐらいの【注入】になったんだ。
620×5000=310万だよ。
そりゃあ2500万だから足りるけどさ、精神はそうはいかないんだ。
もう精神疲労が酷くてさ、連日寝たきりになっててさ、ベッドから手だけ出して施術になってたんだ。
そうしたらさ、知らないうちに国民が混ざってて、どれだけ【注入】したのか分からないぐらいになってたんだ。
もしかしてオレ、騙された?
まさかとは思うけど、国民数倍化計画とか立案されて無かったのかなって思うようになっちまってさ、それでもう嫌になって逃げたんだ。
その時に親に告げた言葉が、次には新たな交易品になりそうな物を探してくるって言葉。
砂糖は今まで通りに作るって事になってたけど、他にも交易品になりそうな品を見つけて来るって。
え、甘いって?
それが親ってもんだよ。
なんかさ、酷い事をされても許せちゃう存在なんだ。
やっぱり当時の事が負い目になっているのかなって思うんだけど、言われると断れないって感じかな。
それはさておき、これで完成だ。
アークドラゴンの魔石を12個使用した、前代未聞な大型魔導具。
その水量は最大1200リットル/分を誇る。
つまりさ、流量調整と言うか、スライドスイッチと言うか、どうにも科学の混ざった魔導具になっちまったんだ。
魔石1つで1分間に100リットルの水を出すんだけど、スライドスイッチで12個までの魔石を選択出来るんだ。
更に言うならその魔石の入れ替えも簡単にやれるから、少なく使うばかりで手前の魔石が先に消耗する、なんて事も防げると。
後は魔石アタッチメントなるものも拵えて、将来的にアークドラゴンの魔石が手に入らなくても、他の魔石で代用も効くと。
はっきり言うなら逆円錐形になっている魔石ホルダーであり、小さな魔石も使えますってなっていると。
最悪、ゴブリンの魔石でも装置は動くけど、少量の水を少し出したら尽きてしまうと。
装置としては無駄が多少はあるんだけど、だからこそ取り扱いが簡単になっている。
魔石ホルダーとかその最たるもので、もっとキッチリ固定すれば効率は高いんだけど、交換を容易にする為に効率を犠牲にしてあると。
まあそれでもアークドラゴンの魔石を使い尽くすには、水を出しっ放しで数十年間ぐらいは必要になるはずだ。
更に言うなら、ドラゴンクラスの魔石は充填が効くんだ。
それでも少しずつは容量は減っていくんだけど、補填していれば長持ちすると。
水晶よりも効率の高い魔力保存容器としては、魔石に勝るものはないんだけど、勇者召喚にアークドラゴンの魔石は使えない。
元々、竜種は勇者寄りの立ち位置と言うか、反魔族の立ち位置になっているらしいんだわ。
だから攻撃しなければ攻撃されないのが人族の立ち位置で、だからこそ近くまでは行けるらしいんだ。
だけど狩れない。
かつて勇者に狩らせようって計画もあったらしいけど、アークドラゴンに殺された勇者は歴史の闇に消えたらしく、魔王の書庫にその記録があるのみで、
人族の記録書には記されてないらしい。
まあそれぐらい強いんだけど、【解体】の敵じゃないんだよな。
生きたアークドラゴンが瞬間的に素材になっちまい、【倉庫】に入った時はもう、何て言うかね、狩りってこんなもんじゃないだろうって
思ったよ。
いや、確かに末期の頃はやってたけどさ、さすがにあの竜は無理だと思ってたんだ。
雑魚御用達のスキルだと思ってて、なのにあっさりって……参ったね。
でまぁ、魔導具に使うから12匹は素材になってもらったんだけど、もうね、他の竜が怯えちまってさ、可哀想になってそのまま帰ったんだ。
ああ、遂にドラゴンが見たら逃げる存在になったのかなって、ちょっと寂しかったよ。
だってさ、オレはいきなり素材にした訳じゃなくてさ、ちゃんと言ったんだよ。
『我が手に下れ』
そしたら全て反発すんの。
だったらもう素材にするしかないよね。
『乗り物が欲しくば竜に求められよ。竜は勇者側の立ち位置、勇者が望めば軍門に下り、その背に乗せてくれるであろう』
なのにさ……オレも勇者召喚されたんだぁぁ、とかさ、誰も信じねぇの、全ての竜が。
だからオレは王国の王様に言ってやったよ。
あの伝承は間違っているってさ。
それから記録の書き換えみたいなのをやってたけど、後で見たら……
『我が手に下ってください』
って丁寧語になってただけだった。
ふざけんな。




