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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 夏休み
9/119

09 料亭

 


 行きつけの料亭に向けて、裏路地を入っていく。

 ここらは夜の繁華街。

 昼間は閑散としているが、夜になるとあちこちの店が開店する。

 そんな中の店なんだけど、さすがに表からは補導されそうな感じだ。

 夕方から開く店ではあるのだが、オレの年齢では一番乗りでもギリギリの時刻だ。

 それはともかく、裏路地の一角の木戸をトントン……カチャ……「どうも」


「おう、またボンか、よぅ来たのぅ」

「お邪魔します」


 ここには門番のようなお爺さんがいる。

 なので恐らく、政治系のお客さんが主に使っているんだろう。

 早い時刻なので許可してくれたんじゃないかと思っている。

 だからオレもこんな時刻に来るんではあるんだが。


「あらまぁ、いらっしゃい」

「いつもの」

「ほんとに気に入ってくれたのね」

「もう中毒だよ」

「くすくす、ありがとうね」


 金払いが良ければ身元などは気にしない。

 それが料亭の本分らしく、オレの事についても一切詮索しない。

 どっかの金持ちのポンポンだと思っているのかも知れないが、真実などを教える筋合いもない。


 ああ、今日も美味そうだ。

 造りも新鮮で、ワサビの香味も鮮烈だ。

 あっさりとした衣のテンプラも素晴らしい。

 どんな油を使っているのか、後味が本当にサッパリしているのだ。

 そしてこの漬物もいい。

 ご飯はつやつやと光っているし、甘みのある味は癖になる。


 この魚、何だろう。


 知らない魚だけど凄く美味しいな。

 口をパカッと開けた、朱色と言うかオレンジと言うか、そんな体色の魚。

 煮付け向きの魚なんだなあと思いながらも、その味に堪能する。

 それにしても、筑前煮はやはり良いな。

 煮物と言えば筑前煮ってぐらい、オレのマイブームだったりするんだけど。

 こんなガキが相手だと言うのに、手抜きは一切無い感じだ。


 ああ、このシイタケ、肉厚で絶品だ。

 出汁をよく吸っていて、堪らん味だ。

 タケノコも先端の柔らかいのを使っているんだな。

 ああ、贅沢だけど美味しくて幸せだ……ふうっ。

 お茶も美味しい……ご馳走様でした。


 全ての料理を味わい、飯も食って満腹。


 今は1万のコースだが、高校に入ったら2万のコースにしてもいいな。

 それとも特上の5万にするか……まあ、まだ未成年だから控え目にしておくべきか。

 そんな事を思いながら町を歩いていると、ゲーセンの前でうろうろしているミツヤと出会う。


 どうやら小遣いが尽きたらしい。


 もう夜なんだから帰ればいいのにとも思うが、どうしても攻略したいゲームがあるとか。

 仕方が無いので小銭を渡し、勢い込んでゲーセンに走るミツヤを見送り、オレは家に帰る事にした。

 土曜の夜だけの息抜きか……

 まあオレも同じ息抜きをしたんだけど、使い道が違うのは今は内緒だ。


 そのうちあの店を紹介してやってもいいが、やはり社会人になってからが望ましいだろう。

 仕事もしてないのに金があるとか、怪しまれるに決まっているからだ。

 もっとも、ネットで稼いだという言い訳も、高校に入ればやれるかも知れない。

 義務教育を抜けたらかなり緩くなるだろうし、それからなら構わないと思うのだが、あいつが下手にそれを真似したら厄介だ。


 オレは確実な予測があるからやれる事だが、素人がそう簡単に儲けられる世界じゃない。

 例の長期予測は、秋まで地味な値動きだけど、秋の中盤から年末までうなぎ登り。

 そのまま新年を越すと思わせて、年末に暴落って感じになっていた。


 余りに派手だから、タマゴ追加で細かく予測したんだ。

 だから途中の値動きもかなり詳細に分かっている。

 まあ、終わった後で即座に熟睡になっちまったのも、やはり当然だろうけど。


 数日後、じわりじわりと株価が上がり始めた。

 まだ早いはずなんだけど、オレの資金の影響かも知れない。

 もしくは、何かの操作かも知れない。

 そうやって飴をしゃぶらせて増長させて、ここぞって時に抜け駆けで売るってのが仕手の本領だろう。


 オレはただその上前をはねるだけだ。


 市場からはその株だけがひたすら求められているはずだ。

 自動購入にしてあるから、株価がいくらであろうとも、市場に出れば買い取る事になっている。

 だからこの前少し下がった時に放出された株も買ったろうし。


 買い取り額はかなりになっているが、まだまだ余裕はある。

 どのみち資金が尽きても関係無いし。

 問題は暴落寸前に、仕手の連中より先に売れば良いだけの話だ。

 いわばゲームみたいなものだから、ただその駆け引きを楽しむだけだ。

 儲けがどうのこうのなんて、そんなの実際、どうでも良い事なのだ。


 ともあれ、12月にいくらになっているか、それを楽しみにしておこう。

 全て売り切る事が出来るか? 仕手らしき存在を出し抜けるか? この駆け引き、癖になりそうだ。

 実際、仕手の連中は堪ったもんじゃないだろうが、そんなの知るかよって感じだ。


 いやぁ、面白いなこれ、クククッ。



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