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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
高1 5月休
87/119

87 遊行

 


 ミツヤが何を買ったのかは知らないが、妙に満足そうなので良しとしよう。


「買い出し途中でゲーセンに寄ったか? 」

「う、いやー、そのよ、ちょっとだけな」


 それで妙に機嫌が良いのか。

 ミツヤの事だから、店と店の間にゲーセンを挟んだ気がするが、まあそれも本人の自由意志って事で良いだろう。


「あんまし夜、寝なくても眠くならなくてよ、店が閉まるまで買い物をしてよ、後は軽くメシ食ってゲーセンで時間潰してよ、朝まで仮眠って言うかさ。そういうのを3日やったんだ」

「どうにも高校卒業したら、そういう日課になりそうだな」

「あはは、自信無い」

「まあいいさ、好きに過ごせばよ」

「それでもやれる事はやるぜ。魔法の開発とかよ」

「いや、遊んで暮らすってのも構わんぞ。それも思い出になるからな」

「そっか、ここはオレの故郷なんだよな。なんかよ、あっちのほうが馴染みに感じちまってよ」

「オレは既にあっちが故郷になってんな」

「くっくっくっ、ならオレもそうしちまおう。どのみち、家の奴らとかもう、今となってはどうでも良いって感じだしよ。コージがてこ入れしてくれたんだろ、うちに」

「まあ、手出ししては困るからな、目一杯恩を着せたさ。あれでもううちに対しては何も言えん。言いたいなら返せと言えば済む事だ」

「コージの事だから、とんでもねぇ額を押し付けたんだろ。例えば1兆とかよ」

「その5倍と、追加で補填口座に100兆ぐらいある」

「うぷっ、くっくっくっ、とんでもねぇ」

「うっかり手を出したらそいつが消えるんだ。誰が出せるかよ」

「けどよ、シナリオの為と言えば聞こえは良いけどよ、そういうのって欲だよな」

「ああ、あいつらはシナリオの為に資金が必要ってのを大義名分にしてるんだ。本当は自らの欲の為ってのをシナリオで誤魔化しているんだろうな」

「やっぱそうかよ。なんかさ、家に戻ったらやけに生活環境が派手になっててよ、何処の成金かと思ったぜ」

「構わんさ、いくら使っても。もうオレとは関係の無い奴らなんだ」

「ああ、オレとも関係ねぇ。あの金、良いんだよな」

「何かやったのか」

「ああ、学費も生活費も要らねぇ。もう家とは縁を切るって言ってやったさ」

「いきなりか」

「いやな、買出し中にケータイに電話が掛かってよ、やれ無駄遣いはしてないかとか、大学費用は出せないとか、バイトはしないのかとか、金に関する

 事ばかり言いやがってよ、だからもう縁切りしちまったんだ」

「天文学的な金を渡して、なおかつそんな事を抜かすのか。そもそも、ミツヤの件は50億渡して縁切りになっているはずだ」

「うちの兄貴の独断かよ、くそっ」

「ああ、多分アレだ。世代交代したら全て自分の物になると思ってな、だからお前に送金される金が惜しくなったんだよ」

「それもこれもコージの金だと言うのに、すっかりてめぇが相続されるつもりかよ」

「シナリオが終わったら消えてなくなる資金だと言うのに、ご苦労な事だ」

「やっぱり切るんだな」

「当たり前だ。誰が他人に金をやるか。世界の為だからこそ、仕方なく使わせてやっているだけだ」

「ならあいつ、シナリオが終わったら、くっくっくっ」

「好きに路頭に迷えばいい。どのみち、お前を跡継ぎにと言わないお前の親に、オレはもう呆れているんだよ。オレとの接点はミツヤだと言うのに、

 普通なら跡継ぎぐらいにはするはず。なのに当たり前のように受け取って知らん振り。やっぱり芝居をやっているんだなとつくづく思えるさ」

「シナリオで芝居ってか、ああ、サッパリしたぜ。もう、家が何と言おうと関係ねぇ。でよ、あの金、貸しといてくれるか」

「道具とか好きに使えよ」

「いやな、金の事はやっぱそのままじゃ拙いだろ。お前に借りた50億と300万は何時か返すからよ」

「消滅するまでそいつを覚えておくだけでいい」

「お前とはイーブンでやりてぇからよ。今は無理でもいつかはな」

「楽しみにしておくぞ」

「任せろ……とはまだ言えねぇけど、そのうち何とかして見せっぜ」


 以前とはもう状況が違うからな、金はもういいさ。

 ただその心意気だけは買うがな。

 その気持ちでいてくれるなら、オレはお前と共にどんな世界にでも行くさ。


 まあまずはあの世界からだな。


 念の為に斉藤さんに連絡し、キリが悪いから10日ぐらい遊んでくる旨を伝えておく。


「遊行感覚でと言うのも面白いの」

「あれ、興味がある? 少しぐらいなら問題無いだろうし、バカンスしてみない? 」

「そうさのぅ。こちらは今は特に問題も無いようじゃし、新規の俯瞰はそれなりじゃ。少しぐらいなれば問題無かろうの」

「身体はどうする? 」

「適当にするから心配は要らぬ。行きと帰りだけ頼むぞぃ」

「もう行ける? 」

「そうさの、しばらく済まぬの」


 おっかしいな。


 斉藤さん、転移やれそうなのにな。

 もしかしたら検分なのかな? まあいいけど。

 隠し俯瞰って名前らしいけど、どうにも熟練管理が管理に飽きて、やっているような気がしてならないんだよな。

 どうにも俯瞰に対してちょっと思うところがあるようで、自分と同じ職務とは思ってないような感じがするんだが、まあどうでも良いけどな。


「待たせたの。俯瞰に申し付けておいたでの」

「行きます【転移ワールドアクセス】」


(ううむ、成程の。混合は使うものの、基本は魔法なのじゃな。確かに次元は超えるものの、いささか無駄があるか。いずれそれは削減されようが、今は移動出来るだけで良しとすべきじゃろう。これからが楽しみな人材じゃて……検分ですか……後の楽しみになりそうじゃの……それがですね、望むと言いまして……もう試したのかの。全てを知って後に試すべきじゃのに……う、それは……何かの勘違いじゃろうの、あやつは望むようには到底見えぬ……そうですかっ……焦りは禁物じゃ。自然に至りし時、改めて尋ねるが宜しかろう……ありがとうございます、相談役……今はただの隠し俯瞰に過ぎぬ……しかし……構わぬよ……はい、それでは彼をよろしくお願いします……可能な限りじゃがの……はい)


(先代からの相談役……世代交代でその職は退かれたものの、まだまだ私には必要な存在。ありがとうございます、希望が出てきました。彼の事はプライベイトな相談役と諦めていましたが、可能性がありそうですね……ならば焦らずその時を待つとしましょうか)


 やれやれ、確定のようだな。


 大体よ、階梯とやらいう次元を越えるのに、特別な技能が要るような事を言っていたよな。

 それは通信も含むって事で、オレの呼びかけに反応して当たり前に返してきたよな。

 後は上に連絡をするにも必要なスキルだよな。

 んで、上級管理とやらには次元持ちもいくらか居るって話だ。


 ここからが大事なんだけど、俯瞰には世界を見る能力が無いと。

 つまり、見えなかったら通信もやれない訳で、見えるからこそ通信がやれるとも言える訳だ。

 じゃあ捕縛の為の連絡は、誰がやっていたかって事になるよな。

 当時、管理はオレがぶち消して、可能な存在は居なかったはず。

 万が一、俯瞰がやれたとしても、そいつを捕縛する計画だ。

 自分で自分を捕縛させる連絡など、やるはずもないとなれば、それはもう確定だろ。

 んで、今回オレの転移の調べをするって事は、もしかして。


 あの唐突な問い。


 前後の脈絡の無いあの問いに対して、オレの返事で嘆息を感じた。

 目の前の本人じゃなく、微かに何かの嘆息を感じたんだ。

 だからもしかしたら何かの試しを受けた可能性がある。

 上に登りたいと言うのがあいつらの仲間になる事ではなく、もしかしたらそれらを束ねる者関連。


 よく聞く話だけど、辛い業務は望む者よりも嫌がる者のほうが良いらしいな。

 嫌だから早急に終わらせようと努力するとか、望むのは権力に溺れるとか。

 オレ如きにそんな詰問など無いとは思うが、酔狂な奴はどこにでもいるものだ。

 そんなのにうっかり乗っちまっては、将来の楽しみもなくなるというもの。

 よーし、今度、もし、聞かれた時、想いっきり望んでみるか。

 それでもし据えられたとしても、据えた奴が悪いって事で好き勝手にしてやればいいしよ。

 好きに暴れたいから望んだとか、そんなのを据えたほうが悪いって事になるよな。


 天邪鬼なのかな、オレって、クククッ。


 ☆


「さあ、行ってみよう」

「おっしゃー」

「おぬし、あの方と対話してどう思うたかの」

「ああいうのも良いねぇ。トップだろ、何でも思いのままって事だよな」

「本心かの」

「え、違うの? 」

「なかなかに思うようにはやれぬらしいがの」

「そんなの食っちまえばいいんだよ。トップに逆らうなんてな、みんな食っちまえばいい。そうしたら従順なのばかり残るだろ」

「それは乱暴じゃの」

「けどさ、トップに逆らうって事はつまりはそう言う事だろ。王様に逆らう兵士とかさ、粛清しないとだーれも従わなくなるよ。見せしめってのは必要だよな」

「それは確かにそうじゃがの」

「現状で考えようよ。いくら策定してもゴミしか来ない現状で、まだ生ぬるい政策をするんなら、そりゃ向いてねぇってこった。嫌な奴にでも因果を含ませてやらせているのだとしたら、とんだ甘いシステム。ああいうのはな、やりたい奴にやらせればいいんだよ。そんで、好きに暴れさせて、仲間共々粛清すりゃ、すっきりとした世界になるだろ。その繰り返しで真に皆の為に尽くすようなのが望むようになる。そうすりゃそいつが汚れてボロボロになり、洗っても落ちなくなるまで汚れたら、またぞろ共々粛清だ。そういうのが理想だろ、違うか」


「おぬし、それは」

「うん? 何かあったのか」

「今、自分が何を話したか、覚えておるかの」

「えっと……さあ、いってみようって、アレ、ミツヤは? 」

「時間を取らせたの」

「なんかあったのか」

「いや、何でもないぞぃ」

「そっか、ならまた後でな」


(あやつにはああ申したが、これは据える訳にはいかぬぞぃ。あやつ、恐らくは弟子などではなく、表層じゃ。じゃから根幹と同じ考えを持つのじゃろう。と言うか、アレは根幹からのメッセージじゃろうの。まさしく初代の考えそのものじゃったわい。やれやれ、楽しみにしておるようじゃが……まあ、まだまだ先の事ゆえ、他に相応しき者が現れるまで、淡い夢を見させておくべきやも知れぬの……存在に天はただ1度。例えそれが表層だろうと変則だろうと、存在より分かたれた存在も含むなり……か。相応しきはずじゃて、やれやれじゃの)


 なんかバクチが成功した気分。


 直感のままに返答したけど、あれで逃れたかな。

 どうにも酔狂みたいだが、あれでもうやれとは言わないだろう。

 誰がそんな雑巾みたいな職をやりたいかよ。

 他人の為に尽くす生涯とか、やりたい奴にやらせろよな。

 まあ、オレは宣言したから、それでも据えるなら本当に食っちまうぞ、クククッ。

 ミツヤにも簡単に嫌がらないように言っておかんとな。

 何かの間違いで候補にでもなっちまったら……立場を利用してやりたい放題って手もあるがな。


 そのほうが良いかも知れんな。


 けどそんなの、面倒だからオレは除外を狙ったと。

 望むけど暴れるってな。

 果たしてミツヤはどう返事をするのかねぇ。

 単純に嫌がったら据えられて、望んだらこれ幸いと教育されちまう。

 だったら暴れると最初から言い、望むと言ってやればいい。

 オレは全力で抗うから、教育したいならしてみるがいいと言うだけだ。


 ああ、狩りに行くか。


 どうにも考えが戦いのほうに向いちまって……いかんいかん。



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