表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 夏休み
8/119

08 切替

  


 日中の暑さが嘘のような、涼しい早朝の時間帯。

 日の出寸前のかなり明るい街の一角で、今日も目覚ましが鳴る。

 目覚ましの主は、寝ぼけた頭で手探りで目覚ましを探し、止めて……


 ふぁぁぁ、もう朝か……朝はやはり辛いな。


 目覚ましは鳴るが、なかなか目が覚めない。

 5時に起きてランニングの日常。

 弱かった身体もこれで少しましになったのだし、だからこれは続けなければならないだろうな。

 冷水で顔を洗って強制的に目を覚まし、軽くストレッチをしてランニングに出かける。


 折りしもちょうど日の出となった方向からの日差しに目を細め、軽く俯き加減に走り出す。

 今日も暑くなりそうだけど、水分だけはきっちり取らないとな。

 レースの翌日の日曜だけは寝坊するからやらなかったけど、これからは毎日やれるだろう。

 軽いランニングの後、ラジオ体操に参加して、終わってまた少しそこらを走る。

 最後にストレッチで運動を終わり、家に帰っておはようの挨拶。

 そしてシャワーを浴びて、のんびりと朝食を食べる。


 これが夏休みの普通の朝の始まりとなる。


 親には朝の散歩と伝えてあり、近所を軽く歩いて戻るって事になっている。

 確かに最初はそうだった。

 7時に起きて近所の散歩。

 身体が弱かった頃のオレの日課であったのだが、元気になるに従い、起きる時間が早くなり、歩きから小走りになってランニングとなったのだ。

 それでも帰る時刻は同じなので、今でも近所の散歩なのだと思っているのかも知れない。


 ともあれ、そういう朝の行事の後は、ミツヤの常連のゲーセンに行ったりして……まあまあ、のんびりした日常かな。

 それでも毎日は行かず、図書館とかもよく行く。

 結局、ミツヤの悪ガキはポーズだったようで、この夏休みはアルバイトをして過ごすらしい。


 なのでミツヤも居ない事だし、自然と足は図書館のほうへ向く。

 図書館と言えば町の中心地帯。

 この街には無いけど、都会に行けば大使館もある。

 明日からミツヤはバイトか、都会で勉強するのも良いな。

 毎日通うぐらいの金は余裕であるし、生きた語学の勉強の為に、受付の人と楽しく対話……これでコミュ障っぽいのが治れば一石二鳥と。


 そうやって日々をこなすうち、ミツヤに出会えばまたぞろバイトの話ばかりしている。

 少しでも貯めて将来の糧にするらしいのだが、そこまで切り詰める事も無いのにな。

 確かにオレは300万貸しはした。


 だけどな。


 昔から親に言われた言葉がある。

 金を貸す時はあげるつもりで貸せ。

 貸したら戻ってくると思うなと。

 だからあの金はもう忘れている。

 覚えていたら返すもよし、無理ならそのまま時効まで放置するもよし。

 ただし、その場合はオレに親友が無くなるだけの事。

 ダチの付かない友として、浅い付き合いに変わるだけの事だ。


 ただな、催促無しの利息無しなんだ。


 だから返す意志があれば何時までも待つからな。

 それを時効とか言って無しにしようとしなければ、オレとお前の関係は変わらないし、また変えたいとも思わないんだ。

 だから焦る事は無いんだからよ、就職してからでも遅くないから、今は返済の事は忘れていいんだぞ。


 どのみち、オレの秘密の保持の為には、結婚なんてやれるはずもなし。

 オレは生涯独りで生きて独りで死ぬのだ。

 こんな能力を望んだ訳ではなかったが、ある以上は活用する。

 だからその代償として単独の生涯を覚悟したと、ただそれだれの事だ。


 そりゃまあ、苛められっ子だったし、クラスでも地味で根暗とか言われてたし。

 女たちの話題に登ると言えば、そういうマイナー系の話題だけだ。

 だから交流も皆無だし、彼女とかそんなの持った事も無い。

 どのみち、オレは生涯独りだろうと、今からそんな未来が見えていたりする。

 まあ、オレの意識も今ではかなり変わっちまったから、今更そんな相手とかどうでも良いしな。


 それはともかく、今、少し……なんだこれは。


 図書館から帰って少し遅い昼飯を食った後、部屋でサイトを見ていたんだけど、口座の額が……桁が、あわわっ。

 どんな大穴が大量に出たのかは知らんが……うえっ? 大荒れ? 全国で波乱? なんだそれ。

 確かに昨日は風は強かったけど、雨は……うげ、地方は雨ですか、そうですか。

 そりゃ倍率の高いレースを選んで100万ずつ28通り買ったけどさ、それらが悉く当たった訳だ。


 全国規模、パネェ……


 けどこれどうしよう。

 2桁の億なんてさ、ちょっと調子に乗り過ぎだろ。

 地味にするつもりだったのに、1度の過ちで終わっちまったな。


 こうなりゃ株式予測に切り替えるか。


 そう思って真剣に予想したんだけど、凄まじく派手なのを見つけた。

 これって仕手じゃないのかなって感じの凄い銘柄だ。

 これを第一志望にするのは良いが、さすがに仕手が相手だと資金が足りない。

 もうこうなれば預金などただの数字の羅列に過ぎず、ポイントが無くなればゲームは終わりと、そんな開き直りともとれる心境になっていた。

 なので、その銘柄購入の予備段階として、数日後に上がる銘柄をいくつか購入し、予定日時に売却予約。

 そんなのをいくつかやって、増えた資金でそいつを集中攻撃。

 浮遊株も全て買い取る為に、1000億の資金を作り、それで始めた長期予測。


 どうせやるなら徹底的に遊ばないとな。


 ネトギン5社に200億ずつ分散し、そこからその銘柄に向けての集中購入開始だ。

 億未満はオレ名義の都市銀行に入れておき、普段使い用とする。

 まあ、実際、億の金とか実感も無いし、そのまま消えちまっても問題無いさ。

 2743万は中坊の預金としては少し多いけど、誰にも見せないから問題無し。


 さて、苦労して会員になった、レースサイトも解約しておくか。

 お気に入りからも削除し、履歴もキャッシュもクリア。

 ゴミ箱も掃除してキレイサッパリ。


 さてと、今日は月に1度の贅沢日。


 夕食は要らないと言ってあり、親には隣町の料理屋だと言ってある。

 そこの裏メニューが好きなんだけど、高いから月に1度の贅沢にしてあるのだと。

 まあ、それが和食のコースとか、言わなければ問題は無いと。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ