75 状況
彼が起きたのでひたすら会話になりました。
「オレ、どんだけ寝てた? 」
「寝るとなったらひたすらだな。かれこれ2ヶ月ぶっ続けだぜ」
「うげ、そんなに寝てたのかよ。ああ、あの精神疲労、かなりだったんだな」
「魔法ってな、そんなに疲れるのかよ。確かにすげぇの連発してたけど」
「いや、オレの方式はな、無意識で術式を組み合わせて、無意識で発動するって方式になってんだ。それをあの合言葉みたいなので、一連の作業を無意識にやるんでな、簡単そうに見えても頭ん中では派手な作業になってんのさ」
「それは慣れ、なのかよ」
「まあそうなるな。最初はちゃんと唱えて発動してたしな、長い詠唱を」
「その詠唱ってな、どうやるんだ」
「お前ら、特典もらったろ、自動翻訳とか」
「ああ、だから呪文とか読めるけど、発動しねぇんだわ」
「あれは原音でやらないと無理だ。オレは特典無しで覚えたから、原音でやれるけどな」
「うがぁぁ、そんな落とし穴があったのかよ」
「日本語しか知らない奴が、英語の呪文とか、やれると思うか? 」
「くそぅ、なら特典がある限り、魔法は使えねぇって事じゃねぇかよ」
「そこはアレンジだな。オレが日本語版に調整してやるさ。まあ、時間は掛かるだろうけど」
「頼むな、オレ、使ってみたくてよ」
「後はイメージだ。マッチの火をイメージして、『炎よ、我が手に宿れ』これやってみな」
「おっし『炎よ、我が手に宿れ』くそ、出ねぇぞ」
「オレが最初の火を出すまでに何年掛かったと思ってるよ」
「うげ、そうなのかよ」
「1回で出すとか、どんな天才だよ。じっくりやれ、出るまでな」
「ああ、そうするぜ」
「ああ、身体の中にもやもやするものを感じる訓練が先かな。んで、それを感じれるようになったら、自分の意思で動かせるようになれ。んで、それを ひたすらやって、まずは魔力に慣れる事からだな。その後からなら多分、1発成功するかも知れん」
「そっか、やっぱしそういうのがあるんだな」
「よしまた飲め。あいつは飲めば飲む程に身体が更新されていく。多分な、まだ間に合うはずだ。ハタチぐらいまではあれで身体を強化出来るはずだ」
「お前もあれを飲んだんだな」
「ああ、毎日毎日、ひたすらな」
「おしっ、オレもそうするぜ」
「よし、10樽ぐらい出してやる。毎日、少しずつそいつを飲め。まあ、大ジョッキ1杯ぐらいずつかな」
「それで更に強くなるってか」
「耐久力や魔力とかが強くなるんであって、技能やその他の力はまた別だ。あいつは基礎を上げる効果しかねぇぞ」
「それがありがてぇんだよ。今じゃ1日中狩っても、そんなに疲れてねぇからよ」
「まあ、スタミナ確保には最適だな。よし、【倉庫】ほれほれほれほれ」
「よし、マジックボックスっと、よし、よし、よし……んでと、ラストのこいつを、んぐっんぐっ、ゴクッゴクッ、ぷはぁぁ。うお、疲れが消えたぁ」
「一味違うだろ、クククッ」
「盗賊なんかとは比べ物になんねーぜ。あ、そうそう、あいつら、謝っていたからまた混ぜて良いよな」
「なんだ、もう泣きが入ったのか」
「山本は神殿通いの日々だとよ。毎日帰してくれと祈ってるらしい」
ああ、山本の人格じゃあそうなんだろうな。
つまり、中の人は修練を独自にやっていると。
「他の2人の腕前はどうなんだ」
「ゴブリンをソロでタイマンで何とか倒すぐらいかな」
「まだまだだな。それで、お前はそろそろドラゴン倒せたか」
「おいっ、強い相手とは戦うなと言ってたろうが」
「あんなの雑魚だろ」
「お前、自分を基準にしてねぇか? 」
「あっ、そうだったな。うんうん、それで、オークの群れは余裕だな」
「最初からそう聞いてくれよな。ああ、余裕だぜ」
「金はあるのか」
「あいつら、装備もロクに揃えてなくてよ、金貨30枚カンパしちまったぜ」
「オレも3人にと、金貨100枚カンパしたんだよな」
「うげ、あいつら、たった2ヶ月で使い過ぎだろ」
「お前は盗賊ってメシがあるから良いが、人間は1日3食だぞ」
「あ、そうだったぜ、くっくっくっ」
「安いこの宿でも1日銀貨50枚。2ヶ月で金貨30枚。もっと安い宿なら節約になるが、メシは180回食う計算になる」
「ああ、足りねぇな」
「武器はあったが防具は無い。おまけに……あ、ギルドはあったのか」
「あいつら、ギルド知らなかったみてぇでな、今ようやく下級認定でゴブリン狩れるクラスになったさ」
「お前は中級か」
「おうっ、何とかよ」
「よし、オレもいきなり中級狙うか」
「それは無理じゃねぇか? 」
「ふふん、ああいうのはな、実力を見せれば良いんだよ。だからギルド員の前で魔法の1つでも使ってやれば、すぐにしてくれるさ」
「あああっ、そんな手が」
「そこらのゴミを吹き飛ばしてやれば、どうぞ中級になってくださいって言うさ。言わなかったら他の町に行くと言えば良いだけだ。腕の良いのが消えるより、 中級に上げたほうが町の為だと思えば、それぐらいの融通は利かせるのが、ああいう組織ってやつさ」
「じゃあ、明日から一緒に狩ろうぜ」
「さて、オレも飲んでおくか……」
「よし、オレももう少し……ゴクッゴクッゴクッ……ぷはぁ、うめぇぇ……ふうっ……これってよ、人間の血じゃないんだろ」
「クククッ、気付いたか、魔族の血だ」
「うえっ、そうなのかよ」
「魔法が強い人間みたいなものだぞ。別に化け物って訳じゃねぇ」
「そう言う事なのか」
「ただな、そいつを飲めば飲む程に身体は強化されていき、寿命も延びていく事になる。だから人より強靭な肉体を持ち、そして人を糧にする」
「なら、オレも魔族だな、くっくっくっ」
「だから魔王と言ってもこの国の王様と同じ、領地を持った権力者だ。となると国と国の争い、つまりは戦争になるんだが、基礎体力が違うから一般人じゃ戦いにならない。だから勇者を召喚して代わりに倒してもらおうとする。自分の事しか考えず、他の世界から都合も考えずに誘致して、全く、傍迷惑な行為だぜ」
「それだけの事なのかよ」
「ああ、だから牛の勇者が人間を討伐って感じだ」
「同じ事なのに、それが人間になった途端、退治ってか。くだらねぇぜ」
「だから退治の話は放置して、こうやって修練にしてんじゃねぇか。機会は利用しないとな」
「それでかよ。おし、オレも利用するぜ」
「最後に使った魔法、あれ、世界を渡れるからな。強くなったら帰るぞ」
「それであんなにあっさりと言ってたのかよ。オレはお前と世界で探すつもりでいたってのによ」
「あれを使うと旅行が凄く簡単になるんだよな」
「なのに、航空機で何時間も移動した。つまり、バレるとヤバいから自制してたんだな、ずっと」
「いやな、アリバイになるだろ、殺しの、クククッ」
「ああ、そういう使い道かぁ、良いかも」
「北海道、お食事旅行、行くか、そのうち」
「くっくっくっ、良いねぇ、そういうのも」
「何を言っても変わらないな。つまり完全に開き直ってんな」
「試しかよ。もう別の存在って思うようにしてらぁ」
「それが正解だけどな」
「おし、寝るぜ」
【清浄】
「うほー、また便利な魔法だぜ。風呂がねぇからもう痒くてよ、助かったぜ」
「なら、明日は野原で露天風呂でもするか」
「やったぜ、待ってました」
「それはそうとお前、宿と交渉してくれたか? 」
「なんだそれ」
「あれ、1日銀貨50枚、日本円にして5万は高いだろ。だから寝ている間に値切ってくれたと思ったのに」
「そうなのかよ」
「情報得てないのか? 値切ったら銀貨10枚になるぞ」
「もっと早く言ってくれよ、そういうのは」
「行って来い、そしたら延長がタダになる。追加で半年、値切りでもぎ取って来い」
「おっしゃー」
「いいか、中級冒険者のカードも見せるんだぞ。町への貢献が高いから、恐らくいけるはずだ」
「おっし、半年だな。もぎ取ってやるぜ」
「買物も全てそうだからな、武器も防具も食い物も、値切り文化は面倒だが、貧乏人の防護策。金持ちはその手間を惜しみ、貧乏人は暮らしが楽になる」
「そう言う事か、成程だぜ」
「貧乏国と聞いて、ああ、値切り文化だと思ったが、やはり合っていたって事さ」
「そういうのも経験だな」
「あっちの国もそうだからな。まあ、お前は通訳された言葉しか聞いてないから判らないかも知れんが、オレは現地で日本円を現地通貨に両替する時とか、かなり値切ったから慣れてただけさ」
「ああ、あのツアーの時かよ」
「かなーり粘ってようやく負けやがって。今度行ったらもっと値切ってやるぜ、クククッ」
「それもこれも言語か。オレも色々覚えねぇとな」
「値切り勝負の為に覚えるんだ。覚えないといけないからじゃねぇ」
「目的が先かよ、それで色々覚えたんだな」
「必要で覚えていったのさ、何もかも全てな」
「おしっ、オレもそういうの、見習わんとな。さーて、値切ってやるぜ、くっくっくっ。黙ってたのは確信犯だろ、そこら辺りを突いてやれば、くっくっくっ」
「値切りのプロになりそうだな」
「くっくっくっ」
「5人で1人銀貨10枚。つまり、銀貨50枚は5人分だ。オレ達はまだ20枚分しか使ってない。で、残り1ヶ月余ってる」
「残り銀貨30枚で3か月分、プラスオレ達の分、そいつを5人で半年かよ」
「そこに中級が効くんだ。メシのランクを落としたり、宿の明かりの魔石を提供したり、魔物の肉を渡したり、やれる事は色々あるだろ」
「お、肉ならかなりあるぜ。オーク肉が大量にな」
「ありゃ豚肉だからな、宿も喜ぶだろうぜ」
「ボックスに50匹は入っているからよ、それでいけそうだな」
「いいか、王様にもらったと言うんだぞ、ボックスの事は」
「そうか、王様のせいにするんだな」
「召喚の意趣返しだ。便利なアイテムは全て、王様から勇者へのプレゼントだと言えば、欲しい奴は王様に向かう。だが、一般人では王様にはおいそれと会えない。だから真偽不明のまま、不満は全て王様に向かう。んで、欲しかったら国に貢献すれば良いとか、そうやってのらりくらりだ」
「おしっ、それでいくぜ」




