72 真相
魔族の領地を出て、そこらのモンスターを抹殺し、さっき見た魔王そっくりの首を構築。
元の身体からあの世界の身体に交換し、設定を調整しておく。
後は首を掴んで王宮に【転移】して、そのまま王様に受け渡す。
「ほれ、倒して来たぞ」
「な、何じゃと」
「この凶悪なツラに角、間違い無いだろ」
「ううむ、これはまさに魔族じゃ」
「さあ、帰してくれ」
「いやの、それはの、しばらく待つのじゃ」
「本当はやれないんだろ」
「そ、それはの、召喚陣じゃからの、送るほうは伝わっておらぬのじゃ」
「やっぱりな」
「高待遇にするのでの、何とか堪えてはくれぬかの」
「下町で自由に暮らす」
「なればそうされぃ。済まなかったの」
やれやれ【暗示】で舞台裏をペラペラと。
やっぱり帰れないんじゃないかよ。
《やっぱり帰れないそうだぞ……そ、そんなはずは……王様から聞き出した……それでは約束が違う……あいつ、やっばりおかしいぞ……どうやらそのようだな……こっちに引っ張ろうか?……とんでもない技量だな。そこまでやれるのか……詰問するなら引っ張るが……今夜頼む……分かった》
(やれやれ、やっとの事で追い出せたな。これで落ち着いてシナリオがこなせる。苦労した甲斐があったってもんだが、あれらの事は忘れさせれば良いだけの事。ついでに調査員も送っちまったが、手違いと言えば終わる話。どうせシナリオが終われば任務も終わるんだし、事後承諾で構わんさ。何かしら送っていたようだが、本人は無理だったようだな。ちょっとびっくりしたが、そういうスキル持ちだったってだけだろう。なら安心だな)
部屋に戻ってのんびり寝ていると、あいつらが戻って来る。
どうにも雰囲気が暗いのは、やはり殺すのが大変だったって事だろう。
「お、帰ったか、どうだった? 」
「あれはきついぜ。まるで人殺しだもんな」
「そうなのか? 」
「ああ、言葉は分からないが、何かを喋るし、傷付けたら真っ赤な血が出るんだ。あれはちょっときついぜ」
「これからそういうのを大勢殺していかないと、魔王には届かないんだろ」
「僕もう嫌だ」
「オレも嫌だな」
「実はな、帰れないらしい」
「おいおい、嘘だろ」
「町の物知りに聞いてみたんだけどな、かつて何度か勇者は召喚されたけど、戻れたって話は聞かないらしいな」
「くそっ、騙しやがったな」
「まあ、のんびり暮らそうぜ」
「よく落ち着いていられるな。オレは嫌だぜ、こんなとこ」
「じゃあどうするんだ」
「それは……」
「騒げば帰れるって事も無いんだろ、だったら落ち着いて考えればいい。道が無いなら探せば良いだけだ」
「けど、無いんだろ」
「町の物知りは世界全てを知ってる訳じゃない。諦めるのは世界全てを知ってからでも遅くないさ」
「オレは嫌だ、そんなのやってられるかよ」
「やれやれ、勇者と言われてその気になったはいいが、その名前に似合わない奴らってか」
「何だとっ、お前は戦ってないからそんな事が言えるんだ。やってみろよ、無理だと分かるから」
「他も同じ意見か? 」
「オレはコージならやれると思うな。いつか元の世界に一緒に戻ろうぜ」
「他は? 」
「神様にお願いしてみるよ。毎日毎日祈ってたら、もしかしたらまた」
「そうだな、特典くれたぐらいだし、またもしかしたら」
「よし、なら、オレとミツヤは別行動だな。お前らはここで祈ってろよ」
「金を置いていってくれよ」
チャラッ
「ほれ、残りの50枚だ」
「いーのかよ、全部渡して」
「後は適当に稼ぐさ」
「やってみれば分かるさ、無理なのがな」
「行こうぜ、ミツヤ」
「あ、ああ」
《これで良いのか……干渉波だしな……う、くそ、まさかこんなに早く……ここの管理も怪しいな。どいつもこいつも舐めまくりだな。あんな凄い人を……嘆かわしい事だがな……まあいい、また夜にな……分かった》
そう何度も同じスキルを食らうかよ。
そこらに流しているに決まってるだろ。
だからそこらの奴らが軒並み、変になってるんだよ。
いわば、ワイパーみたいなものでな、オレとミツヤの分は他に流していると。
無詠唱舐めんな。
「ミツヤ、あのな」
「どうした、コージ」
「お前、モンスター殺して何か思ったか」
「それがよ、あいつらは吐いたりしてたんたけどよ、オレは別によ」
「血の匂いはどうだった? 」
「オレ、どっかおかしいんだと思う。だってよ、妙にいい匂いがしてよ、興味から舐めたら美味いんだよ」
「飲みたいと思うのか」
「オレ、おかしいと思うよな」
「飲みたいか、飲みたくないか、どちらだ」
「飲みたいよ」
「本気でそう言うんだな」
「ああ、オレはきっとおかしくなったんだ」
「おかしいのは最初からだ」
「それは酷くないかよ」
「ああ、違う違う、産まれた時からって意味さ」
「だから酷いだろそれは」
「酷くないって言ってるだろ」
「お前はどう思うんだよ。こんなオレの事を。やっぱり変だと思ってるんだろ」
「ああ、変だ、凄く変だ」
「はぁぁ、そうだよなぁ」
「オレも変だしな」
「え……」
「お前はまだいいよ、オレが代替品渡してあるから、あれを舐めてればいけるんだし」
「あれ、何だよ。確かにあれを舐めてれば収まって……」
「殺したモンスターの身体の中に、小さな石のようなものがある」
「魔石とか言ってたあれかよ」
「それと同じ味だ」
「じゃああれ、魔石なのかよ。え、でもどうしてそんな物を持ってるんだ」
「ある町で売られていてな、たくさん買ったんだ」
「外国かよ。けど、魔石なんてのが外国にあるはずがないだろ」
「こういう世界の外国だ。国の外じゃなくて、世界の外って意味だ」
「お前、こういう経験、初めてじゃないのかよ」
「ああ、何度かな」
「じゃあ、もしかして、特典断ったって……」
「魔法の素質? そんなのあるから要らねぇよ」
「うううううう」
「マジックボックス? そんなのあるから要らねぇよ」
「何だよそれ、そんなのがあったら、元の世界で楽だったろ」
「ああ、関西旅行の時、お前手ぶらで動いてたろ。オレがボックスに入れてやってたから」
「あああああっ、そう言えば」
「人は他人の物を欲しがり、手に入らないと狂う生き物だからな、怖かったんだ。お前が狂うのが」
「それでかよ」
「金を借りに来ただろ、だからもしかしてと思ったのさ」
「オレが自分で可能性を閉じてたんだな。お前が打ち明けてくれる可能性を」
「お前、折角だからこの世界で鍛えないか? レベル上げたら強くなる世界だろ」
「そうだな」
「そうしてな、誰にも負けないぐらいに強くなれば、元の世界でもうっかり殺されないようになる。それくらい強くなるなら、オレの秘密を話してもいい」
「まだあるのかよ」
「勘の話とかな」
「勘じゃないって事かよ」
「お前の命を盾に、予想を強要されたら困るだろ」
「そっか、それで強く」
「オレだけなら余裕だが、さすがにお前を盾に取られたらな」
「お前、本当は強いんだな」
「それも秘密の1つさ。過ぎたる力は恐れの元。だからオレが苛められるままにしておいた意味も分かるだろ」
「そこまでにしないといけないのかよ」
「それだけの秘密だ。それこそ世界がひっくり返るような秘密と言えば分かるか」
「そうなのか……ああ、強くなるよ」
「まずは基礎体力を上げようか。人間のベースは弱すぎる」
ポンッ
「それを飲め」
「え……これって」
「良いから飲め」
「あ、ああ」
ふん、今は無き世界の魔族の血だ。
飲んでお前も魔族になっちまえ、クククッ。
まあ、元々その素質はあったんだろうけどな。
(ワシも舐められたものじゃの。あのような者如きに舐められるとは世も末じゃて。あやつ、自力で戻れるかのぅ……使えるという話じゃったが……今しばらくは待つからの、修練と思うて頑張るのじゃぞ。あやつは提訴するのでの、戻る頃には正常化しておるわい……さて、周囲を保持しておこうかの。あたかも存在を消したと思うかも知れぬが、それような甘いスキル、お見通しじゃて。計画が巧く進んでおると思い込んでおくが良かろうの、捕縛されるまで……しかしの、少し磨くかの。僅か数千年の雑魚にこのような舐められよう、万年単位が聞いて呆れられようの。もう長いからの、へたっておるのやも知れぬの)
(起きるでないぞぃ……提訴は……ワシがやるのでの、騙された振りをしておるがよかろう……はっ、お任せします……心配は要らぬ)




