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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
異世界 1年目
72/119

72 真相

 


 魔族の領地を出て、そこらのモンスターを抹殺し、さっき見た魔王そっくりの首を構築。

 元の身体からあの世界の身体に交換し、設定を調整しておく。

 後は首を掴んで王宮に【転移ワールドアクセス】して、そのまま王様に受け渡す。


「ほれ、倒して来たぞ」

「な、何じゃと」

「この凶悪なツラに角、間違い無いだろ」

「ううむ、これはまさに魔族じゃ」

「さあ、帰してくれ」

「いやの、それはの、しばらく待つのじゃ」

「本当はやれないんだろ」

「そ、それはの、召喚陣じゃからの、送るほうは伝わっておらぬのじゃ」

「やっぱりな」

「高待遇にするのでの、何とか堪えてはくれぬかの」

「下町で自由に暮らす」

「なればそうされぃ。済まなかったの」


 やれやれ【暗示インプリント】で舞台裏をペラペラと。

 やっぱり帰れないんじゃないかよ。


 《やっぱり帰れないそうだぞ……そ、そんなはずは……王様から聞き出した……それでは約束が違う……あいつ、やっばりおかしいぞ……どうやらそのようだな……こっちに引っ張ろうか?……とんでもない技量だな。そこまでやれるのか……詰問するなら引っ張るが……今夜頼む……分かった》


(やれやれ、やっとの事で追い出せたな。これで落ち着いてシナリオがこなせる。苦労した甲斐があったってもんだが、あれらの事は忘れさせれば良いだけの事。ついでに調査員も送っちまったが、手違いと言えば終わる話。どうせシナリオが終われば任務も終わるんだし、事後承諾で構わんさ。何かしら送っていたようだが、本人は無理だったようだな。ちょっとびっくりしたが、そういうスキル持ちだったってだけだろう。なら安心だな)


 部屋に戻ってのんびり寝ていると、あいつらが戻って来る。

 どうにも雰囲気が暗いのは、やはり殺すのが大変だったって事だろう。


「お、帰ったか、どうだった? 」

「あれはきついぜ。まるで人殺しだもんな」

「そうなのか? 」

「ああ、言葉は分からないが、何かを喋るし、傷付けたら真っ赤な血が出るんだ。あれはちょっときついぜ」

「これからそういうのを大勢殺していかないと、魔王には届かないんだろ」

「僕もう嫌だ」

「オレも嫌だな」

「実はな、帰れないらしい」

「おいおい、嘘だろ」

「町の物知りに聞いてみたんだけどな、かつて何度か勇者は召喚されたけど、戻れたって話は聞かないらしいな」

「くそっ、騙しやがったな」

「まあ、のんびり暮らそうぜ」

「よく落ち着いていられるな。オレは嫌だぜ、こんなとこ」

「じゃあどうするんだ」

「それは……」

「騒げば帰れるって事も無いんだろ、だったら落ち着いて考えればいい。道が無いなら探せば良いだけだ」

「けど、無いんだろ」

「町の物知りは世界全てを知ってる訳じゃない。諦めるのは世界全てを知ってからでも遅くないさ」

「オレは嫌だ、そんなのやってられるかよ」

「やれやれ、勇者と言われてその気になったはいいが、その名前に似合わない奴らってか」

「何だとっ、お前は戦ってないからそんな事が言えるんだ。やってみろよ、無理だと分かるから」

「他も同じ意見か? 」

「オレはコージならやれると思うな。いつか元の世界に一緒に戻ろうぜ」

「他は? 」

「神様にお願いしてみるよ。毎日毎日祈ってたら、もしかしたらまた」

「そうだな、特典くれたぐらいだし、またもしかしたら」

「よし、なら、オレとミツヤは別行動だな。お前らはここで祈ってろよ」

「金を置いていってくれよ」


 チャラッ


「ほれ、残りの50枚だ」

「いーのかよ、全部渡して」

「後は適当に稼ぐさ」

「やってみれば分かるさ、無理なのがな」

「行こうぜ、ミツヤ」

「あ、ああ」


 《これで良いのか……干渉波だしな……う、くそ、まさかこんなに早く……ここの管理も怪しいな。どいつもこいつも舐めまくりだな。あんな凄い人を……嘆かわしい事だがな……まあいい、また夜にな……分かった》


 そう何度も同じスキルを食らうかよ。

 そこらに流しているに決まってるだろ。

 だからそこらの奴らが軒並み、変になってるんだよ。

 いわば、ワイパーみたいなものでな、オレとミツヤの分は他に流していると。


 無詠唱舐めんな。


「ミツヤ、あのな」

「どうした、コージ」

「お前、モンスター殺して何か思ったか」

「それがよ、あいつらは吐いたりしてたんたけどよ、オレは別によ」

「血の匂いはどうだった? 」

「オレ、どっかおかしいんだと思う。だってよ、妙にいい匂いがしてよ、興味から舐めたら美味いんだよ」

「飲みたいと思うのか」

「オレ、おかしいと思うよな」

「飲みたいか、飲みたくないか、どちらだ」

「飲みたいよ」

「本気でそう言うんだな」

「ああ、オレはきっとおかしくなったんだ」

「おかしいのは最初からだ」

「それは酷くないかよ」

「ああ、違う違う、産まれた時からって意味さ」

「だから酷いだろそれは」

「酷くないって言ってるだろ」

「お前はどう思うんだよ。こんなオレの事を。やっぱり変だと思ってるんだろ」

「ああ、変だ、凄く変だ」

「はぁぁ、そうだよなぁ」


「オレも変だしな」

「え……」

「お前はまだいいよ、オレが代替品渡してあるから、あれを舐めてればいけるんだし」

「あれ、何だよ。確かにあれを舐めてれば収まって……」

「殺したモンスターの身体の中に、小さな石のようなものがある」

「魔石とか言ってたあれかよ」

「それと同じ味だ」

「じゃああれ、魔石なのかよ。え、でもどうしてそんな物を持ってるんだ」

「ある町で売られていてな、たくさん買ったんだ」

「外国かよ。けど、魔石なんてのが外国にあるはずがないだろ」

「こういう世界の外国だ。国の外じゃなくて、世界の外って意味だ」

「お前、こういう経験、初めてじゃないのかよ」

「ああ、何度かな」

「じゃあ、もしかして、特典断ったって……」

「魔法の素質? そんなのあるから要らねぇよ」

「うううううう」

「マジックボックス? そんなのあるから要らねぇよ」

「何だよそれ、そんなのがあったら、元の世界で楽だったろ」

「ああ、関西旅行の時、お前手ぶらで動いてたろ。オレがボックスに入れてやってたから」

「あああああっ、そう言えば」

「人は他人の物を欲しがり、手に入らないと狂う生き物だからな、怖かったんだ。お前が狂うのが」

「それでかよ」

「金を借りに来ただろ、だからもしかしてと思ったのさ」

「オレが自分で可能性を閉じてたんだな。お前が打ち明けてくれる可能性を」

「お前、折角だからこの世界で鍛えないか? レベル上げたら強くなる世界だろ」

「そうだな」

「そうしてな、誰にも負けないぐらいに強くなれば、元の世界でもうっかり殺されないようになる。それくらい強くなるなら、オレの秘密を話してもいい」

「まだあるのかよ」

「勘の話とかな」

「勘じゃないって事かよ」

「お前の命を盾に、予想を強要されたら困るだろ」

「そっか、それで強く」

「オレだけなら余裕だが、さすがにお前を盾に取られたらな」

「お前、本当は強いんだな」

「それも秘密の1つさ。過ぎたる力は恐れの元。だからオレが苛められるままにしておいた意味も分かるだろ」

「そこまでにしないといけないのかよ」

「それだけの秘密だ。それこそ世界がひっくり返るような秘密と言えば分かるか」

「そうなのか……ああ、強くなるよ」

「まずは基礎体力を上げようか。人間のベースは弱すぎる」


 ポンッ


「それを飲め」

「え……これって」

「良いから飲め」

「あ、ああ」


 ふん、今は無き世界の魔族の血だ。

 飲んでお前も魔族になっちまえ、クククッ。

 まあ、元々その素質はあったんだろうけどな。


(ワシも舐められたものじゃの。あのような者如きに舐められるとは世も末じゃて。あやつ、自力で戻れるかのぅ……使えるという話じゃったが……今しばらくは待つからの、修練と思うて頑張るのじゃぞ。あやつは提訴するのでの、戻る頃には正常化しておるわい……さて、周囲を保持しておこうかの。あたかも存在を消したと思うかも知れぬが、それような甘いスキル、お見通しじゃて。計画が巧く進んでおると思い込んでおくが良かろうの、捕縛されるまで……しかしの、少し磨くかの。僅か数千年の雑魚にこのような舐められよう、万年単位が聞いて呆れられようの。もう長いからの、へたっておるのやも知れぬの)


(起きるでないぞぃ……提訴は……ワシがやるのでの、騙された振りをしておるがよかろう……はっ、お任せします……心配は要らぬ)



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