71 魔族
それからも色々調べた結果、どうやらやっぱり10円相当だった。
果物がやたら安いんだこの町は。
町の外に果樹園が林立していて、特産みたいになっているらしい。
だから銀貨は1000円相当で、金貨は10万円相当らしい。
10日5人で500万円も高そうだけど、風呂付の宿だから妥当って話だ。
王侯貴族くらいしか風呂に入れないらしいから。
そんな訳でオレ達は、召喚されて早々、風呂にありついて優雅な暮らしを満喫している。
「ああ、いい湯だった」
「くっくっくっ、のんびりになってんな」
「あいつらはどうなってるんだ」
「金が無いって言ってたぞ」
「貧乏国は辛いねぇ」
「けど、残り50枚なんだろ」
「まあ、100枚入りだったしな」
「残り1週間でここともおさらばか」
「精々、英気を養っとこうぜ」
「ああ、そうするさ」
どうやら皆にはマジックボックスがあるようで、なのでオレもちゃっかり標準装備にしておいた。
つまり、望みと言うのは【倉庫】以外でのスキルの関連で、言語理解も標準装備と思わせた訳だ。
そしてオレは手ぶらで金は【倉庫】の中なのを認識されていて、今は他のメンバーを尻目に優雅な暮らしと。
どのみち、グレムリンもレミングもシルフも勝手に動くだろうし、オレ達はそんなの放置で構わない。
どうせ向こうの世界は見えているんだし、誰かが倒したら強引に送らせると言って包んで飛べば良いだけだ。
オレは既に通告してあるんだ。
混ぜたら滅茶苦茶にやるってよ。
だからどうなっても知らねぇから、好きに調整でも何でもするがいい。
幸いにも有り余るアイテムを【倉庫】に入れ終わった時だったんだ。
だから物資で困る事はねぇからな。
さーて、あいつらに里心が付いた頃にでも、向こうの品を高く売ってやるか。
てか、数年だから無理かな。
まあどうでも良いけどな。
宿に泊まって3日目の頃、あいつらは戦いを試してみたいと言い出した。
オレは何ももらってないから戦力外と思ったのか、留守番を頼まれる始末。
夜には戻ると言い残し、あいつらは揃っておでかけだ。
そうなるとオレは、精神体で抜けて元の身体を出す事になる。
いやぁ、久しぶりだなこの身体も。
こりゃ設定、かなり上げないと力が余って仕方が無いぞ。
やはり違うな、魔族の身体は。
かつて使っていた装備に身を固め、あいつらの後ろから付いて行く。
このフードを被るのもかなり久しぶりになるな。
《それはお前か……元の身体さ……それは拙いぞ。その風体、魔族だろ……やはりここでもこの風体が魔族なのか……この手の世界は大体似通っているんだ……共通のほうが便利だからか……そう言う事だ……魔族は悪なのか?……見解の相違だな……そんなの倒すの嫌だぞ……だろうな、だが、倒さないと帰れない……いいよ、自前で帰るから……戻れそうなのか……神様との話の時、あの野郎に色々転送してやった……とんでもない超越者だな。殆どあり得ない話だぞ……そうなのか……見えて移動となると、上級の資格ありだ……修練次第だろ、そんなの……才能と言われてはいるがな……そんなのやらない奴の言い訳だろ……オレもかなりやったんだがな……死に物狂いで数千年とかか……いや、そこまではな……修練惑星で磨いて来いよ……そうだな》
才能って言葉で諦められるのかよ。
欲しいと願って努力して、無理だと自分で可能性にフタをするのかよ。
そんなのつまらないだろ。
欲しかったら消滅するまで努力しやがれよな。
相当、長生きな種族になったんだろうに、やればいいだけなのにやらないのかよ。
つまらんぜ、そういうのは。
それはそれとして、魔王の様子を見に行く事にした。
【飛翔】魔法で飛んでいけば、すぐに魔族領に到達するが、どうにもよく似た風情。
ああ、妙な懐かしさを感じるな。
似たような王宮に似たような町並み、似たような領地に似たような者達。
あれはもう数千年も前の事なのに、つい最近のような感じを受ける。
町の噂はきな臭く、人間が勇者を召喚したって噂が既に流れている。
ああ、あの頃も確かそうだったな……想いのままに酒場に入り、金貨転がして酒をあおる。
今なら当時とは違った対応になるかも知れないが、あれはもう終わった事なんだ。
爪を隠しすぎてあんな事になったけど、今ならもっと……ああ、いかんな、これは。
【魔反】
ふうっ、干渉波とはいきなりご挨拶だな。
このまま住人にするのは良いが、そうなったら召喚勇者が敵対になるんだぞ。
それでも良いのかよ、クククッ。
慌て者の大間抜けが、波ぐらい見て判断しろよな。
どんな新米管理だよ、全く。
それにしても、特典と言うから何か凄いスキルかと思えば、何の事はない。
魔法の才能ってそれだけかよ。
山本が火魔法、木本が木魔法、橋本が水魔法、そしてオレがやったせいでミツヤは光と土魔法だとさ。
何ともしけた特典もあったもんだよな。
空間魔法も時空魔法も、精神魔法も無いときたもんだ。
まあ、アイテムボックスはあるようだけど。
しかも風魔法も無いから誰も空を飛べないってどうなってんだよ。
大体、異世界言語理解の状態で、呪文を覚えて詠唱ってやれないだろうが。
言葉を覚えて詠唱となるのに、そこに通訳がハマれば覚えられまいに。
どうにも穴だらけのシナリオだな。
まあオレは言語を覚えたから詠唱を聞けば唱えられるが、既に殆どがキーコード化されてんだ。
だからそんなの要らないぞ。
やれやれ、あいつら、戦うのは良いが、ゴブリン相手に吐いてどうするんだよ。
【探査】で丸見えだからこうやって、酒をあおりながら見学しているが、どうにもへっぴり腰だしメンタル弱いし。
こりゃ戦いにはならないかもなぁ。
前途多難だぜ。




