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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
中3 夏休み
7/119

07 貸金

  


「コーちゃん、お友達が来ているわよ」

「あれ、どうしたんだ、ミツヤ」

「ちょっと相談があるんだけどよ、部屋に上がっていいか」

「ああ、いいぜ」


 ミツヤからの相談、それは今までに無かった相談内容。

 オレはこいつとそれだけはやりたくなかったが、こいつはそれをしようとしている。

 こういうのはこじれると絶縁にもなる危険な事なので、オレはやりたくはなかったんだ。


 だけどミツヤはそれを敢行した。


 確かに理由もあった。


 家の仕事での赤字、家族の病気、冷たい両親、進学への反対、上の兄弟の学費、その他諸々。

 ミツヤは賢いというのに、高校すら進学を許されないとか、今時あり得ないような話。

 それどころか小遣いも減らされ、バイトの金は家に入れろと言われる始末。

 到底、中学生に要求されるような事じゃない。


 どんな親なのかと思うぐらいなんだけど、それでもミツヤは高校を目指している。

 その為の資金を貯めている中で、今のままではどうにもならず、親に一時金を貸してのその場しのぎ。

 つまり、バイト料を家に入れて今の困窮を助ける事で、後々の高校費用を出させる作戦とか。

 だからまとまった金が今あれば、後が楽だからと言われても、どうにもそんな金は作れない。

 親もそれを知っての無理難題に近く、見返してやりたいらしい。


 そこで見つけた金づるがオレと間違えた事なども話した。

 ネトゲの話はサイトで見た情報だったらしく、ゲーセンでの時間が現実を忘れられる時間だったらしい。

 勉強はそんなに必死にやらなくてもそれなりの成績だったようで、近所のレストランで皿洗いのアルバイトもやっていたらしい。

 学校に内緒でひたすら貯めていたのだが、それが最近バレたとか。


 義務教育内の不正就労とか言われて、アルバイトをクビにされたとか。

 それで余計に苦しくなって、レース場に行ったんだと。

 やれやれ、将来の学費を貯めている苦学生のアルバイトを禁止するとか、青少年保護条例なんてくそったれな条例、貧しい奴はそのまま搾取されろってか。


 はぁぁ……仕方が無いな。


「ほい、これを使え」

「郵便貯金かよ……うおおおっ」

「そいつを貸してやる」

「本当に良いのか、コージ」

「高校卒業したら働いて返せよ。オレの結婚資金なんだからよ」

「お前、そんな相手が居るのかよ」

「居たら貸すか」

「うっ、ぷぷっ……」

「煩いな」


 ミツヤは何度も礼を言い、オレは激励して送り出した。

 さて、ネットバンクの100万と手持ちの20万が現在資金となった訳だが、早急にレースやらないとな。

 色々な方法を試した結果、何とか潜り込めた。

 単身赴任の父親の名前を借りるのは拙いが、迷惑を掛けなければ問題あるまい。

 早速にもネットバンクとの連結をする。

 数日で買えるようになるらしく、それから少し稼がせてもらおうと思っている。


 そうだな、1千万あればいいか。


 特別会員は年額1万円の会員料金が掛かるが、そいつは年齢確認が無いんだ。

 メアドとネットバンクの口座だけあればやれるらしい。

 ただし、一般会員からの移行しかやれないらしく、そこでオレの名前に名義変更する予定なのだ。

 数日借りた親の名義から自分の名義に変えた特別会員。


 前日に全レースに1万ずつ投入し、学校が終わって帰ったら確認する。

 口座額が2847万になっていた。

 いきなり達成だが、ここで調子に乗ってしまう。

 翌日のレース予測を立て、全レース100万ずつ投資。

 てかさ、あんまり簡単に増えるからさ、つい……やっちまったと言っていいだろう。


 ああ、タマゴの消費がでかいし、この精神疲労は堪らない。

 入力した後はそのままベッドで朝までぐっすりだ。

 親にはお年玉を貯めて買ったと言ったこのPCだが、確かに基本価格は安かったが、色々オプションを付けたのは内緒だ。

 レースサイトの履歴を消し、パス付きのフォルダにサイトのURLと会員番号。

 パスワードは暗記してあるが、非常用に引き出しの中に覚書を入れてある。


 ああこれ、税金が絡むか。


 まあ、申告は3月なんだし、それまでに何か考えればいいか。

 どっちみち、色々と税金が掛かるなら、この際、もっと稼いでおくべきかも知れないな。

 いざ、足りないとか言われるのも嫌だし。

 本当にもう、税金なんてものが無ければ、もっと地味にやれるのに。


 なんてね。


 税務署のせいにしてやれ、クククッ。

 実際、面白いのは確かなんだ。

 そりゃギャンブルなんだから、過ぎればヤバいけどさ、元々があぶく銭な訳だ。

 だから消えちまっても別に惜しくは無い。

 まあこのままの調子でやれるなら、確実に増える事にはなるだろう。

 だけどそれを表に見せる訳にはいかない。

 けど、予測が当たるのは面白い。


 いやはや、困ったもんだ。



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