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さすらいの魔皇子2   作者: 黒田明人
高1 1学期
67/119

67 愛称

 


 結局、5人参加しないと消え去るはずだった『魔術研究会』なんだけど、オレとミツヤと山本と、橋本と木本の5人で存続が決定した。

 それは良いのだが、同じ部活の5人がそのままクラスでのグループを形成する事となり、グループに付ける名前と言うか愛称みたいなのを各自で決めろと言われている。

 頭は良いがありきたりを嫌う奴らが揃っているオレ達の部活のメンバーは、辞書を引いてみたり小説を読んでみたりと、色々探している。


 そんな中……


「3本山田」

「何それ」

「それがグループ名かよ」

「あ、もしかして。うん、ちょっとダサいけど、意外性はあるね」

「どんな意味だ」

「ほら、山本、木本、橋本で3本」

「ああっ、青山と石田で山田か、成程な」

「僕達の名前が入ってて、それがそのままグループ名になっている。うん、良いかも」

「確かにな」

「で、合言葉は、青木山の石橋」

「そいつが前の漢字か。つまり、青木山に対して石橋と返す訳だ」

「そゆこと」

「僕は賛成だよ」

「オレもいいぜ」

「うん、逆に新鮮かも」

「そうだな。オレもそれでいいや。どうせ思い付かねぇし」


 ちなみに他の奴らと言えば、どっかで聞いた事のあるような、どこかありきたりな名前が揃っていた。

 なので意外に気に入ったような感じになっているんだけど、他の奴らの評価は余りよろしくない。


「何それ、ダサくない? 」

「いーだろ、別によ」

「スピリッツだせ、くくく」

「それって魂って意味だよな」

「そうだぜ、オレ達は魂の仲間だからよ」

「うわ、それもなんだかなぁ」

「スピッツかと思った。ワンコ仲間で」

「あははははっ」

「そういうお前んとこは、ワンダラーってダサダサじゃねぇかよ」

「夢があって良いでしょ」

「夢はドリームだろ。そいつは冒険のほうだろ。冒険者ってファンタジー脳かよ」

「こらこら、騒ぐんじゃない。決まったら提出しろ」


 そんな訳で静かになり、部長のミツヤがなし崩し的にリーダーとなり、我ら『3本山田』の名前を提出した。


「ほお、これはまた変わった名だが、どんな意味がある」

「はい、メンバーの名前の下の漢字のアナグラムです」

「ほお、アナグラムか、成程な。うむ、これはなかなか良いぞ」

「そうですか」

「独創性があっていい。こういう風に自分で考えられるのは実に良い。皆も聞いておけ、与えられる名前に意味は無い。世間の流用では先が無い。

 良いか、お前達も自分で考える事を心掛けるように」

「「はーい」」


 妙なとばっちりがクラスに流れたが、そこまでの事も無かったようで一安心。

 頼むから余計な波風を立てるなよな。


 今更だけど、この学校のクラスの事を少し話しておこう。

 1年は3クラスで、A・B・Cに分かれている。

 これは入試の成績順に割り振ったらしく、1位から20位、21位から40位、41位から60位になっているらしい。

 つまり1クラス20人の少数精鋭になっていて、巷の40人越えとは一線を画している。

 それだけ教師と生徒の距離が近く、より高度な学識を身に付けられるようにという方針らしい。

 そしてグループは4つであり、5人のグループで1年間過ごす事になるとか。

 その為、順位も完全ではなく、女子4人の場合は多少順位をいじって5人になるように調整されるらしい。

 このクラスは男子15名、女子5名なので、それが成されたのかも知れない。


 つまり、男女共学だが、グループは男と女を分けている。

 なので混成チームには出来ない事になっている。


 それは別に、異性がどうのこうのではなく、異性が必要な時は交渉して事にあたる、なんて事になるようで、それも教育の一環らしい。

 勉強だけではなく、交渉術や社交性など、本当に上流階級向けのカリキュラムになっているようで、ますます場違いな感じを受けている。

 ただ、第二外国語の選択だけはアレだったけど、オレだけ希望したスワヒリ語。

 いやだって、選択項目にはドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語しか無かったんだし。

 既知の言語ばかりでつまらないから、あえてスワヒリ語って書いて提出しちまったんだ。


「お前なぁ、確かに自由だが、これはどうにかならんのか」

「未知の言語がやりたいと思いまして」

「何? お前、全国語、いけるのか」

「会話だけですけどね」

「ううむ、さすがだな。やはり特待生だけの事はあるか。まあ、その中で一番苦手なのを選んでくれんか」

「なら、イタリア語で」

「そうか、ならそうしよう」


 やれやれ、仕方が無いな。


 言語ライブラリに新しいのを増やしたいと思っての事だけど、無いなら別にいいや。

 それはまるでパズルのように、様々な単語が頭の中の地図を埋めていく。

 そうして出来上がるのだ、言語のライブラリーが。

 そうなれば後は自動変換みたいに無意識に、言いたい言葉が変換されて出るようになる。

 まるでファンタジーでの自動言語理解のように、無意識で通訳が成されているかのようになるのだ。

 だから恐らく、他の世界での特典って言うのは、こういうのに近いんじゃないかと思っている。

 それをチートだの何だのと解釈されているんだろう。


 このはオレの技能になる。


 数千年の中で培った、オレが習得した技能だ。

 あの世界にも様々な言語がありはしたが、少しずつこういう風に変わっていったのだ。

 だから未知の言語に対する習得率は、会話を聞けばかなり早いと思っている。

 そういう訳で、未知なる言語を知りたいと思ったのだ。


 まあ良いけどさ。



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